消費税増税対策 30万円の現金給付は決まったが…
消費税増税時の住宅購入
最大30万円の現金給付は決まったが…建築費上昇懸念
マスコミが一斉に報じたように、政府・与党は6月26日、来年4月の消費増税に併せて導入する住宅購入者向けの給付制度を決めた。住宅ローン利用者に対して年収制限を設けて最大30万円の現金を給付するのが骨子だ。また、今年末で期限が切れる住宅ローン減税も4年間延長して、控除額を年間最大40万円に拡大する。
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「負担軽減策」が打ち出された26日、不動産協会は木村惠司理事長(三菱地所会長)名で「平成25年度税制改正で措置された住宅ローン減税の拡充等で効果が不十分な所得層に対して重点的に手当てされるとともに、現金購入者に対しても広く配慮されており、住宅購入者の負担軽減に効果があると評価している。また、10%引き上げ時の負担軽減措置も併せて決定されており、中堅所得層まで幅広く手当てされたことも評価したい」「これにより、住宅市場における駆け込み需要の発生とその反動については、かなりの程度平準化されることを期待している」とコメントした。
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この最大30万円の現金給付が消費税後の住宅市場にどのような影響を及ぼすかが最大の関心事だ。分譲マンションのケースで考えてみよう。
計算がしやすいように首都圏の一般的な郊外マンションに当てはまる3,000万円のマンションを全額ローンで購入した場合で、課税対象外の土地価格を1,000万円、課税対象の建物価格を2,000万円としよう。
現行の消費税率が5%だと消費税額は100万円。消費税率が8%になると160万円となり60万円アップする。仮に年収425万円以下の人が対象となる30万円の給付が受けられるとすると、住宅ローン控除額の年間30万円と合わせ差し引きゼロとなる計算だ。
しかし、実際の場合、年収425万円以下の人が3,000万円のマンションを購入し、3,000万円のローンを組むのは不可能だ。現金とローン減税で戻ってくるのはせいぜい30万円ではないか。つまり、消費税アップによって30万円の負担増となり、マスコミが報じているように「年収が低い人ほど恩恵が受けられる」というのは正確ではない。この点について、自民党の野田毅税制調査会長が「低所得者のための措置ではなく、駆け込み需要増と反動をいかに抑えるかを軸に考えた」(27日付け日経新聞)と語ったのは的を射ている。
そもそも消費税は逆進性が強く、生鮮食品などとともに住宅はその影響を強く受ける。ここでは詳しく書かないが、これは土地に対しては課税されず、建物のみに課税されるという税の仕組みに問題がある。建築費はどんな遠隔地であろうと1坪(3.3㎡)当たり単価は100万円はするので、分譲価格に占める建物価格割合は7割ぐらいになる。一方で、地価が高い都心部などは土地価格の割合は6~7割ぐらいになり逆転する。20坪の3,000万円と1億円、言い換えれば年収が数百万円の人とその数倍の富裕層の人が支払う消費税額は200~300万円の差しかない。
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もう一つ重視しなければならないのは、住宅ローン金利動向だし分譲価格の上昇懸念だ。住宅ローン金利動向については専門家に任すとして、すでに建築費の上昇は始まっている。関係者によると10%は上がっているという。
それでもまだ価格上昇が顕在化していないのは、企業努力、つまり、利益率を落としたり設備仕様レベルを下げたりして対応しているからだ。そのような例はたくさんある。二重床を直床にしたりキッチンの天板を御影石から人造大理石にしたり、食洗機はオプションにする、スロップシンクはつけない、クロスの質を落とす…数えたらきりがないほどある。値段を据え置きし、中身の量を減らしている商品と同じだ。
