表も裏も美しい 東大「ダイワユビキタス学術研究館」完成
「ダイワユビキタス学術研究館」(東大春日門すぐ)
大和ハウス工業と東京大学は5月14日、このほど完成した東京大学大学院情報学環「ダイワユビキタス学術研究館」を報道陣向けに公開した。
同研究館は、大和ハウスが寄贈したもので、同大学大学院情報学環・坂村健教授が監修。世界最先端の技術を導入し、「情報」に関する諸領域を流動的に連携させる研究機関として利用される。
デザイン・設備設計は同大学大学院工学系研究科・隈研吾教授が担当。構内通路側の外観には約15トンの不燃処理を施した杉板をウロコ状に張り巡らし、隣接する懐徳館庭園側の外壁には、わが国を代表する左官職人・挟土秀平氏による土壁を配し、日本庭園と建築との融合を図っているのが特徴。
公開に先立って挨拶した同社代表取締役会長・樋口武男氏は、「創業者の石橋信夫が亡くなる1年前に『創業100周年までに10兆円企業にしてくれ。これか俺の夢だ』と聞かされた。その夢の実現のために邁進しているが、社会貢献も創立時の精神。石橋も草葉の陰で喜んでいるはず。今回の施設を世界に誇れる人材育成の場として役立てていただきたい」と語った。
建物は地上3階地下2階建て延べ床面積約2,700㎡。構造はラーメン構造で、施工は大和ハウス工業。実物大の虚像展示を可能とする空間物アーカイブプレゼンテーションルームや126席の「ダイワハウス石橋信夫記念ホール」、カフェ「厨菓子くろぎ」も併設されている。
挨拶する樋口氏(左)と隈氏
テープカット(左から坂村氏、樋口氏、東大大学院情報学環・須藤修氏、隈氏)
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完成予想図は見ていたが、やはり完成した建物に鳥肌が立つほど感動した。隈氏の〝特許〟と思われる格子は、最近作では「ザ・キャピトルホテル東急」や三井不動産レジデンシャルの「神楽坂」のマンションでも見ているが、今回もどうしてこんなことができるのかと唸ってしまった。
隈氏は、「外観のテーマは、コンピュータ技術と建築デザイン、それと自然をどう融合させるかだ。一枚一枚、杉板の角度を変え、すき間もアトランダムに開けたが、これはコンピュータ技術が可能にしたもの。裏側の土壁は特殊な接着剤を用いて挟土さんが全部作った。懐徳館との融合を図った。庭を借景にしたカフェも設けた。デザインを工事に落すところが難しかった」と語った。杉板は多摩産材で、外壁に5500枚、軒天に2300枚それぞれ使用されている。
表も美しいが裏もまた美しい。この日は懐徳館庭園も公開されたが、挟土氏の土壁は表の杉板とそん色なかった。
こんなことを書くと、貧弱な想像力しか持ち合わせていないプロの建築家は「杉板が朽ちたらどうする」と批判するかもしれないが、隈氏は自らの作品を堅忍不抜、未来永劫にわたってそのままの姿にとどまっているのが美しいとは思っていないはずだ。学問も同様。30、40年後に中身も含めてリノベーションすればまた違った味わいのある建物になるのではないか。
記者は、「我が国の耐火・防火基準は厳しすぎないか」と樋口氏と隈氏に質問した。「耐火基準は厳しいが、緩和の方向にある」(樋口氏)「林農水相(国交省ではない)も建築学会で木造建築物の普及に力を入れると力説された」(隈氏)とのことだった。もっと前向きな答えを期待していたのだが、〝燃えていいのか、死んでいいのか〟という反論に黙らざるを得ない記者の薄弱な論理ではこの問題には踏み込めないもどかしさを覚えた。
隈氏ファンの富裕層には朗報だ。圧倒的な人気を呼んだ東建「Brillia Tower池袋」の次は東京ミッドタウンに隣接する三井不動産レジデンシャルのマンションだそうだ。どんな物件かは知らないが、最低でも坪単価は800万円、ひょっとすると1,000万円になるかもしれない。
構内通路 反対側から撮る
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カフェのコーヒーもおいしい。850円は高いが、それだけの価値はあるし、3~4杯分の量がある。店舗内のデザインは隈氏によるもので、サクラの突板が用いられていた。
懐徳館庭園
懐徳館庭園に面した挟土氏の土壁
カフェ「厨菓子くろぎ」
究極の隈研吾マンション 豊島区庁舎と一体の「Brillia Tower池袋」(2013/3/19)
平成25年度の建設工事受注高は前年比10%増の75兆円 国交省
国土交通省は5月12日、平成25年度の「建設工事受注動態統計調査」結果をまとめ発表した。受注高は75兆8,905億円で前年比10.1%増加した。このうち元請受注高は51兆8,107億円で同12.4%、下請受注高は24兆797億円で同5.5%それぞれ増加した。
