郊外マンション・戸建て不振 もう〝駅近〟を強調するのはよそうではないか
郊外マンションや一戸建ての売れ行きがいま一つだ。いろいろ理由はあるが、最大の理由は価格が高くなったことであり、子育て世代にとって保育所を確保するのはもちろん、子どもの送迎に時間が係るために、住環境などを犠牲にしてより勤務地に近い駅圏のマンションを選び、さらに〝駅近〟を選好する傾向が強まっているからだ。
専業主婦世帯と共働き世帯の数が逆転したのは1990年代に入ってからだ。バブル崩壊とほぼ一致する。バブル崩壊前は、結婚して退職する女性が多数派を占めていたのは、夫の収入だけでなんとかやりくりできたからだ。その図式がバブル崩壊で一挙に崩れた。その間隙をついて、新自由主義(ネオリベラリズム)が台頭し、世の中を支配するようになった。
その是非はともかく、〝駅近〟のマンションや戸建てしか売れないというのはどう考えてもおかしい。記者も〝駅近〟に加担したとは考えていないが、人気の要因に〝駅近〟を挙げたことはたくさんあるので、その責任の一端はある。反省の意味を込めて、〝駅近〟に反撃しようと思う。
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1日24時間。個人差もあるだろうが、このうち睡眠時間8時間、労働時間8時間、朝・昼・晩の食事時間1時間30分として、残り6時間30分をどう使うかだ。
残り時間のうちもっとも時間を要するのが通勤時間だろう。仮に片道1時間とすると、残り時間は4時間30分。主婦、あるいは主夫の家事労働も無視できない。食材などの買い物、調理時間、後片付け、掃除、洗濯などを2時間30分とすると、残りは2時間。
子どもがいる家庭の場合はさらに保育園の送り迎えがあり、さらにその世話も加えると、主婦、または主夫の可処分時間は限りなくゼロになる。読書をしたり音楽を聴いたり、テレビを観たりする余暇時間はいくらも残されない。
では、どうして時間を工面するかだが、やはり通勤時間を何とかしようという家庭が圧倒的に多いはずだから、より職場に近いところに住まいを定めようと考えるのは当然だ。
だから「駅近」のマンションや戸建てが選好されるのは当たり前で、郊外住宅地が敬遠されるのはよくわかる。
解決法はないのか。考えられるのはより住居に近いところに夫、又は妻が職場を変えるか、専業主婦、または専業主夫になるか、労働時間を削ることが可能なパート・アルバイト、フリーターに変わるか、あるいはまた自由業に転身するかだ。いずれも厳しい選択だ。
となると、残された道は働き方を変えるしかないのだが、残念ながらフレックスやみなし労働も進んでいない。
厚生労働省の平成27年就労条件総合調査結果のデータでは、「フレックスタイム制」を採用している企業は従業員が1,000人以上の企業では21.7%だが、全体では4.3%(不動産業・物品賃貸業は6.2%)しかない。フレックスタイム制の適用を受けている労働者割合も全体では6.7%(同8.5%)に過ぎない。
みなし労働時間制(裁量労働)を採用している企業割合は13.0%(同20.0%)となっており、その適用を受けている労働者は8.4%(同10.1%)だ。
このほか、所定労働時間、年次有給休暇取得率などあらゆる指標はこの5年間ほとんど変化がなく、改善はされていない。
こうなると、〝駅近〟に反撃を加えようにも突破口すら見つからない。あとはもう子どもを育てるには緑が豊かな郊外住宅のほうがいいというほかない。
私事で恐縮だが、記者はバブルの発生の頃、ある郊外マンションを購入した。契約も済ませ、引っ越しが直前に迫ったとき、小学低学年の長男から「お父さん、友だちと別れたくない。引っ越しイヤだ」と泣きつかれ、手付金を放棄して契約を解除した。その後、あれよあれよという間に価格が暴騰したことは経験者の方はご存じのはずだ。
あれから人生が狂ったかもしれないが、後悔はない。マンションは金融商品ではない。買わざるを得ない各家庭の事情がある。子ども育てるには、嫌悪・娯楽・遊興施設が全て揃う、交通事故の心配を絶えずしなければならない、寸詰まりの面積しか買えない都心部のマンションより郊外のほうがいいに決まっている。孟母三遷の教えだってあるではないか。
