
吉田氏(「虎ノ門ヒルズ森タワー」で)
ドキュサイン・ジャパンは9月8日、「事業戦略説明会兼新オフィス内覧会」を実施。同社取締役社長・吉田浩生氏は「すべての合意を力に、日本の可能性を切り拓く」をミッションに掲げ、様々な部署・部門に分断されている契約業務を一気通貫で完結するプラットフォーマーになると語った。同日、AIを活用した契約管理の新機能「Docusign AIアシストレビュー」「Docusign AIエージェント」「Docusign MCPサーバー」の3機能を日本市場向けに2026年度内提供開始すると発表した。
説明会で、吉田社長は「わが国の契約業務は各部門に分断されており、全体最適にはなっていない。契約書の電子化は進んでいるが、デジタル化が遅れている。電子化とデジタル化は似て非なるもの。Docusignは、わが国をIAMのリーディングカントリーとして位置付けており、当社はAIを活用し、日本独特の商習慣も重視しながら一気通貫で課題を解決するプラットフォーマーを目指す」と強調した。
今回の発表で注目されるのは、単なる契約業務の効率化にとどまらず、契約を「経営に活用できるデータ」として捉え直そうとしている点だ。
日本企業では、成長戦略の実行とガバナンス強化を同時に求められるなか、契約に含まれるリスク、義務、更新期限、コストなどの情報を、日々の業務や経営判断にどう結び付けるかが重要な課題となっている。電子署名によって締結までの時間を短縮しても、締結後の契約を人手で管理し、必要な情報を都度確認しているのでは、契約データが企業活動に十分生かされているとはいえない。
ドキュサインが推進する「インテリジェント契約管理(IAM)」は、契約書の作成、レビュー、締結から、その後の管理までを一元化し、AIによって契約ライフサイクル全体を支援する考え方だ。同社は2025年4月から日本でIAMプラットフォームの提供を開始しており、電子署名を導入済みの企業が、契約管理全体の効率化や契約情報の経営活用へと利用範囲を広げるケースも増えているという。
今回の3機能は、この方向性を具体的な業務に落とし込むもの。「Docusign AIアシストレビュー」は、契約書のレビューをAIが支援する。リスクのある条項や注意すべきポイントを検出することで、法務担当者が大量の契約書を一から確認する負担を軽減する。ただし、AIが最終判断を下すのではなく、利用者による確認、修正、承認を前提としている。すでに複数の日本企業がパイロット利用している。
「Docusign AIエージェント」は、契約ワークフローとAIエージェントを連携させ、契約業務の次のアクションを支援する。たとえば契約更新が近づいた際、関連情報を整理し、担当者に対応を促す。従来、人手に頼っていた期限管理や情報収集を自動化しつつ、組織の権限・承認ルールに沿って人が確認する仕組みを維持する点が特徴だ。
そして「Docusign MCPサーバー」は、外部のAIツールや業務環境からDocusignの契約データにアクセスできるようにする。たとえば、AIツールに「この取引先との契約更新期限はいつか」と尋ね、Docusign上の契約情報をもとに回答を得るといった利用が想定される。認証と権限設定を前提とし、Claude Desktop、GitHub Copilot、Google Gemini CLI、Microsoft Copilot Studio、Slackbotなどへの対応が予定されている。
企業側から見ると、これらは「AIに契約を任せる」ための機能ではない。むしろ重要なのは、AIを活用しながら、人による判断と承認、権限管理を組み合わせることで、契約業務のスピードとガバナンスを両立させる点にある。
さらに、日本語契約書から必要な情報を抽出する「Custom Extractions(カスタム抽出)」の日本語対応も2026年中の一般提供開始が予定されている。契約類型や業界ごとに異なる日本企業の契約情報を構造化し、AIや業務システムから利用しやすくすることが狙いだ。
この動きは、契約担当者だけでなく、経営層にとっても意味が大きい。契約を「締結して保管する文書」から、「事業上のリスクや義務、機会を把握する経営データ」へと位置付け直せば、契約管理はバックオフィスの効率化施策から、事業成長とガバナンスを支える基盤へと変わる可能性がある。
ドキュサイン・ジャパンは2026年6月に吉田浩生氏がカントリーマネージャー兼取締役社長に就任し、8月には虎ノ門ヒルズ森タワーに新オフィスを開設した。従来の約2.5倍の床面積を持つ新拠点は、日本市場への投資を強化する象徴的な位置付けでもある。
電子署名を起点に、契約の作成、レビュー、締結、管理、そして契約データの活用までをAIでつなぐ――。今回の発表は、日本企業にとって契約業務を「効率化する対象」から「経営に生かす資産」へと転換する契機になりそうだ。

