エース伊藤博 先発-火消しに大活躍
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 合 計 | |||
東急リバブル | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 2 | ||
住友不動産販売 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | X | 3 |
東急リバブル最終回の反撃実らず猪股14者連続完全実らず
〝もう一つのRBA〟野球大会Vは住友不動産販売――第5回Club-D cup決勝戦、東急リバブル-住友不動産販売が5月1日、東京ドームで行なわれ、住友不販が3-2で接戦を制し初優勝。エース伊藤が先発に火消しに大活躍。リバブルは最終回、無死満塁と攻め立てたがあと一歩及ばず。ベテラン猪股投手の14人連続斬りに応えられなかった。前回は三井不動産リアルティに敗れており、2年連続の準優勝に終った。試合には 田中俊和・住友不動産販売社長、東急リバブル・中島美博会長も応援に駆けつけ盛り上がった。連休前の平日にも関わらず、双方で500人くらいの応援団が集まった。
住友不販・田中社長、東急リバブル・中島会長も応援に駆けつける
住友は初回、相手先発の藤巻投手を攻め、1死から2番和田が内野安打、3番下田はあわやスタンドインかと思われた大飛球のファウルを左翼に放った後、結局四球。4番の前田が右翼前にきれいな安打を放ち満塁に。次打者越前は深々と左翼に犠飛を打ち上げまず先制。
勢いに乗る住友は2回、制球が定まらない藤巻から4つの四球と暴投、2つの3塁盗塁などでかき回し2点を追加。なおも1死2、3塁としたが、ここで交代したリバブル猪股投手に押さえ込まれた。
その後は、緩急自在の猪股に翻弄され、14人連続して凡退。安打は初回の2安打のみだった。
伊藤博は6回を被安打6、1失点の好投。7回から登板した越前は3連続四球を出し満塁のピンチを迎えたが、ここで伊藤博が再び登板して併殺崩れで1失点したがピシャリと締めた。野手陣も攻守で投手を盛り立てた。
リバブルは惜敗。3点を追う5回、2死から猪股の適時打で1点を返し、7回には無死満塁から併殺崩れの間に1点を挙げたがそれまで。冷静な伊藤博に抑えられた。打線のつながりも欠いた。
先発の藤巻は2回途中まで2安打6四球と制球を乱し降板。
○古賀監督 あそこは予定の交代。越前にも経験させたかった(越前は初のドーム)
○伊藤博 もともと交代は決まっていた。ライト? 再登板もあると思っていた
○越前 もちろんスタンドを沸かすつもりで投げたわけではない。ストライクが入らなかった。申し訳なかった
○前田 あそこで安打を放ってチームが盛り上がった
●大槻監督 投手交代? 3点は限度だと思った。猪股は肉離れを起こしており、無理させたくなかったがよく投げた。負けたのはわたしの責任
●猪股 肉離れ? 火曜日に起こした(第17回RBA大会優勝時を髣髴とさせる好投)
●山田 …(声をかけるのがためらわれるほど落ち込んでいた。藤巻をリードできなかったことを悔やんだのか。しかし、猪股とのコンビが復活した)
●中島美博会長 残念でしたね。しかし、選手はよく頑張った。来年優勝して欲しい
●大見部長 昨年は三井さん、今年は住友さん。2連敗で今夜は眠れそうもない
△谷貝 1月に退社しました。ハワイで不動産業しています(退社したことなど知らなかった。練習にも参加していなかったので仕事が忙しいのか調整不足かと思っていた)
住友不販 ドームを興奮の坩堝に包み込む
脚本・古賀監督-主演・伊藤博投手-演出・越前
脚本は古賀監督-主演は伊藤博投手-演出は越前の試合だった。この日、スタンドは〝リバブルブルー〟に染められた。昨年、三井リアルティの〝リハウス レッド〟にしてやられ、雪辱を期して同社のコーポレートカラーであるブルーのTシャツを大量発注。400~500人の応援団がスタンドを埋めた。
対する住友不販は〝仕事優先〟なのか、数的には完全にアウェー。数十人しか集まらなかった。
しかし、試合は完全に住友ペース。エース伊藤博の負けん気に火がついた。古賀監督も策士だ。伊藤博の強気を巧みに引き出した。6回を6安打1失点に抑えると、スパッと右翼を守っていた越前に交代。
ここからが監督采配のにくいところだ。スコアボードには4番「DH 前田」のところに「1 伊藤博」と点灯した。DHを外したのだ。その意味はすぐ分かる。
初回に貴重な犠飛を放ち気をよくしている越前は満を持して7回のマウンドへ。伊藤博-越前のリレーはRBAでも度々成功させている必勝パターンだ。
ところが、越前はストライクが全然入らない。リバブルの8番打者から3者連続四球で満塁のピンチに。点差は2点。逆転のランナーまで出してしまった。
ここで、古賀監督がマウンドに歩み始めたとき、伊藤博は足早にベンチに戻ってきた。そして伊藤博が再びマウンドに立ち、越前は右翼にまた戻った。
観衆は湧きかえった。プロ野球でもそう見慣れない光景だ。逆転を信じるリバブル応援団はこぶしを振り上げ、旗を振り、カンビールを握りしめ、大声援を送った。
それが奏功したかどうか、再び伊藤博の負け時魂を呼び込んだ。伊藤博は動揺のそぶりも見せず、2番猪股を当たりそこないの3塁ゴロに仕留めて3塁走者を 本塁で封殺。1死。続く3番近藤も3塁ゴロで3塁走者の生還を阻んだ。ここでミスもでた。併殺を狙った伊藤亮は1塁へ送球する間2塁走者が本塁を陥れ、そ の差1点に追い上げられた。
続く打者はリバブルの主砲河野。河野は2回に左翼前安打を放っている。一打逆転の場面。ドームは絶叫、歓声(ただの酔っ払いもいたかもしれないが)で耳 が遠くなった記者の三半規管を揺さぶった。伊藤博はあくまでも冷静。河野を力ない3塁ファウルフライに討ち取り、チームを初優勝に導いた。
試合後、伊藤博は「越前と交代することは決めてあった」と予定の投手交代であることを明かした。古賀監督は「同点まではいい。越前に経験をつませたかった。こういうこともあろうかと、伊藤博は外野に付けた」とこれまた平然と語った。
越前もまたただでは起きない。「ストライクは取りに行ったが、打たれたくもなかったのでボールになった。先取点は僕の犠飛」と、不敵な笑みをこぼした。
リバブルが1点止まりだったらここまでドームは沸かない。〝片手落ち〟ではリバブルに失礼だと塩を送り、最後はハラハラドキドキさせながら自軍に勝利をもたらす越前もまた心臓に毛が生えたかもしれない。
所長に昇格した主砲前田はDHで出場。「バンザイ」(失策)のリスクを回避した古賀監督の脚本が冴えた。呵呵大笑したのではないか。