元請受注高のうち公共機関からの受注高は16兆5,762億円で同21.7%、民間などからの受注高は35兆2,345億円で同8.5%それぞれ増加した。業者所在別では東北6県が前年比31.2%増と全国平均を大きく上回っている。
民間などからの受注工事のうち建築工事・建築設備工事の発注者別でもっとも多かったのはサービス業の2兆4,951億円(同69.4%増)で、不動産業がそれに次ぐ2兆3,437億円(同6.5%増)。
同調査は、わが国の建設業者の建設工事受注動向及び公共機関・民間などからの毎月の受注額を発注者別、業種別、工事種類別、地域別に把握しているもので、建設業許可業者(約48万業者)の中から約12,000業者を対象にまとめている。
住友不動産「グローブアベニュー国立」 高さ20mは自主規制の結果
住友不動産「グローブアベニュー国立」が建物の高さ20mで7階建てであることを昨日書いた。その理由は同社が自主規制して高さを抑えたためだ。
現地の用途地域は桜通りから20mまでは第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率300%)、その他は第二種中高層住居専用地域(同60%、同200%)だ。斜線制限はあるが高さ制限はない。建てようと思えばもっと高いマンションも建築可能だ。
ところが、同市が平成13年に定めた「国立市都市景観形成条例にかかる取扱基準」では、用途地域が商業地域と近隣商業地域の建築物については高さが31mを超えるもの、その他の地域は高さが20mを超えるものについては、学識経験者などで構成される国立市都市景観審議会へ諮問しなければならないことになっている。条例は、「文教都市くにたち」にふさわしく美しい都市景観を守り、育て、つくることが目的だ。
つまり、高さ20mを超えてマンションを計画する場合は、景観審議会に諮問し、その答申が出る「半年から1年半ぐらい」(都市計画課)までは工事着手できないことになっている。同社は、この期間のリスクを避けるために自主的に高さを20mに抑えたわけだ。
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これまでことあるごとに建築物の絶対高さ制限はやめるべきと書いてきた。今回も同様だ。国立市が高さを商業エリアで31m、その他の地域で20mにそれぞれ抑えるきっかけとなったのは明和地所の超高層マンション計画だった。
当時、市は「大学通りのイチョウ並木に調和するよう」指導は行っていたが、高さそのものについての規制はなかった。そこで記者は、当時の上原公子市長にインタビューした際、「市長、イチョウ並木と調和する建築物とはいったいどの程度の高さですか」と聞いた。市長は一瞬考えた末、「イチョウやサクラは20mくらいですからその程度じゃないですか」と答えた。その後、この20mが独り歩きし、条例にも盛り込まれることとなった。この答弁を引き出してしまったことは今でも忸怩たる思いがする。返ってくる答えが分からない質問はしてはならないという禁を記者は犯してしまったのだ。
いうまでもなく、美しい都市景観としての建物がイチョウやサクラ、ケヤキ、クスなどの街路樹と同じ高さでなければならない合理的な理由など一つもない。一方でスカイツリー、東京タワー、京都の五重塔を醜いという人はほとんどいないし、牛久や大船の大仏、あちこちにある山上の風力発電塔も異議を唱える人は少数派だ。いったいわれわれは何を根拠に美醜を分けるのか。ノミの夫婦はほほえましいのかそうでないのか。
高さ規制を緩和すればマンションの居住性は高まるはずだ。そうすれば公開空地を広く取ることができるし、市民に開放もできる。もし日影規制をいうのであれば、自己日影や複合日影についても考えるべきだ。
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「文教都市くにたち」は、住宅地としても人気が高い。記者も「大学通り」のイチョウ、サクラ並木は都内でも屈指の美しさだと思う。
久々にこの「大学通り」を歩いておやっと思ったことがある。並木に沿って植えられているサツキ、ツツジの剪定が十分でなく伸び放題になっており、際も不揃いだった。緑地帯も雑草がかなり生えていた。市民の誇りである美しい並木が泣いていた。
市にこのことを聞いたら、今年度から予算を計上して剪定していくとのことだった。いままで放置していたのは何だといいたい。国立市は多摩エリアでは武蔵野市に次いで1人当たりの市民税納税額が多い。樹木の剪定費など微々たるものではないのか。
市政に呼応しているのかしていないのか、これまたよくわからないのが一橋大学のキャンパスだ。外周は剪定などやったことがないような、誰がどう見てもお化け屋敷だ。荒れるに任せている。東大だって樹齢100年もありそうなケヤキをぶった切っているように、たいしたことはやっていないが、同大学は東大の向こうを張って〝あるがまま〟が美しいとでも思っているのだろうか。環境とか景観とかにはまったく関心がないようだ。しっかり刈り込んでいる国立高校や桐朋学園とは対照的だ。
ついでに調べたら、平成24年度の市税延滞金は平成15年と比べると約3倍の2,923万円に増加し、市税減免も1,071万円から2,770万円へ増えている。それでも市の担当者は「市税の収納率は多摩エリアトップ」と話した。〝ほっといてくれ〟-一部の富裕層とそれに同調する普通の住民のしわぶきが聞こえてくる不思議な街が国立だ。
積水ハウス 女性や子どもも快適に利用できる仮設「おりひめトイレ」開発
「おりひめトイレ」
積水ハウスは5月1日、東日本大震災の教訓を生かし、女性や子どもも快適に利用できる仮設トイレ「おりひめトイレ」を仙台市と共同開発したと発表した。
防犯ベルやベビーチェア、荷物置き場を設置したほか、ドアを開けたときトイレの中が丸見えにならないような角度にしているのが特徴。開発に当たっては、同社の女性社員や仙台市の女性デザイナーも参加した。広さは約1.85㎡、重さは約500㎏で、トラックに積載して運べるという。
東日本大震災では、仮設トイレの利用を我慢したために健康被害が生じたことが報告されている。同社が社員やNPOと連携して独自に行ったアンケート調査では、仮設トイレは「汚い」「暗い」「怖い」「使いにくい」などの不満が多く寄せられたという。
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さすが「なでしこ銘柄」に選定された会社だ。ニュースリリースに添付されている平面図はとても仮設トイレとは思えぬ〝豪華〟なものだ。ドアにはコートフックがあり、防犯ベルがあり、便器は洋式トイレで流水擬音装置付き。
よくぞやったと拍手喝采を送りたい。というのも、記者も3.11のあと液状化被害を受けた千葉市美浜区を取材したとき、仮設トイレを利用はしなかったが体験しているからだ。
公園に数個が並んで設置されていたが、見るからに急ごしらえの仮設トイレ然としており、これでは若い女性などは利用しづらいだろうと思った。トイレの中をのぞいてさらにびっくりした。
便器は和式で、床面より膝頭くらいの高さに設置されていた。50cmくらいか。ステップがあればともかく、これでは小さい子どもやお年寄りは手すりがないと這い上がれないと思った。汚いのはもちろんだ。用を足す考えは吹っ飛んだ。新浦安では、若い女性などは寒い中、10分も20分もかけて駅まで歩いたという話を聞いた。
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立派なトイレはもちろんいいのだが、トイレを我慢した結果、亡くなった人がいたと聞いて悲しくなった。生きるか死ぬかのときにトイレを我慢するなんて信じられない。我慢せずに人前だろうとなんだろうと堂々と用を足す勇気も必要だ。
記者の小さいころ、男は当然、女性、といってもおばあちゃんたちだが堂々と立ちションをする姿はごくありふれた光景、日常茶飯だった。
宮尾登美子さんは小説「櫂」でその様子を克明に描いている。朝日に小水が湯気を立て、キラキラと黄金色に光り、小さな弧を描いて大地を潤し、しぶきが着物の裾にかかる光景は美しいではないか。宮尾さんもきっと立ちションをしたのだろうと想像すると愉快だ。
最近はないが、昔、郊外の新興団地を取材したときなどは喫茶店などまったくないから、藪の中で用を足したのは一度や二度ではない。
ポラス 女性社員が企画した賃貸アパート「ラコント」満室稼働
立地と築年数でしか価値が計れない賃貸市場に一石投じる
「(仮称)ラコント七左町2丁目」
ポラスの女性社員が企画開発した初の賃貸アパート「ラコント七左町」を見学した。DINKSのニーズにマッチした企画がヒットし、相場より2割くらい高いにもかかわらず、竣工の時点でほぼ満室稼働になっている。立地と築年数でしか賃料が評価されない賃貸住宅市場に一石を投じる物件だ。
物件は、東武伊勢崎線新越谷駅から徒歩12分、越谷市七左町2丁目に位置する木造2階建て全6室。専用面積は47.13~54.65㎡。月額賃料は79,000~84,000円。敷金は1カ月。礼金はなし。共益費は4,000円。駐車料は6,000円。入居は3月下旬。
