.jpg)
増田氏(左)とロッシェル・カップ氏(お二人の写真をお願いしたら、秩父宮ラグビー場の前に行われた昨年のデモで撮ったツーとツーショットの写真が送られてきた。素晴らしい写真だ。明後日は新ラグビー場の着工セレモニーが行われる)
長年北米に住み、経営者として国際ビジネスに従事し、その経験をもとに地元杉並区で地域貢献活動を行っている増田義彦氏(SMiLE=Suginami Mirai Life Empowerment=すぎなみの未来を創る会代表)と、神宮外苑再開発に反対するなど精力的に環境保全活動を行っているロッシェル・カップ氏は2月8日、「なぜ世界の都市は『木の量』を競い始めたのか 〜樹冠被覆率が示す都市の本当の実力〜」と題するオンラインセミナーを開催した。世界の都市が重視する指標「樹冠被覆率」を手がかりに、緑が環境・健康・経済に与える影響と、これからの都市のあり方を読み解くのが目的で、百数十人が視聴した模様だ。記者も視聴した。
樹冠被覆率とは、樹木の枝や葉(樹冠)が地上に落とす影の面積比率を示すもので、比率が大きいほど炭素固定、ヒート・アイランド抑制、ウォーカブルな街づくりに貢献するとして、欧米を中心に広がっている概念だが、わが国ではほとんど普及していない。
増田氏はセミナーで、樹冠被覆率は7つの大きな効果-①夏の暑さを和らげてくれる=涼しい街②大雨のとき街を守る=災害に強い街③空気をきれいにする=深呼吸する街④子どもや高齢者も安心=ヒューマンスケールな街⑤心を整えてひらめきを生む=イノベーションが起きる街⑥人が集まる=価値の高い街⑦人と自然が共存する街-があるとし、景観だけでなく健康や経済にも大きな効果をもたらすと説明。
また、増田氏は、東京大学都市・ランドスケープ計画(寺田徹)研究室の白石欣也氏らの論文「東京の都市樹木問題:2013年から2022年にかけて東京で樹木の樹冠被覆率が低下」を引用し、東京23区の樹冠被覆率は2013年の9.2%から2022年は7.3%へ大幅に減少し、杉並区は17.2%から10.4%へ激減したことに大きなショックを受けたと話した。その原因は、民有地のマンション化、狭小敷地化が大きいと語った。自ら住んでいたノースカロライナ州シャーロット市は48%であり、トロントは30%、シンガポールは29%、ロスアンゼルスは21%、パリは26%であることから、東京都23区はいかに〝貧しい〟街であるかを説明した。
一方で増田氏は樹冠被覆率を向上させるデメリットとして①維持管理コスト増②落ち葉対応(広葉樹)③視認性・防犯性④インフラと衝突⑤合意形成の難しさなどを上げ、落ち葉対策では米国ではストリート・スイパーが普及しており、事前に設計管理計画を開示すれば、一気に課題を解決する可能性を秘めていると強調した。
最後に増田氏は、住民も引っ越しの際には、利便性だけでなく樹冠被覆率も選考の一つに加えていただきたいと話した。
◇ ◆ ◇
記者は15年前から「街路樹が泣いている」という見出しの記事を書いている。100本くらいあるのではないか。もちろん、景観だけでなく健康や経済に大きな効果をもたらす、グローバルスタンダードになっているという樹冠被覆率の指標を導入することに大賛成だ。
増田氏が住んでいたという、ノースカロライナ州の人口が100万人のシャーロット市の樹冠被覆率が48%だと聞いてびっくりした。マラソン好きの増田氏は、2.1キロもある巨木で溢れ返っている道路を走っていたという。
誰かも質問したが、東京にはそんな道路はあるだろうか。1か所だけあるような気がする。武蔵陵墓地に至る八王子市の都道がそうではないかと調べたら、距離は844mしかなかった。公園の中を走るしかない。駒沢公園にはマラソンコースがある。距離は2キロだ。
記者も若いころ、仲間と一緒に皇居一周のマラソンを週に一度行っていた。街路樹の根上がりには難儀したが、樹そのものはそれほど高くなく、樹冠被覆率にしたら10%あるかないかだろう。5キロを20数分だから速いほうだった。
残念ながら、わが国は樹冠被覆率を導入する気配は見られない。増田氏は「樹木の剪定コストを抑制するため、強剪定することが当たり前になっている」現状を指摘し、ロッシェル・カップ氏は「街路樹はみんな電信柱のようにぶった切られている」と憤っている通りだと思う。
国土交通省は昨年10月、世界の気温上昇を抑えるための植栽や、雨水の有効活用を行い気候変動へ適応策を紹介し、メルボルンでは「2040年までに樹冠被覆率を22%から40%に増加。具体的な取組みとして、年間3000本の植林や公園の拡張等を実施」することを紹介するにとどまっている。AI技術を採用すれば、いかにわが国の都市の緑環境が退行しているかが分かるはずだ。
市民が地道な活動を通じて行政に樹冠被覆率を導入するよう働きかけるほかないと思う。
◇ ◆ ◇
ロッシェル・カップ氏は東京都の「みどり率」を〝最低〟と酷評した。これには賛否を保留する。同じような指標として、他の都市が採用している「緑被率」があるが、双方の違いは、緑被率は文字通り公園以外の緑(芝生など)や水面を除外して計算し、「みどり率」は芝生・水面も対象としているので、23区の緑被率は18.2%なのに対し、みどり率は24.0%に上昇する。
記者は芝生や屋上緑化、壁面緑化もヒート・アイランド対策として大きな効果を発揮すると思う。要するに「樹冠被覆率」「緑被率」「みどり率」をすべて分かるようにしたらいいと思う。
もう一つ二つ。わが国にはない「i-Tree(アイツリー)」システムを導入すべきだ。ロシェルさん、米国には(わが国は少ないようだが)研究者はたくさんいる。ぜひ、「i-Tree(アイツリー)」に関するシンポジウムを開いていただきたい。Paak-PFIに記者は賛成なのだが、ロッシェルさんはイギリスではこの手法は破綻したという。この問題で激論が飛び交う公開討論会を行ったら、参加者が殺到するはずだ。
「市民と考える、不動産開発と都市の公園緑地の保全」シンポ日本不動産学会(2026/2/2)
〝やめてくれよ区長さん千代に千代田のイチョウが泣いている〟30日夜の無法地帯(2023/12/1)
多摩市の次に好きな草加市だが…街並みは乱杭歯〝美しくない〟と感じる市民6割超(2023/11/23)
マンション価格10年間で5割上昇延床、敷地狭小化も進む東京カンテイ・国のデータ(2020/2/2)
敷地60㎡未満の分譲「狭小住宅」都心部は軒並み50%超最少の練馬は1.9%(2019/8/19)
分譲戸建てから「勝手口」が消えるわが国の文化の崩壊ここにも(2016/10/31)

