RBA OFFICIAL
 
2026/02/22(日) 18:41

滂沱の涙「野菊の墓」の「矢切の渡し」近接 ポラス「ノエン市川」リテラシーは? 

投稿者:  牧田司

251107-028-A1_01699 (1).jpg
「NOEN(ノエン)市川」

 ポラスグループのポラスガーデンヒルズは2月20日、〝NOEN(ノエン)〟シリーズ第2弾の分譲戸建て「NOEN(ノエン)市川」(全21棟)をメディアに公開した。市川市国府台の風致地区に位置し、緑豊かな「苑(エン)」を楽しみ、住民同士の「縁(エン)」を育むため、散歩道"フットパス"や森やフットパスを借景とする、それぞれの魅力を持つ4つの街区を開発したもので、究極の恋愛小説と言える伊藤左千夫「野菊の墓」の舞台となった「矢切の渡し」の地名が今も残る「矢切」が最寄り駅なのも特徴の一つ。

 物件は、北総鉄道北総線矢切駅から徒歩15分、市川市国府台3丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する開発面積約3,820㎡の全21戸。従前は畑。敷地面積は126.10~131.12㎡、建物面積は94.07~99.57㎡、価格は4,780万~6,790万円。私道は約959㎡。フットパスは約59m(幅2m)。構造は木造2階建て。施工はポラテック。

 昨年4月から物件ホームページを開設し、これまでの反響数は148件、モデルハウス来場者は48件。分譲開始は昨年6月からで、これまで11戸を成約。購入者は県内居住者は8組(市川市民は6組)、都内居住者は3組。

 2023年に分譲した「NOEN柏・逆井」に続く「NOEN」シリーズの第二弾で、今回も自然農場を持つestplus17のグリーンコーディネーター小西範揚氏と、エクステリアメーカーのYKK APとコラボレーションしている。地役権を設定し、植栽、インターロッキング、飛び石、ベンチなどを配置したフットパスを演出。住民が共同で実の成る植物を育て、収穫できる共用の「エディブルガーデン(食べられる植栽)」スペースも設けている。

 見学会で、同社京葉事務所部長代理・三浦隆史氏は「仕入れは2024年。地価、資材などが高騰しているときで、ポラスらしい付加価値の高い商品にしようと購入した。素晴らしい記事を期待している」と語った。

 設計を担当した同社設計部企画設計課1係参事・近藤智氏は「設計に当たって2つの課題があった。市の『市民あま水条例』に適合させることと、風致地区規制に対応すること。建てられない敷地の『壁』をどう克服するか腐心した。借景の森(公園緑地)も取り込んだデザインとした」と、誇らしげに語った。また、同部街並みデザイン室プロダクトコントロール係係長・小山慶氏は、フットパスを設けるにあたっては、土留めフロックを設置しなければならなかったが、家の内と外をつなげ、インターロッキング私道にもコミュニティを育む工夫を凝らしたことなどを説明した。

 販売担当の同社京葉事業所営業課1係主任・鴻森岳氏は、反響、販売状況などについて説明し、「60歳以上の方も多く、ポラスグループ分譲戸建ての顧客層と異なるのも特徴」と話した。

 用地仕入れ担当の同社京葉事業所用地開発課主査・北川正俊氏は「この国府台は古い歴史を持つ。9つの教育機関がある文教エリア。私も国府台高校の出身。江戸川のロケーションを訴求すれば売れると判断した」と語った。

251107-062-A1_01822 (1).jpg
フットパス

251107-045-A1_01767 (1).jpg
フットパス

16号棟内観パース (1).jpg
内観パース

IMG_4576.jpg
フットパス(記者撮影)

IMG_4574.jpg
現地

IMG_4570.jpg
右側(敷地の西側)は市が所有する公園緑地

IMG_4547.jpg IMG_4550.jpg IMG_4553.jpg
左から三浦氏、近藤氏、小山氏

IMG_4554.jpg IMG_4558.jpg
左から鴻森氏、北川氏

◇        ◆     ◇

 「矢切」といえば、「矢切の渡し」=伊藤左千夫「野菊の墓」だ。貧農の出の小生は小さいころ、両親とも先生で、とても可愛い同級生の女の子が大好きで、おててつないで家に帰ったこともあった。ノートに相合傘を描き、傘の下に双方の名前を書いて結ばれることを祈った。ノートは真っ黒になり、涙で滲んだ。成人してからほとんど会わなくなったが、嫁いだのは、この前の三井不動産の舟運プロジェクト「&CRUISE」でも書いたのだが、渡し舟が交通手段になっていた母の実家の臨家だった。彼女は今ではただのおばあさんになったと人づてに聞いてはいるが…。小説を読んだのは大学1年生の時だった。滂沱の涙が流れたのを今でも思い出す。

