新聞は絵画や衣服と同じ 業界紙は旧套墨守改めよ
新聞は、その構図の美しさでもって人を引きつけるという意味で絵画であり、中身にふさわしく着飾るという意味で衣服と同じだ。美しくなければ、だらしない恰好では読んでもらえない-ずっとそう思ってきた。なので、新聞紙に穴が開くほどじっくり眺め、デザインを研究したことがある。一般紙の1ページそっくり真似てレイアウトしたこともある。
記者の経験からして美しいと思うのは、読み慣れたせいかもしれないが朝日新聞だ。全体のバランスがいいし、見出しの明朝体が美しい。日経新聞は囲み記事がいい。紙面全体を締める役割も果たしている。同紙は昨年、日曜版に一流デザイナーを起用し、ビジュアルで大胆なデザインに一新した。
一般紙ですらこのように努力しているのに、わが業界紙は旧套墨守そのものだ。〝40年〟一日のごとく旧弊を死守しようとしている。古臭い時代ものの地紋や飾りケイ線・ヤクモノをふんだんに使い、まるで花魁のように化粧を施す。四方をお悔やみ文のように囲む「囲み記事」も多い。せっかくの企画記事も流し記事と同じように扱う。
果たして一般紙は地紋やケイ線はどのようなものを使っているか、四方囲み記事があるかないか調べてみるがいい。
業界紙はプロのデザイナーや整理マンを雇えないのは理解できる。一般紙のお手本がある。真似ることだ。そして美醜を分ける鑑識眼を養わないといけない。皮衣を一新して中身も変わることに期待したい。
賞味期限切れの「このほど」頻繁に登場
慣用句か枕詞のような「このほど」はいかがなものかと昨年5月に書いた。しかし、改まってはいない。
住宅新報4月3日号には、地価公示も含め「このほど」が14本もあった。今年の地価公示の発表日は3月27日(火)の夕刊以降だから1週間遅れだ。旭化成ホームズの「高経年マンションを考える会」は、会が行われたのは3月8日だったから約1カ月遅れ。プレ協の懇親会も行われたのは15日前だから2週間遅れ。トーセイの柏市の戸建てが「このほど」完売したという記事は、このほどとはいつか全く不明。最後のほうまで読むと、分譲開始が3年前ということが分かる。
どうも同紙は。「このほど」をどのような場合に用いるか統一的な基準を設けていないようだ。記者の自由裁量に任されているのではないか。だから1週間遅れも1カ月前の出来事も「このほど」になりうるということか。そんなとっくにゴミ箱に捨てられてもいい賞味期限切れの記事をこっそり忍び込まされ、読まされる読者がかわいそうだ。
トーセイの記事は週刊住宅も問題だ。記事はこうだ。「トーセイは3月25日、千葉県柏市に開発し、昨年11月に全区画が竣工した戸建分譲住宅『THEパームコート柏初石』(総戸数95棟)を完売した」と。
これだけ読むと、全95棟がわずか数カ月で完売したとも受け取れる。しかし、後半の部分で「2014年から7期に分け販売」とあるから、完売まで3年かかったことが分かる。
一般紙に「このほど」の記事があるかどうか調べてほしい。特ダネやインタビュー、企画記事などを除き、日にちが書かれていない記事は1本もないはずだ。5W1Hは記事の基本だ。
最後に一言。〝記事はラブレター〟だ。若い記者の皆さん、不特定多数の読者に媚を売るな!同業の記者と競うな!うまく書こうと思うな!自分を愛し、人を愛し、そして何より読者を愛せ! 結果は自ずとついてくる。
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