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2025/08/09(土) 12:25

全国初か 提供公園に果樹・ハーブ植え地域交流拠点に ポラス 産学民連携の「北本」

投稿者:  牧田司

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「KITAMOTO SIGNATURE EDIBLE LANDSCAPE」完成予想図

 ポラスグループ中央住宅は8月8日、早稲田大学と地域自治会との産学民連携による「エディブルランドスケープ(食べられる景観)」をコンセプトにした埼玉県北本市の分譲戸建て「KITAMOTO SIGNATURE EDIBLE LANDSCAPE」(全22戸)のメディア向け見学会を行った。当日は、プロジェクトに参加している早大リサーチ・イノベーション・センターの岡村竹史上級研究員、同社戸建分譲設計本部設計一部営業企画設計課課長・山下隆史氏、北本市本町3丁目自治会会長・花形俊夫氏、合同会社暮らしの編集室・江澤雄介氏、伊藤ファーム・伊藤和雅子氏、同社戸建分譲さいたま事業部部長・髙橋明氏がそれぞれの思いを語った。

 物件は、JR高崎線北本駅から徒歩13分、北本市本町3丁目の第一種低層住居専用地域・第一種住居地域(建ぺい率50%・80%、容積率60%・200%)に位置する全22戸。第1期1次10戸(うち3戸は契約済み)の土地面積は125.52~136.93㎡、建物面積は97.50~104.34㎡、価格は4,590万~5,190万円。完成予定は2025年9月22日。構造は木造2階建(在来工法)。施工はポラテック。

 早大との連携は、小規模分譲地をエリアのあちこちに「編み込み、つなぐ」ことで、分譲地自体だけでなく、エリア全体の価値向上を目指す「Interknitted Town」構想に基づくプロジェクト。分譲地の住民と地域の人々が一体となったコミュニティ醸成により、人々のパブリックライフを豊かにしていく試み。

 外構には実のなる樹木を植たり、全住戸に家庭菜園となるポタジェ(1.8m×0.6m)を設けることなどで果樹を育て、収穫して食べるエディブルな暮らしを提案する。

 また、分譲地内中央に長さ約50mの「PATH」(フットパス)をつくり、40坪の提供公園「PLAZA」とつなぎ、公園には食べられる樹木、約10種のバーブ類や食べられる花を植える。

 さらに、分譲地に隣接する約30坪の空き地になっている市有地を「AMU(編む)」として、新旧の居住者が交流できる場として整備する。

 見学会の冒頭、岡村氏は「2020年度からプロジェクトをスタートさせた。研究を進める中で、郊外街づくりビジョンとして『Interknitted Town』構想を取りまとめた。相互に(Inter)編む(knitted)という意味で、これまでは大規模開発で街づくりを行ってきたが、これからは既成の市街地の中に小さな分譲地を埋め込んでいくことが大事で、単に埋め込むだけでなく地域の資源、不足する機能を足し、ステークホルダーを巻き込んで編み込み、地域全体の価値向上、住環境を向上させていくことが重要と考えている。

 ライバルとしてトヨタの『WOVEN CITY(ウーブン・シティ)』構想があるが、『WOVEN』は豊田織機、つまり織物。我々の構想は、手作りならではの温かさ、柔軟性があって身体にフィットしやすい、解きほぐして修正ができる、再利用できるアナロジーを込めた。理論だけでなく、社会実証化したいと考えていたとき、ポラスさんから提案があって協議をして今日に至った。公園を地域に開く、近隣にある空地も巻き込み、ステークホルダーと一緒にやっていこうという『Interknitted』を体現できるいい事例だと思う。空間的にも社会的にも関係性をデザインしていくことが重要で、理論と実践のキャッチボールをしながら構想をアップデートしていく」と述べた。

 続いて登壇した山下氏は「これまでのやり方を超越した分譲地をつくりたいという思いで、スタートさせた。当社初の取り組みだが、全国でも初めてかもしれない。トピックは3つあり、1つ目はEdible(食べられる)を植栽すること、2つ目は公園と道路をつなぐフット・パスをつくったこと、3つめは分譲地に隣接する空き地を取り込んだこと。暮らしの編集室さんと伊藤ファームさんと一緒に今後2年間、様々なイベントを行いコミュニティの醸成をサポートしていく」と話した。

 花形氏は「私は半世紀前、20坪の分譲地を購入した。今回新たな分譲地ができることに感慨深いものがある。自治会の加入率は57%だが、新しい住民の方々と一緒になって盛り上げていきたい。かつては我々が花植えをしていた、今は空き地になっている市有地も再利用して街づくりに力を入れていく」と語った。

