前回の記事では、千代田区は神田警察署通りⅡ期道路整備区域に植えられている街路樹のイチョウ32本を全て伐採することを少なくとも2020年12月の段階で決定していたことを明らかにした。
そして、2021年5月28日に行われた書面開催による第18回神田警察通り沿道整備推進協議会(協議会)では、「台風などの倒木の危険性や根上りによる歩道空間の通行障害の問題、新たな歩道や自転車道整備に支障があるのであれば、街路樹の伐採は止むを得ず、全ての更新を望む」「協議会の多数の委員で決めてきたことが、少数の意見で中断されるのかわからない」「II期工事区間の植栽については、色彩も良く、ヨウコウザクラとオタフクナンンテンの組み合わせで問題なし」とし、「既存の街路樹は同位置には置けないため、すべて更新します」と決定している。
その後、令和4年1月28 日の協議会で区のまちづくり担当部長は「これまで十何年話し合いをしてきた当協議会は大切なものであり、最後は皆様の意見を聞いたうえで協議会に諮ることになる。その結果を受け、最終的には区が決める」と語ったのをはじめ第19回、第20回協議会、2019年12月に実施した住民アンケート、区議会企画総務委員会の論議もすべて、既定路線に沿わせるためのアリバイ作りであることが分かる。
令和4年3月17日行われた区議会企画総務委員会での小枝委員と嶋崎委員長のやり取りはそのことを否定していない。
・小枝委員今日出された資料の一番最初、沿道まちづくり検討委員会のときには、街路樹、樹木の専門家が入っていたんですよね。その後は、もうぱんと切ってしまって、いなくなってしまっているという問題に行き当たりました。非常に進め方にやはり瑕疵があったなと。
○嶋崎委員長 そうだね。それは、協議会の合意が必要だよね…そこのところの知恵出しというか、やり方というか…多少瑕疵があったのかもしれないけれども…そういうことでよろしいですよね。
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不動産業界では、物理的・法律的瑕疵だけでなく隠れた瑕疵、心理的な瑕疵を含めて「瑕疵」に対しては契約解除などかなり重い損害賠償責任が課される。
今回の問題ではその行政の「瑕疵」が問われている。住民らは強行伐採を決めた区に対して損害賠償裁判を起こしたが、結果はどうなるか。死滅しつつある民主主義が復活するかどうかの問題でもある。
記者は今回の問題を通じて、「戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり」-ジョージ・オーウェルの「一九八四年」(ハヤカワ文庫)そのものの世界をみたような気がした。街路樹伐採を決断した樋口高顕区長は「苦渋の決定」としたが、記者は議会(推進派を除く)も住民もイチョウも「苦汁を飲まされた」のだと思う。
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平成30年度調査による千代田区の区域面積1,166haに占める緑被地面積は約271haで緑被率は23.22%となっている。この数値は23区でもっとも高い練馬区の24.1%、2番目の世田谷区の23.6%に次いで3番目で、もっとも低い中央区の10.7%の倍以上となっている。千代田区の緑被率が高いのは、区域面積の12%を占める皇居(143ha)や日比谷公園(16ha)が数字を引き上げているためだ。
地域別では富士見地域がもっとも高く42.71%、以下、大手町・丸ノ内・有楽町・永田町地域の23.89%、番町地域の22.57%となっており、第2期工事に該当する神田公園地域は3.71%にとどまっている。
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