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2024/07/09(火) 22:02

積水ハウス第3回「都市の生物多様性フォーラム2024」に東急不HD、三菱地所レジ

投稿者:  牧田司

オフィシャル集合写真_全登壇者_パネルディスカッション登壇者2.jpg
「都市の生物多様性フォーラム2024」左から久保田氏、松本氏、井坂氏、井上氏、八木氏(KABUTO ONE HALL)

 積水ハウスは7月9日、第3回「都市の生物多様性フォーラム2024」を開催、二部構成で一部では冒頭、仲井嘉浩・同社代表取締役社長執行役員兼CEOがあいさつしたほか、環境省自然環境局生物多様性主流化室長・浜島直子氏が同省の取り組みを紹介、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授・曽我昌史氏、琉球大学理学部教授(シンク・ネイチャー代表取締役)・久保田康裕氏がそれぞれ基調講演を行った。

 仲井氏は、「大変心強い企業」「都市の生物多様性に取り組んでいる第一線、第一人者」「大変光栄」「大変楽しみ」と「大変」を3度口にし、フォーラムに参加した東急不動産ホールディングスと三菱地所レジデンスを持ち上げた。

 曽我氏は研究の結果、在来種を中心とした庭の植栽が鬱(うつ)症状の発症リスクを抑える効果があることが分かったと報告。

 久保田氏は、新たに開発した「生物多様性可能化提案ツール」はネイチャー・ポジティブの効果を可視化するものとしてBtoCの展開に期待した。

 その後の二部構成のパネルディスカッションには東急不HDグループサステイナビリティ推進部部長・松本恵氏、三菱地所レジデンス商品企画部技術環境室グループマネージャー・井上直樹氏がパネラーとして出席、久保田氏と積水ハウスESG経営推進本部環境推進部環境マネジメント室長・井坂由紀氏、同室・八木隆史氏と「都市における生物多様性保全の取り組みの先に見据える未来」をテーマに語りあった。

 松本氏は、2010年のCOP10生物多様性交流フェアに参加したことが生物多様性の取り組みを重視するきっかけになったと紹介。生物多様性の保全優先度が高い「広域渋谷圏」の緑地割合面積は年々減少している一方で、同圏内にある同社の39拠点の緑地面積比率は2012年回復に転じていることなどを報告。TNFDレポートの一部を紹介した。

 井上氏は、2015年から分譲マンション「ザ・パークハウス」での「ビオ ネット イニシアチブ」、ABINC認証取得に積極的に取り組んできたことなどを紹介。ABINC認証マンションは25物件を超えたと報告した。

基調講演①_積水ハウス株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 仲井 嘉浩.jpg ご来賓ご挨拶_環境省 自然環境局 生物多様性主流化室長 浜島 直子 様   .jpg
仲井氏(左)と浜島氏

基調講演②_東京大学大学院農学生命科学研究科・准教授 曽我 昌史 様.jpg 基調講演③_琉球大学理学部教授、株式会社シンク・ネイチャー代表取締役 久保田 康裕 様.jpg
曽我氏(左)と久保田氏

◇        ◆     ◇

 同社は同日、同社の「5本の樹」計画とシンク・ネイチャーの生物多様性ビッグデータを活用して、顧客の庭における生物多様性保全効果を最大化できる樹木などを提案する社内ツール「生物多様性可視化提案ツール」を6月に共同開発したと発表。

 現在、1都3県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)で試験運用を開始して効果を検証し、今後の全国導入を目指す。同ツールを用いることで、従前の提案と比較し約2.6倍の効果を見込んでいる。2001年から開始した「5本の樹」計画の累積植栽本数は2,000万本を達成したことも明らかにした。

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 同社は同日、東京大学大学院農学生命科学研究科・曽我昌史准教授と共同で研究している生物多様性と健康に関する最新の分析内容を発表。庭の在来樹種数が増えることで多様な生きものを呼び込み、敷地内での生きもの(鳥・昆虫)とのふれあい頻度が高まり、それが住まい手のウェルビーイングの向上(幸福感・人生の充実度の向上、鬱症状の低下)に寄与し得ることが分かったとしている。

 その一例として、鬱症状の場合、身近な生きもの(主に鳥)を見たり鳴き声を聞いたりする頻度が「全くない」から「よくある」に増加すると、鬱症状の発症リスクが54%から34%に減少する(20pt減る)ことが推定されたと報告した。

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 今回のフォーラムで不思議に思ったことが2つあった。一つは、久保田氏の基調講演は、積水ハウス「5本の樹」計画をもとにしたデータなので当然だとしても、首都圏の戸建て(分譲住宅)は土地の狭小化が進み、緑被率(みどり緑)は退行しており、ぺんぺん草も生えない分譲戸建てが圧倒的シェアを占めているのが現状であり、街路樹は電信柱のように強剪定され、公園などの樹木も大量に伐採されているネガティブの一方なのに、久保田氏はポジティブな話に終始したことだ。

 もう一つは、国や自治体の主催ならわからないではないが、積水ハウスが主催なのにどうして同業の東急不HDと三菱地所レジデンスがパネリストに名を連ねたのかだ。記者は、東急や三菱地所と同レベルかそれ以上の生物多様性の取り組みを行っているデベロッパーは少なくとも3~4社はあるとみている。

 そこで、①都市の生物多様性の取り組みは全体として退行しているのではないか②どうして東急不動産と三菱地所レジデンスなのか-の2点についてストレートに質問した。

 ②の質問に対して積水ハウス・井坂氏は「久保田先生が定量評価されているデベロッパーとして紹介された」と回答した。

 ①について久保田氏は「定量評価した大手(積水ハウス、東急、三菱地所)の対象エリアでは(生物多様性回復は)底を打ち、改善の方向に向かっていることがデータでも示されている。現状ではまだまだ収益性を重視したものが多い。生物多様性の取り組みを重視することが幸せになることを、一般の人にどう広めていくか、メディアの発信力も大事」などと話した。

 この回答で疑問は氷解した。東急と三菱は久保田氏からの紹介であり、生物多様性が回復傾向にあるというのは、この3社の施設やマンション、戸建て(東急と三菱の分譲戸建てはほとんどゼロ)を対象にしたものであるということだ。確かに「5本の樹」計画は別格としても、最近の両社の取り組みは半端でない、だが、しかし、全体でみれば〝退行している〟との記者の考えはそれほど的を外していないと理解した。メディア(小生もその端くれ)の発信力が大事(「弱い」と同義語)という指摘はその通りだと思う。目に見えない価値を可視化し、どう伝えていくか、我々は問われている。

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背後には、左から本物のアオダモ、コナラ、アオハダ、ナナカマド、アカシデ、シラ菓子、ナツハゼ、アカシデ、アオダモの鉢植えが飾られていた

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