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 大和ハウス工業は11月21日、二部構成の「戸建住宅事業 計画説明会」を開催し、第一部では取締役常務執行役員住宅事業本部長・永瀬俊哉氏が戸建住宅市場動向、前期の総括、「第7次中期経営計画」の進捗状況、今後のテーマである分譲住宅の強化、木造戸建住宅の拡充、カーボンニュートラルなどについて説明し、第二部では木造戸建住宅新商品「xevo BeWood(ジーヴォ ビーウッド)」初の実棟「セキュレア西大宮V」のモデルハウス見学会を行った。分譲住宅は「木造」に舵を切り、大幅に増やすという方針に記者は驚いた。第一部と第二部の2回に分けて紹介する。

 まずは第一部から。永瀬氏は次のように語った。

 経営数値と事業環境については、米国戸建住宅が好調に推移していることから2023年度計画は売上高9,000億円)うち海外4,321億円)、営業利益340億円(同243億円)、営業利益率3.8%を予想。国内戸建市場については、「持家」着工が22か月連続でマイナスとなっており、建築費高、資源高、労働時間制限もあり、今後も厳しい市場が続くと予想した。

 今後の戸建住宅事業については、米国戸建を現在のほぼ倍増の10,000戸に増やし、国内分譲住宅は土地なし顧客にも訴求する「企画商品」「セミオーダー商品」やNearlyZEH仕様の新商品「Comfort Wood(コンフォード・ウッド)」などを投入。販売棟数は2022年度実績の5,762棟(請負:4,191棟、分譲1,571棟)から2027年度には10,000棟(請負:3,000棟、分譲7,000棟)に拡大する。

 永瀬氏はまた、カーボンニュートラルの取り組みを強化するため、現在、鉄骨造と比較して圧倒的に小さい木造分譲住宅比率を拡大し、現在、分譲戸建ての鉄骨:木造比率で7%しかない「木造」を「分譲は全て木造にしたいくらい」と語った。競争力を高めるため鉄骨系と同じ910モジュールを採用し、施工の効率化を図ることでコストを抑制するとともに、長期保証、ZEH仕様などにより「注文住宅と分譲住宅のいいとこどり」を叶える価格以上の価値がある住宅を供給すると述べた。

基本性能・設備仕様は素晴らしいが…課題も 大和ハウス「セキュレア西大宮V」

カテゴリ: 2023年度

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ISLAND」と名付けられた6階(緑は一部がフェイク)

三菱地所は119日、メディア向け「本社オフィス体験・懇親会」を開催した。20181月に本社機能を「大手町パークビルディング」に移転してから実証実験的に様々な取り組みを行い、その成果を踏まえ、今年6月に大規模リニューアルした6階部分を公開し、その後は3階のカフェ「スパークル」で懇親会を行った。

「大手町パークビル」は20171月に竣工した29階建て延床面積151,700㎡。本社移転は20181月で、36階部分の約3,600坪(1フロア約1,000坪)で、従前の「大手町ビル」などから約20%削減し、共用スペースの割合は従前の約10%から約30%に増床。移転当初の社員数は約800名、座席率100%(現在の社員は約1,100名、座席率80%)。

この結果、紙力枚数を約50%削減、キャビネット本数を約70%削減、会議室稼働率は42%から68%へアップし、生産性は3.8%向上した。また、ペーパーストックレスを実施し、各部署の所有キャビネットを50.6%削減した。

本社移転後の社員アンケートでは、本社ファシリティ満足度は90%の人が上ったと答えたほか、偶発的なコミュニケーションは88%の人が増え、会議は効率化されたと思う人は89%、企業風土が変わると答えた人は86%、新しいアイデアが生まれやすい環境になったと思う人は71%に上った。

その後の調査でも、自席執務環境満足度は74.5%を占めるなど社員の高い評価が継続していることが分かった。ディスカッション特化型ルームの利用件数は1.6倍に増加した。また、平均在館率は2018年の78.0%から2023年には56.3%に減少、本社共用スペース利用率は7.6%から4.8%へ減少した。

