組子デザインの内装
アキュラホームは10月21日、日本初の純木造8階建て「普及型純木造ビル」を建設すると発表した。本社ビルとするもので、特殊技術、特殊部資材を多用せず、木造軸組み工法の製材、プレカット加工技術などの生産システムを使うことで、従来の木造ビルの3分の2のコストを目指す。完成は2024年を予定している。
建物は、さいたま市西区三橋5丁目な位置する敷地面積約8.944㎡、8階建て延べ床面積6,000㎡の普及型純木造ビルと、1500㎡の2階建て低層中大規模木造建築物で構成され、主要用途は事務所、宿泊体験棟、ショールーム(約2,000 坪)、スタジオ、駐車場など。、1棟のビルで約500戸分の木材を利用する。
低コストで可能な中大規模木造建築の「普及型純木造ビル」のプロトタイプを構築するために、木質構造研究の第一人者である東京大学教授の稲山正弘氏、組子構造による美しい建築を手掛ける野沢正光氏、木を活かしたダイナミックな建築を手掛ける原田真宏氏・原田麻魚(まお)氏に設計を依頼する。
日本初となるのは、①免震装置に頼らない耐震構造による構造体の木を現しとした木造8階建て②木構造体の接合部を特殊な金物に頼らず日本古来の継手・仕口の技術を住宅用プレカット工場で量産加工してつくる木造8階建て③伝統的な木組み技術とビスだけで壁倍率20倍を超える高耐力組子格子壁を使った木造8階建て。
同社は、グループの工夫と技術を注ぎ込むことで将来的には画期的な低コスト(坪120万円以下)の実現を目指すという。
完成予想図
◇ ◆ ◇
この日(10月21日)、同社は宮沢俊哉社長も出席したメディア向け発表会を京王プラザホテル新宿で開いた。残念ながら記者は、以前から決まっていた別の取材のため出席できなかった。
いまプレス・リリースをコピペして記事を書いているのだが、設計を稲山氏、野沢氏、原田両氏依頼し、建物は特殊金物を使わず、現しの木造8階建てを低価格で実現するというのに拍手喝采したい。
稲山氏とは「耐力壁ジャパンカップ」や同社の「住まいと暮らしサロン」など10回以上お会いし、話を聞いているし、野沢氏、原田両氏の手掛けた建築物・作品も見学している。木造建築の英知を結集する凄い建物になるのは間違いない。
低コストも素晴らしい。この価格について住宅新報は「宮沢社長は『正確なデータは捉えられないが、木を現しにして、木のよさを出そうとした場合で坪単価は350万~400万円ぐらいだと思う。それを150万~200万円で収めたい。目指すは坪単価で150万円。5階建てまでなら、150万円でできるのではないか』と説明した」「宮沢社長は『自己満足として1棟建てて終わりにすることもできた。しかし、工務店の人たちに公開し、造ってくれれば普及は早くなる。だからオープン工法にこだわりたい。技術を共有することで、環境貢献も加速できる』と抱負を述べた」(10月26日号)と報じた。
「坪350~400万円」というのは、いかに現しが美しいとはいえべらぼうな価格だ。RC造でもそれほど高額な建物はそうないはずだ(例えは適当でないかもしれないが、坪単価300万円の「HARUMI FRAG」の土地価格と建物価格の比率は10万円:290万円)。それを「坪150万~200万円に収めたい」というから驚きだ。
完成は3年後だ。ひょっとしたら、そのころには木造の中高層建築物はニュースにもならないごく当たり前の時代になっているかも。ぜひそうなってほしい。
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