本日(6月6日)行われた、大和ハウス工業、ミサワホーム、東急不動産R&Dセンター、東京大学先端科学技術研究センターの4者によるZoomオンライン「郊外住宅地再生フォーラム2020」を視聴した。報告者・パネラーは異口同音にwith&Afterコロナの郊外住宅地の持続可能性を語った。参加者は400名で、予定の2時間を45分も超過した。
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事例で紹介された大和ハウス工業「上郷ネオポリス」(横浜市栄区)、ミサワホーム「オナーズヒルズ新百合ヶ丘」(川崎市麻生区)、東急不動産「高麗武蔵台」(埼玉県日高市)は全て見学・取材しており、登場された先生、各社の担当者も存じ上げている人が少なくなく、とても分かりやすかった。
テーマは「郊外住宅地の再生」だから当然だろう。報告者、パネラーはほとんど郊外住宅地の特徴である低層低密、緑のネットワーク、人材の宝庫などを武器にwith&Afterコロナでの価値観の変化、テレワークの進展、IoTの活用などにより持続可能性に期待を寄せた。
「上郷ネオポリス」では、大和ハウスから公園を利用した移動販売、住宅をリノベした〝旬のレストラン〟化、シェアハウス、食品ロスの取り組みなどが紹介された。第一種低層住居専用地域では用途規制が厳しいが、どのようにして店舗化するのか聞きたかった。
「オナーズヒルズ新百合ヶ丘」では小田急バスと連携してオンデマンド交通の研究を行っていると報告された。こちらもどうしたらコストをかけずに効率的な移動システムを築くことができるのかものすごく興味がある。
「高麗武蔵台」では、リノベ住宅や空き店舗をコワーキングプレイスにする事例が報告された。コワーキングプレイスは完成したら取材したい。
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いつもそうだが、とても面白かったのは明治大学・園田眞理子教授の話だった。園田教授は「(劣勢の郊外住宅地は)逆転満塁ホームランを打つ可能性がある」とし、地域住民が株主になって地域事業会社を立ち上げるべしと語った。
このときちょうど、オンラインだから可能なのだが、わが西武ライオンズと中日の練習試合が中継されていた。西武が劣勢で、誰かが逆転サヨナラホームランを打つのではないかと期待していたのだが、そうはならなかった。
園田教授には具体的にどうしたら起死回生の逆転サヨナラ満塁弾を打てるかもう少し聞きたかった。添付した「さくら茶屋」は稀有な成功事例だ。
面白い話をもう一つ。どなただったか、郊外住宅地は「人材が豊富だが、(われら団塊世代のことを指したのか)仲が悪い」と語り、園田教授は「金もある」と混ぜっ返した。この金はあるが仲が悪い人材をどう結び付けるのか。旗振り・コーディネーターが不足しているように思う。
率直な感想を言えば、「上郷」「新百合ヶ丘」「高麗武蔵台」はどこも大手デベロッパー・ハウスメーカーが開発したレベルの高い住宅地だ。東京大学 教授・大月敏雄氏が紹介した京王不動産「めじろ台」も、飛び入りで参加された東京藝術大学准教授・藤村龍至氏が先頭に立って再生に取り組んでいる「鳩山ニュータウン」もしかり。インフラが整備されているから取り組みやすいのではないか。
記者は、行政からも大学からも見放された郊外住宅地を見ている。〝死に体〟になりつつある〝限界集落〟をどう救うのか、考えただけで絶望的になる。
さらに言えば、参加者約500人の中から質問は70人を超えた。凄い数字だ。しかし、質問に対する報告者・パネラーの回答は少なかった。せっかくのオンラインセミナーなのだから、参加者と一緒に考えるようにしてもよかったのではないか。次回以降に生かしてほしい。
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