写真①(左側が「KITATODA SOLID」の建設現場)
タカラレーベンが分譲中の埼京線「北戸田駅」圏3物件を見学した。駅から徒歩12分「KITATODA ATOMOS」72戸、駅から徒歩9分「KITATODA LUMINOUS」33戸、駅から徒歩7分「KITATODA SOLID」36戸だ。いずれもよく売れているのだが、面白いことに、この3物件の所在地は「ATOMOS」がさいたま市、「LUMINOUS」が戸田市、「SOLID」が蕨市と全て異なる。行政界が異なることで価格、購入者にも微妙な影響を与えているのだが、3物件の現場を歩いて、街並みの違いにも気づいた。その量と質の違いから先に書く。
写真②(左の「KITATODA SOLID」側と道路を挟んだ対面の街路樹の樹種が異なるのか剪定前なのか)
◇ ◆ ◇
西武池袋線秋津駅は、駅そのものが東京都と埼玉県の都県またぎになっており、さらに東村山市、清瀬市、所沢市の3つの市境にもなっているのはよく知られているが、今回の「北戸田」駅もよく似ているのはまったく知らなかった。
3物件間の距離はそれぞれ歩いて10分前後か。道に何度も迷い、休憩を挟みながら歩いたために2時間くらいかかり、万歩計は1万歩を軽く超えた。
戸田市の「LUMINOUS」、さいたま市の「ATOMOS」の見学を終え、最後の「SOLID」に向かう途中、行政界が変わったためか、街路樹に明らかな変化が表れた。
写真①②③は、敷地東側と南側に都市計画道路が走っている「SOLID」の東側道路の南北に伸びる錦町富士見線の街路樹を写したものだ。コンクリートの植栽マスにサツキツツジとは異なる低木が植えられており、その上に丸く剪定されたサザンカが植えられていた。
冬場に美しい花を咲かせるサザンカは歩道や垣根などにはよく用いられるが、街路樹として植えられているのを見たことはない。垣根などで見る樹高はせいぜい2~3mだ。樹形も面白く、葉っぱは丸く剪定されていた。
このような街路樹もありかと不思議に思いながら、道路を右折した。「SOLID」の所在地は蕨市だが、敷地のすぐ裏に戸田市との市境が走っており、敷地南側は東西に伸びる蕨中央通り線だ。
これまた不思議なことに、錦町富士見線には先に紹介したサザンカの街路樹が植わっているのに、蕨中央通り線の蕨市の中心街に向かうところには最近植えられたような〝貧弱〟な街路樹しかないことだ。(写真④)
ところが、数十歩も歩かないうちに、だしぬけに立派なブルーパシフィックと思われる地を這う樹木とカツラの街路樹が目に飛び込んできたる。(写真⑤)
行政界が異なるといってしまえばそれまでだが、街並みの連続性は無視されていた。
写真③
写真④(蕨市側)
写真⑤(戸田市側)
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これまで埼玉県の貧しい「緑」環境については戸田市、三郷市、越谷市、八潮市、白岡市などを記事にしてきた。県の「緑の量と県民意識の相関関係の調査」の市町村別緑被率によると、前段で紹介した蕨市は0.04で圧倒的な最下位だ。以下、ワーストランキングは0.11の草加市、0.15の川口市、0.18の戸田市となっており、さいたま市も下から13番目の0.37となっている(県平均は0.67)。
緑被率の低さは住民の緑の満足度にもストレートに表れており、最低が八潮市で草加市-蕨市-桶川市-川口市-越谷市-戸田市-久喜市などとなっている。
ところが、不思議なもので、蕨市民のアンケート調査では環境に対する満足度は高く、「公園や街路樹等の緑が豊か」とする意見が176 件(有効回答573件)ともっとも多く、「公園や緑の不足」を指摘している人は15件しかない。
県と蕨市のアンケート調査結果がこれほども差が出るのかはともかく、市が行った事業者アンケートでは、環境に配慮した取り組みを実施する上での問題点として「手間や時間がかかる」が42.4%、「費用がかかる」が39.4%もあったのは残念だ。
「緑」に関する意識の差なのだろうが、蕨市、戸田市、北戸田が最寄り駅のさいたま市南区には第一種も第二種も低層住居専用地域は1か所もない。アルヒ「本当に住みやすい街大賞2020」第1位の川口にも、川口駅から徒歩圏には低層住居地域はない。逆に、これらの市には工業系用途地域はかなりの比率を占める。
住宅地として人気が高い東京都世田谷区と比べてみよう。同区の用途地域は、第一種低層住居専用地域が全体の51.3%を占め、第二種低層住居専用地域の1.5%を合わせ52.8%が低層住居専用地域で、その他の住居系を合わせ実に91.3%を占める。商業地域は7.7%で、工業系は1.0%にしか過ぎない。緑被率は平成28年度時点で23.56%。同市は2032年度までに33%を目指している。
区は2018年から都市緑地法に基づく緑化地域制度を導入しており、建ぺい率60%地区の敷地面積300㎡~500㎡には10%以上の緑化率を、敷地面積150㎡~200㎡未満には中木3本の植栽をそれぞれ求めている。
蕨市はどうか。同市の開発指導要綱では、500㎡以上の開発行為に対して事業区域の5%以上の緑化を求めている。つまり世田谷区の半分だ。
緑の多寡が街のポテンシャルを大きく左右する。埼玉県には県を挙げて緑化に取り組んでほしい。
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