東京建物とHotel Properties Limited(HPL)、Four Seasons Hotels & Resortsは5月17日、わが国初の「Four Seasons Hotel」と「Brillia Tower 堂島」を一体開発した超高層タワー「ONE DOJIMA PROJECT」の竣工セレモニーとメディア限定内覧会を開催。多くの多くのメディアが駆けつけた。
プロジェクトは、建物高さ約195m、地上49階建ての建物を「旅とアート」をコンセプトに、日建設計が設計。上層階の建物形状を徐々にセットバックさせ、3種類のバルコニーを組み合わせることで、水都大阪にふさわしいヨットの帆をほうふつとさせるシンボリックな外観となっている。
共用空間のインテリアデザインは、Piet Boon(ピエト・ブーン)氏によって創設されたStudio Piet Boonがコーディネート。ウェルウッドの協力のもとキュレーター兼美術評論家の南條史生氏の監修により、国際的に活躍する彫刻家の名和晃平氏の作品をはじめ約50点のアート作品を住宅共用部などに設置している。
マンションは2021年11月から分譲開始されており、坪単価は、当時の大阪駅圏最高単価の約400万円を大幅に上回る650万円。販売も好調に推移したことから業界内で話題になった。特定街区の指定を受け、世界有数のホテルブランド、デザイナー、わが国を代表する設計、施工会社とコラボし、建物をアートとしたコンセプトが奏功したとみられる。
これまで供給した376戸(うち3戸は戦略上販売をストップ)はすべて完売。契約者の属性は、40代23%、50代23%、60代21%、30代20%、会社役員は36%、会社経営18%、会社員17%。地元大阪を中心に全国から集客できているようだ。一般分譲対象外の47戸を除く残り37戸は、賃貸の可能性もあるが、重要事項説明書で「分譲」としていることから分譲となる可能性が高い(概要は未定)。
「フォーシーズンズホテル」は、「東京大手町」「東京丸の内」「京都」に続く4施設目。今夏に開業予定。
同じ棟内にホテルとマンションが同居する複合は、竣工済みでは東急不動産他「ブランズ横濱馬車道レジデンシャル」、野村不動産「プラウド恵比寿ヒルサイドガーデン」、住友不動産「梅田タワーズ」などがあり、今後竣工する、または計画されているものでは相模鉄道・東急「THE YOKOHAMA FRONT TOWER」、野村不動産・ケン・コーポレーション「西麻布三丁目北東地区第一種市街地再開発事業」、三井不動産レジデンシャル「パークタワー大阪堂島浜」、住友不動産「コンラッド横浜・(仮称)ラ・トゥール横浜」、三菱地所「Torch Tower」などかある。
物件は、JR大阪駅から徒歩11分、大阪地下鉄四つ橋線西梅田駅から徒歩6分、大阪市北区堂島二丁目の商業地域(建ぺい率100%、容積率1200%の特定街区)に位置する敷地面積約4,828㎡、49階建て延床面積約82,507㎡。住宅は地下1~27階、38~49階、総戸数457戸(一般分譲410戸、募集対象外は47戸)。ホテルは地下1~2階、28~37階、総客室数は175室。着工は2020年4月、竣工は2024年1月。設計は日建設計。施工は竹中工務店。住宅共用部デザイン監修はStudio Piet Boon。住宅引渡開始は2024年5月24日(予定)。
以下、竣工セレモニーに臨んだ関係者のコメント。
東京建物代表取締役社長執行役員・野村均氏 他に類を見ないプロジェクト。アート作品には特別な力がある。居住者の一人ひとりが自分らしい暮らしを実現する、魅力ある空間に仕上がった。地域の発展にも大きく貢献するものと信じている。(「目黒」もそうだが、どうして坪単価400万円の壁があった「大阪」で、倍に近い650万円で供給することができる市場調査力、商品企画力は何かという記者の問いに)やってみなはれということ
共同事業者のHotel Properties Limited Country Representative・Michael Inman氏 特別な興奮を覚えている。日本で初めての大規模投資で、世界的ポートフォリオを拡大することができる。マンションプロジェクトは購入者や投資家に大きな価値を創造できると確信している。販売が絶好調あることはその魅力の証。『フォーシーズンズホテル』はその魅力を高めることになる。国内外で更なる共同プロジェクトができることを期待します
東京建物取締役専務執行役員住宅事業本部長・秋田秀士氏 建物の高さは195mで、梅田エリアでは最高峰。ホテルは8月開業。2021年から販売開始し、これまで供給した376戸(うち3戸は戦略上販売をストップ)はすべて完売。残り34戸は、概要が決定次第公表します
施工を担当した竹中工務店常務執行役員・河野修氏 2020年4月に着工して以来、新型コロナの世界的な蔓延、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油価格、資材の高騰、円安、2024年問題などアゲンストの風が吹き荒れている。建物の中央部13層にテルを併設するという相当高い難易度があった。日建設計をはじめとするステークホルダーの多大な協力によって完成した
施工を担当した竹中工務店取締役社長・佐々木正人氏 昭和32年、この地(堂島)で本社ビルを建設した。その後の変遷を経て今回のプロジェクトとして再生された。施工を担当させていただき改めて感謝・お礼申し上げる
共用部インテリアデザインを担当したオランダStudio Piet Boon・Founder Piet Boon氏 これほど高いクオリティの建物をわずか5年間で完成させたことに驚いている。アムステルダムでは10年はかかる
