「へーベルメゾンBORIKIえほん箱パーティー2025」(横浜市役所アトリウム)
旭化成不動産レジデンスは7月25日、横浜市役所アトリウムで行われた「へーベルメゾンBORIKIえほん箱パーティー2025」のトークイベントをメディアに公開。宇宙航空研究開発機構(JAXA)名誉教授、はまぎんこども宇宙科学館館長の的川泰宣氏と、同社ヘーベルメゾンBORIKI担当の楯智也子氏が「絵本からはじまる宇宙とゆめのはなし」をテーマに語り合うもので、定員いっぱいの約300人の〝本好き〟の親子連れでにぎわった。〝おとな子ども〟を自認する記者は〝母力〟に圧倒され、右往左往するばかりだった。
イベントは、地域貢献活動の一つとしてお母さん業界新聞社との共催で開催したもので、昨年の1月に続き今回が2回目。同社が管理する子育てファミリーを笑顔にする賃貸住宅「へーベルメゾンBORIKI」の絵本巡回サービス「BORIKIえほん箱」の絵本を市民にも楽しんでもらうのが目的。横浜市こども青少年局が後援し、出版社74社などが協力している。25日(金)と26日(土)のそれぞれ午前の部、午後の部に分かれた4部構成。各部の定員は300名で、参加費は無料。会場には「BORIKIえほん箱」の350冊が展示され、その場で読むことも購入することも可能。
展示されている「BORIKIえほん箱」の一部
的川氏(左)と楯氏
◇ ◆ ◇
賃貸住宅「へーベルメゾンBORIKI」は、2012年に完成した第一号「へーベルメゾン母力むさしの」を取材しており、そのとき「『母力(BORIKI)』の字と発音から、記者はゴーリキーの名著『母』と山登りのおじさん『強力』を思い浮かべたのだが、『母力』はそのイメージはともかく、子育て真っ最中のお母さんたちの強い意志が『母力』と言う言葉に込められていることを実感した」と書いたように、強烈な印象を受けたことが今も残っている。業界関係者も衝撃を受けたようで、記事には約5,500件のアクセスがあった。
そして今回。的川氏が冒頭、金子みすゞの詩を朗読したのにはドキリとした。記者などは詩人としての金子ではなく、酒癖・女癖の悪い夫から淋病をうつされ、26歳の若さで自死した薄幸の人生が先に頭をよぎるからだ。自分は酒癖・女癖もない(はず)が、〝だめ親父〟であることに変わりはなく、金子の名を聞くと責められているような感覚に陥る。
金子は山口県出身で、的川氏は広島県出身とのことで引き合いに出されたのに納得したのだが、そもそもの取材の目的は「BORIKIえほん箱パーティー2025」がどのようなものかを見るためだったので、周りの記者の方たち(10人くらいか)が行儀よく椅子に腰かけ、メモを取っているのに失礼だとは思ったが、落ち着きのなさは大人になっても全然改善されない〝おとな子ども〟の記者はあちこち動き回った。
その甲斐はあった。記者席から手が届く「BORIKIえほん箱」のうち10冊くらい手に取り、パラパラとだが読んだ。デザインがみんな素晴らしいと思った。詩:内田 麟太郎・絵:高畠純・出版社:アリス館「うし」がその代表だ。
参加者の横浜市在住の30代のご夫婦にも話を聞いた。今年1月に市内の中古戸建てを買ったばかりで、お子さんは生後3か月の男の子。「毎日、数分ですが読み聞かせしています」とのことだった。
「BORIKIえほん箱」の選書には何か基準があるのではないかと、お母さん業界新聞社大阪代表でお母さん大学大阪支局お母さん大学えほん箱プロジェクトリーダーの肩書を持つ宇賀佐智子さんに聞いた。当たらずとも遠からず。宇賀さんは「絵本は旭化成ホームズグループの7,100人から寄付されたリユースの約700冊のうち、汚れが目立つものや重複しているものを除いた約400冊を『BORIKIえほん箱』として登録しています。みんな知ってる『ぐりとぐら』などベストセラー本は外しています。書店も知らない本も少なくありません。74社の出版社ともつながっており、『BORIKIえほん箱』に選ばれるのは光栄という声も頂いています」と話した。
これで合点した。イベント参加者はみんな本好きで、絵本はみんな〝無印良書〟だということだ。
「失われた30年」と同じ長期不況が続く出版業界も「BORIKIえほん箱」に学んだ方がいい。先に発表された173回芥川賞と直木賞は双方とも27年ぶりの該当作なしとなったが、当然のような気がする。名前は出さないが、最近はひどい作品が多すぎる。記者が好きな作家・丸山健二氏(丸山文学にはまると中毒になる。他の小説が馬鹿馬鹿しくなる)に言わせると「大量生産による大量販売という出版界の潮流が主流と固定化され、それ以外は排除され、『悪貨は良貨を駆逐する』のたとえ通り、悪書が良書を駆逐する羽目になり、そんなお粗末な商法が蔓延り過ぎて罰が当たり、ついには悪書でさえ見向きもされなくなった」(いぬわし書房)ということだ。
最後に、記者が最近読んだ本の中からお勧めの3冊を以下に紹介する。
・梯久美子「狂うひと『死の棘』の妻・島尾ミホ」(新潮文庫) 本人へのインタビュー、現地取材のほか、膨大な資料を丹念に調べ上げて書かれたノンフィクション小説の傑作だ
・西永良成訳 ミラン クンデラ「冗談」(岩波文庫) 「存在の耐えられない軽さ」よりこちらのほうがいいと思う。「冗談」が人生を破滅に追いやる悲喜劇のドラマ。わが国の社会でもありそう
・工藤幸雄訳 リシャルド カプシチンスキ「帝国 ロシア・辺境への旅」(新潮社) ロシア「帝国」は永遠に不滅なのか。ロシアがどうしてウクライナに侵攻したか、停戦は容易でないことが分かる
旭化成ホームズ 子育て向け賃貸住宅「母力」 50冊の絵本 無償提供PJ開始(2020/12/17)
あれから6年 「BORIKI(母力)」じわり浸透 旭化成ホームズ「母力おぎくぼ」見学会(2018/8/22)
オーナー&入居者の双方のニーズ満たす 旭化成ホームズが賃貸住宅見学会(2014/12/22)
旭化成ホームズ 「へーベルメゾン母力むさしの」完成(2012/9/24)