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2022/04/22(金) 13:04

事業参入10年で投資額・スタッフ10倍増 社会課題の解決へ次の10年 三井不ロジ事業

投稿者:  牧田司

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MFLP塩浜Ⅱ」

 三井不動産は421日、ロジスティクス事業に関する記者説明会を開催。同社専務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏(6月の総会後に同社取締役に就任予定)が事業開始10年の歩み、今後の取り組み、新規開発物件の紹介などについて1時間以上にわたり説明した。説明会には50名(うちオンライン24名)が参加した。

 三木氏は、「10年前スタートしたときは社員6名、契約社員2名の8人だったが、現在は80名。組織的には完成形。投資額は三井不動産ロジスティクスパーク(MFLG)投資法人を上場した2016年の資産規模は約755億円だったが、現在の累計投資額は約7,000億円。10倍に達した。これまで人を大切にして展開してきたが、事業が大きくなりヒューマンエラーもある。運営強化を図るためロジスティクス運営部を新設し、テナント満足度をさらに向上させる。用地取得環境は厳しいが、入札案件より取得費を抑制できる共同事業、区画整理事業などを重点に置き、賃料上昇をテナントに転嫁するようなことはしない」などと話した。

 次の10年を見据えた施策として、業界を取り巻く環境はサステナビリティ、DX、多様化するテナントニーズ、コロナ対策などに対応することが求められており、これらに迅速に対応し事業の拡大を図り、社会課題の解決に貢献するとした。

 同事業施設は421日現在、竣工済み37物件約310万㎡、開発中16物件約110万㎡、合計53物件約420万㎡で、累計投資額は約7,000億円。竣工済み施設の稼働率は99%という。

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三木氏

        ◆     ◇

 「最早、後発でない。嫌悪施設でもない」-衝撃的な発言をしてから4年。その後も着実に実績と歳を重ねたためか、この日の三木氏のスピーチはとても穏やかだった。過去10年の実績や直近の施設の紹介画像を含め約1時間20分費やし、メディアの質問にも一つひとつ丁寧に答えた。とても分かりやすい説明会だった。

 とはいえ、説明会に参加した50名のメディアのうち少なくとも小生はしっかり理解しているとは言い難い。木を見て森を見ずと一緒だ。市場の全体像をまったく把握していないからだ。

 だから、累計投資額が7,000億円に達し、施設延べ床面積が同社のオフィスビル貸付面積の約336万㎡を上回る約420万㎡という数値は、市場全体でどのような意味を持つのかよく分からないのだが、凄い数字であることはよく理解できる。

 同社はロジスティクス単体の売上高は公表していないが、同事業を含む「投資家向け」分譲セグメント売上高は20213月期決算で初めてマンション・戸建て分譲を上回った。歴史的なことだ。仮に投資額を売上高とすると年間700億円だ。これをスタッフ80人で割ると1人当たり約8.8億円だ。驚異的な数字だ。

 用途がまるで異なり、1種当たりの地価は少なくとも数十倍の差があるロジスティクスとオフィスビルを単純比較するのは乱暴に過ぎるが、分かりやすい指標だ。これをわずか10年で達成したのだから、やはり凄いと言わざるを得ない。

        ◆     ◇

 今回の説明会で初めて知ったことが一つある。同社は土地区画整理事業による開発に注力しているようで、新たな開発案件として発表された6つのプロジェクトのうち3つがその事業スキームを活用したものだ。

 土地区画整理事業は、「都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図る」(土地区画整理法第二条)と定義されており、かつて良好な住宅地を産む「都市計画の母」と呼ばれた。「宅地」(法律的には公有地以外の土地)とは住宅地のことしか小生は思い浮かばない。

 この土地区画理事業は地価上昇を前提にしたもので、バブル崩壊後は極めて厳しい環境にさらされている。計画立案から都市計画決定-着工-換地処分まで時間とコストがかかり、開発地の価値はどんどん目減りするからだ。記者は減歩率が98%という悲惨な事例も取材した。同社も都心部の再開発を除きこの事業から撤退した。継続して事業参画しているデベロッパーは野村不動産くらいだ。

 ところが、三木氏はこの開発手法を積極的に活用していくと話した。そこで、国土交通省に問い合わせた。同制度によって物流施設が整備された事例はどれくらいあるのかと。同省は「データは公表していない。探せば見つかるはずだが、そのような事例は増えていると聞いている」と答えた。

 これ以上先に進めないが、「物流施設」の整備を目的とした区画整理事業はどれくらいあるのか、今後どうなるのか、「物流施設」は住居系用途地域では許可されないはずだから、住宅地との一体開発は可能なのか、減歩率はどれくらいか、「物流施設は嫌悪施設ではない」(法的には「嫌悪施設」の定義はない)時代がやってくるのか-この分野は取材フィールドとしてもとても面白い。

        ◆     ◇

 環境にも配慮した物件として紹介された「MFLP塩浜Ⅱ」に衝撃を受けた。三木氏は次のように説明した。

 施設は月島機械と共同開発したもので、敷地面積は約82,600㎡、4階建て延床面積は約183,000㎡。施工は鹿島で免震、独創的なデザイン、緑地空間、顔認証、非接触エレベーター、カフェテリア、フィットネス、非常時72時間電力供給、AIロボット、ハイブリッド照明

 話を聞きながら確かにこれは「嫌悪施設」ではないと思った。同社の〝パーク・ホームズ〟よりはるかに優れているのではないか、ロジスティクスにできるのならマンションだってできるのではないかと。三木氏は記者見学会を実施すると話した。しっかり見学してレポートしたい。

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記者説明会(東京ミッドタウン日比谷 日比谷三井タワー)

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