デベロッパー各社も、いい加減〝駅近〟を強調するのをやめようではないか。〝駅近〟だけを分譲できるデベロッパーは皆無だ。都合のいい時だけ〝駅近〟を謡うのは自殺行為にならないか。
行政も、流山市のように大規模マンションには保育施設を併設することを義務付けたり、駅前の保育ステーションサービスなどを導入したりするなど問題解決に当たってほしい。
物件購入を考えているユーザーの方もよく考えていただきたい。〝駅近〟の魅力はよくわかるが、それと同じくらいデメリットもあるはずだ。もう都心ではワンルームだって億ションの時代だ。〝保育園はどうする〟と詰め寄られれば返す言葉はないのだが、郊外なら30坪で5,000万円のエリアは探せばまだある。
あとは安倍総理にお願いだ。安倍総理が昨年9月27日、総理大臣官邸で開かれた第1回「働き方改革実現会議」で語った一部を紹介する。
「『働き方改革』は、第三の矢、構造改革の柱となる改革であります。大切なことは、スピードと実行であります。もはや、先送りは許されないわけでありまして…多くの人が『働き方改革』を進めていくということは、人々のワーク・ライフ・バランスにとっても、あるいは生産性にとってもいいと思いながらできなかったわけでありますが、いまこそ我々は必ずやり遂げるという強い意志を持って取り組んでいかなければならない」「『働き方改革』のポイントは、働く方に、より良い将来の展望を持っていただくことであります。同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、若者が将来に明るい希望が持てるようにしなければなりません」
定借マンションはなぜ増えないのか 定借推進協・日本型HOA推進協がシンポジウム
「私たちが考える これからの地域の活性化」シンポジウム(住友林業で)
定期借地権推進協議会・日本型HOA推進協議会は12月2日、「私たちが考える これからの地域の活性化-定期借地権とエリアマネジメントの活用-」と題するシンポジウムを開いた。関係者ら約120名が参加した。
定期借地権推進協議会は前身団体を含め24年前に設立された任意団体で、構成メンバーは旭化成不動産レジデンス、ミサワホーム、積水ハウス、大和ハウス工業、フージャースコーポレーション、パナホーム、都市農住センター、伊藤忠都市開発、住友林業。定期借地権制度の健全な発展を図ることが目的だ。大木祐悟氏(旭化成不動産レジデンス マンション建替え研究所主任研究員)が委員長を務める。
日本型HOA推進協議会は、アメリカの土地の「魅力」を所有し、管理し、コントロールするHOA(homeowners association、住宅所有者の組合)を日本型にしたもので、2009年5月に設立。横浜市立大学国際総合科学部教授・齊藤広子氏が代表を務める。構成メンバーは前記のハスウメーカーなど。
シンポジウムでは齊藤氏が基調講演を行い、大木氏、ミサワホーム分譲開発部部長・一宮康則氏、フージャースコーポレーション企画開発一部部長・須藤幸弘氏、両団体の事務局長・温井達也氏が講演・事例報告を行った。
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定借はもっと普及してほしいと思うのは主催者と同じだし、エリア(タウン)マネジメント手法が大事なのは同感だ。
しかし、正直に言えば、もう3時間(休憩は1度あったが)も机に座って、細かい字でびっしり書かれたパワーポイントの文字を読みながら、後援者の話を聞くのは耐えられなくなってきた。
盛りだくさんのシンポジウムの詳細を紹介することはできないので、記者が取材してきた事例を紹介する。
首都圏第1号の「グランビューあざみ野」(平成6年竣工、事業主:サミュエル、以下同じ)のほか、「銀座タワー」(平成15年、三菱地所レジデンス)「神楽坂アインスタワー」(平成15年、藤和不動産)「タンタタウン」(平成17年、伊藤忠都市開発他)「シティタワー品川」(平成20年、住友不動産)「パークコート神宮前」(平成22年、三井不動産レジデンシャル)「広尾ガーデンフォレスト」(平成25年、三井不レジ、三菱地所レジデンス)などだ。現在は東急不動産の「ブランズシティ世田谷中町」やスターツの「アルファグランデ千桜タワー」がある。
