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2022/11/01(火) 14:01

「使われ活きる公園」 逆読みは〝使われず危機に瀕する公園〟 国交省「公園検討会」

投稿者:  牧田司

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公園とマンション敷地の垣根を取り払った「デュオヒルズつくばセンチュリー」

 国土交通省都市局は10月31日、「都市公園の柔軟な管理運営のあり方に関する検討会」(委員長:蓑茂壽太郎東京農業大学名誉教授)の提言をまとめ発表した。

 令和4年2月~9月にかけて議論・検討を行っていたもので、都市公園は、ポストコロナの新たな時代において、人中心のまちづくりの中で個人と社会の「Well-being」の向上に向け、地域の課題や公園の特性に応じ、多機能性のポテンシャルを更に発揮することが求められているとし、パートナーシップの公園マネジメントで多様な利活用ニーズに応え、地域の価値を高め続ける「使われ活きる公園」を目指すべきであるとしている。

 「使われ活きる公園」の実現のためには、従来の公園整備・管理運営から、「都市アセットとしての利活用」、「画一からの脱却」、「多様なステークホルダーの参画」の3つの変革が必要とし、①グリーンインフラとしての保全・利活用②居心地が良く、誰もが安全・安心で、快適に過ごせる空間づくり③利用ルールの弾力化④社会実験の場としての利活用⑤担い手の拡大と共創 ⑥自主性・自律性の向上⑦デジタル技術とデータの利活用-7つの具体的取組が重要としている。

 また、とりまとめでは「来年、都市公園制度誕生150年目を迎えるこのタイミングを、公園本来の役割と、公園の多機能性、多様な可能性を改めて認識する契機とすべきである」と述べている。

◇        ◆     ◇

検討会の議事録からいくつかの意見を以下に紹介する。

 「先進的な地方公共団体では取組が進んでいる一方で、特に技術者がいない地方公共団体では旧態依然の部分が多い。人材育成や公園評価等の地方公共団体を支える仕組みをつくらなければ、前回検討会の成果は完結しないだろう」

 「つくる公園行政の延長線上では成果が出てきている一方、使う公園行政という側面ではあまり進んでいない印象を受ける。つくる公園行政から使う公園行政へシフトしていくという方向性で整理していけるとよい」

 「P-PFI 等で新しい事業については取り組みが進んでいるが、街区公園のような小さな公園、まちなかの公園については各自治体が課題を抱えている状況でもある。そのような公園について、ハード・ソフトを含めてどのようにリノベーションしていくべきか」

 「公園関連のデータについては、台帳など情報が古かったり散逸していたりする公園も少なくない」

 「『つくり育てるみんなの公園』のキャッチコピーはそのとおりだが、もう一歩進んでこれを具体化する明確なキャッチコピー、例えば国としてこれから公園を見直す、再生する、あるいは開放する、それらを全国的に取り組んでいくというメッセージを出した方がいい。公園の評価の話が埋没しつつある。公園の管理を良くするという意味では、評価制度は非常に大事。公園の管理水準の見える化は引き続き検討してもらいたい」(梛野委員)

 「何のために都市公園の柔軟な管理を進めるのかというそもそものところがもう少し明確になるとよい。公園は、SDGsのウェディングケーキモデルの3層(自然環境、社会環境、経済環境)を実現できる場所であり、大きな拠点としてSDGsを発揮していく、持続可能なまちづくりの貢献していける拠点である」(佐藤委員)

 「本検討会の取りまとめは、首長に読んでもらえるものにしなければ前に進まない。その意味でWell-beingといった言葉は非常に重要」(蓑茂委員長)

 「全体として、公園というボーダーの内側の議論に閉じこもっていないか。グリーンインフラの議論において、グリーンインフラは入口であり、出口はグリーンコミュニティの形成ということを訴えてきた。地域コミュニティの形成に公園が果たす役割は極めて大きい。公園の利用だけでなく、公園同士のネットワークをどう考えていくかも非常に重要。民間ディベロッパーがPark-PFI や指定管理に非常に強い関心を持っているのは、公園を核とした地域づくりにどれだけ関与し、新しいビジネスチャンスを生み出していくかという点。パークマネジメントへの興味は、エリアマネジメントへの興味に通じる」(涌井委員)

 「検討項目と論点の組み立ての順番が違うのではないか。一番重視すべきこととして、街の活力を支える発展的な公園利用のあり方が先に来て、次に、そのために誰もが快適に過ごせる公園管理はどうしたらよいか、その中で民の活力をどう利用するのかという組み立てかたが大事ではないか。大きなフレームから、普遍的な部分に戻していくアプローチの方が、政策の議論においては現実的ではないか」(涌井委員)

◇        ◆     ◇

 「使われ活きる公園」というタイトルは結構なものだと思うが、逆読みすれば、いかにわが国の公園は使われていないか、活かされていないかを如実に示したものだと受け止めた。涌井史郎委員の「全体として、公園というボーダーの内側の議論に閉じこもっていないか」という指摘は辛らつだし、蓑茂委員長がいみじくも語ったように、「本検討会の取りまとめは、首長に読んでもらえるものにしなければ前に進まない」と思う。

 記者は、とりまとめでも述べられている「十分に利活用されていない公園ストック」が全国約11万か所、約13万haのうちどれくらい存在するか知りたいのだが、「公園関連のデータについては、台帳など情報が古かったり散逸していたりする公園も少なくない」(議事録)とあるのみで、検討会の議事録を読んだ範囲内ではそのような公園の実態を議論した形跡はない。国交省でも全国の公園の利活用の実態を調査したデータは把握していないとのことだ。

 ものごとは実態把握から始めるのではないか。先進事例・成功事例もいいが、悲惨な実態をあぶり出すことが先決ではないか。公園は危機に瀕していると思う。

 このことと関連するのだが、とりまとめでは、「各地方公共団体の緑の基本計画のうち、都市公園の管理の方針に係る記載がある計画は182都市」「都市緑地法運用指針において、36都市の計画で立地適正化計画に係る記載がみられる」「現在、全国に111の協議会が設置されており、イベント実施に向けた調整、新施設・再整備等の方針・計画等を協議内容とする協議会が多い」「ウォーカブル推進都市は、2022年6月30日時点で328都市」などとある。

 これらの数値も圧倒的に少ないのではないか。全国には市の数だけで800近くあり、都市計画区域も1,000か所以上ある。「ウォーカブル」の取り組みは、三菱地所などが推進する素晴らしい「Marunouchi Street Park」を取材しているが、その一方で、千代田区神田警察通り整備では地域住民を分断するような計画が実行されており、この前取材した愛知県一宮市でも「ウォーカブル」の取り組みが行われているが、イチョウ並木は丸裸にされていた。

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