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2025/10/15(水) 17:07

大和ライフネクスト第三者管理者方式183件 月1000円/戸 検討に値する額ではないか

投稿者:  牧田司

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大和ライフネクスト柏氏(左)と中氏

 主に大和ハウス工業が分譲するマンションの管理を担当している大和ライフネクストは10月14日、記者の取材に応じ、2022年にスタートさせた第三者管理者方式「TAKSTYE(タクスタイル)」の2025年9月末の導入件数は183件に上っており、2026年度目標に掲げている200件達成はほぼ実現できる見通しであることを明らかにした。1件当たりの戸数は50戸未満が中心で、同社が管理するマンションの約5%に該当する。

 他の大手デベロッパー系管理会社が主に新築マンションを対象に第三者管理者方式の採用に力を入れているのに対し、同社は居住者の高齢化と共働き世帯の増加による担い手不足と、専門的な知見・知識がなく、空き家、所有者不明、管理費滞納、修繕積立金不足、建て替え論議…などの課題が山積する一般的な50戸未満の既存マンションを中心に、1戸当たり月額約1,000円というリーズナブルな価格設定を行っているのが特徴。

 同社マンション事業本部新領域創造部外部管理者サービス課課長・中雄佑氏は「組合運営に困っている既存マンションに提案しており、1戸当たり約1,000円の月額負担額は新築とほぼ同額」と話し、また同課統括管理者業務執行者・柏勇次氏は「運営主体は管理組合という法の主旨を尊重し、事前に十分説明している。まだまだ元気な組合に対して強引な提案は行わない。お客さま(区分所有者)が判断されること」と語った。

 この問題について国土交通省は昨年6月、マンション管理業者による外部管理者方式(管理業者管理者方式)の適正な運営を担保することなどを目的に「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」を策定し、2027年4月1日に施行される改正区分所有法との整合性を図っている。

 その一方で、弁護士ら専門家は、管理業者管理者方式は利益相反(トレード・オフ)の関係にあるとして懸念を示しており、重責を担う監理体制をどう整備するかの課題も残っている。

◇        ◆     ◇

 旗幟を鮮明にしておく。以下は、管理業者管理者方式に積極的に取り組んでいる同社に取材し、管理組合の管理者(区分所有者の代表)の担い手不足、専門的な知見・知識がなくて困っている全国の管理組合と区分所有者(居住者)向けに発信する、費用対効果を考えれば、管理業者管理者方式の採用を検討すべきという趣旨の記事であるということだ。

 少し長くなるが、管理業者管理者方式について整理する(添付記事参照)。この方式の実態が明らかになったのは、2023年9月と12月に国土交通省が行ったマンション管理業協会会員会社351社を対象にしたアンケート調査だった。9月調査では、管理業務と管理者の担当部署が同一で、責任者も同じというのが42%、業務分担も不明確なのが26%だった。12月の調査では、第三社管理者方式を採用しているのは48社(約3割)で、管理組合数は1,991件(うち投資用マンションが1,055件)で、全国の管理組合数の3.7%、新築マンションで第三社管理者方式の採用を検討しているのは48%、管理者業務の報酬を設定していないのは40%、監事の報酬がないのは53%などが明らかになった。

 この結果について、弁護士など専門家は、管理業者=管理者=利益相反(トレード・オフ)として批判した。記者もどんぶり勘定、管理業者への丸投げが多いのにびっくりした。マンション管理業協会の記者懇親会で質問したこともある。大手系のファミリーマンションを中心に管理受託している管理会社は、管理者との会計を別にしており、契約書などで明確に区別しているとの回答を得てほっとした。

 そんな折の2024年5月、大和ハウス工業と大和ライフネクストが「マンション管理業(分譲マンションの第三者管理者方式)篇」をテーマにしたメディア向け勉強会を実施し、2022年度から取り組み始めた管理業者管理者方式「TAKSTYE(タクスタイル)」の導入組合は76組合にのぼると報告。2026年度までに200棟に拡大する方針であることを明らかにした。

 そして2025年9月、同社は導入組合は2025年8月末で138棟に達したと発表。今回の取材で件数は1か月間で45件増加したことが分かった。

◇        ◆     ◇

 さて、マンション居住者の皆さん、上段の大和ライフネクストの月額報酬額1,000円/戸、50戸で5万円は妥当かどうかを考えていただきたい(他の大手系管理会社の新築マンション管理者報酬は月額2,000円/戸とも言われている)。