こうした働き方の変化や利用実態を踏まえ、「ISLAND」と名付けられた6階は「知のシンカ」「リラックス」の行動(Do)と、「Wellbeing」の状態(Be)を掛け合わせる空間にリニューアルした。

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3階オフィス

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 同社の本社オフィスを見学するのは、大手町パークビルが完成した2017年と、2年後の2018年に続いて今回が3度目だ。

 同社ビル営業部担当部長FMコンサルティング室長・竹本晋氏の説明&案内はとても面白く、中身の濃いのはよく分かったが、時間は約40分しかなく、耳も遠くなっていることからよく呑み込めなかった部分も多かった(その前の野村不動産の記者懇の酒は関係ない)。

ISLAND」で印象に残ったのは、全フロアに配置されていたヤシノキの鉢から波の音などが聞こえ、ガラス張りだが外の人の動きなどを気にしないで済むよう特殊フィルムを張った空間「AQUARIUM」、移転直後はフェイクグリーンだらけだった「VILAGE」はほとんどが本物の緑に変わっていたことだ。

3階のカフェでは、通常は330円のクラフトビール「MARUNOUCHI」(製造はわが故郷の角谷麦酒)も220円の「ASAHIビール」も火曜・水曜日は100円で飲めるのに驚いた。缶ビールの税金は63.35円のはずで、税金の値引きはできないから、同社が負担するということか。懇親会ではビールはもちろん、軽食も振舞われたが、移転後の見学会で頂いたとても美味しかったトマトはなかった(値段が高くなったためか)。

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ISLAND

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AQUARIUM」

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本物の緑がびっしり配された「VILAGE

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本物の緑がびっしり配された「VILAGE

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懇親会場の「夜カフェ」メニュー

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 上段のBeforeAfterの数値は予想できたことだ。へそ曲がりの記者は一つくらいマイナスになったものもあるはずだと考え、見学前に同社が公表しているESGデータのうちS:社会データを調べた。

 ダイバーシティ関連では男性育休取得率は2018年が21.2%だったのが2022年は110.6%と飛躍的に増加しており、女性管理職比率も2018年の5.5%から2022年は7.3%に上昇。従業員満足度(ES)/高評価割合は84.588.5%と高水準で推移している。

 健康経営関連はどうか。社員を対象にしたメタボハイリスク層の割合は1019年の36.4%から年々上昇しており、2021年は42.3%に増加(2025年目標は25.6%)。健康層の割合(40歳以上の従業員が、定期健康診断において、生活習慣病の判定に影響する項目の全てが正常値の範囲内の人の割合)は20182021年は10%前後で推移している(2025年目標は20.85%)。高ストレス者は2019年の5.5%から2021年は4.0%に下がっており、全国平均の10%をかなり下回っている。

 その他のデータでは、従業員欠勤率は1%を下回り、ボランティア活動費補助利用人数は2018年の16人から2022年は70人へ激増。人権、セクハラ、男女差別などはない。従業員の平均賃金は2018年の約1,248万円から2022年の約1,246万円へ横ばいとなっている。

 皆さん、いかがか。小生が読んだ通りマイナスになっている項目があった。メタボハイリスクと健康層だ。

 メタボハイリスクだが、これは労働環境の変化というより、コロナ禍で家から外出する機会が減り、食事を摂る時間が不規則になったり間食なども増えたりした結果ではないかと思うが、「メタボ」=「悪」という考えに小生は反対だ。メタボのどこが悪いのか。小生は成人男性より3割近く体重が軽く「痩せ」の部類に入る。腕相撲も女性に負ける。おまけに糖尿だ。それがどうした。人の生き死にを他人がとやかくいうべきはないと思う。