 地元居住者で様々な地域貢献・街づくり活動を行っている江澤氏は「様々な活動をしてきて、地域に対する愛着とか感覚は全く違っていることを常々感じている。今回のAMUの新しい取り組みによって共通言語が生まれることを期待している」と語った。

 長野県出身で結婚してから地元に住み、4~5町歩(約4~5ha)の農地で年間150種の野菜を生産している伊藤氏は「暮らしの編集室さんとイベントを一緒に行っていますが、農業体験やイベントを通じ、もともと暮らしている方と新しい住民の方がつながることにお手伝いできることがすごくうれしい」と語り、獲れたての野菜を披露・プレゼントした。

 高橋氏は、北極星の意味を持つ「POLUS」をグループの社名にし、地域密着の事業を堅持している同社にとって「北本は『最北端』ではあるが、豊かな自然を生かした街づくりに皆さんの共感を得られたことに心が熱くなった」と締めくくった。

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フットパス

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フットパス

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提供公園「PLAZA」

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ハーブ類がたくさん植えられている提供公園「PLAZA」

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市有地の空き地(手前はトライアとして栽培されているサツマイモ)

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ポタジェ

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左から高橋氏、岡村氏、花形氏、江澤氏、伊藤氏、山下氏

◇                 ◆     ◇

 北本駅から現地まで徒歩13分。記者は人の倍かかるので、タクシーで駆けつけることにした。駅に着いたのは13:20分。見学会開始の13:30分は楽勝だと思ったのがいけなかった。待ち時間を計算しなかったのがいけなかった。20分以上待たされた。会場に着いたときは、関係者のスピーチは半分以上済んでいた。上段の記事は各氏のスピーチは同社から送ってもらったテープを起こしたものだ。

 以下の文章は、配布資料を全く読み込んでおらず、各氏のスピーチも聞いていない段階で、いきなり提供公園(PLAZA)に案内されたときの率直な感想を交えたものだ。驚きが伝えられているのではないか。

 酷暑・猛暑の中、どうしてどこにでもある、しかもそんなに広くもない提供公園を見なければならないのかと思ったが、関係者の話を聞くうちに、これは凄い取り組みになると確信した。

 提供公園-ほとんどすべての開発行為には提供公園を設置することが義務付けられている。開発行為の数だけ提供公園があるはずだ。

 提供公園は「都市公園」の扱いを受ける。公園を占用する場合や公園内での物販、イベントを行なう場合は許可が必要だ。さらにまた、「何人も、みだりに…①都市公園を損傷し、又は汚損すること②竹木を伐採し、又は植物を採取すること③土石、竹木等の物件を堆積すること」は禁止されている(都市公園法11条)。可能なのは落ち葉や銀杏などを拾うことくらいしかない(いま話題になっている神宮外苑は都市公園ではなく「都市計画公園」であることに要注意。そして、事業者が整備するのは公園ではなく「広場」)。

 ところが、今回の「PLAZA」は果実が食べられる樹木のほか10種くらいのハーブ・花を植え、地域の人も含めて収穫し、イベントなどを行っていくという。法令に照らし合わせればありえないことだ。「AMU」は公園ではないから、少し違うかもしれない。地域住民の自主的な自治活動を支援するために市有地を地域に開放し、野菜の栽培などを許可する大義名分はありそうな気がする。

 いずれにしろ、全国の自治体は事業者から提供される、ほとんど利用者がいない「提供公園」の維持・管理に頭を悩ましている。今回の取り組みはその難問解決に一筋の光を灯すことになるかもしれない。

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モデルハウス

◇      ◆     ◇

 岡村氏は「メディアの皆さんに対する留意事項なのですが、大学のスタンス・リーガルチェックとして、消費者の購買意欲を刺激するようなものに大学の名前を使ってはいけないと言われている。私どもが商品にお墨付きを与えるようなイメージでPRはしないで頂きたい」とも語った-このことについては深入りしないが、企業の思惑はともかく、大学の先生方もメディアも単なるプロパガンダ、〝広告塔〟になってはいけないという警句だ。

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伊藤氏が披露した獲れたて野菜(オクラ、ニンニク、キュウリ、白ナス、ナス、トマト、タマネギ、宿儺カボチャ、オカワカメ、コマツナ、ピーマン、トウガラシ、カボス、ゴーヤ、エダマメ…)

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伊藤氏から頂いた冷凍焼き芋と日光トウガラシ(トウガラシは昔懐かしい本物のトウガラシ。普通のスーパーにはまず並ぶことはない。少し口に含んだだけで数分間は後を引く。カレー、ぺぺロンチーノなどに欠かせない)

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