記者もささやかながらクラウドファンディングに協力した「NPO法人さくら茶屋にししば」が発行した「コミュニティカフェ さくら茶屋物語 居場所は街を動かす」(発行:フェミックス)が届いた。
「さくら茶屋」がどのような活動を行ってきたかは添付した「住民主導のもう一つの『奇跡の街』 横浜・金沢文庫 西柴団地『さくら茶屋』」の記事を読んでいただきたい。
〝奇跡の街〟などと最大級の誉め言葉を使った街はこの20年間に4か所ある。山万「ユーカリが丘」、ポラス「パレットコート七光台」、入間市「ジョンソンタウン」と、そして3年前の今ごろ取材した「さくら茶屋」だ。あのときの感動がまざまざと蘇ってくる。
「記念本」には、当初予定では、活動開始10周年を記念したパーティのようなものだったのが、新型コロナを経験することで「こんな時代だからこそ…私たちの思いと経験を伝えるものにしないといけない」という結論に達したことが書かれている。
そして、クラウドファンディングによって258名もの賛同を得て、当初目標の100万円の2倍195万円超の寄付を集めて発行に至ったものだ。
巻末にはさくら茶屋の活動を支えている85人のボランティアの方々のアンケート調査結果も紹介されている。回答者83人の平均年齢は66.3歳だが、80歳代の10人と70歳代の38人で全体の58%を占める。男女比は分からないが、90人近い自由回答記述者は圧倒的に女性が多い。そのパワーに驚きを禁じ得ない。
この本が、団地再生を考えるすべての関係者の方々に読んでいただきたい。街を元気にするヒントがここにある。
「さくら茶屋物語」は四六判並製256ページ、定価本体1800円+税。連絡先は〒236-0017 横浜市金沢区西柴3-17-6 NPO法人さくら茶屋にししば 電話/FAX:045-516-8560 E-mail:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。
◇ ◆ ◇
〝街の再生〟などという、明るい未来など描けない大きなテーマに取り組むのは骨の折れる仕事だ。できれば目をつぶり避けて通りたい。
しかし、土地神話を信じて疑わず、バブルの波に乗ってさんざん郊外住宅地をほめそやしてきた小生の心の奥底には自責の念が燠のようにくすぶり、あるいは澱のように沈殿し苛んできた。
そこで9年前だ。意を決して取材することを決めた。首都圏郊外のある住宅地だ。人口はほぼ半減し、55歳以上の人口比率が50%近くに達するなどほとんど限界集落に近い悲惨な状況にあることを知ったときは愕然とし暗澹たる気持ちになった。どっと疲れた。
その街の所在を明らかにすることの反動が怖く匿名にしたほどだ。記事は予想外の反響を呼んだ。アクセス数は数万件に達した。
国はいま、「住宅団地再生連絡会議」を立ち上げ、全国に数千か所あるといわれる団地の再生に取り組んでいる。前途は多難だと思うが、住民参加が欠かせないことを「さくら茶屋」の事例は教えている。
「記念本」に寄稿している早稲田大学社会科学総合学術院教授・卯月盛夫氏は、「従来のように税金のみで建設され運営されるコミュニティ施設に対して、さくら茶屋のように市民が企画、計画、建設、運営するコミュニティ施設の方が圧倒的にコストパフォーマンスが高く、加えて市民のコミュニティ意識を大きく向上させてきたことは、誰もが認めるところである」(219ページ)と述べている。
設立10周年 さくら茶屋が出版計画 クラウドファンディングで資金募集(2020/10/18)
鳩山NT活性化を「私自身がアート」藝大卒・菅沼朋香氏「ニュー喫茶 幻」開業(2019/3/23)
住民主導のもう一つの「奇跡の街」 横浜・金沢文庫 西柴団地「さくら茶屋」見学(2018/2/14)
「さくら茶屋にししば」など全国先進事例を報告 第2回「住宅団地再生連絡会議」(2018/1/23)
なぜ80年間も持続できたのか 奇跡の街 入間市の「ジョンソンタウン」を歩く(2017/10/16)
全国276団体が参加する「住宅団地再生連絡会議」設立 国土交通省(2017/1/31)
ポラス 〝奇跡の街〟野田市七光台に地域コミュニティ支援のカフェ オープン(2016/11/19)