世古氏
「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する一部を改正する法律」、いわゆるマンション法の改正を受けてマンションの長寿命化の取り組みが本格化しているが、そのうちの大きなテーマの一つになっている「管理業者管理者方式」を積極的に採用しているのは大和ハウス工業グループの大和ライフネクストで、三井不動産グループの三井不動産レジデンシャルサービスが続いていることが分かった。
大和ハウス工業は9月3日に行った「マンション事業計画説明会」で、2022年から提供を開始した大和ライフネクストの外部管理者サービス「TAKSTYE(タクスタイル)」が2025年8月末時点で138棟に導入されていることを明らかにした。2025年度目標は200棟。
そして本日9月11日行われたマンション管理業協会の記者懇親会で、理事長を務める三井不動産レジデンシャルサービス社長・世古洋介氏は「協会として各社の取り組みを把握はしていないが、中古も新築もニーズがあるのは確か。当社も100件超。詳細は現時点で分からないが、おそらく過半は新築マンション」と語った。副理事長で大和ライフネクスト社長・齋藤栄司氏も「社会課題解決に向け今後も積極的に取り組んでいく」と話した。
このほか、マンション管理業協会の副理事長会社の東急コミュニティー、長谷工コミュニティなども新築マンションを対象に取り組んでいる模様だが、件数は数十件にとどまっていると見られ。大和ライフネクストと三井不動産レジデンシャルサービスが一歩も二歩もリードしている形だ。
管理業者管理者方式のガイドラインについては、近く国土交通省から発表される見込みで、既存マンションの建物と居住者の「二つの老い」の課題を解消する有効な手段として、また新築マンションでも複合マンションの増加による管理の難しさや共働き世帯の増加などを背景に、管理会社管理者方式が〝売り〟の一つになっている。
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管理業者管理者方式についてはこれまで書いた記事を参照していただきたい。懸念される利益相反の問題だが、記者は絶対ないとは言えないが、大手デベロッパー系の管理会社ではそのような不祥事はまずないと見ている。
この方式を採用することで、居住者の負担がどれほど軽減されるかについて紹介する。
まず、管理組合の理事を引き受けなくて済む時間について。一般的なマンション管理組合の理事会は月に1度くらい行われ、様々なイベント、総会準備などで月に2度、3度も開かれることがある。1回につき3時間は拘束されるので、年間15回として45時間だ。実際はもっと多いはず。
これを時間給に換算すると、〝毎日が日曜日〟の年金生活者もいるだろうが、居住者の年間所得を700万円として、1日約1.9万円、8時間労働として1時間約2,400円だ。これに45時間を掛けると年間約11万円だ。
単なる時間の消費ならいいが、理事は他人の大切な財産(お金)を預かっている。1銭たりとも無駄にできないし、公正・公平に運営する気苦労はやってみないと分からない。人にもよるだろうが、このコストは年間にすると相当額に達するはずだ。
理事は輪番制の組合が多いはずで、50戸くらいの規模なら10年に1度は回ってくるし、何より大事なのは、同じ居住者の負担の重さを理解することだ。年間1~2万円の負担は小生の1か月分のコーヒー代・タバコ代よりはるかに安い。
管理会社管理者方式に切り替えた場合は、規模などによるが、中古マンションで1世帯当たり月額1,000円くらい、新築で2,000円くらいと言われている。年間にしたら1.2万~2.4万円だ。紙代・印刷代などの経費も大幅に削減できる。爆発的に増えることに期待したい。
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