しかし、質の低下は競争力の低下にもつながる。いずれは建築費の上昇を価格に上乗せせざるをえなくなる。時間の問題だ。また、「駆け込み需要」に便乗した値上げも行われそうだ。そこがターニングポイントだろう。現金給付やローン減税では吸収しきれない額の値上がりとなった場合、果たして市場はどう反応するか。アベノミクスの真価がそこで問われる。
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もう一つ指摘したいのは、詳細はこれから決まるのだろうが、「消費税還元セール禁止特措法」と今回の「負担軽減措置」との整合性はどうなのかということだ。
特措法では「消費税分を値下げする」「消費税分の家具をプレゼントする」などは違法行為になるのだろうが、現金給付やローン減税によって負担を軽くするというのは主体が民間と国の違いだけではないか。消費税が増税されたらデベロッパーは「春の住宅取得応援キャンペーン」「創業○周年記念 購入資金プレゼント」などと実質的に税負担を軽くする商法に出そうだが、これは違法にはできないはずだ。
混乱を生じさせないためにも住宅、少なくとも第一次取得層向けは非課税にするべきだと思う。
建設技能労働者の不足傾向強まる 国交省
建設技能労働者の不足傾向強まる 国交省
国土交通省は6月25日、建設労働需給調査結果・主要建設資材需給・価格動向調査結果をまとめ発表した。
5月の全国8職種の需給動向は、4月の1.0%不足から1.4%不足へ0.4ポイント不足率が拡大。特に鉄筋工(土木)の不足率が5.1%と大きくなっている。
今後の見通しとしては8職種全ての技能労働者が不足傾向にあるとしており、労働者の確保が「困難」と「やや困難」の合計が23.3%となり、前年同月比11.1ポイント上昇している。
また、6月の主要建設資材需給・価格動向では、価格は「横ばい」、需給は「均衡」、在庫は「普通」となっている。
長期優良住宅が「CASBEE」で評価されないのはなぜ
長期優良マンションが「CASBEE」では評価されないのはなぜ
昨日の記事で三井不動産レジデンシャルの「パークホームズ LaLa 新三郷」は免震構造・長期優良住宅認定マンションでありながら、環境性能を評価する「CASBEE 埼玉」では満点の星5つ(素晴らしい)に1つ欠ける4つ(大変良い)しか獲得できておらず、同じように埼玉県で初の免震・長期優良住宅認定マンションで、168戸が即日完売した野村不動産「プラウド大宮」も「CASBEE さいたま」では星3つ(良い)の評価しかされていないと書いた。100点満点で言えば「新三郷」は80点、「大宮」は60点ということになる。
いうまでもなく「長期優良住宅」は、平成21年4月に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」によって構造躯体の劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性の性能を有し、かつ、良好な景観の形成に配慮した居住環境や一定の住戸面積を有する住宅が認定されるものだ。認定を受けた住宅は、住宅ローンや不動産取得税、固定資産税などの税制面で優遇措置を受けられるようになっている。
一方の、「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)は、国交省の支援のもと財団法人建築環境・省エネルギー機構が中心となって10年ぐらい前から推進しているもので、建築物の環境品質と建築物の環境負荷の両面から評価し、評価結果を「Sランク(素晴らしい)」から「Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B-ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」という5段階のランキングによって示されるものだ。自治体によっては条例で環境性能評価の届出を義務づけ、数値を広告などに表示するよう義務づけているところもある。
