「代々木上原の邸宅」
分譲価格が10億円を超えることからメディアで話題になった「諸戸の家」の分譲戸建て「代々木上原の邸宅」を見学した。代々木上原駅圏の第一種低層住居専用地域の邸宅街に位置する1邸で、竣工後ほぼ1か月で完売。5人のプロフェッショナルによる「技」が注ぎ込まれている、これまでの分譲戸建てになかったもので、新しい歴史を刻んだ記念碑的な物件だ。同社は今後、この種の分譲戸建てを年間10棟くらい供給する意向だ、
物件は、小田急線・東京メトロ千代田線代々木上原駅から徒歩8分、第一種低層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率150%、条例により最低敷地面積180㎡)に位置する南東、南西側に接道する敷地面積242.12㎡(73.21坪)、延床面積303.96㎡(91.95㎡)、価格は10億円超。構造は2階建て木造・パネル工法。2025年1月完成。
「諸戸の家」は、〝日本の山林王〟と称された三重県・桑名の諸戸家の事業を継承し、昭和50年6月創業(本社:桑名市)。これまで分譲住宅、自社設計・自社施工など5,000棟超の引き渡し実績がある。目指すのは〝「世代を超え、世代に継承される価値を生む〟スーパーラグジュアリー。
現地の所在地は紹介しないという約束なので書かないが、間違いなく代々木上原駅圏の一等地だ。これまで取材したマンションをいくつか紹介する。読んでいただければ、代々木上原駅圏の相場が分かっていただけるはずだ。
今はどうか。マンションの坪単価1,000万円をはるかに超えている。なので、土地が73坪で、建物が30坪近い戸建てが10億円を超えても全然驚かない。価格には驚かなかったが、プロフェッショナル人の〝競演〟には驚愕した。
一つひとつ紹介しないが、これまで50社を超えるメディアがあまり触れていないことを中心に紹介する。圧巻は2階の37帖大のLDKだ。天井高は3.6m、天井は本物の木ルーバー・突板仕上げ、壁はブラックウォルナットと障子。家具・調度品はイタリアのミノッティ。食洗機は幅60センチのGAGGENAU(ガゲナウ)製、冷蔵庫はスウェーデン・アスコ。ダイニングテーブル、チェア、ソファ、ローテーブル、シャンデリアなどは総額で2,000万円とか。
リビングドアがまたすごい。塗師・牧野昴太氏による世界にここしかない「ひび塗り」だそうで、本物の木に漆を9回塗り重ね、仕上げまで3か月、50工程を掛けたという。これまでたくさん高額リビングドアを見学してきたが、この「ひび塗り」は桁違いだった。
全フロアに用いられていたクロスがまたすごい。見る角度によって微妙に表情が変わり、微細な文様が現れたので、布クロスかと思ったが、吉川氏は「ビニールクロス」とこともなげに語った。これまで布クロスやレザ―仕上げはたくさん見てきたが、ビニールクロスでここまで表現しているものは見たことがない。
2階のトイレには絶句した。前日見学取材した旭化成ホームズ「FREX asgard(フレックス アスガルド)」の便器はグレーだったのに驚いたのだが、今回は「黒」だった。便器だけではない。手洗いカウンターの淵はデザイン処理された本物の木だった。
牧野氏の「技」だけではない。商品企画を担当した同社常務取締役・吉川政弘氏が物件パンフレットに商品化に至った経緯を次のように明らかにしている。「二の足を踏むほどの(土地)金額に、やはりリスクが大きすぎる…私は緊張していました…様々な可能性に賭けようと考えました…諸戸の家をよく知る世界的ランドスケープデザイナーの石原氏と…(5人の)奇才に恵まれ、プロジェクトをスタートさせることができました」と。
その5人の「技」を紹介する。「英国チェルシーフラワーショー」で12個のゴールドメダルを獲得するなど世界的なランドスケープデザイナーとして知られる石原和幸氏は1階の「緑の扉」やルーフバルコニー、バルコニー、リビングの植栽を担当している。
京表具伝統工芸士・田中喜茂氏(弘誠堂三代目)による引箔技法によるアートは迫力があった。
表現士・職人の肩書を持つ吉河清人氏による1階エントランスのアートは、天然石ソーダライトやラリマーを薄く何層も塗り重ね、スポンジやヘラを使用し、ここにしかない「青の存在」を表現したという。
エントランス正面には迫力のあるアーティスト・大森レイ氏の作品が飾られていた。シュールな抽象画であり古来の屏風絵のようでもあり、不思議な魅力をたたえていた。
石原和幸氏によるルーフバルコニー
大森レイ氏によるアート
牧野昴太氏による「ひび塗り」
吉河清人氏によるアート
田中喜茂氏(弘誠堂三代目)
◇ ◆ ◇
価格について。記者は価格が10億円超でも驚かないと書いた。単純比較は難しいだろうが、バブル期のマンションの最高価格はドムス「南麻布」の44億円(坪単価は3,000万円超)で、最近では三井不動産「六本木・檜町公園」の55億円(同)のはずだ。
分譲戸建てはどうか。バブル期の最高価格はいくらだったか記者は全く記憶がないが、最近では、「成城学園」アドレスのコスモスイニシアと野村不動産のそれぞれ2.7億円が最高ではないか(5億円くらいの物件が供給されたとも聞くが)。10億円は単なる通過点にしか過ぎない。同社にも同業他社にも高額戸建てに挑戦していただきたい。敷地は100坪は欲しい。
エントランス
2階リビング
主寝室
◇ ◆ ◇
今から60~70年くらい前だ。なぜ〝日本一の山林王〟と呼ばれたか理由は知らなかったが、三重・伊勢出身の記者は小学生のころ諸戸家を知った。毎年、伊勢新聞から発表される長者番付でいつも諸戸家はトップにランクされていたからだ。全国ランキングでも30位くらいに入っていたはずだ。
Wikipediaによると、「諸戸宗家・本家の両家を合わせると、諸戸一族が所有する山林は巻間一万町歩といわれ、その財力や資産は数えることができないくらいの山持ちである」「初代清六(1846年~1906年)が米相場から、土地に手を出したのは1883年頃からであるが…わずか5年ほどで清六が買い集めた田地は5千町歩にものぼった。清六の土地買いは、田地田畑だけではなく、その後、東京の恵比寿から渋谷、駒場に至る住宅地30万坪を買いまくり、ひと頃は渋谷から世田谷まで、他人の地所を踏まずに行けたといわれる」とある。
その後、「初代諸戸清六には4人の子がいたが長男と三男は夭逝し、次男の諸戸精太と四男の清吾が残った。諸戸家の家督を継いだのは四男の清吾であり、二代目諸戸精六と名乗り『東諸戸家』に、次男の精太は分家して『西諸戸家』となった。…初代諸戸清六は『山林は一坪たりとも減らすな』『木を伐るな』との遺訓を残したが、東諸戸家では2007年に所有していた山林をトヨタ自動車に売却して今は山林事業から撤退」(三重県の諸戸家FC2Home)しているようだ。
ジョサイア・コンドルが設計した大正2年完成の二代目清六の邸宅・六華苑は国の重要文化財に指定され、一般に公開されている。
一方の西諸戸家の事業を継承する諸戸ホールディングスの保有林は約2.800haのはずだ。
クロスの文様
同じ文様なのに見る角度により表情は全然異なる
2階トイレ
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