京急電鉄他「品川シーサイド」 資産性アピール 多様なニーズ取り込む戦略
「プライムパークス品川シーサイド ザ・タワー」完成予想図
京急電鉄などが3月下旬に分譲する「プライムパークス品川シーサイド」を見学した。駅からペディストリアンデッキで結ばれる徒歩3分の「ザ・タワー」(817戸)と、 駅から徒歩5分の「サ・レジデンス」(335戸)からなる全1,152戸の大規模マンション。来場者はすでに1,500組を超え、第1期分譲としては記録的な約400戸に上る予定だ。
「ザ・タワー」は、東京臨海高速鉄道りんかい線品川シーサイド駅から徒歩3分、品川区東品川4丁目に位置する29階建て全817戸(他にゲストルーム3室、コンビニ、保育施設などあり)。専有面積は53.38~111.18㎡、予定価格は3,900万円台~15,000万円台(予定最多価格帯6,300万円台)、坪単価310~320万円。竣工予定は2019年2月下旬。売主は同社(事業比率50%)のほか大和ハウス工業(同25%)、三菱地所レジデンス(10%)、総合地所(同10%)、京急不動産(同5%)。施工は長谷工コーポレーション。
物件は、品川シーサイド駅と建物をペディストリアンデッキで結び、敷地内に保育施設を設置し、また災害時には緊急避難場所として地域に開放するスペースを設けることで容積率の緩和(300%から590%)を受けている。建物は免震構造。
標準階の住戸は30戸、27・28階が26戸、29階が22戸。50㎡台が100戸強、60㎡台が約440戸、70㎡台が約80戸、80㎡台以上が約200戸。コンパクトタイプが多いのが特徴。リビング天井高は標準階が2550ミリ、27階以上が2650ミリ。
「ザ・レジデンス」は、東京臨海高速鉄道りんかい線品川シーサイド駅から徒歩5分、品川区東大井1丁目に位置する15階建て335戸(ほかにゲストルームなどあり)。専有面積は45.71~89.73㎡、予定価格は3,500万円台~8,800万円台(予定最多価格帯5,800万円台)、坪単価は285万円。売主は同社(事業比率55%)、三菱地所レジデンス(同35%)、大和ハウス工業(同10%)。施工は長谷工コーポレーション。
こちらも40㎡台を26戸、50㎡台を49戸設け、単身者・DINKS、投資需要を想定したプランを多く設けているのが特徴。
マンションギャラリーの京急不動産販売部・橋本昌彦氏は、「当社グループは品川駅での再開発計画もあり、沿線の開発強化を図る第一弾のマンション。来場者は1,500件超。最近は毎週50~100件。手ごたえ十分。第1期分譲は『タワー』が約300戸、『レジデンス』が約100戸。本音でいえば『タワー』だけで昨年の最多供給を記録した『東京王子』の320戸を超えたかった」と話している。
フォレストゲート
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最初に坪単価から。近隣の物件を参考に、坪300万円をはるかに突破するようだと苦戦は免れないと読んだ。
いくつかの壁が立ちはだかるからだ。その第一の壁は、先に竣工完売した三井不動産レジデンシャル「パークホームズ豊洲 ザ レジデンス」690戸の売れ行き。坪単価324万円で完売まで2年かかっている。坪300万円の壁は厚い。
そして、競合するかどうかはともかく、これから分譲される「晴海」の三井不動産レジデンシャル他「パークタワー晴海」(1,076戸)、「有明」の住友不動産「(仮称)東京ベイトリプルタワー」(1,539戸)の動向を考えた。「有明」は坪300万円をはるかに突破するはずで比較にはならないが、「晴海」は想像していたより安く坪単価は330万円くらいに収まる模様だ。これも壁になる。
街のポテンシャルはどうか。品川シーサイドは駅前にマンション2棟が建っているが、オフィスビルが林立し商業施設が乏しいのが難点だ。
それに戸数の壁も大きいと考えた。京急と積水で1,739戸もある。高値競争したら共倒れに終わると見た。
橋本氏から説明を受け単価設定に納得した。単価上昇には専有を圧縮してグロスを抑え、資産性をアピールして単身者・DINKS・投資用需要を取り込もうという狙いだ。これは吉にでると見た。
改めて書く積水ハウスの物件との住み分けもできている。双方が申し合わせたわけではないだろうが、積水の物件は60~70㎡台しかなく、面積的に競合するのは587戸のみで、半分以上は積水より狭いか広いかだ。施工はともに長谷工だが、商品企画はまるで異なる。
「ザ・レジデンス」完成予想図
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販売事務所の設営とシアターなどもよくできている。ハウスエージェンシーの京急アドエンタープライズがコーディネートしたもので、堅いイメージの電鉄会社のマンションとはとても思えないおしゃれなものだ。
