
「大手町ゲートビルディング」
三菱地所は7月31日、農林中央金庫、日立プロパティアンドサービスなどと共同で開発を進めてきた「大手町ゲートビルディング」が同日竣工し、日本橋川に新設した歩行者専用橋「仲通り散歩橋」と防災船着場「鎌倉河岸船着場」を千代田区へ引き渡したと発表。同社・中島篤氏、千代田区長・樋口高顕氏ら関係者百数十人が参加した記念式典と建物を報道陣に公開した。
物件は、大手町と神田の結節点に位置。両エリアをつなぐ新たな都市拠点として整備された。日本橋川に架かる「仲通り散歩橋」と防災船着場「鎌倉河岸船着場」を新設し、周辺区道の無電柱化・美装化により、大手町・丸の内エリアの「仲通り」を神田まで延伸し、歩行者ネットワークと回遊性を大幅に向上させる。また、鎌倉橋周辺には丸の内シャトルの乗降場を設け、エリア間のアクセス強化も図る。
建物デザインは、日本橋川沿いが江戸時代に物流拠点「鎌倉河岸」として栄え、多様な食文化を育んだ歴史を継承。「新たな文化の入口」をコンセプトに、人・物・情報が交わる場を目指し、3層吹き抜けのアトリウムを備えた開放的な空間を創出。
周辺には約1,000㎡の交流広場「内神田仲通り広場」を整備し、日本橋川沿いに遊歩道や船着場、カフェ、飲食店、観光案内所を配置することで、水辺空間を活用した新たな賑わいを形成する。
三菱地所が進める食と地域をつなぐ「めぐるめくプロジェクト」の活動拠点として、2~4階には農と食のビジネス・産業支援施設「MINORIWA(ミノリワ)」を整備。農業・食品分野の事業者やスタートアップ、企業が交流・共創できる場となる。サービスオフィスやコミュニティ機能を備えるほか、クラフトサケ醸造所「haccoba 内神田醸造所」も開業予定。
8~25階の一般賃貸オフィスは竣工時点で満床。フロアは約2,070㎡の無柱空間を備え、天井高は2900ミリ(25階は3200ミリ)。多様な働き方に対応するレイアウトが可能。18階には就業者ラウンジ「GATE LOUNGE」やフレキシブルオフィス「xLINK大手町ゲートビル」を設け、大企業からスタートアップまで幅広い企業活動を支援する環境を整えた。
防災・環境面では、制振構造や72時間対応の非常用電源を採用、高い事業継続性を確保。約720人を受け入れる帰宅困難者一時滞在施設も整備する。また、大手町の地域冷暖房システムを神田エリアまで延伸し、地域全体の環境負荷低減を推進。「ZEB Ready」をはじめ、「CASBEE建築Sランク」「CASBEEスマートウェルネスオフィスSランク」「DBJ Green Building認証★4」を取得。
さらに原木丸太端材から製造した「幅はぎ材」の木材パネルを採用し、歴史性を継承するとともに脱炭素にも貢献する建築となっている。
記念式典で三菱地所代表執行役執行役社長・中島篤氏は「『仲通り散歩道』と『鎌倉河岸船着場』は防災拠点にも観光拠点にもなる。神田と大手町がつながり、地域がより一層盛り上がることに期待したいと」あいさつした。
また、千代田区長・樋口高顕氏は「鎌倉河岸は約400年前の江戸時代の初期、鎌倉方面からの資材の荷揚げ場として栄えた。防災。観光・賑わい拠点として神田と大手町が一体として末永く愛され、発展することを願っている」と祝辞を述べた。
物件は、名称は「内神田一丁目地区第一種市街地再開発事業」で、地下鉄大手町駅から徒歩3分、JR神田駅から徒歩6分、千代田区内神田一丁目に位置する敷地面積約5,105㎡、地上26階・地下3階建て延床面積約85,398㎡、許容容積率は1,400%(特区容積割増+600%)。設計は三菱地所設計、施工は大成建設・関電工・新菱冷熱工業・斎久工業・日立ビルシステム。工期は2022年7月~2026年7月。「MINORIWA(ミノリワ)」を8月31日に開業し、1階の商業ゾーンや観光案内所は9月7日から順次オープンする予定。

