左から西畠氏、石山氏、牧野氏
三菱地所は4月20日、「熱帯植物から覗く世界」トークイベントを行った。同社が主催し、国境なき医師団(MSF)が企画・協力し、そら植物園が特別協力して2025年4月10日(木)~30日(水)まで「Marunouchi Bloomway(丸の内ブルームウェイ)」で開催している写真展「熱帯植物から覗く世界」の一つとして実施したもので、同社丸の内運営事業部・牧野圭氏(35)、プラントハンター・西畠清順氏(45)、国境なき医師団メンバーとしてコンゴ民主共和国で約1年間活動した石山友莉佳氏(28)が語り合った。会場には定員いっぱいの約120人が集まった。
「Marunouchi Bloomway」は2024年、三菱ビルと丸の内二丁目ビルの各1階の通路や外構部に花壇やベンチを設置し、東京駅と丸の内仲通りをつなぐ公園のような空間を整備したリニューアルプロジェクト。
写真展は、写真家集団マグナム・フォトの写真家らによるコンゴ民主共和国(旧ザイール)の写真33点の展示と、西畠氏が代表を務めるそら植物園によるアフリカ熱帯植物の花壇を組み合わせたもの。
写真展「熱帯植物から覗く世界」© Newsha Tavakolian /Magnum Photos
◇ ◆ ◇
西畠氏の作品を観るのは、三井不動産「パークシティ大崎」、東急不動産「日々やパークフロント」、三井不動産「三井ガーデンホテル五反田」に次いで4度目だ。今回は、過酷な条件の中で生き抜いている植物の強さに圧倒された。
トークイベントでは西畠氏は魅惑的なフレーズを連発した。「牧野くんは熱い。熱量がすごい」「世界中の植物を愛している。愛がソーシャルビジネスにつながる」「(参加者からの在来種と外来種の問題についての質問に)本質的な問題です。植物は子孫を残すため〝遠くへ行きたい〟が基本。自然の摂理です」などだ。
石山氏は〝闘士〟を想像していたのだが、普通の女性だった。大学卒業後、IT企業に就職。2024年にボランティア休暇を取得して、国境なき医師団に初参加し、サプライ・アクティビティ・マネジャーとしてコンゴ民主共和国で活動したという。
フランス語が話せるからコンゴ(公用語)に派遣されたのだろうが、多くの反対を押し切って参加したという。「(コンゴに)ないのは平和だけ」「このような仕事(MSF)がなくなればいいと思う」と話したのがぐさりと肺腑をえぐった。
牧野氏は、今回の企画を実施した背景について「ビジネスは本質的には、気づきとか変化、他社のレンズを取り込むことだと思う。植物はその気づきや変化などを教えてくれる」とし、「私たちの世代を集めた研修がありまして、エリアマネジメントをどうするか、これからの日本をどうするか、資本主義とは何かなどのおこがましいテーマでめちゃくちゃ缶詰にされたのですが、最後に国境なき医師団の事務局長の講演がありまして、大きなものを見過ごしていたことを気づかされました」と語った。
写真展「熱帯植物から覗く世界」(以下同じ)
◇ ◆ ◇
コンゴについて。記者の中学生のときの好きな教科は地理で、当時の世界約100か国の国名と首都名を丸暗記した。中国は中華人民共和国、ロシアはソビエト社会主義共和国連邦、南朝鮮は大韓民国、北朝鮮は朝鮮民主主義共和国だった。コンゴは複雑で、地図ではコンゴ共和国(首都:プラザビル)に隣接するコンゴ民主主義共和国(首都:キンシャサ)との国境線は明確ではなく、色もはっきり図示されていなかったはずだ。
あれから約60年。今回配布された資料には「アフリカ大陸で2番目の面積を持つコンゴ。歴史的な民族対立や、天然資源を巡る対立、周辺国の介入などにより、特に東部で数十年にわたり不安定な情勢が続いています。複数の武装勢力とコンゴ軍との戦闘が激化し、2024年11月時点で国内避難民の数は670万人に上りました。戦闘による負傷や子どもの栄養失調、性暴力の被害など、医療援助へのニーズは高く、国境なき医師団は全活動国・地域の中で最大規模の援助をコンゴ民主共和国で行っています」とある。
国境などない植物、薬にも毒にもなる植物に愛を込めるプラントハンター、国をめぐる人間界の争い、国境を越える医師団の活動…一切の差別がなくなり、国家が死滅するのを記者は夢見たことがあるのだが…。
「Marunouchi Bloomway」外構
丸の内・仲通り
丸の内・仲通り
記者か好きな三菱一号館(3階の喫煙所から。右下のカフェ&バーでワインを飲むのが楽しみの一つ)
業界初?都心の眺望風呂付き西畠氏監修のガーデン付き三井不「五反田」ホテル開業(2018/6/16)
日比谷公園の緑取り込む東急不「日比谷パークフロント」竣工同社の勢いまざまざ(2017/5/26)