左から川村氏、神保氏、菊地氏(大手町ファーストスクエアカンファレンスで)
東京建物、読売広告社、プライムプレイスの3社は6月2日、3社による新会社「WonderScape株式会社」を設立し、大型デジタルサイネージやイベントなどにより都市空間に付加価値を創出する「空間メディア事業」を開始したと発表した。2030年までに年間約5件・50億円投資し、売上高約30億円を目指す。
WonderScapeには、「Scape(まちの風景)」に「Wonder(驚き・不思議)」を与えたいという思いが込められており、同社は今後、全国主要都市で東京建物グループが所有する物件に加え、第三者が所有する物件においても大型デジタルサイネージの設置を進めるとともに、連動したイベントを展開し、まちのにぎわい創出に貢献していく。第一号案件として、地下鉄「大手町」駅直結の大規模複合ビル「大手町タワー」で約300インチの大型デジタルサイネージ「大手町タワービジョン」の稼働を開始した。
報道関係者向け新会社設立・事業戦略発表会に臨んだ東京建物取締役専務執行役員・神保健氏は、「従来、街づくりは建物を建てることなどハード面が重視されてきたが、10年くらい前から人々の賑わいや都市の活力を生み出すという形に変わってきた。最近では、大阪駅前に4.5万㎡の公園をつくる『グリーングラン大阪』が最たる例」と新会社を立ち上げた背景について説明し、「『空間メディア事業』は都市空間を情報発信媒体(=メディア)として活用することと定義づけている」と語った。
読売広告社代表取締役社長・菊地英之氏は、「当社は不動産会社や住生活関連会社などの顧客が多いのが強み。今回も、東京建物さんと2021年から共同で取り組んでいる『都立明治公園』が縁となった。市民が街に対して持つ愛着や誇りを可視化する『CIVIC PRIDE』指標を通じて知見を積み上げてきた。このケイパビリティを新会社でも生かしたい」と話した。
プライムプレイス代表取締役社長執行役員・川村崇氏は、「当社は東京建物グループのプロパティマネジメント事業を展開しており、商業施設の受託件数は全国で64施設に上っている。その8割以上はグループ外」と語った。
新会社は、東京都中央区八重洲一丁目4番16号 東京建物八重洲ビル、株主は東京建物(56%)、読売広告社(34%)、プライムプレイス(10%)。社員は7名でスタート。社長には神保氏が就任した。
「大手町タワービジョン」
◇ ◆ ◇
記者発表会後、第一号案件の「大手町タワービジョン」の見学会も行われた。天邪鬼の記者は、同社担当者の説明をほとんど聞かず、1日約6万人が行き交うという地下通路を通る人々を観察した。デジタルサイネージを正面から見る人は、目に留まっているはずだが、立ち止まって凝視する人はなく、目線を上げる人は10人に1人いるかどうかだった。逆から来る人が立ち止まるシーンはまったくなかった。
考えれば当然だ。街中に広告が氾濫しており、デジタルサイネージも当たり前になっている。一方で、発表会で配布された資料には、広告売上高の対前年比伸び率が媒体別に示されていたが、伸びているのはインターネット広告のみだ。それでも2015年は15.7%だったのが2024年は6.4%となっているように伸び率は鈍化している。その他では、屋外広告はコロナ禍での落ち込みを取り戻しつつあるが、新聞、テレビは横ばいかむしろ下落している。みんな情報源はネットで、SNSが情報を拡散しているのが現状だ。
そこで、結論付けたのはデジタルサイネージだけでは大きな効果は期待できないのではないかということだ。広告マーケティングのイロハはAIDMAだ。Attention(注意)-Interest(興味)-Desire(欲求)-Memory(記憶)-Action(行動)へどうつなげるかだ。新会社関係者もそんなことは百も承知のはずで、メディアミックスを通じてイベントなどへ人の動きを誘導するはずだ。「大手町タワー」でいえば、どこに見負けない「大手町の森」がある。三菱地所の「大手町仲通り」の様々なイベントと連携すれば、日本一のストリートになる。他にも展開すれば30億円をはるかに突破できるのではないか。
発表会では、公共空間の活用もテーマの一つになっていたが、記者は否定的に見ている。公園利用など公共施設・空間の利活用はたくさんの規制がある。そう簡単ではないはずだ。
3,600㎡の「大手町の森」
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