
仲井氏(セピアタワーで)
積水ハウスは3月5日、2025年1月期決算&第7次中期経営計画説明会を開催した。決算と中計の数値などはあと回しにして(発表された時点で情報は全て旧聞になる)、記者が感じたことを先に紹介する。「積水ハウス経済圏」と、今年のマンション市場で最大の注目物件である同社の「千鳥ヶ淵」についてだ。
第7次中期経営計画の説明で同社代表取締役兼CEO社長執行役員・仲井嘉浩氏は冒頭、「当社が掲げるグローバルビション〝『わが家』を世界一幸せな場所にする〟を実現する第7次中期経営計画基本方針のスローガンとして2つを決定した。一つは、国内のグループ総合力による積水ハウス経済圏の深耕で、もう一つは海外のゲームチェンジに向けた成長基盤の構築」と語った。話し始めてから数分だ。
続いて「積水ハウス経済圏」とは何かについて、仲井氏は「当社はこれまで約280万戸の住宅を供給してきたトップメーカーであり、1世帯当たり4人弱が住むと仮定して1,000万人近い人が当社の住宅に住んでいるという計算が成り立つ」と話した。
そして、これらの世帯にはリフォーム、リノベーション、不動産活用、賃貸管理、資産承継、不動産売買、官民連携(PPP/PF)、造園、ランドスケープ、不動産投資、金融商品など様々な顧客ニーズが存在し、同社グループはこれらのニーズに応えるためリアルとデジタルにより顧客接点をさらに強化すると語った。
他のメディアの方はどう受け止めたか知らないが、記者は初めて仲井氏から「積水ハウス経済圏」なる言葉を聞いた。後の約30分間の話(うち米国に関するものは15分はあったが)は全てこの「積水ハウス経済圏」と結びつけた。
小生の取材守備範囲は主にマンションと分譲戸建てなので、同社の売上高約4.2兆円の10%くらいにしか過ぎないが、話は一つひとつコツンと腑に落ちた。話を聞きながら同業の売上高が約5.4兆円の大和ハウス工業や三井不動産、三菱地所、住友不動産(3社合計売上高約5.1兆円)などと比較した。
同社がこれらの会社と決定的に異なるのは、経営資源を4大都市圏(首都圏・関西圏・名古屋圏・福岡圏)に絞り込んでいることだ。同社はこの拠点を「GM BASE」位置づけ、ここから派生するあらゆる事業も取り込もうとしている。〝網からすり抜ける小魚も逃さない-と書くと〟資金力にものを言わせる一網打尽、底引き網漁法と受け取られるかもしれないが、同社の商法はその逆だ。仲井氏はそれほど触れなかったが、地域ビルターとの共創プロジェクトSI事業にいかにも同社らしい姿勢を読み取ることができる。どうして記者が1日かけて浜松まで取材に行ったか。同社の事業がどうして伸びるのか、「深耕」の意味を探ることにあった。ESG経営、地方再生、地域共生の基本を見た。愛」と一緒、奪うことではなく与えることだと。
話は横道にそれるが、三井不動産と三菱地所の関係について。両社は、双方の利害が一致する事業ではがっちり手を組む。戦友、同志だ。絶対他社に奪われない。しかし、〝日本橋〟〝大丸有〟に象徴されるように、覇権争いでは(米中関係に例えるのは問題か)、血みどろの戦いを展開している。不倶戴天の敵だ。
先日、三菱地所の「TOKYO TORCH Torch Tower」の低層部ダイヤグリッド(DG)架構が完工したのに伴うメディア向け現地説明会が行われたのだが、わわざわざ井桁(三井グループ)とダイヤ(三菱グループ)の模型を用意し、メディアに試させた。記者も試した。井桁はいとも簡単に曲がった。しかし、ダイヤはびくともしなかった(主催者が意図したことではなかったはずだが、〝右向け左〟の記者はどうしても比較してしなう)。面白いのは施工を担当する清水建設だ。三井不動産が主導する日本橋の玄関口にあたる素晴らしく美しい「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」が近く竣工するが、施工は清水だ。ゼネコンに共通することだが、施主には頭が上がらないということであり、どこであろうと手を組む柔軟性を備えているということだ。