現地は、区画整理事業によって整備された街の一角にあり、新越谷駅圏でも住宅地として人気が高いエリアに立地。建物は、ポラスの分譲住宅に多くみられる南欧風の外観で、アンティークなフラワーボックスなどを配することで一戸建て感覚を演出しているのが特徴の一つ。
住戸プランは、1階が3室、2階が3室だが、各住戸の玄関を1階に集約し、共用廊下や階段がない重層長屋タイプ。住戸内はポラスの戸建ての商品と似ており、壁面ニッチ収納、カウンター収納、DENスペースなどを設けている。ヨガやストレッチスペースとして使えるようリビングを広めにしているものやバルコニーがないタイプもある。
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記者は賃貸アパートのことはよく分からないが、間口の狭い箱型住宅を積み重ね、外階段にバルコニー付きというのが通り相場だろう。この物件は全く違っていた。外階段がないのには驚いた。
住戸プランも、30㎡とか40㎡を想像していたが、分譲マンションのDINKS向けタイプとほぼ同じ50㎡前後あったのにも驚いた。いくらレンタブル比が高い賃貸だって90%くらいだろうが、ここは100%近いはずだ。
フラワーボックス
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商品企画を担当したポラスグランテック営業課企画営業係チームリーダー係長・飯村隆志氏から話を聞いた。
商品は相続税率アップ、基礎控除額の減額など相続対策として企画されたものだが、立地と築年数で賃料が決まる賃貸市場では他社と同じ商品は賃料値下げ圧力、空室リスク、修繕費負担など資産劣化を抱え込むことになり、競争に勝てないと判断。どこにもない〝ニッチ〟に的を絞ったのが特徴だという。
居住性を高め長く住めるように広めのプランにし、管理コストを抑えるためレンタブル比をほぼ100%にしたのもそのためだ。商品化にあたっては21営業所で約20,000戸の管理をしているグループ会社の中央ビル管理とも連携している。
飯村氏は、「この物件を含め戸田、蒲生とあわせ3棟が満室稼働。当面の目標は当社の事業エリアの各駅で3棟。オーナーの代替わりも進んでおり、2代目を巻き込んだ事業を展開していく。オーナークラブは300人を超えている。地域にねざした狩猟型ではない農耕型で、普通のアパートではないオンリーワンの商品を提案していく。秋には新しいこれまでにないタイプの新商品も発表する」と話した。
良質な賃貸アパートが増えることは大歓迎だ。賃貸が劣悪だから分譲マンションが売れるのだが、賃貸の質が低いからこそ分譲のレベルも抑えられる相関関係にある。本来は賃貸も分譲も同じ選択肢としてユーザーが考えられるような市場であるべきだ。その意味で、この物件はよくできたと感心する。
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見学はもともと予定に入っていなかった。他の業界紙の若い男性記者が見学するのに同行させてもらったのだ。その記者が決してお世辞ではない「僕も住みたい」と感嘆の声を上げたのには驚いた。
記者もいいプランだとは思った。6室のうち1室はポラスがモデルルームとして利用するために借りているが、他の部屋は1月から募集を始め3月までにはすべて満室になったというのも納得できた。
しかし、世間が何と言おうと断じて高齢者ではないと思っている自分が住みたい家ではない。リビングの天井には物干しポールが設置されていたのは理解できても、一見して女性が好みそうなピンクのソファやら家具が設えてあったデザインは私好みではない。
設計を担当したのはポラスグランテック設計監理課係長・岸野真奈美氏だ。商品企画にはポラスグループで賃貸管理業を展開する、中央ビル管理営業推進課の堀切広美氏も参画し、現場サイドの声を反映させているという。
プラン、インテリアは住宅選考で女性が主導権を握っていることを考慮したものであるのだが、この若い男性記者もまんまと岸野氏の計略にはまったようだ。家庭では奥さんの言いなりになっているのだろう。実際の入居者も、女性だけでなく男性からの反響も大きいという。
同社の新しい商品のヒントはここにある。記者には理解できないが、ターゲットは女のような男であり、男のような女だろう。違いますか? 飯村さん、岸野さん、堀切さん。
バスルーム
宅建主任者を宅建取引士に昇格させる意味が全く分からない
「士」の印籠を振りかざすのかイチジクの葉っぱか