首都圏では東京都は「CASBEE」ではないが、同様の「マンション環境性能評価」制度を平成17年に設け、一定規模以上のマンションの広告に環境性能を示すラベルの表示を義務付けている。当初は「建物の断熱性」「設備の省エネ性」「建物の長寿命化」「みどり」という4つの評価項目につきそれぞれ星3つで評価(満点は星12個)し、平成22年度からは「太陽光発電・太陽熱」の項目を追加し、5項目全てで満点の場合は星15個となっている。このほか埼玉、神奈川県の各県と主要な都市が実施している。千葉市と柏市を除く千葉県には評価制度がない。千葉県のマンションの価格が相対的に低いのはこのためかどうかは書かない。
では、どれぐらいのマンションがSランク(都の場合は満点の星3つ)を獲得しているか。
都の満点は結構ある。22年度以降の新制度では三井不動産レジデンシャル「パークコート六本木ヒルトップ」(270戸)、野村不動産「プラウド東雲キャナルコート」(600戸)、三井不動産レジデンシャル「パークタワー東雲」(585戸)、三井不動産レジデンシャル「パークコート千代田富士見」(505戸)、大手デベロッパー6社共同「SKYZ TOWER & GARDEN (東京ワンダフルプロジェクト)」(1,110戸)の5物件が星3つ(15個)だし、旧制度の星3つ(満点で12個)では10物件ぐらいある。
他の県は極端に少ない。埼玉県下ではSランクのマンションはこれまで1件もないし、神奈川県は長谷工コーポレーション他「ブリージアテラス淵野辺」(220戸)の1件のみだ。横浜市は三菱地所レジデンス他「M.M.TOWERS FORESIS」(1,226戸)、野村不動産「プラウド綱島」(99戸)、東京建物他「Brillia City 横浜磯子」(1,230戸)の3件、川崎市は東京建物「Brillia e-SQUARE」(129戸)と川崎市住宅供給公社「川崎ゲートタワー」(110戸)しかない。
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記者は長期優良住宅はもちろんだが、「CASBEE」についてもマンションを見学した際や住宅情報誌を見るとき必ずチェックする。もちろんデベロッパーがSランク(都の場合は星3つ=15個)を取得して欲しいからだし、ユーザーもマンションの選択に役立つと思うからだ。
ところが、冒頭のようなことが起きた。どうしてこのような結果が出るのか。それは長期優良住宅と「CASBEE」の評価のモノサシが異なるからだ。長期優良住宅は基本性能や「居住」環境を評価するし、「CASBEE」は居住環境よりも「自然」環境性能を評価している。この差だ。
例えば、長期優良は居住面積や建物の維持・管理、可変性も重要な評価ポイントになるが、「CASBEE」は居住面積、居住性などはあまり重視していない。強いてあげれば「サービス・性能」という評価項目だが、これはマンションの機能のすべてを包含する項目ともいえるが、逆に極めてあいまいな評価項目だ。お叱りを受けるかもしれないが、「CASBEE」は環境には優しいが、人に優しいという哲学が欠落しているように思う。
もう一つは、デベロッパーの姿勢、インセンティブの有無だ。長期優良は住宅ローンなどの優遇措置があり、ユーザーにアピールしやすいので各社は取得に積極的になっている。一方の「CASBEE」は、住宅ローン金利を引き下げたり容積率の割増を行っているところもあるが、全体としては優遇策は少ない。
これまで長期優良認定を取得した首都圏マンションは記者が把握している範囲内で20件近くあるが、このうち「CASBEE」でSランクを取得しているのは「東雲」「六本木」「千代田富士見」「川崎」の4物件しかない。
何度も言うが、免震で長期優良マンションが「CASBEE」の評価では満点の100点が取れず、せいぜい60~80点しか取れないのであれば、だれも満点を目指さないのではないか。ハードルを低くしろとは言わない。関係者がよく話し合って双方の整合性を図るべきだ。このままではユーザーから見放されることになる。
ある大手デベロッパーの関係者は「われわれは独自の基準を持っておりプライドもある。長期優良など挑戦しがいのあるものはもちろん取得を目指すが、様々な認定制度で評価されることが最大目標ではない」と語った。
