「Brillia 深沢八丁目」(写真提供:東京建物株式会社)
東京建物は2月10日、4ランクに設定されているZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)の最高ランク『ZEH-M』(※1)を取得している、日本で初めて竣工した大規模建築物(※2)「Brillia 深沢八丁目」のメディア向け内覧会を行った。東急田園都市線桜新町駅から徒歩9分の期間70年の定期借地権付き3階建て全38戸で、高い省エネ・再エネ・創エネの取り組みを行うことで、住棟全体で101%、住戸ごとで114%一次エネルギー消費量削減率を達成している。
物件は、東急田園都市線桜新町駅から徒歩9分、世田谷区深沢八丁目の第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積約2,938㎡、延床面積約3,412㎡、3階建て期間70年の定期借地権付き全38戸 (一般分譲販売戸数37戸、提携企業優先住戸1戸)。現在先着順で分譲中の住戸(3戸)の専有面積は70.82~74.59㎡、価格は12,298万円~14,898万円、既分譲の坪単価は623万円。2月分譲予定の第2期4次以降(戸数未定)の専有面積は63.88~134.15㎡、予定価格は10,700万円台~29,900万円台。建物は2024年12月に完成済み。設計・施工は大末建設。デザイン監修は牛込昇建築設計事務所。
主な基本性能・設備仕様は、『ZEH-M』認定、CASBEE Sランク、BELS★5、東京都マンション環境性能表示★15(満点)、低炭素住宅認定、リビング天井高2450ミリ、フィオレストーンキッチン天板、食洗機、ディスポーザー、カップボード、ミストサウナ、タオル掛け2か所、全熱交換器、アルミ樹脂複合サッシ、アルゴンガス入りLow-E複層ガラス、エネファームなど。
これまでの来場者数は310件。30代から60代まで幅広く、面積が広く高額住戸を検討している人ほど『ZEH-M』など環境配慮を高く評価しているという。昨年5月から販売を開始しており、成約件数は21戸。
竣工内覧会に臨んだ同社執行役員住宅事業第二部長・佐林繁氏(57)は「当社は2018年の『弦巻』をはじめ『聖蹟桜ヶ丘』『自由が丘』などでZEH-Mの取り組みを行ってきており、新たに14棟のZEH-Mが竣工する(累計26棟)。これまで分譲マンション購入検討者には『ZEH-M』という選択肢はなかったが、今回の『深沢八丁目』は分譲業界全体のベンチマークとなるのではないか。今後も特徴のあるマンションを供給していく」と語った。
国のZEH-Mの定義では、一次エネルギー消費量削減率に応じて『ZEH-M』、Nearly ZEH-M、ZEH-M Ready、ZEH-M Orientedの4ランクに分けられており、年間の一次エネルギー消費量の収支を正味ゼロ以上とする『ZEH-M』はその最高ランクとなっている。
今回の物件は、屋上に366枚の太陽光パネルを設置し、「断熱等性能等級6」を全住戸(一部中住戸は「等級7」)で取得するなど高い省エネ性能と、燃料電池「エネファーム」による創エネを組み合わせることで、住棟全体で101%、全住戸114%の一次エネルギー消費量削減率を達成している。この結果、一般的な省エネ基準の住戸と比較して年間で111,000円(月平均約9,200円)の光熱費削減が見込まれる。
また、従前の土地利用が幼稚園(日体幼稚園)だったことから、砂場の砂から作成したアート作品や世田谷区の保存樹木であったアカマツから作成したアート作品など、4名のアーティストによるアート作品を共用部に設置。「廃食油」を回収しリサイクルする取り組み「すてないくらしプロジェクト」に加え、空間デザインの力でゴミ分別や衛生環境の課題解決を目指した「通いたくなるゴミ置き場『GOMMY』」を採用している。
※1 4ランクの最上位を『ZEH-M』と表記
※2 建築物省エネ法における大規模建築物(延床面積2,000㎡以上)での区分で、同物件は2024年12月竣工、もっとも早く竣工した
太陽光パネル(写真提供:東京建物株式会社)
共用部アート(写真提供:東京建物株式会社)
共用部アート(写真提供:東京建物株式会社)
中庭の植栽
外構(下部の石はフェイクかと思ったら本物の玄武岩だった)
左から同社住宅事業第二部 事業推進グループ課長代理・西池拓人氏、佐林氏、同社住宅エンジニアリング部 建築企画1グループ グループリーダー・幸地浩一郎氏
「Brillia 深沢八丁目」メディア向け内覧会
◇ ◆ ◇
最高価格の29,990万円(134㎡、坪単価736万円)のモデルルームを見た瞬間、同社の最高級ブランド「ロワ・ヴェール」を思い出した。同社が億ション市場に参入したのは1989年(平成元年)で、ブランド名は「ロワ・ヴェール」だった。ところが、その翌年にバブルがはじけたため「ロワ・ヴェール」は数物件しか供給されなかった。