 健康層の割合が10%前後ととうのはやや驚いた。オフィス空間の快適性との因果関係はないだろうが、これは考えたほうがいいと思う。

 もう一つ、竹本氏に考えて頂きたいことがある。フェイクグリーンと本物の緑の併用についてだ。つい先日見学した御社の「ザ・パークハウス上野毛テラス」は全戸全居室の床は無垢フローリングだった。ぜひ見ていただきたい。やはり本物がいい。小生は、本物とフェイクを併用した場合は、本物の効果は半減すると考えている。学術研究もあるはずだ。「ザ・パークレックス天王洲」にはフェイクはひとつもなかったはずだ。

 最後に、同社の皆さんに朗報。RBA野球大会の東京ドーム決勝戦(11月22日0:00~)に三菱地所チームはエース&主砲の社が頑張り、実に28年ぶりに進出することが決定した。これも本社移転の効果の一つではないか。

全戸全居室に無垢材フローリング&ZEH認定 三菱地所レジ「上野毛テラス」(2023/11/10)

 

三菱地所、社-柴田の継投決まる 鹿島建設は10残塁 再三再四の好機逸(2023/10/22

 

三菱地所 王者ケンコーポを破る 社が投打に活躍 ケンコーポ上松 初回に連打浴びる(2023/7/10

自然と共生するワークスペース「コモレビズ」実装した「ザ・パークレックス天王洲」(2022/7/27

有休取得10%増、会議減り、コピー、文具購入ほぼ半減 三菱地所 本社機能移転効果(2019/1/24

三菱地所の本丸を見た 機能一新 士気高揚 トマト最高 地所が新本社公開(2018/2/12

皇居に隣接三菱地所 最高級Sクラスの「大手町パークビルディング」竣工(2017/2/14

カテゴリ: 2023年度

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野村不動産グループ記者懇親会(京王プラザホテル東京)

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新井氏

 野村不動産ホールディングスは11月9日、グループ記者懇親会を開催した。2部構成で、1部では同社代表取締役社長兼社長執行役員グループCEO・新井聡氏があいさつし、同社代表取締役副社長兼副社長執行役員グループCOO・松尾大作氏が役員紹介とグループ事業について説明した。2部では18名の役員と報道陣が懇談した。新井氏は次のように語った。

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 当社グループに加わって1年半が経過した。この間、事業を取り巻く環境は大きく変化し、先行きが見通せない厳しい状況になっていることを肌で感じている。

 当社グループは業界の中でどのような位置にあるかだが、1年半だからこそ客観的に見えている。かなりいい位置、いいポジションにいるのではないかと感じている。

 例えば住宅。金利上昇懸念はあるが、〝プラウド〟を買っていただくような客さまは賃金上昇、資産価値の上昇といういい効果が生まれており、金利上昇を打ち消すのではないかと思っている。

 オフィス、物流についていえば、われわれは長い間賃貸バリューチェーンモデルを追求してきたわけだが、そのようなモデルがこれから先行き不透明な中でリスクをコントロールしながら投資を続けられる可能性につながっている。

 バブル崩壊で中止していた海外事業は、再開してまだ10年経過していない。これから事業量を増やしていくことになるが、他社よりも遅れて再開した分だけ大きなチャンスもあると考えている。

 しかし、このようなよいポジションにあるいるというだけでは持続的な成長は望めない。大事なことは二つある。一つは、環境が大きく変わり、先行きが見えない中でしっかりと挑戦をし続けること。

 二つ目は、われわれシニアマネジメントを中心として的確な判断を行っていくこと。的確な判断をタイムリーに行っていくために大事なのは、独りよがりの判断ではなく、お客さま、株主など数多くのステークホルダーからご意見、お考えを聴きながら、判断の精度を高めていかなければならないということ。

 実は、皆さまメディアも大事なステークホルダー。環境の変化についてよく認識されており、業界動向にも気を配られている皆さんから意見を賜れるのは本当にありがたいこと。ご質問もありがたいが、できれば有益な意見交換の場にしたい。

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 懇親会で何が嬉しかったかといえば、新井氏がかなりの時間を割いてメディアは大事なステークホルダーであり、有益な意見交換の場にしたいなどと三顧(度)の礼を尽くされたことだ。

