冨樫氏
大和ハウス工業は9月3日、「マンション事業計画説明会」を開催し、同社上席執行役員ハウジング・ソリューション本部マンション事業本部長の富樫紀夫氏(62)が分譲マンション市場を取り巻く市場環境や同社が取り組む社会課題および事業方針、重点取り組み事項などを説明した。
2025年度の売上高は2,900億円(前期比7.6%増)、営業利益は150億円(同37.5%増)、営業利益率は5.2%(同1.2ポイント増)を予定している。
再開発・マンション再生・複合開発の取り組み中の開発案件は再開発が23件、マンション再生が7件、複合開発が10件の合計40件。富樫氏の出身地である北海道は現時点でゼロ。
主な再開発案件として、同社のほか大京、三菱地所レジデンス、西日本鉄道が売主の「久留米ザ・タワーレジデンシャル」(458戸、うち販売対象は343戸)は2025年7月から販売を開始しており、8月末時点で200戸超の契約・申し込みがある。富樫氏は「戸数が多いので、大丈夫かと悩みに悩んだが、好調なスタートを切った」と話した。(坪単価230万円はあとから聞いた)
マンション再生物件として、仙台市初の敷地売却案件「カルコスビル」(従前50戸⇒建て替え後83戸)と、旭化成不動産レジデンスがメインで、同社と長谷工不動産が売主の段階的施工方式を採用した堺市「新金岡C住宅」を紹介した。
複合開発案件では、同社のほか東京建物、京成電鉄も売主になっている「プレミストタワー船橋」(677戸)について、富樫氏は「計画地の対面には当社の東関東支社があり、これを含めた開発を進めようと地区計画の高さ規制をクリアするため地域の地権者などから全員合意を得て、3年くらいかけて役所との協議を進めてきた。現段階で反響総数は4,500件を超えており、一部上層階については銀行を通じていくつか引き合いがある。ようやく着工が始まっており、施工は長谷工さん(コーポレーション)。当初の販売価格は320~330万円を予定していたが、建築費は倍くらいになったので、販売価格は倍とまではいかないが、かなりそれに近い金額になりそう」と話した。
このほか、複合開発物件として西日本鉄道とのJV「(仮称)福岡市西区橋本2丁目計画」(133戸)、同社・野村不動産・三井不動産・総合地所・東方地所JVの総面積約7.5haの東大西千葉キャンパス跡地利用プロジェクト「西千葉レジデンスアベニュー」(マンションは512戸)を紹介した。
また、民泊可能の「モンドミオ」については9案件(うち今後の予定物件は3物件)を紹介した。25年4月に分譲開始した「モンドミオ札幌大通南二条」(65戸、民泊対応55戸)の坪単価は411万円、2025年11月販売予定の「モンドミオ沖縄リゾート北谷アラハ」(41戸、民泊対応は未定)の坪単価は未定。
環境対応マンションとして、坪単価527万円の長期優良住宅&ZEH-M Oriented認定の 「プレミスト天王寺 五条」(34戸)をアンダーで販売開始しており、既に28戸を成約済みであると話した。
2022年から提供を開始した大和ハウスライフネクストの外部管理者サービス「TAKSTYE(タクスタイル)」は2025年8月末時点で138棟で導入されていることを明らかにした。
「プレミストタワー船橋」
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記者がもっとも注目したのは、船橋駅前の「プレミストタワー船橋」がいくらになるかだった。上段の記事では、富樫氏が話したことをほとんどそのまま紹介した。坪単価について記者は単刀直入に「坪単価500万円でどうか」と質問したら「それでは無理」の回答だったので「500万円をはるかに突破するんですか」と畳みかけたら「そうですね」と否定はしなかった。(富樫氏は「浦和」を意識しているはず)
これ以上は書かない。価格は市場が決定する。ただ、当初販売予定の坪320~330万円というのはよくわかる。おそらく用地取得は5年くらい前だろう。当時、総武線沿線では2020年から野村不動産他「プラウドタワー亀戸クロス」(934戸)の販売が坪単価350万円くらいで始まり、その後現在まで再開発を中心に約5,000戸が供給されている大激戦エリアだ。売れ行きは総じて好調だ。
現在の都内側の総武線沿線の坪単価は450万円くらいのはずだから、「船橋」はそれ以上になりそうだ。そればかりか、昨年4月から分譲が始まった千葉駅の一等地マンションの東京建物など4社JV「Brillia Tower 千葉」(491戸)の第1期90戸は坪単価421万円だったので、それも上回る千葉県最高峰になりそうだ。
不動産経済研究所の首都圏マンション市場調査は、着工戸数の4割強しかカバーしておらず、市場を正確にとらえていないという質問について、富樫氏は無言だった。これはリリースを鵜呑みにするメディアにも責任がある。
余談。富樫氏は62歳。主なデベロッパーの社長や役員とほぼ同年代だ。この年代の人の弱点はどん底しか知らないことだ。誰も経験したことがないバブル超えの今後の市場にどう対応するか。〝仲良しこよし〟はどことどこか、人脈の視点からマンション業界を眺めるのもまた楽しい。
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