
「Nihonbashi e-LINER」
三井不動産は1月28日、舟運プロジェクト「&CRUISE」のメディア向け説明会&試乗内覧会を開催し、国内初の民間企業によるフル電動旅客船の定期航路「Nihonbashi e-LINER」を4月から日本橋-豊洲間で運行を開始すると発表した。
同社は船主として、日本橋を起点とした舟運ネットワーク構築に向け、三重県伊勢市の造船所で建造した、リチウムイオン二次電池を電源としたフル電動旅客船2隻を「Nihonbashi e-LINER」と命名し、観光汽船興業により運航事業を実施する。同船は東京都舟運活性化事業費補助金を適用する予定で、将来的には日本橋-築地-豊洲-羽田まで結ぶことも検討している。
「Nihonbashi e-LINER」は、「Edo」(舟運)」Experience」(体験)「Expand」(繫がり)「Emergency」(有事対応)「Ecology」(環境共生)の5つの「E」で始まるキーワードを合わせたもので、日本橋川沿いエリアのまちづくり「日本橋リバーウォーク」を象徴するデザイン、機能性を備えているのが特徴。
船体は全長17m、型幅4m、重さ17t。定員62名(うち2名は船員)。船室天井高は約190cm(高くないのは潮位変動に対応するため)。推進装置は永久磁石式水冷電動モーター・90kW・2基。給電時間は約3時間30分。運転最高出力は8ノット以上。航続時間は8時間以上(速力6ノット・空調機未使用・電池環境温度25度)。フリーWi-Fi、充電コンセント、バリアフリー対応、自転車積載可(船外2台)。365日100%航行可能(但し、異常潮位除く)。酒は可だが、タバコは不可。「アーバンドックららぽーと豊洲」に新設した給電設備により、実質ゼロエミッション船(CO2排出ゼロ)とする。
「日本橋リバーウォーク」は、日本橋川沿いの再開発区域とその周辺一帯を指すエリア名称で、このエリアでは首都高速道路日本橋区間地下化事業と現在5つの再開発事業が互いに連携し、空と川に開かれた街づくりを国・東京都・中央区・首都高・再開発事業者が連携し、地域一体の整備を進めている。開発区域を合わせた面積は約11haで、広大な親水空間を創り出すことで、日本橋・八重洲エリアが東京の“水都”としての新しい顔となることを目指している。
電気推進システムを監修した東京海洋大学・大出剛特任教授は「本船は、電気エネルギーのみで航行できる環境にも人にも優しい船としており、システムを分散することにより動力を失うリスクを抑制し、ますます増えていくエコシップの先端を走る船として期待できます」とコメントしている。

豊洲船着場(ららぽーと豊洲=左)と日本橋船着場(中央区防災船着場)

0夜の水上体験~水辺の夜景と調和するNihonbashi e-LINER のライトアップ

豊洲船着場隣接の給電設備(周辺にはここしかないのが課題)

船内
◇ ◆ ◇
「舟(船)」は、記者にとって日常だった。母が盆暮れに帰省する実家は、日本一美しいとされる宮川の支流・一ノ瀬川の近くにあった。渡し舟は重要な交通手段だった。記者の田舎も、伊勢湾台風で橋が流されたとき、しばらくは竹橋(10mくらいあったか)を利用して学校に通った。台風などの増水時は橋板が外されるので学校は休みになったり(あんな嬉しいことはなかった)、渡し船で通ったりした。姉が嫁いだ漁港では、漁船に乗り釣りを行い、サザエを獲った。尿意を催すと、船上から〝放水〟した。あんな楽しいことはない。夜中の漁漁も体験した。船酔いは二日酔いの比ではない。あんな苦しいことはない。
もう一つ、「舟」といえば小説だ。伊藤左千夫の「野菊の墓」の矢切の渡しであり、森鴎外の「高瀬舟」、メルヴィルの「白鯨」(丸山健二の作品の方が優れていると思う、「酔鯨」は高知の名酒)、小林多喜二の「蟹工船」、吉田満の「戦艦武蔵」、吉村昭の「戦艦大和」などがすぐ浮かぶ。映画では「戦艦ポチョムキン」「タイタニック」などがある。
そんなわけで、「舟運プロジェクト」の取材は、当たり前過ぎてスルーしようと思ったのだが、欠席するのも失礼かと参加することにした。
参加して驚いたのはメディアの数だった。40人くらいが駆けつけていた。関心が高いということだろうが、前日のポラスのマンション見学会は10人もいなかった。これは何だ。
三井不の女性担当者に「『野菊の墓』はいいですよ。少年少女の淡い恋を描いたもの。泣ける」と勧めたら、「その彼女、死んじゃうの」「そう」「そんなの絶対いや」
今は悲恋など流行らないのか。そんなことはない。船中で「船中八策」(高知のこれも名酒)を提供しながら、名作の読書会をやったら大ヒットするはずだ。あるいは、船中から左右に見えるタワマンが分譲された時の価格や市況、現在の中古価格を解説するイベントをやったら、申し込みが殺到するはずだ(記者は30~40棟のタワマンを取材している)。課題は船賃のはずで、ただ人を運ぶだけでは普及は進まないと見ている。「5つのE」をどう〝見える化〟するかだ。

メディア向け説明会(豊洲ベイサイドクロスタワー)
◇ ◆ ◇
今回の船の何が素晴らしいかといえば、静かで揺れも少なく、車椅子でも利用できる昇降機やバリアフリーのトイレなどもそうだが、船内はほとんど全てが再生材を利用していることだった。
客室座具は、高耐久ポリエステルテキスタイル、客室床面・操舵席床面は、廃棄漁網や使用済みペットボトルなどを再利用した100%再生カーペット、壁面はほぼ100%リサイクルが可能なエコ建材などだ。
さすが三井だ。コストを聞くのを忘れたが、マンションにこれらを採用したら大爆発する。壁は高級材の布クロスとほとんど変わらない。グルーフの三井デザインテックは「CIRCULAR FURNITURE」の提供を開始したが、この種の取り組みでは同社が先頭を走っていることを確認した。他社も頑張れ。三井に負けてどうする。
とにかく、取材は大正解だった。伊勢市に造船所があったのもよく知っている。神鋼電機(現シンフォニアテクノロジー伊勢製作所)に勤めていた人がたくさんいた。造船所も頑張れ。〝船は帆で持つ帆は船で持つ〟

試乗した「Nihonbashi e-LINER」(ららぽーと豊洲で)

昇降機(左)とバリアフリートイレ

船内の仕上げはほとんど再生材(記者もそのうち再生可能なロボットに代わられるか)

船中から豊洲、月島方面を望む
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