地主が東京都の案件では、「パークアクシス青山一丁目タワー」(平成19年、三井不レジ他)「パークコート神宮前」「むさしのiタウン」(平成19年、アキュラホーム他)などがあり、先の「原宿」は東京都、「品川」は品川区、「千桜」は千代田区の土地だ。
「グランビューあざみ野」は賃貸並みのレベルしかなかったのに失望し、8,000人もの来場者があった期間70年の長期定借を実現した「タンタタウン」や、圧倒的な人気を呼んだ「シティタワー品川」、「むさしのiタウン」には驚愕したのを覚えている。いくつか記事を添付したので参照していただきたい。
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いうまでもないことだが、定借で貸す側にとってはマンションや戸建ては低リスク低リターンである代わりに、固定資産税や都市計画税の軽減措置が取られ、買う側にとっては土地代が高いところほど所有権分譲より安い価格で購入・賃借できる特徴がある。
これまで取材してきて気になるのは、定借マンションの供給が先細りで、しかも所有権付きと比較して割安感が見えにくくなっている点だ。
その理由として考えられるのは、第一に建築費の高騰だ。平成17年に竣工した「タンタタウン」の分譲坪単価は110万円強だったと記憶しているが、今は最低でも売単価は130万円くらいになるのではないか。
地代、権利金、保証金も第一次取得層にとって負担が大きい。例えば「パークコート神宮前」。坪単価は318万円(所有権なら当時でも坪700万円はしたはずだし、現在なら900万円くらいか)と安く、デザイン監修が隈研吾氏だったこともあり、記者は購入まで考えたが、坪当たり地代は約4,000円、20坪で約8万円もするので断念した。「銀座タワー」も月額地代は10万円くらいした。
つまり、土地代が高いエリアのマンションも結局は〝高値〟の花にしか定借マンションはならない。郊外部でもユーザーの所有権のこだわりが強く、それを払しょくできるだけの商品企画を提供できていないように思う。
このように現在の定借システム・社会環境では一般的な会社員にとって魅力が乏しいと言わざるを得ない。あい路を解消するヒントは、齋藤氏が力説されたエリアマネジメント手法の採用が大きなヒントのような気がする。地代、権利金、保証金負担を軽減することも考える必要がある。定借物件が中古市場でどのように評価されているのかも発信してほしい。
そこで提案したい。国や地方自治体にとってローリスク、ローリターンは必ずしも魅力のない投資ではないはずだ。長期にわたって安定的収入が期待できるし、地代、権利金、保証金も低く設定できるはずだ。むしろ逆に、遊休農地に対しては課税を強化するのと同じように、不服申立制度を簡便化して国や自治体も含め合理的理由がない遊休地・低未利用地には〝特別課税〟を課すとか住民に開放するとかの措置を取ったらどうだろう。
こんなことを言えば、国や自治体に特別課税することは国民に課税するのと同じではないかという反論もあるだろうが、特別課税=議員歳費の引き下げならみんな納得するはずだ。
一つ付け加えれば、先に2020東京オリンピック選手村用地を1種(容積率100%あたり)8万円で売却したマンションはいったいいくらで分譲されるのか。記者はいまでも定借方式がよかったと思っている。
中堅所得層でも手が届く坪350万円 「アルファグランデ千桜タワー」(2016/9/5)
東急不動産の記念碑的マンション 定借「ブランズシティ世田谷中町」は坪308万円(2016/9/3)
究極の億ション 三井&三菱 「広尾ガーデンフォレスト」(2007/2/23)
住友不動産「シティタワー品川」最高378倍、平均17.65倍で即日完売(2008/9/5)