販売事務所のエントランスは長いトンネル仕立て。床は白のタイル、壁には淡いブルーのモザイクタイル。そこを潜り抜けるとやはり白が基調で、ソファーなどは淡いブルー。床のアッパーライトと天井のダウンライトに包まれた空間は浮遊感が漂い、異次元の世界に迷い込んだような感覚を覚え、場所を間違えたのではないかとさえ思った。
白のツーピース姿の女性3人が出迎えてくれた。黒のアクセントモールが美しい。襟元には鮮やかなブルーのコサージュ。全体の演出が「未来シップ」がコンセプトのようで、記者はまんまとその狙いにはまり込んだ。
シアターは品川の過去-現代-未来を船に乗って旅するドラマ仕立てになっている。リニア新幹線の始発駅となり、京急グループの西口開発も控える将来性を巧みに表現している。
住戸はインナーフレームのため柱・梁型が出ており、設備仕様はそれほど高くないが、その難点を吹き飛ばす可能性もあると見た。
販売事務所(実際はものすごくきれい)
京急電鉄他「品川シーサイド」 第1期は約400戸 昨年の「二俣川」「東京王子」上回る(2017/3/13)
一建設「プレシス横濱紅葉坂」 横浜ランドマークへ7分で坪単価370万円
「プレシス横濱紅葉坂」(現地近くから)
飯田グループの一建設が4月に分譲する「プレシス横濱紅葉坂」を見学した。桜木町駅へ徒歩5分、横浜ランドマークタワーへも徒歩7分の高台立地。デザイン監修は南條設計室。
物件は、横浜市営地下鉄ブルーライン桜木町駅から徒歩5分、JR根岸線桜木町駅から徒歩6分、横浜市西区宮崎町に位置する6階建て全51戸。専有面積は70.90~84.63㎡、価格は未定だが、84㎡以上の10戸くらいが億ションになると思われる。坪単価は370万円。設計・監理は光和設計。デザイン監修は南條設計室。施工はイチケン。竣工予定は平成30年8月中旬。販売代理は東急リバブル。
現地は県の施設跡地で、道路を挟んだ対面に全99戸が114㎡以上という億ション「グランドメゾン伊勢山」があり、紅葉坂の対面にはこれまた圧倒的な人気を呼んだ新日鉄都市開発・三菱地所の建て替えマンション「横濱紅葉坂レジデンス」がある。
建物は内廊下方式を採用。住戸は東向きのワイドスパンが中心。シーザーストーンのキッチン天板、バックカウンター、食洗機、ミストサウナなどが標準装備。リビング天井高は2450ミリ。
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飯田グループは年間1,000戸超を供給しており、首都圏のマンション供給ランキングでは最近ベスト10入りしているが、一建設のマンションは同社のマンションを久々に見学した。
「伊勢山」の擁壁がやや気になるが、立地は申し分ない。隣接のマンションは中古で軒並み坪300万円をはるかに突破しているので、坪単価370万円はリーズナブルなものだろう。
建設現場
京急電鉄他「品川シーサイド」 第1期は約400戸 昨年の「二俣川」「東京王子」上回る
「プライムパークス品川シーサイド」完成予想図
京急電鉄などが近く分譲する「プライムパークス品川シーサイド」の第1期供給戸数が全1,152戸の約34%に当たる400戸近くに上ることが分かった。マンションギャラリーサブマネージャーの京急不動産販売部・橋本昌彦氏が明らかにした。
第1期分譲戸数の多さでは、昨年、相鉄不動産他 「グレーシアタワー二俣川」が380戸、三井不動産レジデンシャル他「ザ・ガーデンズ東京王子」が315戸供給され話題となったが、それを上回る。記録を塗り替えるのは確実だ。
ファミリー向けが中心だが、資産性を最大の売りに単身・DINKS向け、投資家向けのプランも多く用意するなど多様なニーズに応えるプランになっているのが特徴だ。橋本氏は「当社グループは品川での再開発計画もあり、沿線のイメージアップを図る第一弾のマンション。来場者は1,500件超。最近は毎週50~100件。手ごたえ十分」と話した。
同物件は、りんかい線品川シーサイド駅から徒歩3分の免震タワー棟817戸と徒歩5分のレジデンス棟335戸の合計1,152戸の規模。同じ駅圏では積水ハウス「グランドメゾン品川シーサイドの杜」587戸もほぼ同時期に分譲される予定で、双方を合わせると1,739戸にも上る。
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この物件と積水ハウスの物件については、明日以降詳報する。激突は避けられないが、コンセプトが全く異なっており、全体として相乗効果を発揮して双方とも好調な売れ行きを示す可能性もあると見た。
「検見川浜には負けない」 価格的競争力は十分「ヴェレーナシティ稲毛海岸」
「ヴェレーナシティ稲毛海岸」完成予想図
