RBA OFFICIAL
 
2021/10/01(金) 16:11

三重と福岡 同じ育児時間で幸福度は47位と1位 積水ハウス「男性育休白書」

投稿者:  牧田司

男性の育児力.png

 この前も書いたが、積水ハウスの「イクメン白書2020」の「イクメン力全国ランキング」でわが故郷・三重県は18位と大健闘し、当時の鈴木英敬・三重県知事は「みえの育児男子プロジェクト」を立ち上げ、自治体の首長として初めて「男性育休100%」に賛同し、第一子、第二子とも育児休暇を取得し、2018年度の男性職員の育休取得率は47都道府県でトップの8.1%となったのに、「2021年白書」では何と最下位に転落したのに衝撃を受けた。その理由が知りたくて三重県に問い合わせた。

 三重県子ども・福祉部少子化対策課の森田茂樹氏が次のようにコメントした。

 「三重県が男性の家事・育児力で47位となったことは大変残念に思います。なかでも、男性自身が感じる家事・育児参加による幸福度の評価が0.4947位であることに驚いています。

 白書によれば、三重県の男性の家事・育児関与度は0.3235位、家事・育児時間は10.9時間で44位となる一方で、例えば福岡県においては、関与度は0.16で三重県より下位の45位、家事・育児時間も11.6時間で三重県とそれほど変わらない42位であるにもかかわらず、幸福度において福岡県は1.161位になっています。

 これほど差が出る理由の分析は難しいですが、三重県の男性が家事や子育てを楽しみ、幸福を感じていただけるよう、男性の育児参画における環境づくり等を進めていく必要があると考えています」

 さすがというべきか。担当部署の方の見方は鋭い。三重県と福岡県との男性の家事・育児時間はさほど変わらないのに、男性の「幸福度」はトップと最下位だ。

 これは深く研究する価値があると思う。そもそも「幸福」とは何か、OECDなどの客観的な指標は信用できるのか、ブータンのような主観的尺度とどう整合させるのか。難しすぎるのでこれ以上書かないが、究極の「幸福」とは、がんじがらめの「国家」の呪縛からどこまで解き放たれるか、「自立」がポイントだと思う。どうだろうか。

 不思議なのは三重県と福岡県だけではない。同社の過去3年間の「男性の家事・育児力」全国ランキングの総合スコアを表にした。3年間ともベスト10に入っているのは北から長野県、鳥取県、沖縄県の3県しかなく、ベスト20でも山形県、栃木県、神奈川県、福井県の7県のみだ。3年間とも37位以下のワースト10はどうかというと岐阜県、山口県のみで、ワースト20は青森県、茨城県、愛知県、大阪府、香川県の7府県しかない。

 各都道府県とも年度によって乱高下していることが表から分かるのだが、冒頭の三重県のほか、北海道(2020年10位⇒2021年41位)、岩手県(2019年43位⇒2021年5位)、奈良県(2020年46位⇒2021年3位)、佐賀県(2019年36位⇒2020年1位)などがある。

 どうしてこのように変動が著しいか。その理由を同社広報は「各項目の1位~47位に47点→1点を足し上げる方法で算出しておりますため、差が出やすい集計方法である点と、この過渡期の環境下での各県同士の相対評価である点を変動要因として考えております」と答えている。

 つまり、評価項目は4つあり、それぞれ1位と47位は46点の差がつくので大差が出るということだ。

 記者は、このほかにも要因があるような気がする。回答者は祖父母、両親などから父親像、母親像を刷り込まれており、その色眼鏡で自分自身を、そして配偶者を評価する傾向があることと、各都道府県の歴史的文化的風土が影響しているのではないかと考える。

 その代表的な例が「家事・育児力」上位の長野県や鳥取県、沖縄県ではないか。長野県は昔から教育県として知られており、時には国の方針に背を向けるなど独自の文化圏を形成している。「男女平等」は徹底して教えられているのではないか。「資本論」はどこの学校図書館にも収蔵されているそうだ。