宅地建物取引主任者(宅建主任者)を「宅地建物取引士(宅建取引士)」に〝昇格〟させる議員立法を自民党が作成中であることを業界紙が報じた。手元に法案に関する資料がないからよく分からないが、現行の試験制度はそのままにし、宅建取引士に公正かつ誠実に行う義務を課し、信用失墜行為の禁止などを求め、能力向上に努める規定を新たに設けるようだ。そのための宅地建物取引業(宅建業法)の一部を改正する法案を今国会に提出するという。
宅建主任者を宅建取引士に昇格させる話はずいぶん前からあったので驚きはしないが、どうして現行の宅建主任者を「士」にしなければならないのか、その理由が全く分からない。宅建主任者の資質を向上させるため、現在、約90万人いる宅建主任登録者の資格をはく奪・ご破算して再試験を行うというのなら意味はあるが、名称だけ変更し、新たな「士」に何を求めるのかが分からない。
名称を「士」に変えたところで、山積する問題の解決につながらない。むしろ「士」を隠れ蓑にした新たな儲け先を企図する陰謀ではないかと勘繰らざるを得ない。
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宅建業界の現状を概観するとこうだ。この数字を見るだけでもどうすればいいかの課題も見えてくる。
国交省のデータによると、平成25年3月末の全国の宅地建物取引業者(宅建業者)の数は約12万業者だ。平成4年の約14万業者から14.1%減少している。このうち約85%が5人未満の業者で、従事者は約52万人。
記者は、この宅建業者の数は極めて多いと思っている。街の商店などはどんどん姿を消しつつあるのに、宅建業者はしぶとく生き残っている。個人業者の平均年齢はずっと右肩上がりだ。24年度は63.9歳だから、あと1~2年には高齢者人口に仲間入りするのは間違いない。
総務省の平成18年度のデータによると、いわゆる街の不動産屋さんと呼ばれる「不動産賃貸・管理業」は約25.5万で、420の事業分類でトップに君臨している。「食堂・レストラン」の約23.5万、「医療業」の約23.3万、「教育・学習支援業」23.2万、「バー・キャバレー」の約15.2万などをしのぐ。
一方、宅地建物取引主任者(宅建主任者)の平成24年度末の登録者数は約90万人で、平成14年の約71万人と比べると27.0%増加している。
宅建主任者も多い。主任者登録者のうち仕事に従事している専任の取引主任者は約20万人で、1業者当たりの平均取引主任者数は1.6人だ。宅建主任者の資格者が90万人もいるのだから、資質はともかく人数に不足をきたすことはないはずだ。問題は質だ。この資格者を含め不動産業界で働く人がすべて社会から評価されるようにするのが先決だ。
また、平成23年度の宅地建物取引業法(宅建業法)違反は免許取り消し216件を含む358件で、そのほかに勧告・指導を行ったものが793件ある。違反、勧告の数値はこの10年間でほとんど横ばいだ。
この数が多いのか少ないのか。記者は判断できる材料がないが、以前と比べれば違反件数は激減したのではないか。バブル崩壊前は、都内などのミニ開発の建売住宅の大半は違反建築だった。違反を摘発するパトロールが行われたが、これなどは「違反に厳しく対処している」というアリバイづくりでしかなかった。
違反は減ってはいるが、詐欺師そのものの不動産投資の勧誘を行うあくどい業者が後を絶たない。資産などまったくない記者の自宅に電話してくるくらいだから、「振り込め詐欺」と同じ被害者がいなければいいがと心配している。
宅建主任者が取得しなければならない宅地建物取引主任者資格の試験(宅建試験)もなかなか理解しづらい制度だ。
受験資格に年齢制限がないため、過去の最年少合格者は小学6年生だし、最高齢者は90歳のおじいちゃんもいた。宅建主任者は、単に重要事項の文章を読んで聞かせるだけではない。相手に理解させるのが目的だ。小学生や高齢者でも合格できる制度が適当かどうか考えるべきだ。ペーパーテストのみで資質まで見抜こうとするからこうなる。記者は、20年くらい不合格になっても「俺がルールブックだ」と豪語した立派な営業マンを知っている。
合格点も一定していない。本来、資格試験は一定の資質を問うものだから、試験の難易度は一定であるべきだが、そうなっていない。毎年のように合格基準は変わる。平成2年は50点満点のうち26点で合格という国家資格の格を問われる失態をやらかした。逆に不動産不況で需要が減退したときは、36点でないと合格できなかった年もあった。一定の合格者を確保したい各都道府県関係者と、一定のレベルを確保したい試験機関が綱引きをするからこのような結果になる。試験が形骸化し、調整弁の役割しか果たしていない現実がここにある。
