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2025/02/26(水) 08:18

〝継続は力なり〟土地区画整理事業参画で独走する野村不「所沢」の戸建て人気

投稿者:  牧田司

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「プラウドシーズン所沢」

 野村不動産が「ToKoKoRo TOWN」と名付ける土地区画整理事業による再開発街区で分譲中の分譲戸建て「プラウドシーズン所沢」を見学した。所沢駅から徒歩10分、構想段階から約40年経過する約27.2haの土地区画整理事業地に位置する全120区画。昨年9月から販売が始まっており、第1期40戸が完売するなど好調な売れ行きを見せている。

 物件は、西武線所沢駅から徒歩9~11分、所沢市都市計画事業北秋津・上安松土地区画整理事業地内の第一種低層住居専用地域・第一種住居地域(建ぺい率60%・70%、容積率100%・200%)に位置する全120区画。土地区画整理組合から保留地を取得して分譲するもの。同事業は今から約40年前の1984年、約100人の地権者により計画が持ち上がり、同社は施工の戸田建設とともに組合が設立された2017年に事業参画した。施行面積は約27.2ha、減歩率は約44%。従前はほとんど茶畑。

 昨年5月にエントリー受付を開始し、これまでの来場者数は240件。販売開始は昨年9月からで、第1期(40戸)は、1億円超の住戸は抽選倍率が4倍になるなど人気となり完売。敷地面積は101.10~150.10㎡、建物面積は100㎡以上、価格は7,100万円台から10,800万円台(中心価格は8,000万円台)。建物は2×4工法2階建て。施工は西武建設(2期以降は細田工務店も加わる)。

 主な基本性能・設備仕様は、「ZEH水準」、太陽光発電初期費用ゼロ円、月額利用料ゼロ円、発電電気量ゼロ円の「エネシャイン」、ジャワ鉄平・木曽石景石、1620ユニットバス、深型食洗機、LDと一体利用できる洋室など。

 ターミナル駅から徒歩圏で、建物面積が30坪超というのが人気の要因。反響者は地元が36%、中域が21%、広域が43%。区画整理事業地内には大規模商業施設「SoKoLA」が開業済みで、約3万㎡の公園・緑地も整備される。

 同社は昨年4月、課員4名からなる住宅事業本部戸建事業部区画整理事業課を立ち上げ、戸建事業部副部長の小林和人氏(56)が同課課長を兼任。小林氏は「区画整理事業に継続して参画してきたのは当社だけ。今回の区画整理事業は40年の歳月が経過し、地権者はほとんど代替わりした。土地所有に執着しない地権者が増えたのも計画がスムーズに運んだ要因の一つ。地権者の方々からは資産価値が上がったと評価されている。『SOKOLA』は30人の地権者による共同賃貸として信託方式を採用しており、転売リスクを軽減できているのも全国から注目されている。市も公園用地を取得するなど協力的」と話した。

 同社はこのほか、保留地内のマンション「プラウドシティ所沢」(303戸)を近く分譲する。また、来年度から始動する隣接の約22haの土地区画整理事業にも参画。幕張本郷でも計画を進めている。

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「SoKoLA」

◇        ◆     ◇

 〝継続は力なり〟-取材してひしひしと感じた。取材には、小林氏と同じ年の同課課長・渡辺賢二氏、一回りくらい若そうな同課課長代理・長谷亮平氏、販売責任者の山縣里美氏も同席した。小林氏が「地権者の方々からは資産価値が上がったと評価されている」と語ったことを受け、長谷氏が「ガンガンやる」と息巻いたように、大いに盛り上がった。マンションの坪単価(記者は坪300万円を大きく超えることはないと予想)については固く口を閉ざした以外は、みんな口は滑らかだった。

 なぜか。事業性が極めて高く、成功するのがほぼ見えたからだろう。値付けには悩んだようだが、記者は西武ファンだからではなく、客観的に判断して8,000万円台という価格帯は妥当だと思う。

 〝価格は市場が決める〟-この原則もまた今回の事例が証明している。中広域から集客できているように、所沢にはそれだけのポテンシャルがある。これまで、バブル期には西武不動産の邸宅街や西口に林立するタワーマンション(この街づくりは頂けないが)も取材した。住友不動産・住友商事が2018年に分譲した「シティタワー所沢クラッシィ」の坪単価350万円には驚愕したが、「西武所沢S.C.」リニューアル、隈研吾氏の「角川武蔵野ミュージアム」、「エミテラス所沢」の開業などで所沢のポテンシャルは劇的にアップした。「ToKoKoRo TOWN」のタウンネーミングは宮崎駿監督の「トトロの森」からとったのだろう。

 皆さん、同社が事業参画した2017年当時の分譲予定価格を想像していただきたい。同社が4年前に分譲した駅から徒歩9分の「プラウド所沢寿町」(107戸)は坪210万円だったのがヒントになる。

 区画整理事業が息を吹き返すかどうかにも注目したい。かつて土地区画整理事業は「都市計画の母」と称された。都市居住者の住宅需要の受け皿となっていた。国土交通省のデータによると、2022年度末までの土地区画整理事業の着工面積は12,411地区、約37万haが着工された。これは、国土面積3,780万haの1%近く、全国の市街地の約3割に相当する。

 しかし、この事業は土地価格、住宅地価格が上昇し続けることが前提であったため、バブル崩壊後は激減した。記者は減歩率が97%、つまり地権者にはほとんど土地が残らなかった広島県福山市郊外の「佐賀田土地区画整理事業(あしな台)」(19.5ha、342区画)団地を取材したことがある。この制度には、解散=自己破産は認められておらず、どこまでも施行者(組合)の責任が問われるという問題もある。

 このため、現在施工中の土地区画整理事業は約670地区(約2.1万ha)、うち組合施行は約320地区(約0.7万ha)にとどまっている。

 ゼネコンもデベロッパーもバブルが崩壊して以降、土地区画整理事業からほとんど撤退した。記者の知る限り、デベロッパーが参画した最近の土地区画整理事業は2011年着工の三井不動産「ビスタシティ守谷」と、2014年着工の相鉄不動産「泉ゆめが丘土地区画整理事業」しかない。

 しかし、野村不動産だけは継続して土地区画整理事業に参画してきた。現在分譲中の「プラウドシーズン稲城南山」をはじめ稲城市の「栗平」「稲城上平尾」や「鶴川緑山」「千都の杜」「八千代緑ヶ丘」「船橋小室」「稲毛」「木下」…この40~50年間で30か所くらいに参画しているのではないか。〝独り勝ち〟だ。「ガンガンやる」は張ったりではないような気がする。

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見事な茶畑もあった

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公園・緑地

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