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2021/09/19(日) 23:21

選手村裁判 開発法による鑑定手法が適法なら当初の坪単価250万円は妥当

投稿者:  牧田司

今回の選手村裁判は、鑑定手法・前提条件が異なれば、価格はいかようにもなることが明らかになった。

東京地裁はどのような判決を下すかわからないが、仮に被告の東京都が勝訴すれば、日本不動産研究所が当初はじき出した用地の坪単価32万円(18万円=記者推定)による「HARUMI FLAG」の分譲坪単価250万円は極めて妥当な価格で、分譲価格に占める土地価格:建物価格の割合が7%:93%という調整区域か林地に建つマンション並みというのもまた納得できる。

そうなれば、原告側が「原告らの準備書面(15)」で主張する「広大な本件土地を時価の10分の1以下という水準で売却したということで、不動産鑑定制度の信頼性、土地の公正な価格水準を破壊するだけでなく、ひいては将来的には、不動産価格市場の安定性、公平性までもゆがめるものである」という懸念は拭い去れないが、ここでは開発法による今回の鑑定手法が適法ということを前提条件に原告側の桝本鑑定の問題点を指摘することにした。

当初の分譲単価250万円は極めて妥当

 「原告ら準備書面(14)」では、「被告側調査価格の問題点」の一つに「販売価格が著しく低額である」とし、「被告側調査報告書ではそもそもマンションの販売(予想)価格について、8年後も含めて十分検討されておらず、70数万円(平米当たり)で想定されていたが(但し、板状棟)、実際の販売価格が平均価格で大体90万円(平米当たり)を超えており、これだけ販売価格が著しく低額であると、調査価格を押し下げることになる。タワー棟はまだ販売されていないが、同様に調査価格91万6,000円(平米当たり)は低過ぎると言わざるを得ない(原告桝本は120万円(平米当たり)と想定)」と述べている。

 しかし、これは明らかに間違いだ。調査報告書が作成されたのは2016年であり、開発法手法が妥当とすれば、この手法によって導き出された坪32万円(1種当たり8万円=記者想定)から分譲単価を割り出すと70数万円(坪単価約250万円)は妥当な価格だ。記者はその時点で「アッパーで坪250万円くらいではないか」と書いたが、今でも記事は間違っていないと思う。

 よって、販売価格は著しく低額とは言えない。実際の販売価格90万円(297万円)は、むしろ高いと思う。1種8万円という〝ただ同然の価格〟で土地を取得したのだから、それを分譲価格に反映させ、利益は購入者に還元すべきと考えているからだ。

 タワー棟の調査価格91万6,000円(坪302万円)も極めて妥当な値段だと記者は考える。桝本鑑定士は120万円(坪396万円)を想定しているようだが、これは価格時点ではありえない単価設定だ。当時(2016年時点)で三井不動産レジデンシャルが分譲した「パークシティ中央湊」の坪単価は440万円だった。今年から分譲開始された勝どき駅前の再開発マンション「パークタワー勝どきミッド/サウス」でも坪単価は425万円だ。

不動産鑑定を否定する利益折半やるべきでない

 さらに言うなら、小池都知事が「最終的な住宅分譲販売収入が当初の想定を1%以上上回った場合、増収分の半額を特定建築者が東京都に追納することで合意した」と2019年7月に発表した特別条項を適用するのは基本的に反対だ。利益折半などというのはやくざのやることだ。不動産鑑定制度を否定し、「開発法」を有名無実化するものでもある。

 準備書面はまた、「桝本鑑定士の尋問に対する批判は考慮に値しないこと」の中で「販売単価について」も言及しており、「日本不動産研究所の予想販売価格は、実際の販売価格よりも1㎡当たり15~18万円、割合にすれば20%程実際の価格よりも安く算定していたということである。日本不動産研究所の調査報告は平成28年2月23日付(これは平成28年4月23日付の誤植=記者注)であり、HARUMI FLAGの価格が発表されたのは令和元年7月である。すなわち、日本不動産研究所は、わずか3年5か月後の販売価格について、実際の販売価格と2割もずれた価格を前提に計算していたのであり、この点について水戸部証人は何ら合理的な理由を述べていない」としている。

 この指摘も当たらないと記者は思う。そもそもが「開発法」を用いた予想販売価格(鑑定価格)は、先に指摘したように価格時点つまり2016年4月の時点の価格をはじき出したものだ。土地代を1種8万円と想定すれば妥当な単価設定だ。

 また、準備書面は「わずか3年5か月後の販売価格について…」としているが、バブル崩壊もリーマン・ショックも3.11も今回の新型コロナも同様だ。一寸先は闇のことなど誰も予測できない。調査報告書はそのような未来予測を含めて価格を算定したのではないのは明らかだ。

 ただし、「水戸部証人は何ら合理的な理由を述べていない」というのはよくわからない。記者は民事訴訟のことなどさっぱりわからないが、当事者の原告、被告が嘘をついても罪には問われないはずで、証人も「嘘はつきません」と宣誓しなければ偽証罪に問われないのではないか。

 水戸部証人は別の尋問で「覚えていない」を多発されたようだが、不動産鑑定士の資格をはく奪されるのではないかと心配し、金縛りにあって説明できなかったのか。これまた不思議だ。

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