過去の試験問題が参考にならなければ、受験者も講習屋もパニックになる。とくに過去問題を必死で取り組んでいる受験者にとっては災難だ。
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記者は、そんな呼称の変更よりも現行の宅建業法を徹底させることが重要だと思う。
宅建業法の第1条では、「この法律は、宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする」と高らかに宣言している。この目的の実践あるのみだ。
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「士」について参考になる、沖縄の泡盛を「全国区」にし、中小企業研究の第一人者として知られる明治大学名誉教授・百瀬恵夫氏の文章を紹介する。
百瀬氏は共著「『武士道』と体育会系 <もののふの心>が日本を動かす」(発行:第三企画出版)で「『武士道』とは、日本人が長い歴史をかけて磨き上げてきた『もののふの心』というべき精神性の基盤である。残念ながら、現在は『武士道』精神に代表される日本人の伝統ある美しいならわしが大きく損なわれてしまった。…それが、多くの社会問題の原因ともなっているのは疑いない」「先見性に富み、潔く、清々しい心を持つ日本人はどこへ行ってしまったのか。『もののふの心』をもう一度見直し、日本人がそこから広く新しい道を切り開いていくことが今、われわれに問われているのではないか」と記している。
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ある業界紙のコラム氏は、「『士』への名称変更は、不動産業界で働くすべての人たちが、顧客を決して裏切らないプロフェッショナルになることを誓うような証(あかし)のようなものであろう」と言い放った。
記者もコラム氏の言うように宅建主任者であろうと宅建取引士であろうと名前はともかく、真に「士」のように崇められるプロになってほしいと願う。しかし、今検討されている問題は、「士」の印籠を振りかざし、イチジクの葉っぱのように恥部・暗部を覆い隠し「身の証」を立てようという狙いが見え隠れする。「顧客」とはいったい誰のことかも書いてほしかった。
建築家と消費者・施主をつなぐ「グローエ アーキテクト クラブ」
」
「グローエアーキテクトクラブ」セミナー(グランド ハイアット東京で)
ドイツの水栓金具のトップ企業GROHE(グローエ)ブランドを輸入販売するグローエジャパンが4月23日に行った「GROHE ARCHITECT CLUB(グローエアーキテクトクラブ)」のキックオフイベントを取材した。建築家など約150人が参加した。
「GROHE ARCHITECT CLUB(グローエアーキテクトクラブ)」は、建築家と消費者・施主をつなぐプラットホームで、同社が世界の最新の情報を提供するとともに、わが国の水回りをより豊かにすることを目的に昨年発足。4月には、グローエ製品を使用した建築家の施工実績を「採用事例」として掲載するWebも開設する。
当日は、グローエ関係者からコンピュータによる最新の設計技術やデザイン、今後の世界的な潮流などが紹介された。
記者も、グローエが高いクオリティやテクノロジーをデザインによっていかに感性の高い商品にするか、サステナビリティを重視しているかがよく分かった。1坪サイズが主流の浴室については、SPAやセラピー、可動式なども提案していくという話は説得力があった。
グローエはLIXIL傘下になったが、ドイツの最高レベルの商品とわが国の技術・文化の融合がありそうだ。
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記者は建築については素人だし、建築家(一級建築士)について語る資格はない。しかし、言わざるをえないことがある。以下は誤謬・偏見に満ちたものかもしれないが、考えていることをそのまま書く。
医師や弁護士と同様、建築士が世の中から「先生」と崇められるのは当然だ。一つ間違えれば人命にかかわる仕事をしている。高い志がなければ建築士は務まらない。
ところが、世間から注目され、尊敬される建築家はほんの一握りに過ぎないことを見聞する。仕事がないから、地上げ屋まがいの仕事をしている人もいる。
なぜ「先生」と尊敬されながら、一部の人しか食べられないのか。その根本理由は分からないが、建築士に決定的に欠けるのは営業力、プレゼン能力ではないかと思っている。「士」プライドが許さないのか邪魔をするのか。自ら頭を下げることはしないし、卓越したデザイン力を簡潔にアピールする術も持っていない人を多く見てきた。