4月の住宅着工 前年同月比5.8%増の78,000戸
4月の住宅着工 前年同月比5.8%増の約78,000戸
国土交通省は5月31日、平成25年4月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は77,894戸(前年同月比5.8%増、8か月連続の増加)となった。内訳は持家が28,357戸(同17.5%増、8か月連続の増加)、貸家が27,842戸(同7.8%増、2か月連続の増加)、分譲住宅が21,388戸(同6.9%減、2か月連続の減少)。
分譲住宅のうちマンションは10,718戸(同 22.0%減、2か月連続の減少)、一戸建住宅は10,559戸(同15.4%増、8か月連続の増加)。マンションが大幅に減少したのは、前年同月が前々同月比38.0%増の11,704戸と大幅に増加していたためで、特別な要因はない。比較的高水準で推移している。
首都圏マンションは5,860戸(同18.5%減)で、内訳は東京都が3,607戸(同9.2%減)、神奈川県が1,240戸(同32.2%増)、埼玉県が390戸(同28.4%減)、千葉県が623戸(同64.2%減)。
建設技能労働者の不足率が拡大 国交省調査
建設技能労働者不足率が拡大 国交省調査
建設関係の職人不足率が拡大し、建設資材は被災3県で価格が「やや上昇」し骨材が「やや逼迫」--国土交通省は5月24日、4月の建設労働需給調査結果と5月の主要建設資材需給・価格動向調査結果をまとめ発表した。
建設労働需給調査は、型わく工、左官、とび工など8職種について全国調査しているもので、過不足率は3月の0.3%から4月は1.0%へ0.7ポイント不足率が拡大。とくに鉄筋工(土木)の不足率が2.7%と大きい。
全国の建築資材動向は、価格ではアスファルト合材が「やや上昇」し、その他は「横ばい」となっている。需給動向では全ての資材が「均衡」となり、在庫も「普通」となっている。被災3県では価格、需給、在庫とも「やや上昇」「ややひっ迫」「やや品不足」が目立っている。
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調査によると技能労働者の不足も資材の値上がりもそれほど深刻な事態でないようにも受け取れるが、じわじわと人手不足、資材不足・値上がりが進んでおり、マンションや戸建て価格への影響は必至だ。
売れ行きが悪ければデベロッパーも上昇分を価格に吸収せざるを得ないが、最近は売行きも好調なだけに、価格にオンするのは間違いない。
消費税の値上げは何らかの形で消費者に還元されるが、その分は分譲価格の上昇で消えることになりそうだ。
管理協が総会 「コミュニティ不在なくそう」山根理事長
マンション管理業協会が総会
「コミュニティ不在は災害時の被害を増大させる」山根理事長
山根理事長(写真提供:不動産流通研究所)
マンション管理業協会(理事長:山根弘美・ダイワサービス社長)は5月22日、第34回定時総会を開き、平成24年度事業報告、同収支決算を承認し、新役員などを選任した。副理事長を退任した池田孝氏(前三井不動産住宅サービス会長)、土橋隆彦氏(前東急コミュニティ会長)の後任には小佐野台氏(日本ハウズイング社長)、関敏昭氏(野村リビングサポート社長)を選任した。
総会後の懇親会で挨拶した山根氏は、「様々な枠を超えたチャレンジ精神こそが住生活総合サービス業を目指す業界の価値・評価を高めていく。そのために第一に法令順守。違反件数は減ってはいるが道半ば。さらに強化していく。第二は安心・安全・快適の取り組みだ。マンションの耐震診断の取り組みを一層強化する。コミュニティ形成については今年に入って2度マンション適正化法の改正について国交省に要望活動を行なった。地域コミュニティとマンションコミュニティが連携することがきわめて重要で、われわれ業界も全面的にサポートしていく。活動を担保するためにもマンション標準管理規約の改正をお願いしたい」などと語った。
