
「イニシア祖師ヶ谷大蔵」
コスモスイニシアは3月18日、創業50周年(2024年)記念フラッグシップマンション「イニシア祖師ヶ谷大蔵」が完成したのに伴うメディア向け内覧会を行った。従前敷地が地域に親しまれた銭湯(温泉)だったことから、中庭にあった井戸を一つ保存し、ラウンジに引き込み、水音がする仕掛けを施し、歩道状空地を設けるなどして建基法55条2項の緩和措置を受けた意欲的な物件だ。
物件は、小田急線祖師ヶ谷大蔵駅北口から徒歩5分、 世田谷区祖師谷三丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率70%、容積率150%)に位置する4階建て全34戸。専有面積は49.67~119.12㎡、価格は6,898万~28,858万円、坪単価は636万円。2026年3月に竣工。デザイン監修はコスモスイニシア一級建築士事務所/コスモスデザイン。施工はライト工業。
2025年2月にホームページを開設、これまでの反響数は約900件。コンセプトルーム開設は4月、これまでの来場者は170件。契約開始は6月から、これまで22戸を成約。
評価されているのは、駅に近い低層で、便利な商店街(ウルトラマン商店街)に近いこと、緑量の多い敷地、井戸水が利用できること、心地よい音色を奏でる水什器など。契約者の属性は、建設地周辺と世田谷区内居住者が半数以上、年齢層は30代までが約半分、40代が20%、60代も17%あり、一戸建てから選択するケースも見られるという。
内覧会で同社建築本部建築第一部一課兼経営管理本部サステナビリティ推進室・向山直登氏は、「創業50周年の〝人生を変える〟ブランドタグラインや、永く地域に愛されてきた銭湯・温泉の想いを背負いながら企画した。水の神様と縁がある井戸を残し、手押しポンプを設置。ラウンジには水什器も設置した。建物はセットバックさせ、歩道状空地を設け緑化を図ることで、建基法第55条2項の緩和措置(1低層の高さ制限10m⇒12m)を受け、壁式工法を採用することで柱や梁型を出ないようにした。専有部はコーナーサッシを多用し、緑を近くに感じる断面計画とした。施工は40周年記念と同じライト工業」などと語った。

歩道状空間を設け、植栽帯へ

アール状の外観デザイン

内観の窓にもアール形状を採用している

この部分は直線的デザイン

モデルルーム(天井までのサッシ)
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この物件については昨年7月、コンセプトルームを見学取材しているので、そちらの記事と、40周年記念の「武蔵新城」と合わせ読んでいただきたい。完成した建物を見て、向山氏がいかにこの物件に心血を注いだかが理解できた。販売開始は創業50周年の2024年にしたかったそうだが、1年伸びたのは設計に時間がかかったからだ。
設計に時間がかかった理由の一つ。温泉が閉館(2023年3月31日)した翌日、オーナー、従業員、関係者、利用者を呼んで「館謝の会」を開いたところ、400人近く集まったという。これだけたくさんの人の想いを背負い込んだら、いい加減に済ますことなどできないはずだ。
その想いを形にしたのが井戸だ。大規模物件に井戸を掘った事例はいくつか取材しているが、井戸を保存し、手押しポンプだから維持管理も楽だ。樹木の水遣りやビニールプールにも利用できるはずだ。
その井戸の水をラウンジに引き込み、設置した水什器から水音がしたのにびっくりした。水は再び土に返すというのがまたいい。観葉植物も本物だ。
似たものでは、エントランスホールに水琴窟を設けた2016年分譲の三菱地所他「ザ・パークハウス 国分寺緑邸」(82戸)がある。世田谷区には「雨にわ」制度もある。小田急バス×ブルースタジオ「meedo」は最高に素晴らしい。「水」はマンションや戸建てのテーマになるはずだ。
アール形状の外観・内観デザインにも驚いた。すべてアール形状にしているわけではなく、シャープな直線ラインにしているところもある。多分、朝と夕方では表情が異なるはずだ。こんなマンションもまた他にないはずだ。

中庭の手押しポンプ

ラウンジの水什器

向山氏
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同社の広報担当者は、1974年にマンション事業を開始してから2025年12月末の累計供給戸数は109,389戸だと報告した。年間でもっとも多かったのは1999年の6,728戸で、2番目は1989年の5,898戸だ。
今は供給戸数を争う時代ではないが、累計10万戸超とはどのような数値なのか知りたくて、ランキングにしたら何位か同社に尋ねたら、6~8位ではないかという答えだった。
そこでネットで調べてみた。トップは大京で約47万戸。2位は三井不動産レジデンシャルの約23万戸、3位は三菱地所レジデンスの約20万戸(うち旧藤和不動産が10万戸くらいと記者は推計する)。このベスト3は間違っていないと思うが、後が分からない。住友不動産、大和地所レジデンス(ダイア建設含む)、コスモスイニシア、大和ハウス工業、野村不動産、東京建物、東急不動産あたりがベスト10入りするのではないか。
市場がどんどん縮小する中で、どこが生き延びるのか、どこがここに割って入るのか。
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