驚嘆の安さ 坪318万円 隈研吾氏がデザイン監修 「パークコート神宮前」(2008/11/19)
野村不動産「オハナ蕨錦町」 都心へ30分圏内 坪単価は180万円切るか
「オハナ蕨錦町」完成予想図
野村不動産が12月に分譲する「オハナ蕨錦町」を見学した。埼京線戸田駅から徒歩14分とややあるが、坪単価は180万円を切る可能性があり、圧倒的な価格の安さが周辺物件や郊外物件に影響を与えるかもしれない。
物件は、埼京線戸田駅から徒歩14分、または京浜東北線蕨駅から徒歩19分、蕨市錦町2丁目に位置する11階建て全129戸。専有面積は68.87~82.54㎡、予定価格は3,400万円台~4,900万円台、坪単価は調整中で180万円を切る可能性もありそうだ。竣工予定は平成30年2月。施工は長谷工コーポレーション。
現地は用途地域が工業地域。大日本インキの元社宅跡地で、従前は「やまとの湯」として地元に親しまれていたスーパー銭湯。
建物は南向きで、専有面積は68㎡、72㎡、75㎡、82㎡の4タイプ。設備仕様はこれまでの〝オハナ〟とほぼ同じ。キッチンシンク下は可変ニースペース付きで、スロップシンクが標準装備。
エントランス
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これまで同社の「オハナ」シリーズは2011年の第一弾「八坂萩山町」から「平塚」「茅ヶ崎」「八王子」「淵野辺」「ふじみ野」「北戸田」「北習志野」など郊外ばかりだったが、最寄駅から都心へのアクセスでは今回の「蕨錦町」がもっとも近いのが特徴だ。池袋、新宿、渋谷、東京へ30分圏内だ。これがユーザーにどう評価されるか。
ただ、徒歩10分圏内に蕨市役所、保育園、幼稚園、中学校、図書館、スーパー、公園などの生活施設は整っているが、用途地域が工業地域であることからも分かるように、住環境はお世辞にもいいとは言えない。これがまたユーザーにどう評価されるか。
記者も読めない。従前がスーパー銭湯だったのを利用して「温泉付き」にしたら早期完売できたと思うが、維持・管理が大変なのでそうならなかったのだろう。
ちなみに2013年に分譲された「オハナ北戸田ガーデニア」(277戸)の第1期第1次分譲は145戸で、坪単価は142万円だった。ここも住環境はあまりよくなかったが瞬く間に売れた。この3年間で市場は激変した。坪単価は2~3割も上昇したのに実質賃金が下落し続けている-ここにすべての問題がある。
テラスガーデン
埼京線・戸田市のマンション大激戦 新規・継続含めて1000戸超(1)
三菱地所レジ 国内初、国有地との一体敷地による「早稲田」マンション建て替えへ
建て替え後の「メゾンドール早稲田」完成予想図
三菱地所レジデンスは11月29日、同社が事業参画中の「メゾンドール早稲田」マンション建替事業が「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」に基づくマンション建替組合の設立が認可されたと発表した。民間マンションと国有地の一体敷地の建て替え事業は国内初となる。
物件は、東京メトロ東西線早稲田駅から徒歩6分の地上7 階建て35 戸の民間分譲マンション「メゾンドール早稲田」(昭和46年竣工)と、隣接する7階建て35戸の「国家公務員宿舎」(昭和45年竣工)を一体敷地として建て替えるもの。建て替え後は地上10 階地下1 階建て全115 戸のマンションになる。竣工は2020 年6 月の予定。
「メゾンドール早稲田」では10 年以上前から建て替えが管理組合内で検討されてきており、同社は2009 年6 月に事業協力者に選定された。土地買収が困難な管理組合に代わり同社が2015 年12 月、隣接の国家公務員宿舎の土地を取得。2016 年2 月に一体敷地での建替え決議が成立した。
大京・住友不 越谷のマンション2棟が埼玉県 第8回「彩の国みどりのプラン賞」受賞
「グランアルト越谷レイクタウン」(左)と「ザ・シーズンズ グランアルト越谷レイクタウン」