大和地所レジデンスが近く分譲開始するマンション「ヴェレーナシティ稲毛海岸」を見学した。駅からややあるが、現地は中低層の住宅が立ち並ぶ良好な住宅街の一角にあり、奥行き約4mのオープンエアリビングバルコニーやオープンエアスペース付きの商品企画は訴求力があり、価格競争力もあると見た。
物件は、JR京葉線稲毛海岸駅から徒歩14分、千葉市美浜区高洲二丁目に位置する8階建て全180戸。専有面積は66.20~84.25㎡、価格は未定だが坪単価は180万円を超えない模様。設計・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は平成30年7月下旬。
稲毛海岸エリアで5年ぶりとなる分譲マンションで、現地は市立小学校跡地。敷地南側は他社戸建て宅地造成計画地。幼保一体の認定子ども園が隣接。スーパー、小・中学校などの利便施設も近接している。約83haの稲毛海浜公園まで徒歩15分。
建物はL字型で住戸は全戸南東、南西向き。商品企画は、奥行き約4mのオープンエアリビングバルコニー付が32戸あるほか、他の住戸は全開口サッシ&オープンエアスペース付き。全戸スロップシンク付、1階住戸には専用庭。食洗機も標準仕様。1,2階リビング天井高は2500ミリ。
販売を担当する同社課長・臼井実氏は「検見川浜で分譲されているのが坪170~180万円くらい。値段は言えませんが、うちはそこに負けませんよ」と話していた。
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臼井氏が「負けない」という意味は値段が高いという意味ではなく、販売競争で負けないという意味だ。かなり割安感のある価格になるはずだ。
臼井氏は面白い方で、駅からの距離について「広告表示は14分ですが、この前測ったら私の足で10分51秒」と話した。
びっくりした記者が「えっ、わたしなんか人の1.5倍くらいかかる。臼井さん、それって駆け足、競歩じゃないですよね」と聞き返したら、「昔は走っていましたから。若いころ30代くらいですかね、河口湖マラソンで3時間半でした。今でも普通の人よりは速いですが…」「えっ、3時間半? いまおいくつですか? 」「52歳です」
不動産の距離表示はいうまでもなく駅の出入り口から80mを1分として換算し、端数は切り上げて表示することになっている。信号待ちや速く歩く人、遅い人の差は考慮していない。
なので、臼井氏が徒歩14分の表示を10分51秒で歩く速さがどんなものか全くわからない。今度またあったら歩き(走り)比べようと思う。
住宅ジャーナリスト・櫻井幸雄氏が「最近のマンションは華がない」と嘆いているが、このマンションをどう評価するか。モデルルームにはたくさん〝造花〟が生けられていたし、稲毛駅周辺には臼井氏と同じように一足早く春を告げる河津桜がたくさん咲いていた。
モデルルーム
明和地所 フラッグシップ「横濱ザ・マークス」 神奈川県初の低炭素認定「綱島」
「クリオ レジダンス横濱ザ・マークス」完成予想図
明和地所の総合マンションギャラリーで「クリオ レジダンス横濱ザ・マークス」と「クリオ横濱綱島」のモデルルームを見学した。昨年秋に見学して以来だったが、2つのモデルルームは一新されており、とくに100㎡以上のプレミアム住戸の商品企画、設備仕様レベルの高さが光った。
「横濱」は、横浜市営地下鉄ブルーライン高島町駅から徒歩4分、みなとみらい線みなとみらい駅から徒歩9分、横浜市西区花咲町6丁目に位置する11階建て全102戸。専有面積は46.67~106.30㎡、価格は未定だが、坪単価は320~330万円くらいになる模様。竣工予定は平成30年7月下旬。設計は三輪設計。分譲開始は3月下旬。
現地は、昨年、横浜市住宅供給公社が分譲して人気を呼んだ「横濱MIDベース タワーレジデンス」に近接。同社創業30周年の節目を飾るフラッグシッププロジェクトとして位置付けられている。
建物はコの字型で南向きが中心。ワイドスパンが特徴。100㎡超の14戸はプレミアム仕様。インテリアデザインはカン・デザイニングオフィスの鈴木ふじゑ氏が担当。
「綱島」は、東急東横線綱島駅から徒歩13分、横浜市港北区綱島東4丁目に位置する7階建て全66戸。専有面積は60.26~81.62㎡、坪単価は270万円。竣工予定は平成30年3月下旬。設計は三輪設計。施工は加賀田組。2月から分譲を開始し、これまでに約30戸が契約済み。
現地は、「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」に隣接。パッシブデザインを取り入れ、太陽光発電+蓄電池を装備、マンション向け家庭用燃料電池エネファームを全戸採用していることから神奈川県で初の低炭素建築物認定を取得した。
建物はL字型で、西向き住戸プランはワイドスパンが特徴。食洗機、ミストサウナが標準装備。
「クリオ レジダンス横濱ザ・マークス」モデルルーム
