「晴海選手村土地投げ売りを正す会 第4回総会」(豊洲文化センターで)
昨日(9月18日)の午後6時30分から午後8時過ぎまで行われた「晴海選手村土地投げ売りを正す会 第4回総会」の取材を許可されたので、一部始終を取材した。総会には「正す会」会員と支援者ら約30人が参加した。
「正す会」の代表・中野幸則氏は「長い4年間の裁判の過程で事業の不当性を明らかにした一方で、行政訴訟の参加を足止めするような国や行政の姿がはっきりした。裁判の結果は予断を許さないが、都民の目から見た正しい司法の判断をしていただきたい。悪人をこのままほったらかすようなことはあってはならない。勝利を目指して頑張りましょう」と呼び掛けた。
事務局長の市川隆夫氏は「万々が一(われわれが)勝利した場合、相手も控訴するだろうから長生きしないといけない。負けた場合は、新しい証拠を提出しないといけないし、メディア対策を練らないといけない」などと語った。活動資金は残り7万円しかないことも明らかにした。
弁護団を代表して参加した千葉恵子氏は「(原告側が勝訴しても一銭も入らないのに)被告側の原告に対する批判は言えば言うほど自ら墓穴を掘り進んでいるのではないかと感じた」と一連の裁判を通じた率直な印象を述べた。
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まず、取材を許可していただいた「正す会」に感謝申し上げる。記者は用意されていたお菓子は頂かなかったが、参加費(資料代)500円をきちんと支払い、座るのもためらわれたので最後尾で立ちっぱなしで話を聞いた。
東京地裁裁判長宛ての「判決にあたっての要請」ハガキも資料封筒に入っていた。「都民に多大な損失を与え、違法・不当に開発業者に奉仕する都政の是正を願う」というフレーズをそのまま受け入れるわけにはいかないので返そうと思ったのだが、返し忘れた。
4年間で150万円しか弁護士報酬が払えず、活動資金は残り7万円しかない「正す会」の財政事情を考えると、これは84円の封書で返すのも失礼なので、カンパでもしようか。
一番の収穫は、被告の東京都(小池都知事)は日本不動産研究所(不動研)にわずか5か月の間に2度にわたり鑑定評価を依頼し、総額約1,810万円を支払っていることを原告側が「原告ら準備書面(15)」で明らかにしていることだ。(原告、被告とも「調査報告書」を鑑定評価書とみなしていないようにも受け取れるが、名称のいかんを問わず鑑定基準に基づいたものであるのは明らかだ。報酬額も半端でない)
「原告ら準備書面(15)」によると、都は平成27年9月25日付で日本不動産研究所と約993万円で委託契約を結び、不動研は同年11月30日を発行日とする「調査報告書」をまとめ、額は約110億円(坪27.1万円、価格時点11月1日)としている。(第1回目)
そして、都は平成28年2月23日付で不動研と約817万円で委託契約を結び、不動研は同年2月23日を発行日※とする「調査報告書」をまとめ、額は約130億円(坪31.9万円、価格時点4月1日)としている。(第2回目)
※これは明らかに誤植。2月23日に契約を結び、同日付で報告書をまとめられるはずがない。「4月23日」の誤りではないか。
それにしてもわずか5カ月の間に、前提条件は若干異なるにしろ、2度にわたって調査依頼する理由はなにか。(平成29年7月の都の住民の監査請求に対する監査報告でも第1回目の調査報告書の存在は明らかにされていない)
更に不可解なのは、被告側の水戸部証人は2回の調査委託があったことを認めたものの、第1回目の調査報告については「分からない」「よく覚えていない」を繰り返したことだ。
「原告ら準備書面(15)」には次のようにある。
淵脇(原告側弁護士) じゃあ、1回目は何だったんですか。(略)
水戸部証人 1回目…もうちょっとそこは私は、申し訳ないですけれども、よく覚えていません。
その後、関連する質問を淵脇氏は2度行っているが、水戸部証人は「いや、そこもちょっと覚えていません」「今頭の中にありません」「ちょっと前のほう(第1回目)、その評価額というものをちょっと覚えていないので」「個別のこういった案件の詳細については、部下にまかせているのはたしかなのでそこでちょっと覚えていません」を繰り返している。
不可解なのはまだある。関係者間では既知の事実であるはずのパシフィックコンサルタンツが平成25年9月に作成した報告書に記載されている110億円について、水戸部証人は額はもちろん、報告書の存在すら知らなかったと証言したことだ。淵脇氏と水戸部証人のやり取りには次のようにある。
淵脇 このパシフィックコンサルタンツ作成の「平成25年9月」の報告書、これをご覧になったことありますか。
水戸部証人 ありません。今回の裁判で初めて、こういうものがあるというのを知りました。
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この日、桝本不動産鑑定事務所・桝本行男氏も総会に出席されていた。桝本氏は「日本丸」のファンで、年間10回、もう50年も晴海ふ頭を訪れており、選手村の現地をよく知っているとのことだった。
「原告ら準備書面(14)」には、桝本氏は「特に掘削の必要のない地下駐車場を建築費増大の理由としていることは不合理である」とし、「そもそも掘削工事は行われていない」と証言したことが記述されている。
これが事実なら大問題だ。「HARUMI FLAG」のプロジェクトを発表したとき、事業者は駐車台数分(2,318台)を全て地下化すると発表した。裁判でも被告側はこれをコスト増大の理由の一つに挙げている。
桝本鑑定士の証言が事実かどうか、記者も現地見学を申し込んでみる。いま「HARUMI FLAG」の物件概要を確認した。建物は全て地下1階がある。住戸は2階以上だ。記者は地階に平置き駐車場が整備されると思っていたのだが、構造は機械式となっている。ピット式だと可能なのだろうが、地上部分は駐車スペースにならないのか。
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