大京と住友不動産が共同で開発分譲した埼玉県越谷市の「グランアルト越谷レイクタウン」(381戸、2014年1月竣工)と「ザ・シーズンズ グランアルト越谷レイクタウン」(435戸、2015年3月竣工)の2物件が、第8 回「彩の国みどりのプラン賞」を受賞した。
①中庭と一般開放された遊歩道を中心に、利用者が緑に親しめるように緑地が配置されている②隣接し合うマンションと敷地を共有して遊歩道を整備するなど、独創的な設計となっている-ことが評価された。
埼玉県は、一定面積以上の敷地で建築物を新築・改築などを行う場合、緑化の計画を作成し届け出る「緑化計画届出制度」を2005 年10 月から行っており、「彩の国みどりのプラン賞」は、特に優れた緑化を行い、維持管理が良好な施設を表彰するもの。制度開始の2005 年10 月から2015 年3 月までに完了報告を提出した中で、緑化基準を満たしている1,287 計画(既に優良認定を受けている141 計画を除く)の中から7計画が受賞した。
マンション関係では、「オハナふじみ野上野台ブロッサム管理組合」(分譲:野村不動産)、「パークホームズLaLa新三郷管理組合」(分譲:三井不動産レジデンシャル)などが受賞した。
「パークタワー新川崎」 「手戻り」乗り越え完売 事業完成祝うフェスタに1万人
全景(手前が「パークタワー新川崎」。奥は三井不動産のビル)
地権者の三井不動産レジデンシャルや川崎市などが出資している鹿島田駅西部地区再開発株式会社が11月27日、商・住一体開発の「鹿島田駅西部地区第一種市街地再開発事業」の事業全体の竣工を記念して「鹿島田駅西部地区まちびらきフェスタ」を開催した。三井不動産専務・北原義一氏、川崎市長・福田紀彦氏、三井不動産レジデンシャル社長・藤林清隆氏など関係者約110人が式典に参加、竣工を祝った。フェスタには約10,000人(主催者発表)が集まった。
冒頭挨拶した北原氏は、「駅と駅、人と人、街と街をつなぐコンセプトのもと、再開発計画段階を含めると四半世紀にもわたるプロジェクト。670戸のマンション『パークタワー新川崎』は施工段階で『手戻り』(作業工程の途中で大きな問題が発見され、前の段階に戻ってやり直すこと)があったため、竣工が約1年半延びたことを深くお詫びします。関係者のみなさんのご尽力に感謝いたします。設計監理の松田平田さん、施工の清水建設さんにも理解していただいたことを感謝いたします(この間、10人くらいの関係者の名を挙げ謝意を示した)。ハードは完成しました。最新鋭のスペックを備えています。これからソフトの部分、魂を入れるコンテンツの充実に総力を結集します」と述べた。
福田市長は、「(新川崎)駅と(鹿島田)駅がペデストリアンデッキでつながり、ワクワクする街が完成した。今後、平成30年には新たな交流施設も計画している。武蔵小杉同様、街に欠かせない施設が揃うことになる」と話した。
また、来賓としてあいさつした地元選出の田中和徳・衆議院議員は、「一時は大変な事態になりそうになったが、今日の竣工を迎えることができた。これからは南武線の踏切をなくし連続一体化を図るべく前進しよう」と語った。
街びらきの鏡割り
左端から北原氏、田中衆議院議員、福田市長、右端が藤林氏
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「パークタワー新川崎」については別掲の分譲開始時の2013年に書いた記事を参照していただきたい。北原氏が述べたように最先端の技術が採用されている。免震工法を採用し、マンション全住戸に蓄電池を搭載しHENS連携システムをわが国で初めて導入したほか、当時としては3例目の「CASBEE川崎」の最高ランク「S」を取得。再開発を株式会社方式で行うのも全国的に珍しいことから話題となった。
ところが、契約がかなり進んでいた2014年3月、施工中のコンクリートにひび割れや剥離が見つかり、工事をやり直すことになった。
当時、三菱地所レジデンスの「南青山」(施工は鹿島)や積水ハウスの「白金」(施工は清水)なども不具合が見つかり、「南青山」は建て替える事態に追い込まれた。
今回の「新川崎」では新た分譲することになったため工期が1年半も伸びたが、今年11月の竣工まで全て完売となっている。