「クリオ レジダンス横濱ザ・マークス」モデルルーム
「クリオ横濱綱島」
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最近の同社の商品企画、設備仕様は飛躍的によくなってきているが、「横濱ザ・マークス」のモデルルームはどこかで見たような既視感を覚えた。
広さは100㎡くらいで、南側バルコニーに面した幅約10mのワイドスパンのリビング・ダイニング・キッチンは約30畳大。その見せ方が巧みだった。坪単価300万円超の物件としては水準以上の設備仕様レベルだった。
ワイドスパンは同社のこれまでのマンションと同様なのだが、何より感心したのは、トイレを含めて廊下に面したドアの把手は全て壁面まで後退させていることだった。すっきりしていて美しい。
パンフレットを見て、既視感は間違っていなかったことが分かった。コーディネーターはカン・デザイニングオフィスの鈴木ふじゑ氏だった。先日見た阪急不動産の「元麻布」と同じ形状だったからだ。おそらく同社は初めて鈴木氏を起用したと思われる。同社の意気込みが伝わってきた。一部の住戸を除き廊下幅を1m以上確保しているプランもいい。
「綱島」は、パナソニックと野村不動産が開発を進めている「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」に隣接。パッシブデザインのアドバイザーとしてチームネットの甲斐徹郎氏を起用していることからも力が入っていることが分かる。
西向き住戸だけだが、7~8メートルのワイドスパンがいい。坪単価もリーズナブルだと思う。野村とパナソニックのマンションは坪300万円を超えるのは微妙だが、明和の物件よりは高くなるのは間違いない。
「クリオ横濱綱島」
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同社取締役執行役員開発事業本部長・柿﨑宏治氏は常設モデルルームと「横濱」のコンセプトなどについて次のように語っている。
「クリオマンションの発祥の地である横浜は今でも供給の多いエリア。この数年横浜中心部での供給が続き、おかげさまで高い評価を得て好調に完売してきました。そこで、これだけ継続的に供給ができるなら総合マンションギャラリーをつくってみてはという考えにいたりました。
ただ単にモデルルームを2住戸設け複数物件を紹介するものではなく、ワンストップ型の総合マンションギャラリーを目指しております。クリオの基本コンセプトからここまで出来るというハイエンドなインテリアまで住まいに対する希望やイメージを極力体感できるような場となっております。
70㎡のモデルルームはクリオマンションの居住性、快適性を追求した基本性能の高さを表現し、100㎡タイプはクリオマンションのハイエンドモデルとしてのクオリティの高さ表現しています」
隈研吾氏がデザイン 〝グランデ〟首都圏第一号 阪急不動産「ジオグランデ元麻布」
「ジオグランデ元麻布」完成予想図
阪急不動産が分譲中の「ジオグランデ元麻布」を見学した。六本木ヒルズから徒歩5分、中国大使館の裏手の〝隠れ家〟的な立地で、デザイン監修は隈研吾氏。同社の最高峰ブランド〝グランデ〟を冠した首都圏第一号マンションだ。
物件は、東京メトロ日比谷線六本木駅から徒歩9分・広尾駅から徒歩11分、都営大江戸線麻布十番駅から徒歩11分、港区元麻布3丁目に位置する地下1階地上5階建て全19戸(うち非分譲6戸)。第1期2次(3戸)の価格は19,500万~51,800万円、専有面積は97.33~157.62㎡。坪単価は800万円台の半ば。竣工予定は平成29年12月下旬。施工は鴻池組。設計・監理は日建ハウジングシステム。外観・共用部分のデザイン監修は隈研吾氏。モデルルームのインテリアはカン・デザイニングオフィス(鈴木ふじゑ氏)。販売代理は三菱地所レジデンス。
現地は、テレビ朝日通りから一歩入った中層マンションなど建ち並ぶ住宅街の一角。敷地南側は中国大使館で、2007年竣工の三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス元麻布」(坪単価755万円)に隣接。用途地域は第二種住居地域。
建物は1階が住戸3戸に共用部分など、2~3階がそれぞれ5戸、4階が4戸、5階が2戸の構成。
モデルルームは設置しておらず、カン・デザイニングオフィスによるリビングダイニングキッチンと洗面・浴室のコンセプトルームがある。
建築中の現地(右後方に見えるのが三菱地所レジデンスのマンション)
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隈氏がこれまでデザイン監修したマンションは4物件ある。三井不動産レジデンシャル「神宮前」「神楽坂」「赤坂」と東京建物「池袋」だ(賃貸は「東雲」がある)。今回が5棟目だ。