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山根氏は自らの住むマンションにもついて触れ、マンションコミュニティ形成の難しさ、重要性について訴えた。山根氏は「私の家族は博多ですが、18年間、単身赴任で東京に住んでいます。500戸の大規模超高層マンションに賃貸で住んでいますが、皆さん、表札、メール受けに名前を出している人は何人いると思いますか」と問いかけ、「一人だけです。山根弘美という男だか女だか分からない名前だけです」と笑わせた。
山根氏は、「マンションのセキュリティはどんどん高まっているが、その結果、誰が住んでいるかも分からないコミュニティ不在という皮肉な状況を招いた。コミュニティ不在は災害時の弱者となる高齢者や乳幼児、子どもたちの被害を増大させる。未来の子どもたちのためにもわれわれは何ができるかを考えないといけない」と呼びかけた。
全国590万戸のマンション居住者の安心と安全を守るための業界の活動が益々重要性を増す。命綱の役割を果たすかもしれない。
愛でる緑から関わる緑へ 多摩NT学会が意見交換会
多摩ニュータウン学会 「みどり」について意見交換会
〝愛でるみどりから関わるみどりへ〟
「次世代にみどりをつなぐ行政と市民の連携、その仕組みづくり検討会」
多摩ニュータウン学会(会長:吉川徹・首都大学東京教授)は5月11日、「次世代にみどりをつなぐ行政と市民の連携、その仕組みづくり検討会」をテーマに例会を開催。学会員や多摩市みどりのあり方懇談会委員、NPO、ボランティア団体、市民など約30人が参加して意見交換を行った。
例会では、多摩市みどりのあり方懇談会委員を務めた大石武朗氏が多摩市のみどりの現状や課題などについて報告。「人の目線で見ると市のみどりは豊かとはいえない。財政難の現状を考えると後継者を育てられない。愛でるみどりから関わるみどりへ政策転換し、市民のネットワークづくりが必要」などと語った。
また、NPOあしたや共働企画・滝口直行氏と市民団体「きりんの会」・松原友子氏がそれぞれ事例紹介を行った。滝口氏は「地域住民・自治会・老人会などによる公園の清掃などを行っている公園愛護会には71団体が参加して活動しているが、横のつながりがない。交流できる場が欲しい」と団体間の連携を訴えた。松原氏は「市と協力して永山南公園の再生に取り組んでいる。公園内の樹林地でボランティアとして樹木の手入れなども行っており、端材で樹名板や案内板、ベンチなどもつくった。今年はキンラン、シュンランなど絶滅危惧種の草花もたくさん咲いた」などと報告した。
参加者からは、「多摩市のみどり率は54%もある。これはすごいこと。貴重な資源」「(みどりの将来を考えると)絶望的だが、孤独な活動を続けている」「重装備で活動している人の姿を見ると、素人は参加しづらい」「活動するにはワクワク感が必要」「ネットワークづくりが重要」「公園のたけのこ掘りがしたい」「遠くから眺めたり高い所から見下ろしたりすみどりは美しいが、隣のみどりは鬱陶しく感じる人が多い」などの意見が出された。
多摩市は先に「みどりの基本計画」を策定し、街路樹などの「みどり」を含めたみどりの質的向上(量から質へ)や愛でるみどりから関わるみどりへ方向を転換し、計画の推進には市民や事業者、市民団体などとの協働の取組みが前提とする考えを打ち出した。
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左から大石氏、滝口氏、松原氏 |
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今回の例会も楽しみにしていた。時間が1時間半しかなく趣旨が「それぞれが意見を出し合うサロン」であったため議論があまり深まらなかったのは残念だったが、今回の例会をきっかけに市と市民団体などの連携が深まり、どこにも負けないみどりのネットワークが構築されることに期待したい。
一つだけ行政に注文をつけるとすれば、立派な「みどりの基本計画」を確実に実行するために情報をどんどん公開して欲しいということだ。