関係者によると、「中古」段階では新築時の価格を上回る可能性が高いという。価格が当初分譲開始した2013年当時のままで据え置かれ、その後の建築費の高騰を織り込んでいないためのようだ。
ペデストリアンデッキ(左)と「パークタワー新川崎」
三井不動産グループの出店「住まいモール」(施設には三井不動産リアルティと東急リバブルが店舗を構えている)
今後の市況を測る試金石 三菱地所レシジ・野村・セコム「蘆花公園 ザ・レジデンス」
「蘆花公園 ザ・レジデンス」完成予想図
三菱地所レジデンス・野村不動産・セコムホームライフ(事業比率は非公開)が共同して12月に分譲する「蘆花公園 ザ・レジデンス」を見学した。敷地面積約15,000㎡のゴルフ練習場跡地に建設される全389戸の大規模マンションで、ランドスケープデザインに力が注がれている物件だ。
物件は、京王線芦花公園駅から徒歩6分、千歳烏山駅から徒歩10分、世田谷区粕谷2丁目に位置する8階建て109戸と9階建て280戸の合計389戸の規模。専有面積は57.59~114.87㎡、価格は未定。竣工予定は平成30年1月上旬。設計・監理・施工は長谷工・不二建設共同企業体。
現地はケヤキ並木が美しい、ゴルフ練習場「芦花パークゴルフ」跡地。敷地南側は第一種低層住居専用地域が広がる。
敷地の約半分以上を空地としたランドスケープに力が入れられており、地域の自然植生や在来種を積極的に植樹し、いきもの共生事業所認証(ABINC認証)を取得するなど街との調和を図っている。また、「ロイヤルパークホテルズ」や「カッシーナ・イクスシー」とコラボレーションしたゲストルームやプライベートラウンジなど共用部分の充実を図っている。
平均専有面積は75㎡超。全体的に広めのプランが多い。現段階で2,000件以上の問い合わせがある。
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芦花公園駅はマンションの取材で度々訪れているが、アクセス、住環境は申し分ない。すぐ近くの対面には東急不動産の高級マンションシリーズ〝プレスティージュ〟の初期の頃の「プレスティージュ芦花公園」(158戸)がある。記憶は定かではないが、分譲されたのは昭和60年代初め。坪単価が300万円超で〝億ション〟もたくさん含まれていた。京王線での億ションの先駆けのような存在だった。その後、市場は狂乱時代に突入する。調布あたりで坪単価は500万円を突破した。
もう一つ、芦花公園には記念碑的なマンションがある。セコムホームライフの「グローリオ蘆花公園」(373戸)だ。分譲開始は2008年、当初の坪単価は338万円。建築家・芦原太郎氏がデザイン監修した最高のマンションだった。しかし、時期が悪かった。リーマンショックの直撃を受けた。その後、完売まで数年かかり、最終的に坪単価は300万円以下だったはずだ。
さて、今回の物件はいくらになるか。関係者は「未定」と口を閉ざすが、記者は坪単価330万円くらいに収まるのではないかと読んだ。明らかに最近のやや変調をきたした市況を踏まえたものだろうと思う。
考えてみればこの30年間、「芦花公園」は市場の波に翻弄されてきた。いったいいくらで分譲されるのか、ユーザーはどう評価するのか。今後の京王線だけでなく、坪単価300万円前後のエリアの動向を探る意味でも試金石、指標となる物件であるのは間違いない。
ランドスケープ
分棟配置と雁行設計が優れたセコムホームライフ「グローリオ蘆花公園」(2008/10/15)
コスモスイニシア 子育てを終えた夫婦向けリノベ「INITIA WiZ(イニシア ウィズ)」
「宮崎台ブラザビル」リビング
コスモスイニシアは11月18日、子育てを終えた50~60歳代の夫婦ふたり世帯をターゲットにしたリノベーション済マンションの新シリーズ「INITIA WiZ(イニシア ウィズ)」を立ち上げ、3物件のリノベーション工事が完了したのに伴い分譲を開始したと発表した。同日、完成済みの住戸をメディア向けに公開した。
