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2025/12/06(土) 12:58

循環可能な未来へ第一歩 三井デザインテック「CIRCULAR FURNITURE」提供開始

投稿者:  牧田司

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サーキュラーデザイン設計による家具

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 三井デザインテックは12月2日、設計から使用後の循環まで家具のライフサイクルに応じた資源循環を支援する業界初の新サービス「CIRCULAR FURNITURE」の提供を2026年4月から開始すると発表した。同サービスは、業界初の設計・製造、CFP※1 算出・DPP※2 実装・トレーサビリティ※3 から再資源化までを包括支援するもので、オフィスや宿泊施設などに設置される特注家具が対象となる。同社は将来的には家具のみならず内装空間全体のサーキュラリティを実現する「CIRCULAR INTERIOR」への展開を目指すとしている。

 新サービスを開始する背景には、国土交通省は2028年度から新築建築物に対し、建築物のライフサイクル全体を通じて発生するCO2など環境負荷を定量的に把握・評価する「建築物LCA※4制度」の導入を検討していることがあり、これに対応するため、三井不動産グループは2025年4月に「&EARTH for Nature」を策定し、“自然資源を循環させる” ことを重点テーマとしている。

 新サービスはそれを体現する一つの事業モデルとして位置づけられている。同社の試算によると、CFP削減量は51.02%で、原料の調達から製造-流通-消費に至るまですべての過程を追跡可能にするトレーサビリティを付加しているのが特徴。

 発表会で同社代表取締役社長:村元祐介氏は、「温室効果ガスの削減は喫緊の課題であり、三井不動産グループは今年4月、街づくりにおける環境との共生宣言『&EARTH for Nature』を策定しており、今回の新サービスはその具体的取り組みの一つ。国が2028年に国が導入を検討している『建築物LCA制度』にも対応するもので、トレーサビリティまで実現するのは極めて重要な取り組み」と語った。

 続いて登壇した同社執行役員クリエイティブデザインセンター長・山下薫治氏は「ソリューション力の向上と、デザイン力の強化を目的に2025年度にクリエイティブデザインセンター(CDC)を改編した。デザイン1部、デザイン2部と、サーキュラーデザインの業務を担うクリエイティブデザイン推進室の3つの部を設けた。本社オフィスをリニューアルするなどサーキュラーデザインの取り組みをすでに開始している」と話した。

 また、同社クリエイティブデザインセンタークリエイティブデザイン推進室長・堀内健人氏は、「CIRCULAR FURNITURE」の具体的取り組みについて以下の通り説明した。

 ①サーキュラーデザイン設計 脱炭素や循環のしやすさを追求した独自の設計ノウハウを「サーキュラーデザイン設計」として体系化しており、環境負荷を抑える家具づくりが可能

 ②環境負荷の見える化(CFP算出) サーキュラーデザイン設計によって製造される家具を、ISOに準拠した算出方法に基づき、対象製品と従来品のそれぞれのCFP算出を行い、比較が可能

 ③プロダクトパスポート化(DPP実装) 部材情報・CFP情報・メンテナンス方法・回収先情報などあらゆる製品情報をDPPとしてデジタルで一元管理。家具に付与されたQRコードから顧客はいつでも製品情報を確認できる

 ④トレーサビリティ DPPのQRコードを使用し、家具の回収依頼を容易に実現。各部材のリユース・リサイクル判断や、その部材を引き受ける企業とのマッチングを行い、回収された後にどのように家具が循環されていくか、現在のステータスを追跡する

 ⑤そのまま再活用できない部材の資源化 回収された家具のうち、再利用が難しい部材は分別・加工を経て新たな素材として再生され、次の製品づくりに活用されます。これにより、廃棄を最小限に抑え、家具の循環を完結させる

 堀内氏は、「トレーサビリティはこれまで誰も把握してこなかった。新サービスは小さな一歩かもしれないが、大きく広がり、連鎖することで循環可能な未来に向けた大きな一歩となることを期待したい」と語った。

※1 CFP(Carbon Footprint of Products):製品のライフサイクル全体において排出される温室効果ガスの総量を、CO2換算で数値化したもの

※2 DPP(Digital Product Passport):製品に関する様々な情報(環境負荷、素材、再利用・リサイクルの方法など)をデジタル形式で一元的に管理・共有する仕組み

※3トレーサビリティ:製品の原材料の調達から製造、流通、消費に至るまでのすべての過程を追跡可能な状態にすること

※4 LCA:ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)の略で、製品やサービスの原料調達から製造、輸送、使用、廃棄に至るまで、すべての段階で環境に与える影響を評価する手法

 発表会後はジョサイア・コンドルが設計した築112年の歴史的建造物である綱町三井倶楽部で懇親会を行った。

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QRコードをかざすと家具のあらゆる情報が入手できる

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左から村元氏、山本氏、堀内氏

◇        ◆     ◇

 各氏がトレーサビリティを強調したのに、記者は衝撃を受けた。もう20年も昔だ。企業の不祥事が相次いで起きていたころだ。当時、明治大学政治経済学部教授(政経学部長)・百瀬恵夫氏(現名誉教授)から「企業に求められるのはコンプライアンス(Compliance)、アカウンタビリティ(Accountability)、トレーサビリティ(Traceability)の3つだが、トレーサビリティが最も重要」と教わった。記者は頭文字からCATと覚えた。その後、今でも企業も政治家もトレーサビリティをあいまいにしている。何かが起きると〝知らぬ存ぜぬ〟を繰り返し、煙に巻く。

 サーキュラーデザイン(CD)については、昨年の同社の記者発表会で「2030年の家具はサーキュラーデザイン(CD)が標準になる」と聞いていたが、トレーサビリティ-つまり植林から伐採-運搬-製造までたどれるわけがないと思ったので、質問した。堀内氏は「家具は認証材を採用することにしているが、植林、伐採までは辿れない」と答えた。

 しかし、トレーサビリティに積極的に取り組む姿勢はとても重要だと思う。メーカーのニトリも積極的に取り組んでいるそうだ。あらゆる商品・サービスがトレーサビリティを徹底すれば、いい世の中になると思うが…。

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綱町三井倶楽部

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現地取材ではたまにしか会わないF社K記者(左)と、このような場しか出席しない、下戸の〝甘口記者〟J社S記者

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布田のが食べたケーキ(酒しか興味がない辛口記者は大好きなバランタインのロックを何杯も飲み、よく覚えていないのだが、右のケーキを食べさせられたような気がする。過去10年間でケーキを食べたのは今回が3度目くらい。今後、一切口にしないことを決めた。気持ちが悪くなり、麻布十番でうどんを食べた。ものすごくおいしかった)

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綱町三井倶楽部の対面に完成した1戸平均4億円、総戸数1,000戸の「三田ガーデンヒルズ」

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「三田ガーデンヒルズ」(S記者もそうかもしれないが、同社のもう一人の新米記者は、綱町三井倶楽部は初めてのようで、コンドル作であることも知らず、ターナーの油絵にも興味を示さず、三田ガーデンヒルズも全然知らなかった。記者は発表会の前に約40分間かけてこのマンションの周囲を巡った)

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