これまでと比べ規模が小さく、実際に完成してみないと何とも言えないが、日経新聞に全国版の全面広告を出したため関西方面からの問い合わせもかなりあるという。
同社はじっくり売る戦略だと読んだが、〝グランデ〟を冠し、設計・監理に日建ハウジングシステムを起用しているように、かなり力の入っていることがコンセプトルームをみても伝わってくる。
鈴木ふじゑ氏がインリアを担当したモデルルームは数え切れないほど見てきたが、今回はこれまでとは全く異なる和風のたたずまいが特徴だ。建具・家具はナラ、クルミ、トネリコ、オーク、サベリなどの突板仕上げ。隈氏が好みそうな格子デザインを折り上げ天井に採用しているのが目を引いた。床に設置した間接照明もなかなかいい。
共用部のデザインでは、黒のせっき質タイルを採用した外壁・床が一部再現されており、高温で焼かないと出ない金属のような色合いをしていた。天井は大和張りだとか。
コンセプトルーム
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この偶然の僥倖を何と表現したらいいのだろう。いま世間を賑わせている「国有地」「8億円」「鴻池」のキーワードを現地で見た。
マンションの施工は鴻池組で、森友学園で話題となっている鴻池祥肇議員とは全く関係はないのだが、対面には国有地の公売物件があり、最低売却価格が何と8億8,700万円とあるではないか。土地面積は約483㎡で坪単価は606万円。容積率は300%だから容積率100%あたりの1種単価は約202万円。この土地の隣接地76坪も5億6,000万円(坪単価737万円)も売りに出されている。
双方を合わせれば222坪だ。仮にこの価格で購入できるとすれば14億4,700万円。1種約217万円だ。六本木ヒルズまで徒歩5分の立地を考えるとこれは安いと思うがどうだろう。ただ、公売が不調に終われば値下げされるかもしれないが、地下に何が埋まっていようとまず値引きはない。
浦和に春を呼ぶ 〝花より団子〟野村不動産「プラウド浦和高砂マークス」
「プラウド浦和高砂マークス」
弥生の春だ。まだまだ寒い日が続くが、毎日外を歩いていると春の風が感じられ、草木の芽吹く香りが漂ってくる。そんな春を感じさせるマンションを紹介しよう。野村不動産「プラウド浦和高砂マークス」だ。
このマンションの取材に出かける前、業界紙に目を通した。〝面白い記事はないか〟と探していたら、2月27日付「週刊住宅」に住宅ジャーナリスト・櫻井幸雄氏が寄稿した「特集 春のハウジングガイド」が目に留まった。明らかに業界関係者向けの文章だ。そのリードの部分を紹介する。
「私が務めて現場を回っていたのは、『華』を見つけるのが楽しかったからだ。見学する先々で大きな工夫、小さな工夫を発見し、発案者と話をすることを無上の喜びとした。不動産各社には凝り性の人がいて、独自の工夫をする。凝り性の人たちは、あえて工夫をアピールしない。だから、多くの購入者は工夫に気付かない。気付くことがなくても、工夫を凝らしたマンションには独自のオーラのようなものが漂い、それが『華』になっていた」
「春」とかけて「華がない」と説くレトリックが面白いのだが、どう見ても色男には見えない、体中に剛毛が生えていそうな赤鬼そっくりの櫻井氏(嘘だと思う人はご本人の似顔絵を見ていただきたい。その形相を〝売り〟にしている気配がある)が最近のマンションは「華」がないと嘆く、その対比が絶妙だ。赤鬼と親戚のようなクマバチが甘い蜜を物色して飛び回る〝姿〟を想像するだけで愉しくなってくるではないか。
記者は先日、三井不動産レジデンシャルの「一番町」を吉永小百合さんに例えたが、マンションの商品企画を「華」に見立てたことはない。取材の行き帰りに道端に咲く可憐な草花を摘んでは紙コップに活けて楽しんでいる。とりわけ花は可憐なのに独特の香りを発散するのが嫌われるドクダミが大好きで、みんなから顰蹙を買う。
これからは櫻井氏にあやかって大きな工夫は白百合かカサブランカか、小さな工夫はフグリかドクダミかなどと想像するのはいいかもしれない。
断っておくが、櫻井氏はまったく「華」がないとは書いていない。少なくなったと嘆いているのだ。「華」があるマンションも紹介しているので、興味のある方はぜひ「週刊住宅」を買って読んでいただきたい。
さて、それでは野村の「浦和」は華があるかないか。一言でいえば〝花より団子〟だ。記者は坪単価が300万円を超えるかどうかに注目していたのだが、どうやら坪280万円くらいに収まりそうだ。一昨年に坪単価330万円台の〝駅近〟三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス浦和タワー」が早期完売し、住友不動産「シティハウス浦和高砂」も坪290万円くらいだったので、それらに立地は劣らない今回の物件は300万円台の大台に乗っても不思議ではないと思っていた。
