アパートメントホテル事業を展開するコスモスホテルマネジメント、霞ヶ関キャピタル、セクションL、リクリエ、NSKRE(日鉄興和不動産)ホスピタリティの5社は10月29日、業界動向セミナーを開催し、既存ホテルが取りこぼしている海外からの中長期滞在利用に対応し、爆発的に拡大することが見込まれるインバウンド需要に応えていくとそれぞれ怪気炎を上げた。セミナーには、専門紙記者や同業関係者、投資家(企業)など約40名が参加した。
プレゼンテーションを行ったのは、客室数1,434室(2024年9月現在、以下同じ)のコスモスホテルマネジメント代表取締役社長・藤岡英樹氏、726室の霞ヶ関キャピタルHospitality and Culture Division Vice President・保坂賢太郎氏、224室のセクションL共同創業者/取締役・北川旭洋氏、269室のリクリエ取締役・橋本将崇氏、145室のNSKREホスピタリティ社長執行役員・大谷宗徳氏。それぞれ約10分間、各社の事業規模、特徴などについて語った。
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記者は「アパートメントホテル」が新しいホテルカテゴリーとして認知されるかどうかわからないが、選択肢が増えるのは結構なことだ。ラグジュアリーホテル、シティホテル、宿泊特化型、ビジネスホテル…などと峻別する定義はないはずだが、ラグジュアリーもシティホテルも宿泊特化型も多様なニーズを取り込むプランを最近は備えている。
もう一つ、注目しているのは三菱地所が外資と組んで展開しているフレキシブル賃貸住宅だ。定義は、月ぎめ家具付き賃貸住宅で、オンラインでの契約・契約期間の変更、申し込みから入居まで数日間、家具・家電・水道光熱費込みのオールインクルーシブル、24時間365日のトラブル対応、多言語によるサポートなどが特徴だ。業態としてはアパートメントホテルとそれほど変わらない。違いを強いてあげれば、宿泊・契約日数だろうが、フレキシブル住宅も契約日数を短縮することは容易なはずだ。三菱地所などは現在、1,000室規模の市場を2030年には約10倍の10,000室に拡大するとしている。
この他、外国人向けサービスアパートメント、シェアハウス、民泊、外国人留学生向け宿舎、サ高住などもあり、大混戦を展開するかもしれない。
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新型コロナが世界に蔓延し、わが国の2020年の訪日外客数は約412万人、2021年は約25万人、2022年は約383万人へ激減し、昭和の一桁時代に逆戻りした。コロナが猖獗を極めた2020年5月、アパホテルは「アパ直限定素泊まり2,500円プラン」キャンペーンを張り、業界のひんしゅくを買った。ホテルの身売り・倒産も相次いだ。コスモスイニシアがアパートメントホテル「MIMARUを立ち上げたときからずっと取材してきた小生は、藤岡氏がかわいそうで、会っても顔をそらし知らんぷりしたものだ。
あれから3~4年。不死鳥のようにホテル業界は復活した。どれほどすごいか、藤岡氏か示したデータを示そう。
アパートメントホテルに限らないが、「MIMARU」客室単価は、2019年比2.0倍の47,836円で、STRの1.4倍をはるかに上回っている。
コスモスイニシアの2025年3月期第一四半期決算の宿泊事業は売上高72億35百万円(前年同期比85.6%増)、セグメント利益23億32百万円(前年同期比179.1%増)を計上した。主力のレジデンシャル事業の売上高84億92百万円(前年同期比58.1%増)、セグメント利益2億79百万円(前年同期はセグメント損失4億45百万円)を利益面で上回り、全セグメント利益26億70百万円の大半を稼ぎ出している。
他社がオペレーションの効率化に力を入れているのに対し、同社が運営している27施設で働くスタッフは148人で、藤岡氏は「フレンドリーな顧客対応に力を入れている。リピーターが多いことに、その効果が表れている」と差別化を強調した。
霞ヶ関キャピタル・保坂氏は「一般的なホテルは稼働率が40%以上でないと黒字化は難しいが、当社ブランドは徹底した省人化オペレーションによって20%でも黒字になる。運営客室数は2026年には2,000室に拡大する。アパートメントホテルは、アパ(約11万室)の3倍、約30万室の需要がある」と語った。
セクションL・北川氏は「当社は不動産、ホスピタリティ、テクノロジーを兼ね合わせているのが特徴で、GOP(営業利益)率は業界最高水準の60~70%。今後はゲスト同士が交流できる施設に力を入れていく」と話した。
リクリエ・橋本氏は「当社は国内向けに力を入れてきた。オンラインで対応できるものは福岡オフィスで対応し、チェックインの内製化、テック、生成AIの活用を進めていく。リノベ企画も検討していく」と語った。
NSKREホスピタリティ・大谷氏は、前職が東急不動産だったことを明かし、「すでに11施設の用地を手当て済みで、5年後には1,000室体制、将来的には2,000室を目指す」と抱負を述べた。(大谷氏の話を聞きながら、どこかで聞いた声だと思っていたが、東急不動産の記念碑的マンション「ブランズタワー豊洲」の記者発表会で当時、東急不動産執行役員住宅事業ユニット首都圏住宅事業本部本部長として「即日完売を目指す」と語った方で、RBA野球大会にも出場したことがあるとか=記憶にないので選手としては活躍していないのではないか)
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