大和ハウス工業が11月21日に行った「戸建住宅事業 計画説明会の第二部の現地見学会となったのは、今年5月に発売した木造戸建住宅新商品「xevo BeWood(ジーヴォ ビーウッド)」初の実棟「セキュレア西大宮V」のモデルハウスだった。基本性能・設備仕様レベルは間違いなくトップレベルだが、様々な課題も見つかった。
物件は、JR川越線西大宮駅から徒歩16分~17分、さいたま市西区西大宮二丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全23戸。現在分譲中の住戸(7戸)の敷地面積は142.19~146.10㎡、建物面積は98.71~104.98㎡、価格は5,980万~6,580万円。建物は令和5年7月完成済。構造は軽量鉄骨2階建て。
モデルハウスはZEH仕様、最大天井高2.9m、床はオーク材の突板仕上げ、天井はオウシュウカラマツの現し、幅4間(7280mm)の大開口、サッシ高2400mm、坪庭付き、外壁は塗り壁仕上げなどが特徴。
現地は、土地区画整理事業により整備された面積約115.5ha、計画戸数4,010戸の住宅地の一角。2017年からデベロッパー、ハウスメーカーなどにより戸建て分譲が開始された。地区計画により土地の最低面積は135㎡以上と定められている。
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この住宅地は過去2度、ポラスグループの分譲戸建ての取材で訪れている。駅前には何もなく閉口したが、居住者の多くは西大宮バイパスを利用するようで、生活利便施設には不自由しないようだ。
第一部で永瀬氏が語った、現在は同社の分譲戸建て比率は7%しかない木造を「分譲は全て(7,000戸)木造にしたい」を記者は半信半疑で聞いていた。分譲戸建て市場はマンションと異なり、全国規模にわたって大手中小が入り乱れて激しい競争が展開されており、それに伍するには2倍、3倍のエネルギーを注ぎ込む必要があると考えたからだ。
毎年の分譲戸建ての全国着工戸数は14万戸くらいか。そのうち、記者が〝御三家〟と呼ぶ飯田グループ、オープンハウス、ケイアイスター不動産の市場占有率は4割近い。圧倒的な価格の安さが〝売り〟で、価格は3,000~4,000万円台が中心だ。
一方で、三井不動産レジデンシャル、野村不動産などの大手デベロッパーはこれら御三家とは一線を画し、大都市圏にエリアを絞り込でいる。数年前にはそれぞれ年間800~900戸に達したが、その後は400~500戸に減らしている。用地取得が難しいからだろう。
面白いのがポラスグループだ。自社プレカット工場を持ち、埼玉県の越谷を本拠にその周辺エリアに特化し、年間3,000戸近くをコンスタントに販売している。エリアの市場占有率は突出している。いわゆるパワービルダーより価格は500~1,000万円くらい高いが、各グループ会社が商品企画で競い合うことでユーザーの支持を得ている。
ハウスメーカーのことはよく分からないのだが、同業の積水ハウスは数年前までは木造「シャーウッド」の伸び率は鉄骨系をはるかに上回っており、記者はその伸び率からして鉄骨系を超える時代が来るのではないかと予想したが、最近は平行線のままだ。その理由は分からない。最近、同社は地域パートナー企業と連携する「SI(エス・アイ)事業」を開始した。
大和ハウスはどうか。全国の分譲戸建てをランキングで示せばベスト10に入るかどうかだろう。そんな同社が4年後に7,000戸に増やし、しかも「木造」比率を飛躍的に伸ばすという。
ブランド力は他を圧する同社だから、本気を出せば年間7,000棟は難しくないかもしれない。「セキュレア西大宮Ⅴ」のモデルハウスの基本性能・設備仕様は間違いなく御三家などを蹴散らす。そもそも比較すること自体が失礼だ。
しかし、課題もいくつか見つかった。同社に頑張ってほしいから敢えて指摘する。
まず、外構・緑被率。外構は寂しい。緑被率を現場担当者に聞いたら20%もないということだった。これは同社に限ったことではないが、もっと真剣に緑被率をあげることに関心を払うべきだ。国も一定程度の緑被率を確保した住宅にインセンティブを与えるべきだ。積水ハウスの「5本の樹」計画は全国区になりつつある。
緑と関連することだが、同社は11月21日から俳優・松坂桃李さんを起用した分譲住宅「Ready Made Housing.」の新TVCM「いいとこどり」篇を公開した。説明会でも紹介された。いきなり樹海が展開された。記者は松坂さんの名前を初めて聞いたが、とてもいいと思った。あの同社のCM「物流×AI」を思い出した。
次に、細かいことだが、浴室には壁にタオル掛けがついていたが、ドアには一つもなかった。ZEH仕様だから冬場は寒くはないだろうが、ドアにも付けるべきだ。ユーザーはこのような些細なことに感動を覚える。ポラスは天井高2.7mだけでなく、細やかな配慮がユーザーの心をとらえている。
尺モジュールの階段も気になった。積水ハウスはずっと前からメーターモジュールを標準にしている。マンションではトイレの把手を壁面まで後退させるユニバーサルデザインを採用している。
話を元に戻す。「西大宮V」の分譲住宅は全23区画のうち13棟で、今年6月から販売を開始しており、6棟が成約済みだ。残っている7棟のうち5棟は敷地南側に「保存林」が広がる6,000万円以上の住棟だった。
その理由を瞬時に理解した。庭先の保存林までは数メートル。柵で遮られていた。樹高は住棟より高い。つまり、真昼はともかく、日照がほしい冬場の昼は日が当たらないのがネックだし、価格も市場価格より数百万円は高い。
しかし、また考えた。敷地真南に新CMと同じような樹海が広がる-これほど恵まれた分譲戸建てなど首都圏はおろか、全国のどこを探してもないのではないか。保存林の所有者と交渉して入会権とか地役権を設定して、自由に往来できるようにしたらどうか。たくさんの動植物が生息しているはずだ。夏場の気温は間違いなく2、3度は低い。毎日森林浴ができる価値は数百万円どころでない。1,000万円の価値がある。竣工して4か月も残っているのは、この「緑環境」のよさを訴え切れていないからではないか。
これは余談。各住戸の敷地内には赤い実をたくさんつけていた樹木が植えられていた。毒がある樹木を植えるわけがないと思い、一つ食べてみた。ぶつぶつがあり美味しくはないが、懐かしいグミかヤヤモモの味がした。担当者に何の木か聞いたが、誰一人答えてくれなかった。図鑑で調べた。初夏に可憐な花が咲くヤマボウシのはずだ。お客さんにはきちんと説明できているのだろうか。
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