市も打ち出しているように、①大学や市民団体等と連携したみどりのホームページ立ち上げ及び運営支援②市民団体などや事業者、行政などの連携による情報ネットワーク体制の構築③ホームページや広報の活用によるみどりの活動の普及啓発④コンテストや表彰制度の実施-などが望まれる。この点については、これまで市が運営していたグリーンライブセンターを恵泉女学園やNPOなどと協働して運営するように再編したのはいいことで、他にない大きな武器になるはずだ。
もう一つ付け加えれば、多摩市に限ったことではないが、道路法の「道路の付属物」という街路樹の規定を改めて欲しい。多摩市は平成20年に策定した「街路樹よくなるプラン」で「街路樹は単に『道路の付属物』ではなく街路を構成する素材の中で、唯一の生き物である特徴を生かした『うるおいとゆとり』のある快適な道路空間の創出」とうたっていることを実践して欲しい。
情報公開・共有とも関連するが、多摩市のように緑があふれている地域はともかく、一般市民が緑をいちばん身近に感じるのは街路樹だ。その街路樹の維持管理に1本当たり年間1~2万円(多摩市は街路樹1万本に対して年間予算は約1億円。調布市は半分以下の3,860本に対して約8,500万円=平成18年度)の経費を掛け、電信柱のようにぶった切られている実態をみんなで知るべきだ。もちろん、街路樹だけでなく公園の維持管理費を含めると、多摩市の場合は年間で5億円ぐらいの経費がかかっている。街路樹を含めた「みどり」全体では4人家族で年間約16,000円の市税が投入されている勘定だ。それだけ税金を払っているのなら「みどり」に関わろうと考える人も出てくるのではないか。
鹿島・住林 国内初のスギ耐火集成材採用の店舗
鹿島建設・住友林業
国内初のスギ耐火集成材を採用した「oto no ha Cafe」
「野菜倶楽部 oto no ha Cafe」
鹿島建設と住友林業は5月15日、国交省の平成24年度木造建築技術先導事業に採択された、国産スギ材の耐火集成材「FRウッド」を国内で初採用した3階建て耐火建築物「野菜倶楽部-oto no ha Cafe」の完成見学会を行なった。集成材は無処理の荷重支持部分の外側に難燃処理した燃え止まり層、表面に無処理の化粧材を施した3層構造で、都心部の木造耐火建築物のプロトタイプとして普及が見込まれている。
建設地は目白通りに面し、東京カテドラル、講談社野間記念館、椿山荘に隣接した都心の一等地。敷地面積は約677㎡、建物は3階建て延床面積約243㎡。防火地域(道路から20m)に対応した耐火認定軸組工法建築に耐火集成材の柱、梁を組み入れた耐火建築物で、木製サッシ、無垢材フローリング床、スギのルーバー天井などの木質化を図ったのが特徴。事業の提案者は講談社グループの音羽建物グリーン事業本部、設計は鹿島建設、施工は住友林業。補助金額は1,580万円。有機野菜の販売と料理を提供する店舗として5月25日オープンする。
見学会で挨拶した音羽建物ファシリティマネジメント部部長で1級建築士の塚本平一郎氏は、「当初は鉄骨造として企画したが、鹿島さんや住林さんの提案があり、無農薬の野菜を売る店舗にふさわしいと考えてコストはかかっても木造がいいと決断した。防火地域のハードルを乗り越えて立派な建物が出来上がった」と話した。
また、住林の住宅事業本部木化営業部設計チームマネージャー・西出直樹氏は「国産材の自給率を50%に引き上げようという国の目標もあり、今年はそのスタートの年となるよう可能性を追求していく」と語り、鹿島の建築設計統括グループチーフアーキテクト・比留間基晃氏は、「実大加熱実験を行い、個々の耐火認定の組み合わせで耐火性能を有することを確認して耐火建築物の壁を乗り越えることができた。5本のFRウッドの柱・梁を使用し、外壁は塗装仕上げ、内装は木肌がそのまま体感できるよう工夫を施した」と述べた。
スギの木肌が美しい内部
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建物の外観は塗装仕上げなので木造か鉄骨か判別は難しいが、建物内に入ると本物の木の美しさが実感できる。構造材は岩手県産のスギ、床は厚さ20ミリ、幅25センチのナグリ仕上げのナラ材、階段はタモ材、窓はベイマツの木製サッシを採用している。天井にはスギのルーバーを採用し、排煙を兼ねるトップライトを3カ所に設けている。隣接する野間記念館の借景も眺められる。
