国土交通省は12月20日、第3回「社会資本整備審議会住宅宅地分科会マンション政策小委員会」(委員長:齊藤広子・横浜市立大学国際教養学部教授)を開催し、各委員がマンションの維持管理の適正化や再生の円滑化に向けた取組みの強化など「とりまとめ(案)」に向けた意見交換を行った。
国交省は今回の論議を踏まえ、小委員会とりまとめ(案)についてパブリックコメントを実施し、2024年2月7日の第4回マンション政策小委員会でとりまとめに向けた審議を行う。
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記者はオンラインで視聴したのだが、操作を間違え、音声のみで齊藤委員長ほか各委員の顔・姿は見えなかった。視聴する目的は、だれが何を発言するかであって(記者は齊藤委員長のきれいな声と一部の委員の声は判別できるが)、各委員の顔が見えなければ取材の目的は達成できない。これが残念だった。すべて記者の責任だ。
それでも各委員の意見はよく理解できた。管理会社管理方式では利益相反が取り上げられたが、手続き・契約をしっかりすれば利益相反は防げるのではないかと楽観的に考えるようになった。管理会社管理方式の1戸当たり負担額は中古マンションで1,000円/月が相場のようだから、これは加速度的に普及するのではないか。国交省は総会の前にきちんと説明することを義務化し、変更時(リプレイス)や利益相反に該当する事案も同様の扱いをすると説明した。(現状ではどんぶり勘定が多いはずだ)
この方式を採用する場合、監事の役割が増すとして、「とりまとめ(案)」はマンション管理士などの外部専門家の選任が望ましいとしているが、これはどうか。億単位の財産を左右する重要な決定に、マンション管理士は安値で受託しないと思うし、適正な報酬額などはじき出せないのではないか。利益相反が発覚したら、重い責任を管理会社に課すほうがいいのではないか。
注目すべき発言もあった。戎正晴委員(弁護士・明治学院大学法学部客員教授)は、区分所有法などは区分所有者の居住を前提としており、「居住しない(不在所有者)の責任はあいまい。責任を放棄している」とまで語った。この「責任放棄」はどういう意味かよくわからない。あとでゆっくり考えることにした(法は居住しないといけないとは規定していない)。それより、反社勢力を排除しているように賃借人などとして実際に居住している人の権利・義務を明確にすべきだと考えている。(マンション管理の両輪であるコミュニティ条項を削除したのは問題だったといまでも思っている)
これも戎委員だったと思うが、「管理所有」の是非を指摘した。鋭い指摘だと思った。実態を記者は知らないが、かつてライベックスは学生マンションの共用部分を自社所有として登記したが、同社が破綻して問題になったことがある。また、駐車場を事業者が区分所有している事例も少なからずあるはずだ。国交省は実態を調査する旨の発言をされた。どうなるか。
一定の基準を満たすマンションの管理計画を認定する制度(マンション管理計画認定制度)についても、各委員から意見がたくさん出された。記者は、マンション管理業協会が取り組んでいるマンション管理適正評価制度との統一を図るべきだと思っている。認定制度は令和6年11月現在で1,523件しか認定されていない。一方で、適正管理制度は、令和6年度末までに10,000件の登録を目指している。記者は大きな期待を寄せている。間違いなく市場で評価されるはずだ。齊藤氏はそれを実証した。
このことと関連するが、「とりまとめ(案)」は地方自治体の体制・権限強化の方向性を示したが、これはマンション管理に関する専門家を育成して初めて機能することだ。そんな余裕のある自治体があるとは思えない。記者は、機能不全に陥る前に国なり自治体が買い取り、住宅困窮者などに低家賃で賃貸すべきだと思っている。
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