東京都千代田区は3月30日、都市計画審議会を開催し、二番町地区地区計画の変更について審議し、予定の2時間を30分以上オーバーしても意見はまとまらず、岸井隆幸・審議会会長(計量計画研究所代表理事)の「採決を取るか取らないかを採決しましょう」という発意によって採決した結果、議決に加わらない岸井氏を除く出席16名(定員20名、欠席1名、行政機関の麹町警察署長、麹町消防署長は棄権)のうち「採決すべき」6名、「採決すべきでない」10名となり、結論は先送りとなった。
この結果、都市計画法第19条が定める「市町村は、市町村都市計画審議会(略)の議を経て、都市計画を決定するものとする」ことは持ち越しとなった。今後のスケジュールは未定。
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こういうのを大岡裁きというのか。都計審の終了予定時間より30分以上経過したあたりだった。「徹底して論議すべき」「採決していただきたい」という声を受け、(それまでほとんど意見を言わなかったはずの)岸井氏は「採決すべきか、すべきでないかを採決してはどうでしょうか」という旨の声を発した。
この意図を各委員は理解したのかそうでないのか(小生は高校のとき、このような採決の仕方を経験しているが)、しばし沈黙のあと、岸井氏の提案を受け入れ採決となった。
結果は上段に書いた通りだ。誰が採決に賛成したか反対したか、その数は問題ではない。都計審の審議が民主的に行われているかどうかが問われている。その意味で、区の都計審はきちんと機能していると思った。(前回の都計審では「公聴会など開く意味がない」と民主主義を否定した委員もいたので心配していたのだが)
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区は審議の冒頭、区の地区計画変更案の実現手法・提案の妥当性について29ページにわたる資料を提出し、約20分にわたって説明した。総合設計制度を適用した場合の容積率約540%と、区の計画案である容積率約700%を採用した場合、どれほどの差異(主に経済的効果)があるかを示したものだった。
例えば、広場の整備。現状2,000㎡の広場を総合設計の場合は900㎡、計画案では2,500㎡とし、現状、総合設計制度ともゼロの緑地を計画案通り整備すれば約150㎡確保できるとして運用基準に基づく評価容積として約95%の効果があるとしている。このほか、同様の手法を用いて駅前プラザは約34%、地域交通広場は約27%、歩道上空地は約64%、地下鉄通路拡幅は約695…などだ。トータルで約778%の効果があるとしている。
記者は一通り読んで、これは却って墓穴を掘るのではないかと思った。資料は、日テレの提案をそのまま区の提案として発表したに過ぎず、その妥当性について科学的な検証を経ていないと判断したからだ。ある委員も「日テレの案をA案、区の案をB案とすれば、両方とも同じ。裁判になったら支えきれない」と語った。
容積率を総合設計の容積率540%から計画案の700%(約30%)にしたら、建設コストもその分かかるが、建物の経済的価値が高まることなど素人でも分かる。その価値を積み上げたら総合設計よりはるかに価値が高まるのは当然だ。
問題なのは比較した総合設計(案)は、わざわざ( )付きにしているように、地域交通広場、駅前プラザ、緑地、地下通路の整備などを考慮していないことだ。総合設計制度を用いてこれらを整備することは不可能なのか示すべきだ。
まだある。区はエリアマネジメント拠点施設の評価を1%としているが、どうして約250㎡(坪1,000万円として約7.6億円)もある施設の効果は1%なのか。エリアマネジメント関係者が知ったら激怒するはずだ。
そして、決定的に問題なのは、地区計画変更案によって建物の高さが「-30m高くなる」と赤字で示しながら、「圧迫感の低減等景観配慮」として「具体的設計を進める中で高さ抑制、デザイン的配慮」と記載しているのみだ。これは意味不明。そのマイナスの価値を測っていないのはなぜか。経済的価値と社会的価値を両立させようという視点が欠落している。
地区計画変更に反対している区民のその最大の理由は高さ規制緩和だ。60mを90mにしても問題がないことを区は示すべきだ。(小生が区の担当者ならスカイツリー、東京タワー、富士山、牛久大仏、ゴジラ、ウルトラマン…を引き合いにして反対者を黙らせる…これらは「故郷」と一緒。遠くから眺めるから美しいのだが…)
また、委員の中には、景観か(反対派)V.S.バリアフリーか(賛成派)の二項対立の構図を描こうとしているが、そうではない。双方とも大切なことだ。今回の問題は、区は上位計画である都市マスタープランを無視し、みんなで決めた地区計画の構成員であり、その代表者でもある日テレが札束で頬を張るような挙に出たことにある。区の公平性、企業市民の倫理が問われているのである。
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