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2023/03/09(木) 18:56

「参入は歓迎。市場が育つ」MIMARU・藤岡社長 アパートメントホテル勉強会

投稿者:  牧田司

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MIMARU SUITES東京・日本橋」

 大和ハウス工業は3月7日、恒例の第21回「業界動向勉強会」開催し、グループ会社コスモスイニシアが展開するアパートメントホテル事業について、コスモスイニシア代表取締役社長・髙智亮大朗氏が概要を説明し、コスモスホテルマネジメント代表取締役社長・藤岡英樹氏がこれまでの取り組み、今後の展開、課題などを報告。「MIMARU東京STATION EAST」「MIMARU東京八丁堀」の見学会も行った。

 髙智氏は、アパートメントホテルについて、訪日外国人が増加しているにもかかわらず、わが国には3名以上の宿泊に対応するホテルが少ないことに着目し、①40㎡、4名から宿泊可能な「みんなで泊まれる」客室②全室キッチン、リビング・ダイニング、洗濯機付き(一部除く)③世界中から集まったスタッフのフレンドリーな対応-をコンセプトに2015年から検討開始し、2018年2月に第一号「MIMARU東京 上野NORTH」を開業。これまで5年間で東京15・京都8・大阪5の合計28施設1,470室を開業(2023年6月開業予定の「MIMARU SUITES京都Ⅱ」含む)し、将来的に倍増の3,000室を目指すと語った。

 藤岡氏は、「検討を始めたときホテル業界にヒアリングしたら、ほとんど〝そんなニーズなどない。やめたほうががいい〟と言われた」などと振り返り、「一番大事なのはサービス。スタッフには〝おもてなし〟など言わなくていい、フレンドリーになりなさいと言ってきた」などと順風満帆のスタートを振り返った。

 しかし、その直後、新型コロナが業界を直撃したことについて「9割の市場が消えた。恐怖を覚えた。大半を休館せざるを得なくなった。地獄を見た。『ポケモンルーム』が食いつないでくれた」と当時の惨状を明らかにした。

 その後、旅行受け入れ緩和措置によりインバウンドが回復したことにより、「現在の200名弱のスタッフはフル回転、大半は外国籍、インターナショナルな構成となっている」と現状を報告。

 ホテル業界の今後の見通しについて藤岡氏は、外国人ターゲットは物価高と経済成長で価格が上げやすい環境にあり、一方で日本人ターゲットはリモート普及による出張の減少などで稼働・価格は上げにくい環境が続き、価格の二極化が進むと話した。

 また、今後の課題については、人手不足と人件費の上昇、光熱費・水道代などの物価上昇をあげ、「日本人向けはかなり厳しい」(藤岡氏)としている。

 この点、MIMARUは①1施設当たり従業員数は5~6名(マネージャー含む)②レストランがないなどシンプルな共用部③小さめのロビー、開放廊下などによる空調費の軽減④長期滞在による清掃業務の軽減などの特徴をあげ、コロナ禍でも人気だった「ポケモンルーム」(現在7施設)や浮世絵ルームなどコンセプトルームを増やしてきたと語った。

 アパートメントホテル市場については、「デベロッパーやホテル業界から参入しているところは少なくないが、市場を形成できるから歓迎したい。クオリティ、価格設定などから負けない。自分たちが切り開いた市場。市場ナンバーワンを目指す。民泊施設がどう動くか、これは不透明」などと、先行者利益を享受できていることからか楽観的な見方を示した。

◇        ◆     ◇

 記者は、MIMARUの開業時からずっと取材を続けてきた。10施設近く見学しており、「MIMARU京都 新町三条」には1泊させてもらった。

 取材はしてきたが、正直いまだによく分からない。仕事でビジネスホテルはよく泊まったし、宿泊特化型もかなり取材見学している。しかし、〝究極のマンションはホテル〟と信じて疑わない記者は、ラグジュアリーホテルばかりを見てきた。名だたるホテルも勉強のため自費で泊まった。

 リビングがあるのは便利だが、ホテルで食事をつくり(カップラーメンはつくったことがある)、洗濯をするのが信じられない。丁寧なホスピタリティ(おもてなし)を受け、美味しい料理を食べ、備え付けのウイスキーを飲み、夜は寝るだけ、朝はゆっくり起きコーヒーを飲み、タバコを吸いながら新聞を読む-これがホテルではないのか。コンセプトルームのように、ホテルに泊まることが目的(ラブホテルはよくわかるが)など理解できない。

 検討段階で藤岡氏は〝そんなニーズなどない。やめた方がいい〟と言われたそうだが、記者も当時、「この種のホテルは欧米では当たり前」と聞いたが、そんなものを〝輸入〟して大丈夫かと思ったのを思い出す。

 新しい市場を開拓するということはそのようなものなのだろう。この日の髙智氏と藤岡氏の説明は分かりやすく、何よりも藤岡氏がとても元気だったのはとても嬉しかった。

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ポケモンルーム

◇        ◆     ◇

 以下、勉強会で紹介されたアパートメントホテル、MIMARUについて紹介する。

 2023年1月の訪日外客数は約149.7万人で、2019年の5割強に回復。一方、2022年12月のわが国の延べ宿泊者の内訳は日本人が87%であるのに対し、MIMARUの2023年宿泊者の国別割合は日本11%、台湾29%、中国3%、香港13%、韓国9%、シンガポール2%、その他アジア8%で約65%がアジア圏、豪州は15%。

 これはスキーなどを目的とする季節的な要因もあると思われるが、興味深いのは外来客のMIMARU宿泊者割合が極めて高いことだ。オーストラリアの8.3%を筆頭にインドネシアの4.1%、台湾の3.5%がMIMARUを利用しており、海外全体でも1.8%に該当する約2.7万人(50人に1人の割合)がMIMARUに宿泊していることだ。

 面白いデータは他にもある。同社のMIMARU開業からわずか1年後の2019年7月のトリップアドバイザー「外国人に人気の日本のホテル2019」TOP20に同社の「上野稲荷町」(16位)「東京赤坂」(18位)「日本橋水天宮前」(19位)がランクインしたことだ。他では北海道トマム、白馬などのリゾート地もランクインしているが、圧倒的多数は3施設のリッツを始めコンラッド、パーク・ハイアット、マンダリン、パレスホテルなどラグジュアリーホテルだ。

 同社がこのことをリリースしたとき記者は何かの間違いではないかと思った。名だたる高級ホテルに混じってMIMARUの3施設がランクインするはずがないと。なぜそうなのか考えた。つまりツインで1泊数万円のホテルを利用するお金持ちの外国人は少なくないものの、家族・グループの外来客は1人換算で1~2万円のMIMARUは魅力に感じているのだろうと。

 もう一つ、同社は興味深いデータを示した。「MIMARU東京 八丁堀」(74室)の2023年1~3月の予約者属性は、国別では日本18%、台湾16%、アメリカ16%、オーストラリア11%、韓国8%で、宿泊人数は大人4名32%、ファミリー4名23%、大人3名10%など、宿泊日数では1泊15%、2泊14%、3泊26%、4泊17%、5泊13%となっており、日本人はほとんど1~2泊ということだ。

 なぜ日本人は1~2泊なのか。その理由はよく分からない。利用目的にもよるが、同じところに連泊したほうがいいと思うが…。

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