 これは期待に応えなければならないと、しこたま酒を飲み胃を洗った。あまりにもピッチが速かったためか、注ぐのが面倒だったためか、ホテル担当者は最後はグラスを2つ置いていった。周りを見渡したら、メディア関係者で酒を飲んでいたのは小生くらいだった。

 マンションや戸建てのことなら少しは意見をいえたが、18人の役員の方が入れ代わり立ち代わり席に来られ立ち去られたので、その時間が少なかったのは残念だった。

 

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大和ハウス工業は1026日、住宅・建設・不動産業界メディアの取材の参考になるための「業界動向勉強会_公園事業・パークマネジメント篇(大和リース)」を開催し、大和リース代表取締役社長・北哲弥氏と、ParkPFIにより同社が運営管理する大阪市の鶴見緑地パークセンター長・池田昂志郎氏が質疑応答を含め約1時間にわたって熱っぽく語った。記者はオンラインで視聴した。

北氏は、「リース会社といえば、親会社の商品をファイナンスリースするのがほとんどだが、当社は親会社にリースするのではなく、自社工場で商品をつくり、外販している。技術者が多いのも特徴で、一級建築士と一級施工管理技士で574名(全従業員の約24%)を数える。20233月期の売上高は2,413億円。建設会社の売上高ランキングは大和ハウス工業が2位、フジタが9位だが、当社も21位。グループ内の売り上げは3%くらいで、全てグループ連結の売上に貢献している。

事業は規格建築事業、流通建築リース事業、リーシング ソリューション事業、環境緑化事業の4本柱で複合展開しているのが強み。公園事業は官民の連携、両輪、両立を目指しており、現在稼働中の公園事業は全国27か所。向こう10年間で100か所に増やす目標を掲げている」などと話した。

池田氏は、2017年に改正されたPark-PFI(公募設置管理制度)によって、収益施設の設置管理許可年数が10年から20年に延長され、建ぺい率は2%から12%へ緩和され、公園施設を整備する際の設置管理許可期間は10年から30年へ、保育所、学童クラブ、老人デイサービスセンター、障害者支援施設なども設置可能になったことなどを説明。

Park-PFIは、現在全国131か所で活用されており、企業別実績では、同社は102件のうち12件を占めるなど、3件以下の2位を大きく引き離して全国一であることを報告した。

一方で、都市公園は急速な人口減少と高齢化、税収減、維持管理費の負担増など多くの課題を抱えており、2003年に導入された指定管理者制度による民間管理公園は全国13,319か所に上っているにも関わらず、現状の維持管理を委託しているに過ぎないなどと指摘。Park-PFIで公園が利益追求する空間となり、公園の価値が低下することに懸念を示した。

同社の公園事業の基本は①OfficialCommonOpenであり、公園整備のマニュアルとして①緑地面積を減らさない②寂れさせない工夫③空間化との創出を掲げ、「『公園』は社会的共通資本であることを理解し、『公の精神』をもって臨むこと」などの5カ条の心得を公表した。

           

記者はこれまで、街路樹だけでなく都市公園についてもその都度、記事にしてきた。親は〝公園は危ないから遊んではダメ〟と言い、子どもは習いごとに忙しく遊ぶ暇もないのだが、それに追い打ちをかけるようにキャッチボール、サッカー、ゲートボール、ゴルフ、大声、楽器演奏、ごみ捨て、花火、犬の散歩、喫煙、飲酒、果実の収穫…を禁止する自治体がほとんどで、中には砂場はネコの侵入を防ぐための防護ネットを張り、利用時間は平日の9時から午後4時まで、土・日曜日は閉園するところまである。

全く利用されず雑草が生い茂っていても苦情は出ないのか、放置されている公園も多い…地価にしたら1種数十万円、数百万円もする都市公園の惨状に心を痛め、それを解消するPark-PFIに期待もしてきた。

同社の話を聞いて、頭をどやされたような気がした。同社のことを全く知らなかったのだ。どこかで建設機器など調達し、高い利率でリースする会社だと思っていた。不明を恥じるばかりだ。

