フランシス真悟「Ring of Light」
野村不動産は8月6日、「BLUE FRONT SHIBAURA アートツアー」を開催。アート&カルチャープロデューサー・小林裕幸氏がガイド役を務め、3階エントランスの絵画を描いた作家のフランシス真悟氏がゲスト役となって4か所のアート作品について詳細な説明を行った。午前中の「BLUE FRONT SHIBAURA メディアセミナー」と合わせ1日がかりの取材だったが、とても楽しい1日だった。
「アートツアー」では、3階エントランス正面のフランシス氏の「Ring of Light」、この作品と向き合う形で設置されているベ・セファ氏(Bae Se Hwa)の「Meditative Garden」、3階吹き抜け部分の鈴木康弘氏の「無限大をひらく」、28階エントランスのWOW ink.の「Flowing Presence」が紹介され、15の音で多層的な世界観を表現するサウンドスケープについても説明された。
小林氏は、「設計デザインを担当した槇文彦さんと野村不動産さんから話を聞いたのは2022年。〝これは面白いぞ〟と思った。海や空の自然と人々をつなげるコンセプトに共感した。槇さんの最後の作品になったのではないか(槇氏は昨年6月死去。享年95歳)」と語り、それぞれの作品について説明した。
フランシス氏の「Ring of Light」は、1枚2.6m×2.6mの全5枚の油絵。空の青や海の青を基調に見る角度、時間帯によって刻々と変化する自然を表現している。フランシス氏は「仙厓(1750年~1837年の臨済宗の禅僧で画家)に着想を得た。四角いモノ・建物と丸い自然・人が共生する世界を描いた」と語った。
色は光源・物体・視覚の三要素からなる。記者も油絵を描くが、見る角度で油絵の色が変わることなどありえない。なぜか、フランシス氏に聞いたら雲母を絵具の中に練りこんでいるとのことだった。これで謎が解けた。雲母は見る角度によって色が異なる。フランシス氏は下地に塗ったブルーも含め約1年で仕上げたそうだ。
「Meditative Garden」について小林氏は、「ベ・セファ氏は韓国人アーティストで、芝離宮のランドスケープに着想を得て、オーク材を蒸して流線形に仕上げた唯一無二の作品」と讃えた。細長いオーク材3本をつなぎ合わせたものだが、どうしてこのようなことができるのか、記者は絶句した。
ベ・セファ「Meditative Garden」
鈴木康弘氏の「無限大をひらく」はについて小林氏は、「作品はアルミ製。槇文彦氏が鈴木春信の『雪中相合傘』をモチーフにしたように、この作品も1本の傘に寄り添う2人になぞらえて設計されたエピソードにインスピレーション得ている。ファスナーのGipは同じように見えるが、人も建物も全て異なるのと同じ、鈴木氏の世界観がここに表現されている」と語った。
鈴木康弘「無限大をひらく」
28階の「Flowing Presence」についてプロデューサーの萩原豪氏は、「ここで働く約2万人のワーカーの過ごし方の変化をセンサーが感知し、様々なデータも装置に入れて、海や空も同じように二度と同じ形にはならず、その意味ではワーカーがつくっていくインタラクティブアート」と説明した。この28階は一般の人の入室は不可だが、小林氏は「土曜、日曜を利用してアートツアーも企画したい」と話した。
WOW ink「Flowing Presence」
小林氏(左)とフランシス氏
◇ ◆ ◇
先日(8月3日)、三菱地所が行った「石神の丘美術館」所蔵石彫の完成を記念する除幕式を取材し、石彫を制作した作家のケイト・トムソン氏から直接話をうかがったばかりだ。この日もまた、作家・フランシス氏から直接話を聞くことができた。
ケイト氏はイギリス生まれ、フランシス氏はアメリカ生まれの違いはあるが、移り変わる自然と人のかかわりを描いているのは共通する。「アートがそれぞれ主張するのでなく、周囲と共存しているのがここのアートの特徴。海も空も国境を越えてどこかでつながっている」と締めくくった小林氏の言葉が印象に残った。
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