内神田仲通り広場

「仲通り散歩道」(高速道は廃止されない)

「鎌倉河岸船着場」

「内神田川端緑道」
◇ ◆ ◇
見学会の受付会場になっている1階エントランスに着いた途端、大空間のアトリウムが眼を射た。この日は事情があって4時間くらいしか寝ていなかった記者の目が覚めた。高さにして約18m(1層約6mとして3層分)の大空間の天井と壁に本物の木材(三菱地所がフェイクのケミカル製品を使うはずがないと判断)とアルミのハイブリッドがリズミカルに張り付けられていた。
必死で記憶を手繰り寄せた。〝これほど大規模で美しい木質空間を見たことがあるか〟-結論は〝ない〟だった。美しい木質空間そのものは、隈研吾氏の最新作「MoN Takanawa:The Museum of Narratives(モン タカナワ: ザ ミュージアム オブ ナラティブズ)」、三井不動産「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」、三菱地所「みやこ下地島空港ターミナル」、野村不動産「溜池山王ビル」、東京建物「TOFROM YAESU」などが眼に浮かんだが、規模が異なる。
そこで、事業説明を行った同社丸の内開発部・広瀬拓哉氏に「これほど美しくて大規模な木質空間のビルは他にあるか」と聞いた。広瀬氏は「当社グループではこれが初。同業他社もないはずで、これが唯一無二だと思う」と答えた。
凄いのはアトリウムだけではない。2~4階のビジネス・産業支援施設「MINORIWA」の天井には同社グループのMEC Industryの露出天井材「MIデッキ」が採用されている。階段ステップも本物の木だったし、エレベーターホールにも木をあしらったデザインが施されていた。
さらにまた、アトリウムや2階ロビーの床材には、江戸城に採用されている石と同じ種類の小松石が採用されている。小松石とは、神奈川県真鶴町で採掘されるわが国の最高級銘石(輝石安山岩)で、約40年前の箱根火山の溶岩が固まってできた石のようだ。

エントランス

「MIデッキ」(左)と幅はぎ板(スギ)
◇ ◆ ◇
千代田区に引き渡された「仲通り散歩道」と「鎌倉河岸船着場」が整備されたこともあるのだろうが、完成記念式典は盛り上がっていた。ビルの名称に〝ゲート〟が付されているように、単なる大規模ビルではない、南北軸の神田―大丸有-日比谷と、東西軸の大手町川端緑道(全長約780m)の結節点の位置にあり、神田エリアの再生・観光拠点の突破口にしようという意図・意思を強く感じた。
「仲通り散歩道」の渡り初めセレモニーには3地域からそれぞれ3世代の住民が参加したが、最年長87歳の高柳信三郎氏の声は盛り上がる地域を象徴していた。高柳氏は「神田駅西口地区まちづくり市街地再開発準備組合」の代表理事を務めており、「長生き? 街づくりに熱心に人はみんな長生きするんだ。木のデザインが美しい? 長岡駅(隈研吾氏がデザイン監修)もいいよ。よくご存じですね? 当たり前だよ」
高柳氏の奥さんが補足した。「私は柏崎市出身。新幹線で帰るとき、長岡駅で乗り換えるんです」
式典後、中島氏と樋口氏に「橋は〝散歩道〟と名付けられており、千代田区道の『丸の内仲通り』は年間の半分くらいがイベントなどで占用使用されている。いっそのこと廃道にしたらどうか」と質問したが、二人とも明言を避けた。代わって千代田区環境まちづくり部神田地域まちづくり担当課長・碇谷克幸氏は「区道は人に優しい方向に検討すべきだが、廃道にはハードルが高い」と答えた。
「地上にはもともと道はない。歩く人が多くなれば、それが道となるのだ」-魯迅が言ったではないか。車道としての「丸の内仲通り」の役割は終えたと思っているのは記者だけでないはずだ。

中島氏(左)と樋口氏
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