記者団からの売上高についての質問に、北氏は公園事業の売上高はほぼ30億円としながら、「単年度で考えているわけではない。20年の長いスパンで考えている」と語り、「認知度を高める必要性」については「看板を掲げているわけではない」と受け流した。

小生は、情報発信力を高めるべきだと思うが、売上高の多寡は問題ではないと思う。グループ全体の売上高4.4兆円(20233月期)からしたら公園事業は0.07%にしか過ぎない。「公の精神」はお金に換算できない価値がある。その精神はやがて花を咲かせるはずだ。

池田氏が公園の過度な商業施設化に懸念を示したことにもドキリとさせられた。つい先日見学した桶川市の公園入り口に設置されているブロンズ像の台座には真実かどうかみんなに公平か行為と友情を深めるかみんなのためになるかどうか-の4つのテストが彫り込まれていた-これにイエスと答えられる人はどれほどいるか。

不審者、立入・火気禁止、強剪定荒んだ世情の表れ 桶川駅の街路樹は泣いてい(2023/10/28

「多摩中央公園改修」の疑問氷解 樹木5000 うち伐採予定1125本の8割は生木(2023/10/21

〝喬木は風に折らる〟誤解解く取り組みの見える化急げ「神宮外苑地区まちづくり(2023/10/17

〝ぶっ飛んだみどり〟だけでない 「グラングリーン大阪」タワマンに絶句(2023/10/12

長野市の公園問題 制度疲労の法、希薄な人間関係、報道姿勢社会課題を露呈(2022/12/23

公園が旅の目的になる わが国初のPFI事業 三菱地所他「光と風の広場」開業(2022/3/11

若い人で溢れかえる 「立体都市公園制度」を活用した三井不「MIYASHITA PARK」(2020/9/6

相模原市初の「児童公園(街区公園)以外の提供公園第1号」 トーセイ「相模原」(2020/8/7

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住友不動産は1017日、インド現地法人を通じて同社単独でインド最大の経済都市・ムンバイの中心部の約8万㎡の超高層複合開発用地を795億円(1.7/ルピー)で取得したと発表した。

物件は、リッツカールトン・セントレジス・フォーシーズンズなどの五つ星ホテル、富裕層向けのタワーマンション、外資系一流企業が入居するオフィスビルや高級ショッピングモールなどが密集し、職住遊が近接するムンバイ「ワーリー地区」の中心部に位置。同社は今後、総事業費5千億円規模・総延床100万㎡超の日本企業によるインド過去最大の都心再開発となる超高層複合都市開発プロジェクトとして2030年代の全面開業に向けて事業を推進していく。

ムンバイを擁するマハラシュトラ州は、日本とほぼ同じ約12,600万人の人口を抱えるインド全州で最大の経済規模を誇り、州都ムンバイの市域人口は約1,840万人。古くから港町として栄え、中央銀行や国立証券取引所(NSE)、証券取引委員会、各銀行の本店、各国の商工会議所が立地するなど、アジア有数の金融センターとして知られている。1人当たりGDPはインド全州でもっとも高い都市。

同社はこれまで、20197月にムンバイの新都心BKC1号案件として地区最大級のオフィスビル用地(約12,486㎡、延べ床面積約13万㎡)を380億円で取得、202211月にはBKC2号案件としてオフィスビル用地(約11,885㎡、延床面積約13万㎡)を351億円で追加取得。双方合わせて総延べ床面積は約26万㎡。用地はそれぞれ80年の借地権付き。現在、1号案件は建築工事中で、2号案件も今年8月に土地引き渡しを受け、地下工事着手に向けて許認可手続きを進めている。2026年以降に順次竣工させる予定。

ムンバイBKC地区の優良オフィスビル賃料は東京都心並みの水準であり、投資効率は東京で取引されている収益不動産の3倍以上の利回りが期待でき、今回取得したワーリー地区の開発地は、①割増容積取得により床面積当りの土地代はBKC物件のほぼ半値まで低減させられること②用途制限がない大規模複合開発が可能な完全所有権の土地であることなどから高い収益性が期待できるとしている。