話をもとに戻す。記者団の質問に対して答えた仲井氏の次の言葉にびっくりした。「一次取得層向けの1stレンジは積水ハウス不動産が担当し、当社(積水ハウス)は2ndレンジ(建物価格にして3,000万円以上)の土地しか買わない」
疲弊するだけで利益など得られないパワービルダーや地方のマンション事業に手を出さない姿勢を貫いている。これも「積水ハウス経済圏」の形成と一致する。
一方で、3ndレンジと呼ばれる建物価格が5,000万円以上の富裕層向けについて仲井氏は言及したはずだか聞き逃した。2025年度の1棟当たりの注文住宅の受注単価は5,642万円(前年比394万円増)、売上高総利益率は25.0%だ。この数値が示す通り、市場は縮小する中で同社も売上げは伸び悩んでいるが、ターゲットを絞り込むことでしっかり利益を確保している。
こんなことを書くと、どこからも取材の誘いを受けなくなる可能性があるのだが、面白い話をもう一つ。先ほど、三井不動産と三菱地所は手を組むことが多いと書いたが、大和ハウスと積水ハウスが手を組むのは国家的プロジェクトではあるかもしれないが、その他の事業ではまずない。大阪の「うめきた」再開発に大和ハウスはコンペに敗れて参加していないし、東京の「HARUMI FLAG」に大和ハウスは参加しているのに積水ハウスは参加していない。呉越同舟の場面は見たことがない。
積水ハウスの米国での事業は、小生は門外漢なので触れない。知らないことは書くべきではないというのが小生の取材姿勢だ。仲井氏は質疑応答で「米国の市場回復は緩やか。〝先行き不安〟と考えている人が多いのに驚いた」と語っただけを紹介する、トランプ氏のカードを読み切れていない不安・戸惑いをいつも冷静な仲井氏から感じた。
質疑応答では、小生の守備範囲であるマンションについて誰かが質問してくれることに期待したのだが、みんな関心がないのだろう。指名されるかどうか分からなかったし、質問しても答えてくれないのを承知で、「今年の全国のマンション市場でもっとも注目されているのは御社(積水ハウス)の『千鳥ヶ淵』。私は、バブル期も含めて史上最高値の坪単価3,500万円でも売れると予想しているが、いつごろ、いくらで分譲するのか」と質問した。
これに対して、仲井氏ではなく同社取締役専務執行役員開発型ビジネス部門担当 国際事業本部長・石井徹氏は「多くの反響をいただいているが、いつ分譲するかは分からない。価格は非開示」と答えた。-皆さん、多分、「千鳥ヶ淵」は一般に公開されることはないと思う。どこかすっぱ抜くメディアはないのか。ビッグニュースになる。
――なんだか馬鹿な記事を書いたような気もするが-〝面白くなければ記事じゃない〟-フジテレビの軌道修正は成功するのか。小生は懐疑的に見ている。仲井氏に赤の絹谷幸二ネクタイを売りつけようとしたが機会はなかった。(同社の女性広報担当は「素敵、次回の説明会にそれを着けてきて」とおだてた。今日の仲井氏の淡いブルーのネクタイよりはましだと思うが、かみさんが許してくれるかどうか)
緑化面積10,000㎡超ランドプラン秀逸坪単価も割安積水ハウス他「多摩川」(2026/1/17)
「太陽のような明るさ、情熱、決断力を発揮」芳井会長プレ協新年賀詞交歓会(2026/1/9)
積水ハウス「SI(エス・アイ)事業」見学会利点も課題も見えた遠鉄ホーム「浜松」(2025/12/11)