同社は浦和駅圏でこれまで20棟くらいを分譲しており、エリアを熟知している。そんな同社がしっかり今の市況を読み切り、実利を追求した結果が坪280万円だ。上田知事が知ったら〝なんだ、浦和の価値はそんなもんか〟と嘆かないか心配だが、間違いなく早期完売を狙っている。再来週に分譲される第1期の戸数にその自信が示されるはずだ。
物件は、JR京浜東北線・上野東京ライン・湘南新宿ライン浦和駅から徒歩8分、埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目に位置する15階建て全108戸(非分譲13戸含む)。専有面積は69.48~102.14㎡、価格は未定だが最多価格帯は6,000万円前後、坪単価は280万円くらいになる模様。施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は平成30年2月中旬。
現地は文化施設「浦和会館」に隣接。県庁へ徒歩2分、行政エリアもすぐ近くだ。
建物はL字型で、西向きが行政エリア方向。南側は中小のビルが建ち並んでいる。仕様レベルはこれまで分譲されてきた浦和駅圏のそれと比べ同等かそれ以上と見られる。一部オーダーメイド対応。
キッチン
エントランス
埼玉県の最高単価マンション 地所レジ・大栄不「浦和タワー」好調スタート(2015/12/14)
じわり積みあがる各社のマンション完成在庫 期末控えどうなる
ここにきて変調をきたしているマンション市場だが、気になるのは3月期末に向かって完成在庫が積みあがっていることだ。他の商品と比べ、完成在庫は直ちに不良在庫になるわけではなく、市況が右肩上がりの局面では優良資産にもなりうる。また、適正な在庫を抱えることは、多様なお客さんのニーズに応えることにもなる。かつてマンションの〝王者〟大京の横山修二氏は「在庫は年間供給量の1カ月分を抱えたほうがいい」と話したことがある。
貸出金利も当時といまは銀行の格段の差がある。とはいえ、在庫を抱えることによる販管費の増大は収益を圧迫する。期末まで1カ月。各社の年間販売戸数からしてさばけない戸数ではあるが果たしてどうなるか。主な各社の完成在庫数を見た。
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三井不動産は平成28年3月期末より約100戸在庫を増やしているが、平成29年3月期の計上予定戸数のわずか3.4%だ。極めて少ない。問題は全くない。
住友不動産は他社と比較すると突出しているが、これはいつも通り。利益率も高い水準を維持しており、28年3月期末より在庫は約140戸減らしている。一部の物件では竣工までに完売する方針に転換するものもみられる。今後の動きに注目したい。
三菱地所もじわりと在庫を増やしている。ただ、こちらも計上予定戸数の1割未満で問題はなさそうだ。
問題は野村不動産だ。今期末に349戸の完成在庫を抱えたことがニュースになったほど、同社は完成在庫がない会社として知られてきた。〝即完の野村〟が業界にずっと浸透してきた。平成29年3月期第2四半期決算では完成在庫は600戸を突破していた。その後、12月期末は540戸に減らした。あと1カ月でどうなるか。在庫減に発破がかかっているはずだ。
東急不動産、大京、大和ハウス工業、日神不動産などは新規供給を抑制気味で販売に注力していることがうかがわれる。このところ郊外部を中心に供給を増やしているNTT都市開発は在庫を減らしつつあるが、計上戸数と比べればやや過大だ。
高いハードル越える 「東京都子育て支援住宅認定制度」第1号 「イニシア西新井」
「イニシア西新井」完成予想図
都の認定マーク
コスモスイニシアが3月に分譲する「イニシア西新井」のモデルルームを見学した。東京都が2016年2月から始めた「東京都子育て支援住宅認定制度」の分譲住宅としては初の認定物件で、高いハードルをクリアしたマンションだ。
物件は、東武伊勢崎線西新井駅から徒歩9分、足立区島根4丁目に位置する9階建て全81戸。専有面積は63.64~110.12㎡、価格は未定だが、坪単価は200万円台の前半になる模様。竣工予定は平成30年1月下旬。施工は大豊建設。
現地は、年間160万人が利用する複合文化施設「ギャラクシティ」やバーベキューもできる「舎人公園」などが近接。
2016年2月から運用を開始した「東京都子育て支援住宅認定制度」で分譲マンションとして初めて認定された物件(賃貸マンションは3件)であるのが最大の特徴。認定基準である必須項目60をすべてクリアし、選択項目も全31項目のうち12項目に適合している。現在、認定マンションはこの物件しかない。