このような木造の耐火建築物がどんどん建設されることを期待したい。鉄やコンクリートより木が美しいのはいうまでもない。
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天井のルーバー | テラス(左が野間記念館) |
1時間でリンゴ800個 数時間で10万の売上「こだわり商店」
1時間にリンゴ800個、数時間に10万円の農産品が売れる
新宿区西早稲田の「こだわり商店」
安井氏
近江商人の商法の基本とされる「三方良し(さんぽうよし)」という言葉がある。「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」を満足させるのが肝要という意味だ。この究極の顧客満足ともいうべき商売を実践している新宿区西早稲田の「こだわり商店」店主・安井浩和氏(35)に話を聞く機会があった。
「こだわり商店」は、早稲田大学に近接した約400の店が加盟する「早稲田大学周辺商店連合会」の一角にある。麻雀屋だった空き店舗を改装した店舗の面積は約7坪。開業は平成19年10月。
屋号にもあるように、商品の安全性、本物志向に徹底してこだわっているのが特徴だ。狭い店には宮城県南三陸町から栃木県茂木町、東京都桧原村などの産直品から米、野菜、魚、肉、調味料、酒、菓子類まで全国のあらゆる農産物や加工品が並べられている。業種としては食料品販売業と呼ぶのだろうが、いわゆるアンテナショップでもある。
特徴はそれだけではない。ものを売るだけではなく、環境問題やバリアフリーの街づくり、地域の活性化などにも積極的に取り組んでいることだ。環境問題は15年前から早大と連携して早稲田商店会が取り組んでいるもので、安井氏もメンバーの一人として参加している。ハワイ旅行券をつけたり地域通貨などを発行したりなどして大ヒット。「街中から空き缶やゴミがなくなりました。子どもたちが旅行券や地域通貨ほしさにゴミ箱をあさる光景もみられました」
バリアフリーの取り組みでは、当時、早大生だった乙武洋匡氏が電動椅子に乗り、いかに街にはバリアが多いかを訴えた。これも話題になった。
修学旅行生の店頭販売・販売体験の手伝いを行なっているのも社会教育・ 地域貢献活動の一環だ。年間に受け入れる修学旅行生は約20校、約1,000人にのぼる。 商品の並べ方、名札の付け方、接客マナーなど販売のイロハを安井氏は手ほどきする。
「ここの商店街はそれほど人通りが多いほうではありません。それでも、この前、青森の修学旅行生がリンゴを売ったら1時間で800個売れました。800個? 尋常じゃない数字。大きなスーパーの1日の売り上げと同じぐらいです。何が嬉しいかといえば、全然ものを売る経験などない子どもたちが最初は戸惑い、声も掛けられない状態から残り30分ともなると大騒ぎになる。その笑顔を見るのが嬉しいんです。学校だから利益を出しちゃまずいから、金額は赤十字などに寄付するんですが、社会貢献にもつながるわけです」
こうした一連の活動がマスコミなどで取り上げられるようになり、いまでは全国から視察団が訪れるようになった。これまで約260団体に達している。
店頭販売する度会中学校の生徒
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店を始めたきっかけが面白い。「父(潤一郎氏)がスーパーを経営しておりまして、私はその手伝いをしていました。3歳ぐらいのときから手伝わされていました。父は早稲田商店会の会長を務めており、その街づくりの活動から小泉チルドレンに走り、衆議院議員になったとき(平成17年の東京ブロック比例区で当選)、私に跡を継げと言ったのですが、スーパーの将来性なども考えて独立してやろうと決めました」「開業するに当たっては全国20~30カ所を見て回りました。自分で食べておいしいと感じたものしか売らないと決めました」