 驚くのは、県歌を知らない県民はいないといわれることだ。記者などは三重県県歌など存在すら知らないし、東京都歌はヤクルトの「東京音頭」だと思っていたほどだ。

 島根県もそうだが、鳥取県はどうか。両県ともエビのように反り返って大陸と対峙し、厳しい日本海の自然条件に耐える日本列島の代表格だ。地域や家族同士で支えあわないと生活できない背景があるのではないか。

 鳥取県は女性の有業率も全国トップクラスで、25歳から44歳の育児をしている女性の有業率は平成29年調査で全国7位の78.0%に達している。ちなみに1位は高知県の81.2%、以下、島根県80.7%、福井県80.5%、山形県79.9%、秋田県78.7%となっている。

 同県は平成26年、「輝く女性活躍強化とっとり会議」を発足(平成29年に「女星活躍とっとり会議」に改称)し、経済団体、労働団体、行政が連携した取り組みを行っている。

 沖縄県は、いうまでもなく米軍基地の7割を背負わされており、3K産業(基地、観光、公共事業)に依存をせざるを得ず、あらゆる社会経済指標も全国最低レベルにある。鳥取や島根に似ているといえば似ている。

 2021年の白書で1位に輝いたことについて、玉城デニー沖縄県知事は「家事・育児力を決める4つの指標の中でも、男性の『家事・育児時間』が長いという結果については、沖縄県は子どもの数が多いことや、子育てしながら働く女性が多いことから、必然とも言えるかもしれません」とし、幸福度については「私も4人の子どもがおりますが、第3子、第4子が生まれた頃に子育てを分担し、その大変さと楽しさを実感できました」とコメントしている。

 一方で「男性の家事・育児力」が全国最低レベルの岐阜県や山口県はどうか。岐阜県は三重県人とよく似た考え方をするはずだが、いま一つ理由は分からない。

 山口県もよく分からないのだが、県民性も影響しているような気がする。県の調査では、「男は仕事、女は家庭」という考え方について「賛成」は35.5%に達しており、その理由として「女性が家庭を守った方が、子供の成長などにとって良いと思うから」(60.8%)、「家事・育児・介護と両立しながら、女性が働き続けることは大変だと思うから」(55.4%)などが挙げられている。

 仕事と家庭生活・地域活動の両立についても、「両立が望ましい」は55.3%であるが、現状では「両立させている」が25.9%にとどまっている。

 総務省の平成26年調査では、共働き世帯は1,077万世帯なのに対し、いわゆる専業主婦世帯は720万世帯で、昭和50年代の構図と逆転しているにも関わらず、家父長制の残滓でもある「男は仕事、女は家庭」という考え方をする山口県人は少なくないということか。安倍晋三氏をはじめ総理大臣経験者は東京都を除けば断トツなのと関連があるのかどうかは不明。隣県の広島県は2020の18位から2021年には46位に転落したが、これも河井夫妻問題と関係があるのかどうか分からない。広島選挙区の岸田文雄氏が総理になったら再浮上するかどうかも興味はあるが…。

◇       ◆     ◇

積水社員.png

 以下は、積水ハウスのプロパガンダのために書くのではない。数値をみたら、同社の男性社員の「家事・育児力」が図抜けていることが分かる。

 〝主夫〟歴10年の記者は昨年8月行われたライフスタイル型モデルハウス「みんなの暮らし7stories」のメディア向け見学会で、同社の男性社員の実践ぶりに驚愕した。記事を引用する。

 「子育てファミリーの家 小林さんち。」がもっとも優れていると思った。(略)そして、何よりもよかったのは、住生活研究所課長・木野村昭彦氏(41)の堂に入る説明だった。開口一番『リアルを表現した』の短い言葉で特徴を言い切った。子どもとの接し方を話したのを聞いて学校の先生経験者かと思ったほどだし、洗濯物を取り込み、アイロン掛けする〝主夫〟を演じて見せたのには絶句した。

 (略)『うちは完全フルタイムの共働きなので、家事は妻と出来る限り平等に分担していて、私も妻と同様に料理や洗濯も普通にこなします。アイロンに関しては妻はあまりせず、主に私が担当しています』と話した」

 いったい、どのような「家事・育児」をしているのか。同社の「白書」では、女性が認めるめ男性の家事・育児実践個数を28項目示している。すべてが知りたくて同社に問い合わせた。回答は次の通り。①食事作り(朝)②食事作り(昼)③食事作り(夜)④食事後の片付け・洗い物⑤部屋の掃除⑥水回りの掃除(トイレ・お風呂・キッチンなど)⑦玄関やベランダなどの掃除⑧ゴミ出し⑨植物の水やり⑩洗濯⑪アイロン⑫衣類のクリーニング出し⑬食料品・生活用品の買い物⑭家計・資産(住宅ローンや投資など)の管理⑮子どもの入浴⑯子どもの寝かしつけ、起こす⑰子どもの着替え補助⑱子どものおむつ交換、トイレ付き添い⑲子どものミルクや離乳食の世話、食事の介助⑳子どもと遊ぶ(家の中)㉑子どもと遊ぶ(外遊び)㉒子どもに勉強を教える、宿題の採点をする㉓子どもの歯磨き㉔子どもの保育園/幼稚園/学校や習い事への送迎㉕子どもの保育園/幼稚園/学校に行く支度㉖子どもの保育園/幼稚園/学校で必要なものの購入㉗子どもの保育園/幼稚園/学校の保護者会やPTAへの出席㉘子どもが病気の時の看病や病児保育の手配。

 未既婚男性読者の皆さん、いかがか。〝主夫〟経験者の記者はほとんど行わなかった⑭㉓とかなり手抜きした⑤以外は全て行った。妻が生きていた時でもおしめのアイロン掛けやミルクを作った。おしめのアイロン掛けはやり出すととても面白い。生乾きがいい。ミルクつくりは大変だった。夜中に起こされると、湯を沸かし粉ミルクを煮沸した哺乳瓶に入れ、人肌まで水道水で冷ます作業はしんどい。

 とんでもない大失態もやらかした。妻の実家に帰っていたとき、「見ててね」と言われたのだが、乳児の子どもが寝ていたので近くの喫茶店に行っていた。帰ったらてんやわんやの大騒ぎになっていた。子どもが起き出し、框から20センチくらいあるコンクリの玄関に落ちたことを知らされた。鼻を擦りむいただけで済んだが、落ち方を考えたら背筋が凍った。子どもの頭が悪いのはあの時の落下ではないはずだが…。

 家事・育児が「幸福」かそうでないかはモノサシがあいまいなので分からない(設問方法は改めるべき)。ただ、「不幸」であるとすれば、すべてをこなす連れ合いに「不幸」を全て押し付ける権利は男性にはない。これは断言できる。

 同社にはこのほかにも質問した。納得できるものもできないものもあったが、同社広報からは次のような回答があった。

 「全体の傾向としましては、調査を開始した2019年から比較し、育休取得率や取得日数が全国で向上してきており、男性の家事育児参加に対するポジティブな意識変化が、家庭でも職場でも起きている、まさに過渡期であると考えております。(略)

 男性の家事・育児や育休に関して、日本全体で前向きに議論が広がるきっかけになればという思いで、本調査やフォーラムを発表させていただいております。当社としましては、ランキング下位の県を過度にピックアップするのはあまり本意ではありません」

 丁寧に回答していただいた同社広報にはお礼いたします。記者だって過度に反応などしたくありませんが、100点満点で落第点の15点と評価されたら三重県の男性も怒ると思いますよ。

 〝近江泥棒、伊勢乞食〟と言われる三重県の男性の皆さん頑張れ!三重県の女性は最高に素晴らしいのだから。

従来の総花的提案から脱却 積水ハウス ライフスタイル型モデル「7stories」開設(2020/8/27)

多様な取り組みのトリガーに/三重県 最下位に転落 男性育休フォーラム2021(2021/9/17)

幸福度トップ自治体は鳩山町 根拠希薄・無神経な大東建託ランキングやめるべき(2021/9/8)

不快な臭い芬々 〝住みやすい〟街ランキング調査 無聊をかこつ記者のつぶやき(2020/12/14)

積水ハウス 「イクメンフォーラム2020」視聴 三重県の男性職員 育休取得率日本一(2020/9/20)

積水ハ イクメン白書2020全国ランク 九州男児が上位独占 かかあ天下群馬は最下位(2020/9/19)

 

 


 

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン