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2021/12/12(日) 18:17

頂門の一針、蜂の一刺しにならないが アルヒ「本当に住みやすい街大賞」批判

投稿者:  牧田司

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アルヒ 本当に住みやすい街大賞
順位 2022年 2021年 2020年 2019年 2017年
1 辻堂 川口 川口 赤羽 南阿佐ヶ谷
2 川口 大泉学園 赤羽 南阿佐ヶ谷 勝どき
3 多摩境 辻堂 たまプラーザ 日暮里 赤羽
4 大泉学園 有明テニスの森 柏の葉キャンパス 川口 三郷中央
5 海浜幕張 大井町 入谷 柏の葉キャンパス 戸塚
6 たまプラーザ たまプラーザ 王子 勝どき 南千住
7 花小金井 小岩 武蔵小金井 南千住 大泉学園
8 月島 花小金井 小岩 千葉NT中央 千葉NT中央
9 船堀 千葉NT中央 ひばりヶ丘 小岩 小岩
10 新秋津 浦和美園 東雲 矢向 浮間舟渡
アルヒ 本当に住みやすい街大賞 シニアランキング
1 ひばりヶ丘 武蔵小山 木場 大泉学園  
2 稲毛海岸 南大沢 大泉学園 神田  
3 相模大野 平塚 平塚 印西牧の原  


 ARUHI(アルヒ)は12月7日、「本当に住みやすい街大賞2022 TOP10」を発表した。ランキングトップは前年3位の「辻堂」で、2位は2020年と2021年連続して1位だった「川口」、3位には過去ランク外の「多摩境」が急浮上した。

 以下、4位・大泉学園(前年2位)、5位・海浜幕張(同ランク外)、6位・たまプラーザ(同6位)、7位・花小金井(同8位)、8位・月島(同ランク外)、9位・船堀(同ランク外)、10位・新秋津(同ランク外)の順でベスト10入り。

 昨年ランク入りしていた有明テニスの森(同4位)、大井町(同5位)、小岩(同6位)、千葉ニュータウン中央(同9位)、浦和美園(同10位)は圏外。

 また、シニアランキングは1位・ひばりが丘(2020年の大賞9位)で、2位・稲毛海岸、3位・相模大野がいずれも前年ランク外から入った。

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川口元郷駅前の醜悪なクスノキ(2020年写す)

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瘤だらけの川口市内のイチョウ並木(2020年写す)

◇       ◆     ◇

 記者はこれまで、機会あるごとにこの「本当に住みやすい街大賞」を批判してきた。根拠が希薄で、マンションデベロッパーの影が見え隠れし、そして何よりも住宅購入検討者をミスリードする危険性もはらんでいるからだ。

 頂門の一針にならないことも、ましてやまだ死ぬ気はないので蜂の一刺しにもならないことを承知の上でまた書く。

 同社はタイトルにわざわざ「本当に」という形容動詞を付しているように〝実はそうではない〟と解釈もできるように逃げの一手を打っている。人気タレントを呼んでイベントも行っているようだ。これがまた記者を不愉快にさせる。住宅購入検討者を何だと思っているのだ。馬鹿にするのはいい加減にしてほしい。金融機関のやることでは断じてない。

 同社は一応、選定基準に住環境・交通利便・教育環境・コストパフォーマンス・発展性の5つを設定し、住宅や不動産の専門家が参画する選定委員会による公平な審査のもと選定しているとしているが、そもそもこれらの選定基準が妥当か、果たして数値化できるのか疑わしい。

 「住環境」ひとつとっても、重視するのは緑環境か眺望か生活利便施設の集積具合かによって全く異なった結果になる。交通利便だって、勤務・通学を優先するならどこがいいか言えないはずだ。教育環境も同様だ。孟母三遷の教えなど正しいのかどうか、誰も分からない。そもそも最近のマンション立地は〝なんでもあり〟の高容積の商業・準工エリアが圧倒的に多いではないか。コストパフォーマンスだって、実際にものを見ないと判断などできない。講釈師見て来たように嘘をつく。無責任極まりない。

 さらに、この「大賞」の致命的な欠陥は、もっとも肝心な誰にとって住みやすいかのかの視点が欠落していることだ。選ばれるのは富裕層が住みたくなるような街ではなく、背伸びしたら手が届く街かと思いきや、坪単価は400万円をはるかに突破する「たまプラーザ」がこの3年上位にランクインしており、やはり坪単価425万円の「勝どき」が今年ランクインした。同社は誰の味方なのか。

 評点の乱高下も不可解だ。2020年と2021年トップの「川口」は、2020年が4.14だった。そして2021年は4.40に跳ね上がり、2022年には4.05へ下落した。わずか3年間にこれほど上下するほど街並みが変わったとはとても思えない。「川口」と覇権を争っていた「赤羽」は2021年忽然として姿を消した。何があったのか説明してほしい。

 ほかのエリアも月光仮面のように疾風のように現れて疾風のよう去っていく。5年間ベスト10・シニアベスト3にランク入りしているのは「大泉学園」のみだ。記者も大泉学園はいい街だと思うが、ならばとうしで石神井公園が徒歩圏の「石神井公園」や、都心への連絡もいい「練馬」はランク外なのか。同線では「ひばりヶ丘」が2022年のシニアランクでトップになったが、西武ファンの記者だって首をかしげたくなるランクインだ。そんなに年寄りが住みやすい街か。

 トップに上昇した「辻堂」は、駅北口の再開発「湘南C-X(シークロス)」によって街並みが一変したのは十分承知しているが、ならば「藤沢」「茅ヶ崎」はどうしてランク外なのかさっぱり理解できない。

 今年の大賞で3位に突如浮上した「多摩境」と10位にランクインした「新秋津」も不可思議だ。住宅購入検討者でこの2つの街をイメージできる人は10人に1人もいないだろう。

 「多摩境」は知人も住んでいるので批判などしたくないが、このレベルの街なら首都圏に100も200もあるはずだ。「多摩境」がベスト3に入るのならなぜ同じ沿線のわが「多摩センター」はランク外なのか。「南大沢」は昨年のシニアランキング2位に入ったが、それだったら「永山」だって同レベルだ。同じ京王線では、他の沿線と比べ圧倒的に割り負けしている「調布」「府中」「聖蹟桜ヶ丘」もランク上位の評価が妥当ではないか。安藤忠雄氏が設計した建物が500mにわたって建ち並び、桐朋や白百合女子大の学生さんも多い「仙川」もいい。

 「新秋津」には仰天した。ここは西武線との連絡に2~3分はかかる。生活利便施設も乏しい。マンション分譲など最近はまったくないはずだ。審査講評では戸建てが3,000万円台で買えるとあるが、質を無視すればこんなところは数えきれないほどある。(不動産に掘り出しものなどない)

 言いたいことは他にもある。マンション業界関係者ならお分かりのはずだ。どことは言わないが、大型物件が分譲中か、あるいは分譲予定されている街・駅が突如浮上し、その役割が終えると忽然と姿を消す。同社は忖度などしていないだろうが、デベロッパーの影が見え隠れする。これが実にいやらしい。袖の下をもらっているのではないかと勘繰りたくなる。

◇       ◆     ◇

 以下は番外。記者の独り言と受け取っていただきたい。記者はお金があったら住みたいのは「3A」の「赤坂」「青山」「麻布」や「渋谷(松濤)」「田園調布」「成城学園」「駒込(大和郷)」「大森(文化村)」などもいいが、何といってもいいのは「東京」だ。マンションの価値として坪単価3,000万円どころか5,000万円の価値はあると思う。三菱地所はどうして分譲マンションを建てないのか。このほか、都心部なら「人形町」「四谷荒木町(四谷三丁目)」「神楽坂」界隈もいい。

 このほか、記者も悪くないと思うのだが、呑み助には24時間営業の安い飲食店が駅前に軒を連ねる「南越谷」がお勧めだ。競馬・ギャンブル好きには「府中競馬場」「多摩川競艇」「立川競輪」「浦和競馬場」「中山競馬場」「船橋競馬場」などに近い武蔵野線はどうか。毎日のように楽しめる。

 夜景が美しいのはどこでもそうだろうが「竹芝」「桜木町」「元町・中華街(山下公園)」、海好きには「三浦海岸」、フーゾク街なら「新宿・歌舞伎町」「黄金町」「川崎・堀之内」(今でもあるのか)だろう。

 これから検討する人には「南船橋」がお勧めだ。三井不レジが昨年分譲したマンションの坪単価は204万円だった。これから駅前の約4.5haの再開発が三井不動産・三井不レジなどによって推進される。数年後に街並みは一変する。

 20年、30年先を見通すなら、最大の〝穴場〟は「新木場」しかない。ここは地区計画により151haの規模にわたり住宅不可となっている。現在のオフィス賃料は都心の10分の1の水準だ。木場の役割が終えた現在、地区計画の見直しが行われるのは間違いないとみた。ひょっとしたら「HARUMI FLAG」の第2弾はここではないか。

 取り留めないことを書いてきた。つまり〝住めば都〟-どこもいいのだ。住みたくなくても離れられない人はたくさんいるし、住みたくても先立つものがない人のほうが圧倒的に多い。住宅購入検討者を惑わす、デベロッパーのプロパガンダに擦り寄るような大賞はやめていただきたい。

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