もう一つ、こちらがもっと重要だと思うのが、世間、ユーザーのことをご存じないということだ。ユーザーとは、建築士にとって一般のお客さんではなく、コンペ狙いのゼネコンやデベロッパー、公共団体ではないか。これらの顧客ばかりを見ているから、背後にいる真のユーザーが見えてこない。
マンションでいえば、消費者が何を志向しているか、家事労働・動線を理解していないと設計などできないはずだが、これが欠落している。真のユーザー、つまり消費者を知らないのだから、ゼネコンやデベロッパーに媚びる、言いなりになる以外に方法はない。だから似たり寄ったりの経済設計しかできないのだと思う。
ユーザーを理解しないのは建築士だけではなさそうだ。不動産鑑定士にしてもそうだ。
鑑定士の世界では〝クライアント・プレッシャー〟なる意味不明の言葉がまかり通っている。つまり、公正中立な不動産鑑定を行うのを妨げるプレッシャーをクライアント、お客さんから受けるというのだ。何の商売でも相手の要求を喜びではなくプレッシャーと感じたらおしまいだ。一歩も前に進めない。かといえば、クライアントのためなら公正中立をかなぐり捨てて、ろくに現場を見ないで注文通りの査定をする鑑定士もいるようだ。
このように「士」が生きづらい世の中になってきたというのに、あろうことか、宅建取引主任者を「宅建取引士」に〝昇格〟させる動きがある。まさか呼称だけ変えようということではないだろうが、全国に100万人近くいる宅建主任者をダシにしてひと儲けしようという企みが見え隠れする。今やるべきことは主任者の資質の向上だ。講習屋を儲けさせるための、一定の人数だけを確保するためとしか思えない宅建試験は根本的に見直すべきだ。
「今後も定期的にセミナーを行なっていく」と挨拶したグローエジャパン・森一幸社長
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話しが横道に外れてしまったが、この日のセミナーに参加した建築士の皆さんはレベルが違っていた。セミナーが始まる前の雰囲気からして違っていた。さすがドイツ、グローエだ。BGMで流れたのはぺートーベンの第九第4楽章の冒頭の部分だ。いったいわが国を代表する音曲はあるのか。まさか「スキヤキソング」でもないだろうし、結局は誰もが聞いたことのないような雅楽におちつくのか。
プレゼンを行ったドイツのグローエ関係者が話したのは英語だった。記者はちんぷんかんぷん。同時通訳のイヤホンで日本語を聞くしかなかったが、約150人の参加者でイヤホンを耳にしたのはざっと半分、多くみても6割ぐらいだった。これには驚いた。端から聞く気がない人はいなかったはずだ。通訳なしで建築に関する専門の話を理解できるのだから、間違いなくグローバルに活躍できる資質の持ち主ばかりだと記者は理解した。
「参加者の方からコメントを取りたいのですが」とグローエジャパンの広報担当者に聞いたら、「そこにいらっしゃる南部さんはいかがですか」と勧められた。〝南部さん〟? どこかで聞いたような気がした。
早速、名刺交換した。肩書には「フォワードスタイル代表取締役社長 南部昌亮」とあった。南部氏から先に声をかけられた。「牧田先生、いつも記事を拝見しています」
ここで南部氏が野村不動産の「プラウド」やモリモトのマンションの優れたデザインをたくさん手掛けていらっしゃる「先生」であることと、かつてある建築家を「先生」と呼び、「私は先生と呼ばれるほど馬鹿ではない」とやり返されたのを同時に思い出した。すかさず南部氏に「私は先生などと…」としゃべりそうになったのをぐっと堪えた。記者は馬鹿そのものだからだ。返す言葉がない。
その南部氏から紹介されたのが押野見邦英氏だった。押野見氏は、圧倒的な人気を呼んだ三井不動産レジデンシャルの「パークコート千代田富士見ザタワー」の専有部分のデザインを鬼倉めぐみ氏とともに担当された方で、モリモトの成城学園、大井町、南品川などの繊細なデザインに記者がほれ込んでいる「先生」だ。早速、記念写真を撮らせていただいた。
鬼倉氏は三井不動産レジデンシャルの「千鳥ケ淵」や「麻布霞町」も担当しており、近く公開されるモリモトのマンションを手掛けるそうだ。モデルルームがオープンしたら取材してレポートしたい。
南部氏(左)と押野見氏
大和ハウス 戸建ての全てが体験・体感できるリアル&バーチャル施設開設
「TRY 家Lab(トライエ・ラボ)」
大和ハウス工業は4月26日、東京本社敷地内に戸建住宅体感施設「TRY 家Lab(トライエ・ラボ)」をオープンする。