建物は、コの字型で「mu.su.bi.」をコンセプトに中庭と環境空地を設置。エントランスホールには防災備品を備える。住戸は東向き、南向き、西向き。
コミュニティを支援するためアウトドア用品メーカー「Snow Peak」とコラボし、アウトドアグッズを利用できるようにする。また、「HITONOWA INC.」サポートによるワークショップの開催を通じてコミュニティ活動を支援していく。
同社の担当者は「当社はこれまで足立区内で26棟2,000戸近い実績がある。通常のマンション管理だけでなく、親和性の高いチルドレンと防災を〝結ぶ〟ことでコミュニティ支援を行っていく。専有部も都の認定制度に適合させるために様々な工夫を盛り込んだ。今のところ足立区内からの反響が45%であることからも広域的に集客できるのではないか。この物件をきっかけに当社の設計基準を変更することも考えている」と話した。
チャイルドミラー(左)とシャッター付きコンセント
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同様の子育て支援マンション制度は埼玉県が数年前から実施しており、すでに20数件の認定物件がある。記者は同レベルのマンションだろうと高を括っていた。
ところが、都の認定基準リストを手渡されて驚愕した。ものすごくハードルが高いのだ。チェック項目は12ページにもわたり、段差解消、転落・落下防止、シックハウス対策、防犯対策、防音性能などはもちろん、住戸内の設備についてもチャイルドロック、指ばさみ防止、シャッター付きコンセント、引き戸の多用、ドアの幅など細部についても細かな基準が設けられている。
管理・運営に関しても、ウェルカムパーティーや不要になった子ども用品の貸し借り、フリーマーケットの開催、さらには地域の人たちも参加できる餅つきやラジオ体操の実施、町会、自治会、子ども会などと連携した活動まで必須項目にしている。
詳しくは書かない。都の高いハードルを乗り越えた極めてレベルが高いマンションであるのは間違いない。トイレドアの幅を750ミリ確保しているマンションはそうない。
参考までに浴室のチャイルドロックを紹介する。子育てをやったことのない人は信じられないだろうが、子どもの溺死があるのだ。マンション管理業協会理事長・山根弘美氏(大和ライフネクスト会長)が3年前に語った次の言葉を当時の記事から引用して紹介する。
「私は結婚して35年。単身赴任で20年。子どもは6人いた(これは後述する)。今日終わったら、かみさんに会いに行くんです」
「山根氏はポケットからネーム入りのボールペンを取り出した。『これぼくの死んだ子どもの誕生日。1988年7月25日です。命日は1989年7月26日。生まれた翌年の翌日に死んだんです。10㎝しか水が入っていなかった浴槽に伝い歩きして入ったんです。だれも気が付かなかった。ぼくはこの子と二人分生きている』」
単価については「坪単価200万円でどうですか」と聞いたら、ほぼその通りのようだ。リーズナブルな価格だと思う。
引き戸 引き残し
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埼玉県の子育て支援マンションについて。はっきり言って、都の制度と比べるとハードルは低い。認定リストは数ページくらいしかないはずだ。普通のマンションなら適合するような項目が多い。
しかし、都に対抗するわけでもないだろうが、県は29年度予算案で「子世帯向け新築住宅取得支援事業」を新たに設け約2.5億円の予算を計上している。子どもが3人以上の世帯が対象で、戸建ては100㎡以上、マンションは4LDK以上または80㎡以上の認定基準を満たした新築住宅について最大50万円を補助するというものだ。予算が通るのは間違いなさそうで、これは子育て世帯にとって朗報だ。
一方の都の制度は〝お墨付き〟だけで、補助金などの具体的な支援制度は各区市町村に委ねている。現在実施しているのは、都の制度が始まる前から行っていた墨田区と世田谷区、それと都の制度と同時に開始した八王子市しかないという。
この認定基準を満たすマンションが1物件、しかも足立区だけということをどのように受け止めるべきか。越えられないハードルはやる気をなくすし、かといって低すぎても意味がない。難しい。
浴室ドア(左)と室内物干し
山根氏の記事 「これからのマンション管理と管理会社の活用」セミナー開催(2014/3/24)
三井不動産&青木茂建築工房 練馬区のリファイニング見学会に200名
「早宮サンハイツ」
三井不動産は2月27日、青木茂建築工房のリファイニング建築手法を活用し、旧耐震基準建物を新築並みに再生する第一号案「早宮サンハイツ」の工事が完了したことに伴う見学会を実施。約200名が参加するなど、リファイニング建築に対する関心の高さをうかがわせた。