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 国内のオフィス賃貸のことですらよく分かっていないので、海外、ましてやインドのことなどさっぱりわからないが、規模の大きさと収益性の高さに驚愕した。今回取得した用地の延床面積は100万㎡を超えるというではないか。約553,000㎡の「TOKYO TORCH Torch Tower(トーチタワー)」の2倍だ。

 リリースによると、IMF(国際通貨基金)によるインドのGDP(国内総生産)は、2021年にイギリスを抜いて世界5位となり、2027年には日本とドイツを抜いてアメリカと中国に次ぐ世界3位の経済規模になると予測されている。

三菱地所 インドに初進出 350億円(同社持分50%)のビル事業に参画(2023/8/22

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植田氏

 三井不動産は10月17日、脱炭素社会実現に向けたグループ行動計画(ロードマップ)をまとめ、新たな目標として2030年度の温室効果ガス(Green House Gas)排出量削減率を40%へ引き上げ、国内全ての新築物件でZEB/ZEH水準の環境性能を実現し、木造賃貸オフィスビルの建築、新しい暮らしの提案「くらしのサス活」提案、再エネ活用、電力グリーン化を国内全施設へ拡大すると発表した。

 同社は2021年、同社グループの温室効果ガス(GHG)排出量の2030年度削減目標を2019年度比で35%にすると発表していた。今回はそれを40%に引き上げた。

 また、2050年度のカーボンニュートラルを見据えて、メガソーラー事業を約5倍に拡大し、洋上風力・地熱など創エネ事業、東京大学などのアカデミアや建設会社との研究開発、ベンチャー企業への出資や、実証実験の場の提供など新技術創造に向けたオープンイノベーションの推進、建設時CO2排出量削減の取り組みや森林活用など、サプライチェーン全体での脱炭素に向けたパートナーシップを強化することを明らかにした。

 記者会見に臨んだ同社代表取締役社長・植田俊氏は「ESGは経営そのもの。待ったなしだ。地球を素材にしているわれわれデベロッパーの責任は重く、川上から川下までを結び付けるプラットフォーマーの当社の役割はさらに重要度を増す。社会的価値、経済的価値、企業価値は同質であり、それを追求していく」などと語った。 

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 植田社長は会見の冒頭で「社長に就任してから初めての会見」と前置きしたように、今回の会見でもっとも注目したのは植田氏が何を語るかだった。

 大きな収穫があった。植田氏は「カーボンニュートラル実現に向けた三井不動産グループの街づくりについて」話したのだが、質疑応答の場面でテキパキと記者団の質問に答え、時間があれば延々と話すのではないかという印象を受けた。〝話し好き〟は歴代社長の誰と比較しても引けは取らないと確信した。(つい先日の10月10日、同社の記者懇親会が行われ、冒頭に植田社長が挨拶を行ったのだが、「記事にはしない」という縛りがあったので、メモはしたが記事にはしなかった)。

 以下は、同社の歴代社長の社長就任時の年齢と就任期間だ。

故・江戸英雄氏(明治36年7月17日生)52歳 18年6か月(昭和30年11月~昭和49年5月)
故・坪井東氏(大正4年5月1日生)  59歳 12年1か月(昭和49年5月~昭和62年6月)
故・田中順一郎氏(昭和4年9月28日生)57歳 11年(昭和62年6月~平成10年6月)
岩沙弘道氏(昭和17年5月27日生)   56歳 13年(平成10年6月~平成23年6月)
菰田正信氏(昭和29年6月8日生)         57歳 11年10か月(平成23年6月~令和5年3月)
植田俊氏(昭和36年2月16日生)    62歳      (令和5年4月~)