受付

オフィス内


「マザーズルーム」

「マザーズルーム」室内

各ブースのサイン
◇ ◆ ◇
上段の記事は、同社が本日発表した約2,400字のプレス・リリースをChatGPTに、企業の役員、契約業務担当者、ガバナンス担当者向けに約1,500字にまとめてもらい、加筆訂正したものだ。うまくまとまっているはずだ。以下は記者のいつもの〝独断と偏見〟による記事だ。
記者は企業経営も契約業務も全くの素人。全然知らない。しかし、オフィス環境は最高に素晴らしいと断言できる。写真もいくつか紹介するので見ていただきたい。わが国のオフィス受付は、セキュリティーの問題もあり、部外者はもちろん来客者も受付でシャットアウトされるが、ここは実に開放的で全体的にゆったりしている。まるで大きなLDKの雰囲気がある。その一方で、ワーカーが集中できる個室も完備されている。
感心したのは、ふんだんにセットされている観葉植物はみんな本物だったことだ。このような環境は野村不動産「BLUE FRONT SHIBAURA」しか知らない。各ブースには「平安」「鎌倉」「明治」「昭和」などわが国の元号(年号)が付けられており、子どもを連れてきてもいいように、水とお湯がでるシンク付き「マザーズルーム」もある。
社員の出勤は、〝週に3日間〟〝コアタイムは10時から午後3時〟という緩い規制は定められてはいるようだが、強制でもなさそうだ。吉田社長は「私は社員でもないので、土曜、日曜も出社することがある」と話したが、これには大賛成。好きな時に働き、好きな時に休む-これが本来あるべき姿だろうと思う。記者などは24時間働くし、好きな時に酒も飲む。
もう一つ、最高に面白かったのは、吉田社長を含む複数の同社スタッフと報道陣との懇親会だった。食事をしながら好きなことを話し合う場で、同業の記者の方が「最近の人の流れは東京、丸の内、大手町、日本橋などに集中しているように思う。どうして『虎ノ門』か」と質問した。小生が「三菱地所も三井不動産も東京建物も死活問題だから、必死で人を集めようとしている」と口をはさんでから、会話は一挙に盛り上がった。
吉田氏は、日本アイ・ビー・エム-SAPジャパン-インフォマティカ・ジャパンを経て同社社長に就任したのだが、「これは私の考えだが」と前置きしながら「外資系企業は森ビルが好き。私はオフィスを選ぶとき、デベロッパー各社の担当者から様々な条件提示を受けたが、いつも持ち出されるのは『坪単価』(小生も坪単価でしか物の価値を測れない。アメリカには「坪単価」の概念はないのか)。『虎ノ門』に決めたのは立地条件の良さ。ラグジュアリー向けの会議室も備わっている。緑も豊富。オフィスの天井も高く、細々に区切っていない。BCP対策も万全」などの主旨の話をした(小生は耳が遠くなっているので、正確かどうかはわからないが。
この話に合点がいく。六本木ヒルズのメディア向けお披露目会には記録的な約1,000人のメディアが駆け付けたのだが、外国人記者も多数いた。デベロッパーのこの種のイベントに外国人記者があれほどたくさん押し掛けたのはあれが最初で最後ではないか。
外資系企業が森ビルのオフィスに集中していることは調べればわかることだ。同社の最近のビルの緑環境は突出している。「麻布台ヒルズ」も同様に外国人を意識しているのは間違いない。
吉田氏は確か「階段」の話もした。「アメリカ人は階段を単なる移動の空間ではなく、交流を促すスペースとして考えている」との主旨だったと思う。
この話にも合点がいく。同じ虎ノ門ヒルズに入居しているCIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)のCIC Japanのオフィスにもひろい屋内階段が設けられていた。(三菱地所の本社オフィスは広い屋内階段室がある)
小生は小さいころ、外国の映画で、赤い絨毯が敷き詰められた広いサーキュラー階段を、スカートをひらひらさせて上り下りする女性にあこがれたものだ。わが国には、お城はともかく、庶民の家はみんな平屋だった。階段があるのは蔵しかなかった。高いところに上るのには梯子を使った。今でも、建売住宅の階段は尺モジュールの『魔の13段』だ。メーターモジュールを標準としているハウスメーカーは数社しかない。
吉田氏には、わが国の不動産業の後進性について尋ねたのだが「確かに遅れている」と、多くは語らなかった。この点については、前回書いたドキュサインの記事を読んでいただきたい。吉田氏が「プラットフォーマー」を強調したのもよくわかる。三井不動産の社長に2023年就任した植田俊氏が就任会見で強調したのが「産業デベロッパー」「プラットフォーマー」だった。単に場を提供するのではなく、主体的に運営していくこととは全然異なる。
ターゲットは不動産業界も IAMリーディングカンパニードキュサイン日本市場に注力(2025/4/9)
最後の多機能施設「グラスロック」開業開発着手から14年「虎ノ門ヒルズ」全体す完成(2025/4/9)
「世界で戦えるスタートアップ支援」常識超えたレイアウト CIC Japan勉強会(2024/12/17)