物件は、東京メトロ副都心線・有楽町線氷川台駅から徒歩4分、練馬区早宮1丁目に位置する昭和52年に竣工(築40年)した鉄筋コンクリート造4階建て全28戸の賃貸マンション。専用面積は42.15㎡・49.50㎡。
東日本大震災後の耐震性に対する不安の高まりの中で入居率が46%まで落ち込み対応に苦慮したオーナーが同社に依頼して青木茂建築工房のリファイニング手法を選択したもの。
廊下側の耐力壁厚を120→150に変更、Exp.J幅を60→130に拡幅、既存塔屋及びRC階段の撤去(鉄骨 階段新設)と既存エントランス庇などを撤去することで軽量化を図り、耐震指標Is値を0.6以上確保。現在のニーズに合う間取りへの変更、内外装及び設備の一新、共用廊下の段差解消・エレベータ新設によるバリアフリー化、現行法令へ適合させるための各種工事を行った。施工は内野建設。工期は約8.5カ月。
建物は、青木茂建築工房と業務提携しているりそな銀行とERIソリューションとで「耐用年数推定調査」を行い、税務上の耐用年数50年超を取得して長期融資が受けられるようにしている。2月末に検査済証を取得し、三井不動産レジデンシャルリースがサブリースする。今後、緊急輸送道路沿いの建物として耐震助成金の交付も受ける予定。
オーナーは、「東日本大震災後、入居者から『耐震性は大丈夫か』という指摘を受け、耐震診断を受け問題があることが判明してから3年間は退去者が出ても全く入居者が集まらなかった。たまた青木先生のリファイニング手法をテレビで拝見して、2014年に三井さんが主催したセミナーに参加して大規模修繕を決断した」などと語った。
賃料は109,000(41.25㎡)~、121,000円(49.50㎡)~で、三井不動産レジデンシャルリースの担当者によると「賃料設定は新築相場の90~95%だが、競争力はある」と話した。
青木氏
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今回に限ったことではないが、リノベーションとは比較にならないほどリファイニング手法のレベルの高さを再認識した。
従前の設備仕様がどうなっていたかはわからないが、空調、給排水管、電気設備、外構を一新し、オートロック、エレベータ付き、Low-e複層ガラスなどの共用部分はもちろん、専用部は上がり框の高さ50㎝を確保して置床とし、トイレ、洗面、浴室のバリアフリー化を図っている。ドアは引き戸、スライドウォールを多用して機能性を高めている。
デッキを新設し、ルーバーで意匠も一新した
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気になっていることを青木茂氏に聞いた。「先生、先生も永遠に生きられるわけではないですよね。技術の習得には時間がかかるでしようし、どう継承していくかも課題ではないですか。教育体制はどうか、弟子は育っているのですか」と。
青木氏は笑いながら「いろいろ話しているが(学科の新設など)全く動きはない。しかし、一人博士号を取得したし、もう一人予定もしている。すべて自前だが着々と進めている。三井さんとはあと2件のプロジェクトが進行中で、ミサワホームさんの案件もある」と語った。
それにしても動員力がすごい。デベロッパーのマンション見学会には数えるくらいしか集まらないのに、この寒い中200名も集まるのが信じられない。
もう一つ。いつも配布される資料はA版8折で文庫本サイズにして16ページ立て。文字が小さく年寄りは読みづらいのが難点だが、必要な事項が過不足なく盛り込まれている。リーフレットのつくり方もさすがというべきか。
例えば1階の居室の天井高。従前は2.25mになっているが、改修後は2.4mを確保している。これについても「既存建物は1Fのスラブがなく、木軸で組まれていた。今回は1Fに土間コンクリートを新設し、湿気対策を行う。置き床高さ調整によりCH2550確保(cf4F:2400、3・2F:2450)」とときちんと記載されている。1階の天井高が高くなったのは床をそれだけ掘り下げたからだ。
参考までにこれまでの記事を添付する。「新建築」の2017.2でも青木茂氏の「長寿命化のための手法 リファイニング建築による集合住宅の再生」が掲載されている。
担当者の説明を聞く参加者
築44年の寄宿舎をリファイニング手法で賃貸に一新 青木茂建築工房(2016/12/21)
三井不動産 青木茂建築工房と業務提携 リファイニング建築手法を活用(2016/8/30)
建築の魔術師・青木リファイニングの真髄を見た 「竹本邸」完成見学会(2015/11/17)
リファイニング建築のすごさを見た 「千駄ヶ谷緑苑ハウス」完成(2014/3/24)
全てが腑に落ちる 首都大学東京「リーディングプロジェクト最終成果報告会」(2014/3/19)
「再生建築学の設置を」 青木茂氏、三井不動産のセミナーで語る(2013/12/10)