栃木県茂木町の100アイテムを販売したのを皮切りに現在では32都道府県1,200アイテムに増えている。「全て産地直送。90%が無添加です。私が納得するものしか売らないので、食べてばかり。ウエストはこれごらんの通り」と大きな腹を抱えて笑う。
店頭に掲げられたPR看板
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記者が安井氏と出会ったきっかけは次の通りだ。
三菱地所が協力企業となっていた農水省のキックオフイベント「ジャパンフードフェスタ 2012」を昨年11月に取材したとき、わが故郷の三重県度会(わたらい)町が「度会茶」と「鹿のコロッケ」の販売をしており、そのとき町役場の方と話しをした。
その町役場の方から「度会中学校の就学旅行で町の特産品の販売体験を早稲田の『こだわり商店』で行なうので取材してほしい」との連絡を受けた。
正直、〝不動産に全然関係ない修学旅行生を取材して記事など書けない〟と思ったが、安井氏から話しを聞くうちに〝これは地域の活性化、環境問題、バリアフリーの視点から面白い記事になる〟と考え記事にした。
安井氏によると、「度会中学校さんはネットで当店のことを見つけてくれて来られました」とのことで、当日の模様は安井氏がブログで次のように書いている。
「お陰様で、無事に事故もなく度会中学校の修学旅行地元産品PR販売が終了しました!過去最高売上の108,300円を記録しました!!最後に大隈講堂で売上発表してお決まりの一本締め!生徒代表から御礼の言葉を頂きました。『ビラ配りから販売に入り、売れなくても皆で頑張ろうと声を掛け合った結果、全ての椎茸を売り切ることが出来たのは本当に嬉しかったです』 この言葉を目をキラキラしながら皆の前で言ってくれたんです。今まで頂いた言葉の中で一番嬉しかった。販売始めの時間帯はやらされてる感があったのに帰り際にはこう変わるんです。もう見ていてゾクゾクするくらい気持ちのよい瞬間です」
![]() 販売風景 |
![]() 幟や看板で宣伝告知もする生徒 |
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度会中学校の修学旅行生は3年生の82人。その生徒が3時間半ぐらいの間にしいたけ、お茶、あられなど金額にして10万円以上を売ったと地元の人が聞いたら仰天するのではないか。度会町は伊勢市に隣接した人口約8,500人の町。鎌倉時代、伊勢神宮の神官、度会氏が唱えたとされる「度会神道(伊勢神道)」発祥の地とされている。
冒頭に近江商人の「三方良し」を取り上げたが、「近江泥棒、伊勢乞食」という言葉がある。これは県民性を示す言葉で、窮したときに取る行動を対比したものだと言われているが、そうではなくて高飛車な態度を取る近江商人と、手すり足すり低姿勢で臨む伊勢商人の商法の違いを意味する言葉だと記者は考える。数時間で過去最高の10万円の売り上げを達成できたのも「伊勢商法」のお蔭かもしれない。
![]() 全国から寄せられた感謝の手紙類 |
![]() 法被を着て宣伝する生徒 |
生徒と一緒に記念写真に納まる安井氏
一般社団 日米不動産協力機構設立
一般社団法人 日米不動産協力機構(JARECO)設立
一般社団法人 日米不動産協力機構(JARECO)は5月8日、同機構を今年2月22日に日本大学経済学部教授・中川雅之氏を発起人として法人設立登記(本店所在地 千代田区)を完了し、本年3月26日に全米リアルター協会(NAR)と「相互協力・相互サービス提供」の協約を締結したと発表した。
JARECOは、国際的な不動産流通政策の研究・情報交換を産学連携で行う組織として、NARとの相互協力を通じ、世界各地にある NAR 協約国(アジアをはじめとする60カ国)やその国の関連団体・不動産・住宅関連の研究機関・シンクタンク・大学との連携を図り、わが国の不動産流通市場の活性化に貢献することを目的として設立された。設立を記念して5月31日に設立記念シンポジウムを開催する。
JARECO事務局は、当面の間は仮事務局として日本大学経済学部中川雅之研究室に置く。事務局員は今中弘明氏。電話は03-5843-8372。ホームページは http://www.jareco.org