記者が選んだ2019年首都圏ベスト3マンションは、三井不動産レジデンシャルなど10社の「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」、三菱地所レジデンス「千住ザ・タワー」、大和地所レジデンス「ヴェレーナシティ上大岡」と決定した。
「晴海」は衆目の一致するところだろう。「千住」は、東急不動産他「豊洲」と東京建物他「白金」も選択肢にあったが、北千住で坪単価380万円という単価設定と、それでも売れ行き好調なのを評価して選んだ。もう一つの「上大岡」は、大手デベロッパーの物件ばかりでは面白くないし、大激戦地で早期完売した商品企画に惚れこんで選んだ。
物件選定に当たっては、記者が2019年に見学した72物件を対象にし、話題性、商品企画、売れ行きなどを総合的に判断した。
見学物件は、前年の86物件、前々年の105物件から大幅に減少した。その理由は供給そのものが減ったことや記者のフットワークの衰えもあるが、高額を中心に取材に応じてもらえなかった物件が少なからずあったのも影響しており、モデルルームを見学できるのは月曜日と金曜日、それと火曜日又は木曜日しかないのも理由といえる。ただ、見るべきものはほとんど見たのではないかと、この1年間を振り返って思う。
2018年 記者が選んだ「ベスト3マンション」(2018/12/20)
2018年 記者が選んだ「首都圏 話題のマンション」(2018/12/26)
文句なしにいい「HARUMI FLAG」だが…
釈然としない著しい利益増の〝儲け折半〟
「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」
「晴海」については、記者がとやかく書くまでもない。多くの評論家先生や業界紙、さらに「掲示板」も加わって大にぎわいのようだ。他でどのように評価されているのか記者はあまり関心はないが、全体のランドスケープデザインを含めた商品企画は間違いなくトップレベルにあると思う。文句なしの選定だ。
ただ、一つ言いたいのはやはり価格についてだ。坪単価の是非について言及した論評記事はなく、市場価格との比較記事くらいしかないのではないか。
まあそれもいいが、土地の取得経緯を抜きにして「晴海」を論じることはできないと思う。記者は、デベロッパー10社が用地を取得した3年前の段階で、1種当たり8万円とはじき、分譲坪単価は250万円と予想した。
オリンピック・パラリンピックの特殊要因があるとはいえ、ただ同然の土地代を考えれば〝市場価格〟での供給ははあり得ないと考えたし、東京都がそれだけ安く売却するのなら、デベロッパーもまたその分だけ購入者に還元すべきというのが記者の結論だった。
実際はどうか。今年分譲された第1期600戸と第1期2次340戸の平均坪単価は300万円を超えているようだ。購入者から聞いたのだが、消費税額からしてやはり非課税の土地代は坪8万円のようだ。1種8万円とはじいた記者の計算は間違っていなかったことが証明された。
ここで気になるのが、当初、都とデベロッパーの間で交わされた「著しく利益が上がった場合は、譲渡金額について協議する」特約条項だ。
「著しく」とはどの程度かについて、小池百合子都知事は7月26日の記者会見で「全ての住戸の引渡しが完了しまして、収益が確定した時点で分譲予定収入、1%を超える増収があった場合には、敷地譲渡金額の変更について協議することといたしておりまして、その増収分については、経費などを除いて折半する」と語っている。
予定収入の1%を「著しく」と判断するのもどうかと思うが、予定収入とは坪単価約250万円ではないかと記者は見ている。現段階ではなんとも言えないが、協議に入る可能性が高まったと考えるのが妥当だ。「儲けを折半」というのは、あぶく銭のやり取りのようで、購入者が蚊帳の外に追いやられるのは釈然としないものがある。
記者が一番心配しているのは新交通システム「BRT(バス高速輸送システム)」が機能するのかどうかという点だ。これが狂えば売れ行きを大きく左右する。
「HARUMI FLAG」「著しく利益増」の「著しく」とは当初売上計画の1%(2019/7/30)
東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟(2016/8/4)
驚嘆の坪380万円 地所レジ「千住ザ・タワー」
全179戸 わずか10カ月で残り1戸
「千住ザ・タワー」
三菱地所レジデンス「千住ザ・タワー」をベスト3のうちの一つに選んだのは大正解だった。選ぶことを決めてから同社に進捗状況を聞いたら、何と残りは1戸というではないか。分譲住戸は179戸だ。普通の物件だったら10カ月で完売というのはあり得ることだろうが、あの北千住で(失礼)、坪単価380万円で早期完売はまずありえないと思う。億ションも30戸くらいあったのではないか。
これには、京王線の次くらいに東武東上線の市場を熟知していると自負する記者はさして高くはないが鼻をへし折られたような気分だ。東建の「目黒」と同じくらいの衝撃だ。アンビリーバブル!
記者の当初の予想は坪340~350万円だった。これは、三井不動産レジデンシャルが2年前に分譲して人気になった「パークホームズ北千住」の坪単価330万円(同社もこの値段で売れるか疑心暗鬼だった)を参考にはじき出したものだ。どう考えても坪350万円は取得限界を超えていると思った。
なぜ売れたか。これは〝東武伊勢崎線の北千住〟のイメージしかない記者が完全に読み間違えた。地所レジと「北千住」を甘く見ていた。完敗だ。
千代田線だと三菱地所の本社がある大手町駅まで何と16分、199円で着くではないか。大手町を起点とすると16分圏は渋谷だ。
くやしさ紛れに一発。「北千住」の坪380万円の7,600万円(20坪)を買うのなら、わが多摩センターなら30坪が買える。そういう選択肢はないのか。時は金なりだが、郊外のゆったりした居住空間と住環境は金じゃ買えませんよ。
「千住ザ・タワー」のRBAタイムズ記事 dsk18801639-399-2.pdf
地所レジ「千住ザ・タワー」 坪300万円台後半 〝住むなら北千住〟あわび千円!(2019/1/23)
4方良し〟足立区最高値 三井不レジ「パークホームズ北千住」1期78戸が即日完売(2017/11/24)
大和地所レジデンス「ヴェレーナシティ上大岡」
圧巻の商品企画 激戦地で際立つ 132戸完売
「ヴェレーナシティ上大岡」
大和地所レジデンス「ヴェレーナシティ上大岡」は、見学した時からベスト3に入れようと考えていた。駅から徒歩13分とやや距離があるが、建ぺい率40%(容積率150%)、高さ規制15mの厳しい風致地区規制を巧みに生かした平均100㎡、1戸当たり約53本の植栽など商品企画・ランドスケープデザインが秀逸だったからだ。
同社によると、販売開始は2019年1月。12月で契約完売。計画より3カ月短縮できたという。購入者層は30代~40代前半のDINKS、ファミリーの一次取得者がメイン。住み替えの二次取得者も約20%。(この20%は大きな数字だ。遠くなっても広いほうを選んだということか)
ここで改めて書くことはほとんどない。取材したときの感動が伝わると思うので、その記事を読んで頂きたい。
上大岡駅圏ではいま600戸超のマンションが分譲中だ。単価差はあるが、プランは似たり寄ったり。グロスを抑えるため専有面積圧縮型が多い。同社の物件は、それらとは真逆の物件だ。単価はほぼ半値、100㎡でも20坪マンションより安く買える。他社物件は同社の物件を際立たせる〝刺身の妻〟と言ったら怒られるか。
そんな芸当ができるのはやはり同社の実績だ。これまでも広い居住空間、良好な住環境に重点を重く第一次取得にターゲットを絞り込んだマンションをたくさん供給してきた。
100㎡マンションの供給戸数の多さなら、アッパーミドル・富裕層向けが圧倒的に多いはずの三井不動産レジデンシャルがトップかもしれないが、第一次取得層向けがほとんどの同社もそんなに引けを取らないのではないか。豊かな居住空間を選好の第一理由とする層の心を同社は捉えた。価値ある早期完売だ。
風致地区巧みに生かした住戸プラン・ランドスケープ秀逸 大和地所レジ「上大岡」(2019/4/24)