なぜ、その「ロワ・ヴェール」を思い出したかといえば、当時の「ロワ・ヴェール」に今回と同じアイランドキッチンが採用されていたからだ。
当時のキッチンカウンターは御影石で、全体的に設備仕様レベルは高かったが、今回の住戸のデザインは白が基調でとてもいい。玄関・ホールは10畳大近くあった。
坪単価は、所有権なら坪単価800万円とはじき、定借だから8掛けとして640万円と予想したが、その通りとなるのではないか。
ファサードデザインもいい。邸宅街にふさわしい重厚で硬質な磁器質タイルを多用し、敷地内にあったサクラ、アカマツ、瓦、石などを内装やアートに取り込んでいる。
肝心の『ZEH-M』の威力は体感することができなかった。資料では外気温が-1.9℃、エアコンの吹き出し22℃の設定で、室内温度は断熱等性能「等級7」(深沢)が20℃以上、「等級5」がほぼ19℃以下、「等級4」がほとんど18℃台であることが示されている。しかし、この日の外気温は10℃を上回っていたはずで、その温度差を体感できず、エアコンを使用していない居室、廊下、トイレなどの気温は20℃あったような気もしたが、何度かは確認できなかった(エアコンは25℃に設定されていた)。
今後分譲される2期4次以降は完成した建物内で案内されるはずなので、その良さが分かるのだろう。
309号室(写真提供:東京建物株式会社)
309号室(写真提供:東京建物株式会社)
309号室(写真提供:東京建物株式会社)
◇ ◆ ◇
今回の取材の目的の一つに、佐林氏が何を話すかがあった。約30分間のプレゼンテーション(説明)は完ぺきだった。プレゼンはかくありきの見本だと思った。基本的には用意した資料を読みながら話したのだが、一語一語、ゆっくり話したのでとても分かりやすかった。
この落ち着いた話し方を聞きながら、2つのことを思い出した。一つは、同社のマンションブランド「Brillia(ブリリア)」についてだ。同社がマンションブランドをそれまでの「東建ニューハイツ」「プランヴェール」「Brillia(ブリリア)」、最高級「ロワ・ヴェール」などから「Brillia」に統一したのは2003年だった(野村不動産が「PROUD(プラウド)」を立ち上げたのは2002年)。
当時、東建はもちろん大手デベロッパーだったが、マンションブランドとしては〝並〟でしかなかった。その〝並〟のブランドを劇的に変えたのが「Brillia」だが、佐林氏はその統一・立ち上げの中心的な役割を担っていた。
いまさら「Brillia」の実績紹介もないだろうが、マンションの歴史に名を刻んだ「Brillia Tower 池袋」(2013年竣工)、「Brillia Towers 目黒」(2017年竣工)、「Brillia Tower 堂島」(2024年竣工)の記事を添付する。ぜひ読んでいただきたい。同社のマンション供給は多くはないが、業界全体を変える力を持つ物件を時々供給するから、目が離せない。
この日(10日)、記者はこの間の感想と今後の展開について質問した。佐林氏は「『Brillia』の第一号を供給したのは2001年だから、20年以上が経過した。感慨深いものがある。社員一人ひとりがいいものを届けようと取り組んできた結果が実を結んだ。当社の供給戸数は多くはないが、都市部を中心に特徴のある、いいものを今後も供給していく」と語った。
もう一つは、佐林氏が同社の野球部エースとして活躍したころのことだ。皆さんは、平成元年のドラフト指名で読売巨人から3億円という破格の契約金を提示されながら〝野球は趣味で〟との名言を残して三井不動産に入社した志村亮氏(現在、三井不動産リアルティ常務執行役員)をご存じか。
志村氏は三井不に入社後、RBA野球大会でも獅子奮迅の活躍をしたのだが、佐林氏も負けていなかった(志村氏は慶大卒の左腕で、変化球のキレが桁違いで、佐林氏は早大卒の右腕で速球が持ち味だった)。
そしてまた面白いのは、志村氏と慶大時代にバッテリーを組んでいた髙橋浩氏が東建に入社したことだ(現在、常務執行役員)。佐林氏と高橋氏が黄金バッテリーを組んだのだが、当時の東建の攻撃力・守備力はマンションと同じ〝並〟だった。拙攻・拙守で負ける試合が続いた。それでも佐林氏はナインを責めることはしなかった 。
この日のプレゼンで佐林氏は〝一人ひとり〟を強調した。仕事もまた野球と同じ、チームワークが大事で、一人では勝てないことを学んできたからだろうと思った。皮膚にたるみはやや見られたが、体型はこの前お会いした志村氏と同じ、全く崩れていなかった。
36年のRBA野球大会の歴史の中で、同社の最高記録は佐林-高橋バッテリーが活躍した平成5年の第5回大会に樹立したベスト4だ。この記録は現在も突破されていない。がんばれ東建!
佐林氏
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