設計担当の日建設計常務執行役員チーフデザインオフィサー・大谷弘明氏 一つの建物にマンションとホテルを設計するのは難しい仕事だったので秘策を練った。アール状と3種類のバルコニーを組み合わせることだった。大阪にはタワーマンションは数十棟あるが、それらと全く違う。東京建物さんの理解と強さがあったからこそ実現した
アートコンサルティング担当のウェルウッド会長・廣井康士郎氏 アートな街づくりをしたいというテーマに共感した。このような面白いプロジェクトに参加できたこと感謝している。共用部に設置した50点にも上る作品を堪能していただきたい
アートを監修したエヌ・アンド・エー代表取締役/アートキュレーター・南條史生氏 話があったのは4年前。〝旅とアート〟がテーマと聞いて、これは失敗できないぞと取り組んだ。結果的に大きなプロジェクトになり、40人前後のアーティストが参加している。作品の半数以上はその都度話し合いを通じて制作したもの
愛称〝ミオちゃん〟もいいのではないか
公開空地にアルミ製のパブリックアートを制作した彫刻家の名和晃平氏 この作品は京都芸術大学で15年以上続く"ウルトラプロジェクト"のなかで、私が行う「ULTRA_Sandwich#18」というプロジェクトメンバーの学生たちと共に、現代彫刻の方法論を学ぶワークショップとして、大阪の堂島を訪れることがきっかけとなり、生まれた。iPhoneで簡単に3Dスキャンができるようになったため、その技術について学生たちへ説明しながら、パブリックアートとして彫刻作品を提案する予定のまさにその場所で、学生の一人〝ミオさん〟をモチーフにすることにして、もう一人の学生がスキャニングを行った。
美大生の〝ミオさん〟は、その日トートバッグを肩に下げ、厚底の変わった形のシューズを履いていた。午後の南の空には白い半月が浮かび、それを見上げた何気ないポーズをキャプチャした。
近い将来、人類が月や火星へ進出する時代が訪れるかも知れない、そんな未来の予感は、情報と物質の世界がパラレルに進行する現代の都市を行き交う人々の心のどこかに潜んでいるのではないか?そんな現代人のリアリティを捉えたかった。セル状の形と、波動やエネルギー体を思わせる形の対比をしながら、二つの姿が重なるようにした。後ろ姿も気に入っている。
タイトルは「Trans-Mio」だが、設営期間中に警備の方が〝ミオちゃん〟と呼んで頂いていたらしい。その通称も大阪らしく、良いなと思った。(構想1年、制作6か月、高さ約5m、重さ約500キロ)
名和氏
「Brillia Tower 堂島」統括所長・加覧憲一氏(かつての国学院久我山の主砲。他チームは震え上がったそうだ) 当社の最高峰プロジェクトにかかわれてとても幸せ
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完成したマンションの内部空間を見てめまいを覚えた。2度目の経験だ。最初は、2018年完成の三井不動産レジデンシャル「パークコート青山 ザ タワー」だった。記事には「ガラスの向こうから自分を見つめる(自分自身の)醜悪な顔に愕然とし、眩暈を起こしそうになった」と書いた。すべてがアール状の空間に三半規管がかき回されたからだ。
今回は、あの時の感覚とは少し異なる。ヨットに揺られたときの船酔いでもない。天井高が12m、14mのエントランス・2階ギャラリーラウンジの壁は白で統一されており、息を呑むほどの美しい空間に言葉を失い、圧倒されたからだ。
アートは40作家、約50点で、中にはキャンパスに地塗りしただけとしか思えないものや、グレーチングしたブルー一色のものなど値がつけられそうもない作品もあったが、ヘンリー・ムーアを彷彿とさせる1,000万円はしそうな彫像もあった。
居住者全員が利用できる1時間2,000円の49階のザ・ペントハウス、38階以上の居住者専用の43階のバーラウンジ、1時間500円で最大4時間=2,000円で独り占めでき、酒も飲める広さ100㎡の27階のパーティルーム(お金に換算すると2億円はくだらない)などは圧巻だ。
モデルルームを見学した2021年11月の記事の見出しには「〝どう見ても美しい〟大阪の市場を変える 東京建物『堂島』は坪単価650万円」と書いた。今回、完成した建物を見て、どのように書こうかと考えたが、ボキャブラリーの乏しい記者はふさわしい言葉が浮かばない。当時の記事も添付したので読んでいただきたい。
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大阪市は平成30年、今回の物件の敷地(堂島二丁目)を、「国際競争力の強化に資する宿泊施設及びにぎわい・交流機能等の導入、にぎわい施設と一体となった緑や文化に触れ合える高質な歩行者空間の整備とあわせて、良好な環境と健全な形態を有する建築物の建築及び有効な空地を確保する」特定街区に指定。容積率を480%から1200%に緩和した。
東京建物が従前の「電通大阪ビル」をいつ、いくらで買ったかはわからないが、おそらくこの前後だ。この特定街区指定がこのような素晴らしい建築物を誕生させた。
それにしても、同社が用地を取得したと思われる当時の大阪駅圏では、大和ハウス工業「プレミスト梅田」(133戸、平成32年2月竣工)が最高単価だったが、坪400万円を超えられなかった。その倍近い価格設定のプロジェクトに野村社長は「やってみなはれ」と太っ腹な対応をみせた。プロジェクトを主導したのは同社関西支店なのか。同社の関西圏でのマンション供給は上位10社にも入らないはずだ。乾坤一擲の勝負をかけたのだろう。まとめてすべてをひっくり返したチームに拍手喝采。東京の市場を変えた「Brillia Towers目黒」と同様にマンションの歴史に名を刻んだ。
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