2002年4月にオープンした同社の技術や最新の設備を体験できる「D-TEC PLAZA(ディーテックプラザ)」を改装したもので、「注文住宅の『試着』をコンセプトに、バーチャル技術を用いて提案中の間取りを体感できるほか、地震体感、エコな暮らし、各種テクノロジーの比較体感などもできる。広さは約1,600㎡。予約制で、年間来場者は5,000名を見込む。
また、東京本社内に昨年末に改装した、リアルな体験ができる「Living Salon Tokyo」では同社の5つの構法や外構、内外装材、水回り・収納アイテムなどが体感できる。
4月22日に行われた記者案内会で同社常務執行役員住宅事業推進部長・中村泉氏は、「だれもが洋服を買うとき試着をするし、車を買うときは試乗もする。しかし、注文住宅はそれがない。当社は歩道橋や住宅ローンなど世の中になかったものをつくり常識化した。注文住宅でも試着や試乗と同じように体験できるものをやるべきと実現した」と話した。
「トライエ シミュレーター」
「トライエ シミュレーター」を体感する記者団
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「TRY 家Lab(トライエ・ラボ)」も「Living Salon Tokyo」も予約制だから、一般のお客さんが突然尋ねていっても見せてはもらえないだろうが、戸建てのイロハが学べる施設だ。「リアル」と「バーチャル」を同時に体験・体感できる施設はそうないはずだ。
「TRY 家Lab(トライエ・ラボ)」は、地震体感ができる「トライエ シミュレーター」がいい。阪神淡路や東日本大震災クラスの揺れはもちろん、見学者が希望するエリアの揺れも体感できる。怪我をしないよう握りバーをつかまされたままで、縦揺れは体感できないし、シャンデリアが降り注ぎ、テレビや冷蔵庫、仏壇、本棚が四方八方から飛んでくる恐怖も味わえないが、震度7クラスでは運を天に任せるほかない状況になることは学べる。仮想現実を知っておくのと知らないとでは天と地ほどの差がある。
「Living Salon Tokyo」は、自由自在に居住空間をレイアウトできるのがいい。玄関の広さからリビング、キッチン、壁の厚さ、バルコニーの奥行き、斜線制限による勾配、天井の高さなど10の住空間が電動装置によって体験できる。隣り合わせの屋上テラスには外構のモデルも展示されており、「ダイワに任せてくだサイ」の意を込めた子ども向けのサイの張りぼてもある。
天井高や広さが調整できる「Living Salon Tokyo」
「Living Salon Tokyo」に隣接する屋上テラスのサイ
三井不動産 「コレド室町2・コレド室町3」開業1カ月で来館者260万人
三井不動産は4月22日、先月20日に開業した「コレド室町2・コレド室町3」と既存の「コレド室町」の1カ月(3月20日~4月19日)の来館者が約260万人に達したと発表した。
新たな客層として増えているのは30代~40代。老舗の新業態店でのショッピングやオープンテラスでのランチ・ディナーを楽しむ様子が見られたという。
これまで日本橋に訪れていた50代~70代もなじみの街で新たな過ごし方を楽しみ、20代は「TOHOシネマズ日本橋」を通じて日本橋に訪れ、これまで縁遠かった老舗店にも足を運んでいる様子がみられたという。
日本橋では4月26日(土)~5月6日(日)のゴールデンウィークに様々なイベントを実施する。
三菱地所 サービスアパートメント併設した(仮称)大手町1-1計画B棟」着工
「(仮称)大手町1-1計画B棟」(左の建物。右はA棟)
三菱地所は4月14日、千代田区大手町一丁目の「(仮称)大手町1-1計画B棟」の工事に着手し、大手町初の「住」機能としてサービスアパートメントを併設すると発表した。
計画は、隣接地で同社とJXホールディングスが建設中の「(仮称)大手町1-1計画A棟」(2015年竣工予定)とともに約16,200㎡の敷地を街区一体開発するもの。サービスアパートメントは約130室で、多言語対応・24時間対応。運営はシンガポールに本社を置く、世界最大のサービスアパートメント所有・運営企業であるThe Ascott Limitedが担い、その最高級ブランド「Ascott The Residence」が日本初出店する。
オフィスは、敷地西側近傍に皇居東御苑、皇居外苑濠(大手濠)を臨み、地下鉄5路線が乗り入れる「大手町駅」に直結。1フロアあたり約1,000坪の整形大空間を確保。フレキシビリティの高い効率的で快適な執務環境を整備する。
建物は地下5階、地上29階建て、延べ床面積約149,000㎡、容積率1400%。設計監理は三菱地所設計。施工は竹中工務店。竣工予定は2017年1月下旬。
オフィス空間(完成予想図)