「INITIA WiZ」は、利便性と環境に恵まれた沿線・駅の徒歩5分以内を目安に物件を選定。"寛ぎ"を実現できる陽当たりを確保した物件を厳選。間取りはふたり暮らしにちょうどいい距離感を実現する間取りとし、リビング・ダイニングには床暖房を設置し、天然木のフローリングを使用する。また、趣味を愉しむための空間や、飾る・見せるを愉しむ収納、なかなか手放せないものをしまえる大型収納を確保する。
今回、分譲を開始したのは東急田園都市線の「宮前平ガーデンハウス」(駅徒歩2分、全73戸、1995年竣工、専有面積65.50㎡、価格5.380万円)、「宮崎台プラザビル」(駅徒歩1分、全136戸、1981年竣工、専有面積68.33㎡、価格4,980万円)、「梶ヶ谷プラザビル」(駅徒歩3分、全147戸、1982年竣工、専有面積70.04㎡、価格4,480万円)の3物件。
今後、他の沿線でも展開し、分譲棟内の居住者のリフォーム・リノベーション要望にも応える体制を整える。同社は9月にリノベーションに特化した「&Renovation渋谷青山営業所」を設置しており、リノベーション事業の一層の拡大を図る。
「宮崎台ブラザビル」
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この「INITIA WiZ」シリーズのコンセプトがいい。人気沿線の後背地には分譲価格にして数千万円以上の戸建てに住んでいる高齢者がたくさんいる。ローンも終え、世帯分離で独立する子世帯も多いはずだ。そのような層をターゲットにするのは大正解。同社と大和ハウスが共同で分譲した「高尾」のマンションでも、周辺の戸建て居住者の買い替え・買い増しがたくさんあったことでも証明されている。
見学したのは「宮前平」と「宮崎台」の2物件。「宮前平」は住友不動産が売主で、築年月からしてバブル崩壊直後の分譲だ。当時のデータは手元にないが分譲単価は坪400万円くらいしたのではないか。二重床にすることで段差の解消を図り、オーク材の挽き板フローリングがよく、ソフトクローズ機能付きの引き戸を多用しているのが特徴。
ちょっと価格が高い(坪単価271万円)気がするが、解体費用を含めて約800万円の改修費をかけているというからこんなものか。新築なら坪単価は300万円をはるかに突破する立地だ。
「宮崎台」は竣工からして旧耐震マンションだ。デザインもいかにも昭和50年代に流行した外壁で、レンガ調のタイル、アーチが多用されている。耐震診断は受けていないようだが、当時の売主は東急電鉄で、「宮崎台」だから地盤はしっかりしていそうだ。
リノベ住戸は、遮熱性に劣り高さも低いサッシ、旧式の玄関ドアそのままだが、内装のデザインは最近の新築物件とそん色ない。壁一面のカウンターラック、ホールの上部収納付きカウンターの提案がいい。リノベ後の坪単価240万円は安いのではないか。
「宮前平ガーデンハウス」
「梶ヶ谷ブラザビル」
三交不動産 駅から2分の「プレイズ三郷中央」 坪単価は180万円台
「プレイズ三郷中央」完成予想図
三交不動産が12月に分譲する「プレイズ三郷中央」を見学した。郊外の激戦地ではあるが、駅から徒歩2分、良好な景観を担保するため定められた市の「三郷中央地区センターゾーン」に位置する全104戸。坪単価180万円台も割安感がある。
物件は、つくばエクスプレス三郷中央駅から徒歩2分、埼玉県三郷市中央1丁目に位置する14階建て全104戸。専有面積は62.75〜83.66㎡、予定価格は3,300万円台〜4,900万円台(最多価格帯3,900万円台)、坪単価は180万円台。竣工予定は平成30年2月下旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は大京。
現地は商業地域立地だが、駅からほとんど車が通らない舗道を利用できるのが特徴。敷地南側にはこのマンションと同レベルの賃貸マンションが建っているので、日影の影響は受けるが、市の条例により約4~6mセットバックして建物が建てられている。