 その前に、前提となる第三者管理者方式を採用する余力があるかどうかを検討する必要がある。一般的なマンションの駐車場使用料等を含む管理費の平均は月額759円/坪で、20坪だと約1.5万円、50戸だと75.9万円。年間だと戸当たり18万円、全体で約910万円だ。このうちの大半は管理業者委託費や共用部光熱費、保険代など経常的費用に消える。組合活動費(管理者)から外部管理者に報酬を支払える余力のある組合は極めて少ないはずだ。

 しかし、理事になることの負担や円滑な組合活動などを行うことと相殺したら、間違いなく管理業者管理者方式を採用したほうが利益は大きく、月額1,000円/戸なら何とか捻出できのではないかというのが記者の考えだ。

 さて、では理事活動を金額に換算したらいくらになるか。規約に定めのある場合を除き、理事はほとんどが輪番制で50戸に5人くらいだから10年に1度は回ってくる。理事会の開催件数は規模などにより異なるだろうが、月に1~2回、各種のイベントや総会議案書の作成なども含めると年間20回くらいではないか。1回当たりの拘束時間を3時間として、皆さんの時給からその理事活動費を金額に換算していただきたい。年間数十万円になるはずだ。

 ただ単に時間が拘束されるだけではない。理事会は組合員全員の財産を預かっている。自分の財産ならどのように費消しようが勝手だが、他人の財産はそういうわけにはいかない。一銭たりとも説明のつかない収入・支出があってはいけない。これは神経を使う。

 この重労働から解放しようというのが管理業者管理者方式だ。弁護士、マンション管理士、税理士、公認会計士などの専門家からは管理業者=管理者=利益相反(トレード・オフ)の関係にあると指摘されているが、大手デベロッパー系の管理会社が利益相反となるような行為(悪意を防ぐのは容易ではない)を行うはずがない。やったら、その損失額は利益の数倍に達するはずだ。

 では、管理会社以外の専門家が外部管理者になるかどうか。記者は知人のマンション管理士に聞いたことがある。「あなたを外部管理者に選任するとしたら、月額報酬5万円でどうか」と。管理士は「絶対受けない。カスハラが怖い。リスクのほうが大きい」と言下に否定した。他の専門家も同様だろう。年収にして1,000万円、多い人は1億円を超える個人弁護士がそのような安価な報酬で管理者を受けるはずがない。

 少しわき道にそれる。日弁連アンケートによると、1時間5,000~10,000万円の法律相談のみで完結(問題解決)した事例はたくさん紹介されているが、そのトータルの数は公表されていない。ここが味噌だ。法律相談だけで諸々の問題が解決したら弁護士稼業は成り立たない。AIが解決する。訴訟などに持ち込めるから法律相談の数倍から数十倍の報酬が得られる。辣腕弁護士は1日15時間働くともいわれている。弁護士には残業という概念がない。

 いくら懇願されても、このような高額所得者が煩わしい管理者を受けるはずはない。まだある。管理会社を通じて、居住者からは毎日のよう新聞配達のバイクの音、風鈴の音、子どもの泣き声、夫婦げんかの声、ハイヒールやキャスターの音がうるさいとか、換気扇からタバコやニンニクの匂いが流れてくる、ハトの糞が布団につく、ハチの巣をなんとかしろ、樹木の日影で日が当たらない、猫がいなくなった…などが管理会社を通じて報告される。ほとんどは〝受忍限度〟に収まるものだが、対応を誤ると刃傷沙汰にまで発展することもある。このストレスは理事を経験しないと分からない。

 監事も同様だ。個人専門家が利益相反をどうしてチェックするのか。〝安物買いの銭失い〟〝損して得取れ〟という言葉もあるではないか。個人専門家がタッグを組めば別だが、総合力では管理会社=管理者が上回る。リスク管理、チェック機能を働かせば管理者と管理会社がWin-Winの関係を構築することは可能だと思う。

◇        ◆     ◇

 10月31日(金)インテックス大阪で開催される「マンション総合エクスポ2025」の「改正マンション管理法令施行!合計300組合の管理業者管理者2社の取組み公開セミナー」に中氏はモデレーターとして、柏氏は長谷工コミュニティsmooth-e運営部課長・前田崇行氏とともにパネラーとして出席する。参加費は無料。

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