 記者が同社恒例の記者懇親会に出席するようになったのは昭和50年代に入ってからだ。記者懇は、まず坪井社長が挨拶に立ち、続いて江戸会長が乾杯の音頭を取って始まる。それぞれ話す時間は20~30分はあった。いざ乾杯の段階になると、コップのビールの泡は消え、用意されたビール瓶は汗だく状態で、コップに注がれると泡だらけになり、熱燗は冷酒に、冷酒はぬる燗に変わっていた。新米の記者は社長、会長の挨拶を細大漏らさずメモした。それだけで疲れ果てたのを思い出す。それ以来、同社の社長、会長の挨拶が長いのは伝統となった。多少短くなったのは岩沙氏あたりからか。

 植田氏については、昨年12月9日に行われた社長交代の記者発表会で、記事の見出しにもとった「産業デベロッパー目指し、日々妄想」の簡にして要を得る強烈なメッセージを発したのを忘れない。

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 三井不動産レジデンシャルは10月17日、住宅におけるペロブスカイト太陽電池の活用に関する共同研究を開始したと発表した。

 京都大学発のスタートアップでペロブスカイト太陽電池の開発を手掛けるエネコートテクノロジーズと連携するもの。ペロブスカイト太陽電池は2009年に日本で発明されたもので、①20%以上の高い発電効率②薄い・軽い・曲がる③少ない工程で製造が可能などの特徴があり、実用化に向けて世界中で開発が進んでいるという。

 今年度中にペロブスカイト太陽電池を同社が供給するマンションの共用部分におけるデザイン性の高い照明や家具、居室内のインテリアへ設置し、日中の太陽光を蓄電し、夜間利用などへの活用を予定している。

「産業デベロッパー目指し、日々妄想」植田俊・三井不動産次期社長(2022/12/11)
 

 

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 三井不動産は10月10日、生成系AIを活用した自社特化型AIチャットツール「&Chat(アンドチャット)」を開発し、全従業員約2,500人を対象に2023年8月より運用を開始したと発表した。10月下旬からアイデアソンによりプロンプトのアイデアの社内公募を開始する。

 「&Chat」の導入により、社員は文章の要約や翻訳、アイデア出しなど日常業務の効率化が可能になる。「&Chat」と社内データとの連携を進め、一層の業務効率化を図り、顧客の問合せ対応への活用も検討する。

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〝AIと鋏は使いよう〟だ。生成AIの活用は加速度的に進みそうだ。添付した記事を読んでいただきたい。メディアリテラシーに欠ける記者も職を失うはずだ。

Cf. 女性記者が書いた野球記事と小生の下品で拙劣な記事(2023/10/6)

 


 

 

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 住友不動産は10月2日、グロービスと連携してユニコーン企業を育てるインキュベーションオフィス「G-STASQUARE」を「住友不動産虎ノ門タワー」内に10月1日オープンしたと発表。両社がタッグを組み、スタートアップ企業が抱える課題の解決に貢献し、さらなるスタートアップエコシステムの強化を推進していく。

 「G-STASQUARE」は、銀座線虎ノ門駅から徒歩4分(日比谷線虎ノ門ヒルズ駅から徒歩3分)の「住友不動産虎ノ門タワー」の2階に位置。オープン席100席超、ボックス席(6名利用)6ブースからなり、法人登記が可能で、同社とグロービスが共同開催する定期交流会を開催し、同社が運営する230棟超のオフィスビルに入居するテナントや取引先とのビジネスマッチングを行う。

 同社は今年1月から「虎ノ門サミット」と銘打ったピッチイベントを開催しており、これまで6回、延べ参加は732社、1,196名となっている。「虎ノ門サミット」の集大成として10月24日、新宿住友ビルの三角広場で「住友不動産ベンチャーサミット」を開催する。

 グロービスは2019年4月、ユニコーン企業を100社輩出するプラットフォーム構築を目指す「G-STARTUP」を開始しており、採択企業と同社双方の合意に基づく「G-STARTUPファンド」の累計投資先総数は40社以上となっている。

 

カテゴリ: 2023年度

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積水ハウスは98日、2023年度2Q経営計画説明会を開催。同社代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は「2Qの営業利益1,249億円は、突出して高かった前期(1,464億円)に次ぐ過去2番目。下期は利益率の高い3rdレンジの戸建住宅の受注残も潤沢で、他のセグメントもすべてオンラインで推移しており、通期目標を達成できると考えている」と説明した。また、2026年度以降の第7次中期計画の布石としてスタートさせた「life knit design」や「SI事業」に注力していくと話した。