建物はほとんどが東向きで、幅員10mの道路とセットバック部分を含め、全面建物とは約15m離れている。1階部分は、これも市の条例により住戸はなく、約100㎡のエントランスホールラウンジ、ライブラリー風集会室、駐車場、自転車置き場などとなる。
住戸プランは、一部の住戸を除き天井高は2500ミリで最大2600ミリ。相鉄ピュアウォーター製の1棟丸ごとの「良水工房」、食洗機が標準装備。
販売を担当する大京販売受託室プロジェクトリーダー・大友武彦氏は「センターゾーン内のマンションは7棟目。市の景観条例により無電柱化が図られ、建物は道路から4mセットバックしなければならないとか、住戸は2階以上などの規制があるため良好な住環境が担保されているエリア。価格もお客さんが買える価格に抑えられている。三交さんとは名古屋で共同事業を行った実績があり、また当社が三郷中央駅前で430戸のマンションを早期完売した実績などが評価され、コンペで販売代理に選んでいただいた」と話した。
エントランス
◇ ◆ ◇
三交不動産をご存じない方も多いかもしれないが、わが故郷・三重を代表する、いや唯一の総合デベロッパーだ。首都圏や関西圏の電鉄系デベロッパーには事業規模では負けるが、質の高い住宅供給では引けを取らないと記者は思う。今回のシンメトリーの外観はとても美しい。
今回のマンションの特徴は、施工が長谷工コーポレーションでありながら販売代理は長谷工アーベストではない点だ。
大京がコンペで選ばれたのは前述の通りだ。大京の販売受託室は2011年に新設された部署で、戸建て事業も兼ねるという。
その大京がオリックス不動産とともに三郷中央で分譲した「ザ・ライオンズ三郷中央」は記憶に残るマンションだ。「申し込み殺到か」と書いたが、その通りになった。そのときの記事を添付したのでぜひ読んでいただきたい。
あれから6年。大京のマンションは中古でも坪160~180万円で取引されているようだ。「プレイズ三郷中央」とは時代が異なるので単純な比較はできないが、このマンションが完売まで時間がかかるようだと、周辺の物件への影響は少なくない。かつて販売力では右に出る会社がなかった大京の販売力が試される。
ついでながら、三交不動産の親会社について。三重交通を「サンジュウ交通」と読まないでいただきたい。「ミエ交通」ですから。念のため。山梨県には「山交」があるが、こちらは「サンコウ」ではなく「ヤマコウ」です。
ライブラリーラウンジ
申込殺到も 大京「ザ・ライオンズ三郷中央」(2010/11/18)
三井不リアルティ ビッグデータ活用 マンション成約価格即時推定ステム開発・提供
三井不動産リアルティは11月17日、「三井のリハウス」WEBサイト上で、マンション成約価格を即時に推定・表示するシステム「Smart Analyzer for Owners」を開発し、同日から提供すると発表した。
同システムは、WEB上で売却を検討しているマンション情報を入力すると、専用ページ上で、実際に取引された成約事例をもとに自動で推定成約価格を提示するとともに、購入検討者数を即時に表示するシステム。
算出される推定成約価格は、〝売り希望価格〟ではなく、同社で取引された延べ80万件超の豊富な成約データに紐づく住戸情報をビッグデータ化し、マンション棟別に住戸の特徴、実際に取引に携わった担当者の目を通じて数値化して算出しているのが特徴。
同社は「エリアの最新情報と不動産マーケットに精通した店舗の担当者が最終的に確認することで、統計解析では捉えることができない事象を補い、よりリアルな推定成約価格の算出、提供を実現させた」という。
当面は注目度が高い東京ベイエリアの86棟のマンションが対象で、将来的には対象エリアを拡大し、対象物件を増やしていく予定。
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不動産流通のことはよくわからないが、同社のようなデベロッパー系不動産流通会社では初の試みのようだ。異業種から参入した会社もやはりビッグデータを活用したサービスの提供を行っているが、基本的には〝売り希望価格〟のようだ。レインズのビッグデータは各会社の〝販促〟には利用できない規定があるという。