 そんなわけで、取材の案内が届いたとき、「物件」はどうでもいいと思った。同社の物件は数えきれないほど取材しているし、「ノエン」でいえば、「柏 逆井」を取材している。最高の分譲地だった。

 なので、まだ見たこともない「矢切の渡し」は絶対見ようと決めた。取材現場から-矢切の渡し-矢切駅まで車で送ってくれた同社広報には感謝申し上げる(同業の記者の方はどうして見ようとしなかったのか)。現地には、歌手・細川たかし氏自筆の「矢切の渡し」の歌碑があったが、イメージは全然異なるので興ざめした。それでも主人公と女の子がここで別れたかと思うと、感慨深いものがあった。

 取材の帰り。電車の中でスマホから「青空文庫」(記者は、この青空文庫の出版に携わっている方々はノーベル文学賞ものだと思う)で少し読んだ。もう駄目だった。年を取って涙腺も緩んでいるのだろうが、周囲の人に変だと思われるのも嫌で閉じた。クライマックスの場面の一つを転載する。

 「民子はしばらくたって、矢切のお母さん、私は死ぬが本望であります、死ねばそれでよいのです……といいましてからなお口の内で何か言った様で、何でも、政夫さん、あなたの事を言ったに違いないですが、よく聞きとれませんでした。それきり口はきかないで、その夜の明方に息を引取りました……。それから政夫さん、こういう訣です……夜が明けてから、枕を直させます時、あれの母が見つけました、民子は左の手に紅絹(もみ)切れに包んだ小さな物を握ってその手を胸へ乗せているのです。それで家中の人が皆集って、それをどうしようかと相談しましたが、可哀相なような気持もするけれど、見ずに置くのも気にかかる、とにかく開いて見るがよいと、あれの父が言い出しまして、皆の居る中であけました。それが政さん、あなたの写真とあなたのお手紙でありまして……」

 さて、ここからが本題。同社担当者から、反響はポラスの戸建て分譲では珍しい60歳以上の年配者の反響・購入が多いと聞かされとき、ピンとくるものがあった。小生と同じだ。物件名の「市川」や所在地の「国府台」より、最寄り駅が「矢切」に感応した購入検討者が多かったのではないかということだ。

 これは、情報・メディアリテラシーの問題だ。パンフレットには「矢切の渡し」、伊藤左千夫など一言も触れられていない。なぜ、文京区や大森、千葉県でいえば、ここ市川市もそうだが我孫子が人気なのか考えていただきたい。開発事業者は、その土地の価値を最大限に引き出すには、その地域の歴史と文化に敬意を払い、継承するには何が必要かを考えないといけないということだ。

 物件名に「野菊の墓」を入れたら売れるものも売れなくなるだろうし、「矢切の渡し」までは2.1㎞、徒歩なら約30分、自転車で約10分あるが、ホームページ、パンフレットに小説を紹介していたら反響数は数倍に達していたのではないか。

 「市民あま水条例」は悪くないが、高さ十数センチもある土留めブロックでかさ上げしないといけないというのは厳しすぎるのではないか。世田谷区の「雨にわ」のように他の方法があるのではないか。緑被率(樹冠被覆率)を規制に盛り込むのも効果的だと思う。

IMG_4579.jpg
矢切の渡し現場(対岸は東京都柴又当たりか)

IMG_4581.jpg

IMG_4582.jpg

IMG_4585.jpg

IMG_4586.jpg

三井不国内初の舟運プロジェクト「&CRUISE」船内はほぼ100%再生材他社も見習え(2026/1/28)

「樹冠被覆率」の導入に大賛成 SMiLE・増田氏とロッシェル・カップ氏がセミナー(2026/2/10)

「雨にわ」の普及・実証事業グリーンインフラ大賞「国土交通大臣賞」受賞(2025/1/29)

初めて見た30%・50%×200㎡の分譲戸建てまるで別荘ポラス「柏逆井」(2023/5/2)


 

 

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン