「神宮外苑」や「日比谷公園」の「みどり」が話題になっているが、都市公園の再編は全国的に進んでいるようだ。東京都も令和5年6月、都の諮問を受け東京都公園審議会(髙梨雅明会長)は「新たな都立公園の整備と管理のあり方について」答申をまとめた。
答申は、社会状況の変化に対応し、①全ての公園の質を向上し、個性を生かした多様な公園の創出②周辺環境と調和を図り、新たな時代の都民ニーズを踏まえアップデート③共に創り、共に育てる――を基本方針とし、今後10年間に重点的に取り組むべき事項として①豊かな緑を育み、次世代へとつなぐ公園②東京の活力と魅力を高め、まちづくりの核になる公園③都民一人ひとりのウェルビーイングに貢献する公園――の3つを提案している。
◇ ◆ ◇
答申で謳っている「まちづくりの核になる公園」に大賛成だ。記者がいまもっとも注目しているのは、大阪駅前の「うめきた公園」(4.5ha)だが、駅に近くて「まちづくりの核」になりそうな点では「うめきた公園」によく似ており、規模は約2.5倍のわが街・多摩センターの「多摩中央公園」を紹介する。
「多摩中央公園」は、京王・小田急京王多摩センター駅から幅員約50m、長さ約400mのレンガ調タイル敷の歩道空間に、シンメトリーのクスノキの街路樹が60本以上植わっている「パルテノン大通り」を抜けたところに位置し、広さは約11.3ha。公園内には中央の大池を取り囲むようにコンサートホールが備わった多目的施設・パルテノン多摩、みどりに関する書籍が揃い質問も受けられ、水琴窟もあるグリーンライブセンター、新設されたばかりの市立中央図書館、大芝生広場、江戸時代の地主の家を移築した旧富澤家などがある。
植生も豊かで、どこに植わっているかは教えられないが、絶滅危惧種のキンラン、ギンランも季節になると可憐な花を咲かせる。
多摩市はいま、2015年2月に決定した「第五次多摩市総合計画・第2期基本計画」、2018年5月に策定した「多摩中央公園改修計画」、国土交通省が2018年10月に改訂した「公園施設長寿命化計画策定指針(案)」などに沿って改修工事を進めている。
前述した「市立中央図書館」もその一つで、今後、公募設置管理制度(Park-PFI)を活用し、物林を代表企業とする指定管理者TAMAセントラルパークJVによって「フラワー&ベーカリーハウス」、「ケヤキハウス」などが令和7年度までに整備される予定だ。
記者は、図書館はもちろん、民設民営方式によってこれらの施設を整備するのに異論はない。ただ、一つだけ心配なことがある。図書館建設のときもそうだったが、大量の樹木が伐採されるのではないかということだ。
心配する根拠はある。公園の西側に隣接する「レンガ坂」の改修工事だ。名称にあるように、レンガ調タイルが敷き詰められ、その両側には見事なユリノキが植えられていた歩道・自転車専用舗道だ。市内でもっとも美しい道路景観を形成していたと思う。
ユリノキは、2019年の台風15号により植えられていた102本(推定)のうち13本が倒木したのをきっかけに市は伐採方針を決めた。しかし、美しい景観を残してほしいという市民の声が寄せられたことから、市は計画を変更。地下には共同溝があり、残しても倒木の恐れがあるとする専門家の声を聞いて68本を伐採、21本を残した。同時に、レンガ坂の勾配がきつく、レンガ調タイルは滑りやすいという苦情を受けて、アスファルト舗装に変更した。
倒木の恐れがある、滑りやすいといわれれば反論などできないが、無残に強剪定(高さ7m)された樹齢50年はありそうなユリノキを眺めるのはつらい。記者と同じような疑問を抱く人もいるようだ。先日、強剪定されたユリノキを1歩1本眺め、胴吹きの葉っぱを調べている人がいたので声を掛けた。その方は「ひどいね、市はビッグモーターと同じことをやっているではないか」と話した。
公園内の樹木伐採も心配なので、市に問い合わせた。公園緑地課の担当者によると、公園内の樹木5,000本のうち1,125本を伐採する計画だという。2割以上だ。その多さに絶句したのだが、丁寧な説明を受けて納得もした。
伐採の理由は3つあり、一つは多摩地域に蔓延しているナラ枯れに対応するものだ。2つ目は公園東側の斜面地の土砂崩壊対策(斜面地の下には戸建て住宅がかなり建っている)。3つ目は施設整備に伴うもので、全体として伐採する1,125本のうち実生により繁茂している樹木が約8割(900本)だという。疑問は氷解した。
◇ ◆ ◇
取り留めなく書いてきたが、市にはどうしても言いたいことが一つある。喫煙についてだ。喫煙は人権だと思う。
平成31年3月に市が実施した「多摩中央公園改修基本方針(案)」に関するパブリックコメントには11人の質問が寄せられており、「喫煙所を設けて」という意見は2件ある。これに対して、市は「受動喫煙に対しては、多くの方に公園を利用していただけるよう、前向きに今後取り組んでいきたいと思います」と回答している。
文字通り読めば、喫煙所を設けるとも受け取れるが、〝健幸都市〟〝受動喫煙からあなたを守ります〟と駅前の横断幕に掲げ、まるで喫煙者は健康でなく犯罪者扱いする市が〝多くの方〟でない(11分の2だから18%もあるが)喫煙者の意見など聞かないとも解釈できる。よくある玉虫色、二枚舌だ。
市は条例により公共施設などでの喫煙を全面的に禁じており、屋外指定喫煙所は多摩センター、永山、聖蹟桜ヶ丘駅など数か所しかない。
どこもそうならあきらめるしかないのだが、そうではない。流石なのは〝日本一金持ち〟の東京都港区と23区の財政力が最低クラスの足立区だ。港区は「たばこを吸う人も吸わない人も、誰もが快適に過ごせるまちづくり」の一環として、屋外の公園を含めた指定喫煙場所を約40か所設けている(屋内は数えきれないほどある)。足立区は、歩行喫煙を禁止しているが、公園内の喫煙そのものは禁止していない。「喫煙禁止」の看板もないはずだ。
記者は、日本一美しい街は多摩センターだと思うが、この横断幕を目にするたびに、健康でも幸せでもない、生きるに値しない者であることを自覚させられ、気が滅入る。そんな記者を横目に〝口悪〟カラスは〝バカー〟と一鳴きして飛び去った。
〝喬木は風に折らる〟誤解解く取り組みの見える化急げ 「神宮外苑地区まちづくり」(2023/10/17)
コロナ禍でも億万長者は11.4%増の1,392人 令和5年度の港区 所得割額は2.4%減(2023/10/15)
〝ぶっ飛んだみどり〟だけでない 「グラングリーン大阪」タワマンに絶句(2023/10/12)
樹木を避けて整備 都の日比谷公園整備PJ/「生き物を殺していいの」 二の句継げず(2023/8/7)
尾根幹線沿線23か所66haの再生・活性化へプラットフォーム創設 多摩市(2023/4/23)
ショック!ホテルに続き恵泉女学園大学も閉学へ 地盤沈下する多摩センター(2023/3/23)
「使われ活きる公園」 逆読みは〝使われず危機に瀕する公園〟 国交省「公園検討会」(2022/11/1)
〝日本一美しい多摩〟目指せ 多摩市街路樹よくなるプラン改定版 住民説明会(2019/1/21)
国交省 「都市公園等のあり方検討会」が中間とりまとめ(2015/8/25)
多摩グリーンボランティア森木会 10周年&「緑の都市賞」内閣総理大臣賞(2011/11/29)