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2020/03/07(土) 17:15

ポラス「浦和美園」 全340戸を1年9カ月で竣工完売 マンション売上40億円積み増し

投稿者:  牧田司

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「ルピアグランデ浦和美園」

 ポラス中央住宅の「ルピアグランデ浦和美園」全340戸が分譲開始1年9カ月で竣工完売した。隣接する全2棟697戸のNTT都市開発「ウエリス浦和美園」は竣工後それぞれ2~3年経過するのに100戸近く残っている。〝苦戦エリア〟での早期販売だけに価値がある。同社のマンション事業の今期マンション計上予定額は130億円だが、この物件の〝想定外〟の売れ行きで170億円に達する見込みだ。

 同社マンションディビジョン部長・中島教介氏は3月6日、「キャンセルが2戸出たが、今週末に契約する予定。来場者は約1,200組。歩止まり率は約30%と高いが、NTTさんの宣伝もありがたかった。購入者は地元と川口居住者で約半分。分譲当初は月10戸のペースだったが、2019年に入ってからは他のエリア物件の価格の上昇が追い風ととなり月20戸に上昇した。計画では今期計上は260戸くらいと見ていたが、予想外の売れ行き。マンション事業全体の今期計上予定130億円を上回る170億円に達する見込み」と語った。

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メインエントランス

◇       ◆     ◇

 この物件については、添付した記事を参照していただきたい。一言で言えば、この単価(156万円)で、この設備仕様レベルのマンションはまず分譲できない-これが勝因だ。痒いところに手が届く商品企画は舌を巻くほどだ。

 完売したから書くのだが、5年前だったか、同社がこの土地をUR都市機構から取得したと聞いて、正気の沙汰ではないと思った。2016年に同社は同じ沿線の「ルピアコート川口戸塚」200戸と「ルピア「ルピアコート鳩ケ谷本町」146戸の販売を開始した。3物件で686戸だ。

 その後、「川口戸塚」と「鳩谷本町」も順調に売れたのには驚いたが、〝柳の下〟はないと思った。「浦和美園」はよく売れて年間100戸、完売まで3年半かかると読んだ。下手をすれば、マンション事業担当の同社取締役事業部長・金児正治氏の〝クビ〟が危うくなると心配もした。

 今でも記者の読みは間違っていないと思う。かつて川口元郷、鳩ケ谷、東川口などの埼玉高速鉄道沿線のマンションはまずまずの売れ行きを見せていたが、ここ数年間は用地・建築費の高騰と購入層の所得の伸び悩みによる板挟みが顕在化し、竣工までに完売する物件は姿を消したからだ。〝3,500万円の壁〟が立ちはだかる沿線だ。

 加えて、「浦和美園」は始発駅にも関わらず、遅々として進まない駅前開発(記者は都市開発の失敗とみているが)が足かせとなっている。4年遅れて開業したつくばエクスプレスの流山おおたかの森、柏の葉キャンパスと比べていただきたい。街づくりのスピードは雲泥の差で、マンション単価は広がる一方だ。

 ポラスの〝引き立て役〟となったNTT都市開発「ウエリス浦和美園」はいい物件だと思う。目の前が大きな公園(緑はまだ成熟していないが)なので住環境もいい。坪単価170万円は適正だと思う。販売が長期化しているのは、ひとえに駅前がなかなか整備されないことが主因だと思う。

 記者はこの10年間で10回くらい浦和美園駅を訪れている。駅前にはゆっくりコーヒーを飲みタバコを吸い、食事ができるところが一つもない。駅前のホテル(インだが)は宿泊者しか利用できない。レストランなどない。喫煙所は駅前に最近設置されたが吹きさらしだ。記者はサッカーファンではないが、サッカースタジアムまで15分も歩くファンがかわいそうだ。

 ポラスは、エリアでの戸建て分譲の実績も多く需要層の特性を熟知しているはずで、NTTの動向を見ながら販売できた有利さはあったが、何しろ双方合わせて1,000戸を超える多さだ。どう考えても〝売れるはずはない〟という結論に達した。

 ところが、2018年6月に分譲開始してから年内までに約130戸を成約したと聞いて、わが耳を疑った。フェイク・ニュースではないかとも疑ったが、まさか同社はうそを言うはずがないと考え、この年の「ベスト3マンション」の一つに選んだ。

 記事では「坪単価が156万円(当初は150万円と書いた)と安く、同社オリジナルの『ピアキッチン』付きを約4割に高め、食洗機、ディスポーザー、バックカウンター・吊戸棚、98センチの廊下幅、複層ガラスなどを標準装備にしているのが人気なのだろうが、信じられない」と書いた。

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一般にも公開される広場

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サブエントランス付近

◇      ◆     ◇

 読者の皆さんはこの販売スピードをどう評価するか。記者は、埼玉高速鉄道沿線の3物件686戸を4年間で売り切ったのは奇跡だと思う。

 都心部の大手デベロッパーによるアッパーミドル・富裕層向け、コンパクトはよく売れているが、郊外部は完売まで時間がかかっている。この物件に近い売れ行きを見せた最近の郊外物件では、野村不動産が2016年に分譲開始した全516戸の「オハナ淵野辺ガーデニア」(坪単価148万円)と、2018年分譲の新日鉄興和不動産・総合地所「リビオシティ・ルネ葛西(TOKYO ALOHA PROJECT)」全439戸(坪単価214万円)くらいしか思い浮かばない。

 中島氏は、「今後は当社の主な顧客層である年収400~600万円向けの郊外・大規模・駅近のコンセプトが通用するか、潮目が変わらないか、建築費も上昇しているだけに注視する必要があるが、今度分譲する『大宮』をぜひ見ていただきたい。凄いですよ。『柏』? 『柏』も坪単価150万円台で勝負する」と話した。

 ポラスは浦和レッズの公式スポンサーなので、記者は「早期完売はNTTさんがアシストしたのでは」と聞いたが、「……」中島氏は答えなかった。

 それにしても、同社マンションディビジョンのスタッフは14名だというから、一人当たり売上高は約12億円だ。金児氏は呵々大笑しているのではないか。

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広場に植わっているヤシの木は1本60万円とか。何本もあった

2018年 記者が選んだ「ベスト3マンション」(2018/12/20)

〝待つわ〟ピアキッチン4割に設置 レベル高いが一層の差別化を ポラス「浦和美園」(2018/6/2)

ポラスグループ 埼玉高速沿線でマンション強化200戸の「川口戸塚」分譲開始(2016/7/30)

業界とマンション適齢期に勇気 野村不「オハナ淵野辺ガーデニア」驚異的売れ行き(2018/1/13)

アロハ! 商業・価格・平置き 3点セット奏功 1期162戸即完 新日鉄興和「葛西」(2018/4/10)

物件特性をどうアピールするかNTT都市開発他「ウエリス浦和美園」(2016/10/25)

 

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