記者レクチャー会〈2025年基準地価〉
大和ハウス工業は9月12日、記者レクチャー会〈2025年基準地価〉を開催。9月16日に発表される「令和7年 都道県地価調査」の記事化に資する情報を提供するもので、マンション事業について同社ハウジング・ソリューション本部事業統括部副統括部長・角田卓也氏が、分譲戸建てについて同本部事業統括部事業推進部分譲住宅推進グループ担当次長・中岡敬典氏が、物流施設事業について同本部事業統括部不動産流動化推進室担当次長・廣渡政和氏がそれぞれ市場動向などについて説明した。
首都圏マンション市況 立地条件などにより成否が顕著
投資・インバウンド需要背景 近畿圏の用地買収激烈化
角田氏
マンション事業環境について角田氏は次のように語った。
首都圏の市況は、都心3区は、継続して順調に推移し、23区も利便性の高い、住環境の良い物件は順調に進捗している。一方、条件が悪い物件や郊外物件などは取得能力と価格上昇の乖離などから販売は鈍化傾向にある。
関西圏は、大阪駅前再開発が市場を牽引し、北摂や阪神エリアの資産性と利便性が高い駅前再開発案件などの人気が継続している。京都は供給過多ではあるが、京都風情を求める首都圏の富裕層やインバウンドのセカンドニーズが強い京都市中心地(田の字エリア)内など好立地物件は堅調に推移している。
地方圏(北海道・沖縄)は、本州からの富裕層やシニア層のセカンド・投資・移住ニーズの需要が継続して見られる。
エリア別の用地取得環境は、首都圏は一部都心エリアの用地価格の上昇が継続している一方で、山手線の外側エリアにおいては、販売が鈍化している案件もあるため、用地取得エリアの選別が進んでいる。郊外エリアでは建築費の高騰を吸収するために土地価格が下落しているエリアも確認されている。
近畿圏は、販売が好調な大阪市中心部、京都市中心部を中心にデベロッパーの買い意欲が集中し、土地価格の上昇は継続している。また、インバウンド需要を受けた民泊対応マンション向けや一般投資家向け収益案件開発が活発で、買収環境は激烈になっている。
地方圏は、札幌、沖縄は引き続き上昇基調であるが、大都市においては、建築費高騰を吸収することが難しく、価格は上限に近づいている。
投資需要は、金利の上昇、過熱化している不動産価格をふまえて機関投資家はやや慎重な姿勢を見せているものの、一般投資家(個人を含む)の都心分譲マンションのキャピタルゲインを狙う意欲は強い。賃貸マンション分野では、新築マンションの供給減・価格上昇に起因する賃料のアップが顕在化している。
インバウンド需要は、万博需要・IR需要が期待できる大阪エリアは土地価格上昇が顕著で、ラグジュアリーホテルなどの開発が加速化。土地価格は高騰している。
分譲戸建て 着工は2022年度以降大きくの減少
同社は販売、金額とも増加 木造化比率は24%へ
中岡氏
分譲戸建てについて中岡氏は、新設着工戸数は2022年度から大きく減少している一方で、同社は販売戸数、契約金額を伸ばしており、2024年度の販売戸数は2,257戸(前年度比28.2%増)、契約金額は前年度比29%増となったと報告。販売用土地の保有は約5,100区画で、販売戸数は約1,500棟。
分譲住宅の今期の木造化比率は24.3%(前期は16.3%)を目標にしており、全体の木造比率15.3%(同11.0%)を上回っている。ZEH率はほぼ100%を達成している。
物流市場 極端な供給過剰は終息 空室率は高止まり
廣渡氏
物流施設などについて廣渡氏は、2025年上期テナント入居地域傾向(契約締結べース)は成約件数、成約面積とも3大都市圏が65~67%を占め、トピックスとして大手アパレルの期間限定のニーズによる成約や、冷凍冷蔵倉庫の1,000坪以下区画が複数成約したと語った。
物流施設の市場動向としては、極端な供給過剰は終息し、ある程度バランスが取れた需給になると予想。空室率は中期的には低下の予測も、現状では高止まりの状況にあり、新規供給は、未着工案件については不透明要素(特に施工ゼネコンの確保)が増加しているとした。EC市場は着実に成長を継続中と語った。
同社の建築事業部門の実績、トピックスとして、全国で分譲中の工業団地は408棟、総開発延床面積は約1,495.1haで、中国地方では従前の地価調査水準約30万円/坪だったのが、2022年には約40万/坪になり、現在は約80万/坪になっている事例を紹介した。
◇ ◆ ◇
首都圏マンションでは、来年2月に分譲される同社の「プレミスト船橋」(677戸)が最大の注目物件だ。今後の千葉県のマンション市場ばかりでなく、主要駅圏の相場を劇的に変える試金石になるはずだ。
このマンションについては、9月3日に行われた同社の「マンション事業計画説明会」で同社上席執行役員ハウジング・ソリューション本部マンション事業本部長の富樫紀夫氏(62)が「当初の販売価格は320~330万円を予定していたが、建築費は倍くらいになったので、販売価格は倍とまではいかないが、かなりそれに近い金額になりそう」と語ったので、角田氏にもう少し詳しく聞こうと質問したが、やんわりと交わされた。ただ、反響件数は富樫氏は4,500件超と話したのに、今回の角田氏は5,000件と話した。10日間で500件増だ。このままのペースだと1万件を突破することになりそうだ。
価格がどうなるかは分からないが、富樫氏が話した通りなら坪600万円近くになる可能性が高い。バブル時の相場は記憶にないが、バブル崩壊後では最高値の東京建物他「Brillia Tower 千葉」(491戸)をはるかに上回るのが確実だ。
基本性能・設備仕様もどうなるか不明だが、同じ長谷工コーポレーション施工の総合地所・JR東日本都市開発「ルネタワー八王子」が参考になる。レベルが突出していた。「船橋」も同レベル以上になるのは間違いない。
用地買収環境が激烈化している京都市の田の字エリアのマンションを取材したので、記事を参照していただきたい。
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