20241月期第2四半期決算は、売上高14,624億円(前年同期比2.7%増)、営業利益1,249億円(同14.75減)、経常利益1,252億円(同15.2%減)、当期利益924億円(同11.15減)となった。2024年1月期の業績予想の変更はない。

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仲井氏

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 別表・グラフは、同社の戸建住宅の売上高、売上棟数、1棟単価、坪単価の推移を見たものだ。売上高は、このところの厳しい市況を反映してほぼ横ばいで推移している。売上棟数も同様に、2020年以降は1万戸を割り込んでいる。それでも持家の着工戸数が今年7月まで20か月連続して減少し、減少幅も令和4年度は前年度比11.8%減と2ケタ減となっていることを考えると大健闘といえる。

 営業利益率は資材価格の高騰などから2022年2Qの9.5%から2023年1Qは5.9%へ3.6ポイント落ち込んだが、その後は工場出荷の平準化・価格転嫁が進み、2023年度通期では前年比0.4ポイント増の9.1%を見込んでいる。

 注目すべきは1棟単価だ。2023年度2Q4,885万円となっており、2018年度の3,875万円から約1,000万円、26.1%上昇している。同社は販売価格別で3,000万円未満を1stレンジ、3,000万円から5,000万円未満を2ndレンジ、5,000万円以上を3rdレンジに分けているが、受注棟数比率では2021年度の1stレンジが9%、3rdレンジが22%であったのに対し、20232Q時点では1stレンジは3%、3rdレンジは30%となっているように、ZEHの推進(2022年度のZEH比率は過去最高の93%)、スマートホームサービスなどバード・ソフト・サービスの融合が奏功している結果だ。

もう一つ、土地なしの2ndレンジ、3rdレンジの顧客向けの土地分譲事業の伸びにも注目したい。積水ハウス単独の土地分譲事業は2020年度の売上高は429億円だったのが2022年度は575億円と伸び、2023年度2Q2022年度比59%にのぼり、積水ハウス不動産グループの仲介・不動産事業も2020年度の784億円から2022年度は1,634億円に増加している。1stレンジ顧客向けについて仲井社長は、「政府が求めている断熱性や耐震性の高い住宅を1,000万円台で作るのは難しい」と語った。価格ありきの建売住宅市場には参入しないことを改めて表明し、「SI事業」や「ノイエ」を強化するということだろうと受け止めた。

残念だったのは、記者の取材守備範囲である分譲マンションについて、歴代の社長もそうだったように、仲井社長は一言も言及しなかったことだ。記者団から質問する人もいなかった。

2023年度の売上高予想30,800億円のうち約3.6%、1,100億円でしかないマンション事業について触れないのは当然だし、メディアの方々も関心がないのかもしれないが、記者が先日見学した3階建て全674戸の「The山手プロジェクト」には触れてほしかった。マンションデベロッパーのそれとはまったく異なる商品企画が見事だった。

建ぺい率40%、容積率80%の1低層に全6棟 積水ハウス「The 山手プロジェクト」(2023/9/5

〝生活を紡ぐ(life knit)〟積水ハウスの新提案モデルハウス「HUE(ヒュー)」(2023/7/27

 

カテゴリ: 2023年度

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「日本橋室町三井タワー」(左)と「日本橋三井タワー」

 三井不動産は96日、「日本橋室町三井タワー」と「日本橋三井タワー」の2物件に係るリファイナンスを資金使途とする総額1,000億円のグリーンボンドを発行すると発表した。

グリーンボンド発行は、20236月の「東京ミッドタウン八重洲 八重洲セントラルタワー」、「Otemachi One タワー」、「日本橋室町三井タワー」に続く5回目となり、グリーンボンドを含むサステナブルファイナンスの累計額は7,000億円超となり、国内不動産会社として最大規模となる。

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