売り上げ年間450~500億円見込む 三井不動産「ららぽーと富士見」10日開業
「三井ショッピングパークららぽーと富士見」
三井不動産は4月10日、同社の大規模郊外型商業施設としては13施設目の「三井ショッピングパークららぽーと富士見」をオープンする。東武東上線エリア最大級の敷地面積約15.2haに293店舗が出店する。年間の売り上げ目標は450~500億円。開業に先立って6日、報道陣や招待客などに公開され、3~4万人が訪れた。
施設は、東武東上線鶴見駅から約1.5㎞(バスで約6分)、埼玉県富士見市山室に位置する敷地面積約15.2ha。鉄骨造4階建てで延べ床面積約18.5ha、店舗面積は約8.0ha。店舗数は293店舗。設計施工は安藤・間。
埼玉県を含む北関東の基幹店と位置付けており、商圏半径10㎞圏内の約160万人。若年層だけでなくシニア層もターゲットに据え、ワンストップで需要を満たすことを目指す。商業施設では初となる三越伊勢丹、京王、丸広百貨店のサテライト店も出店する。
施設コンセプトは、「コミュニティ」「空間」「体験」「ショッピング」の4つをキーワードとする「人・モノ・文化が交差する新拠点~CROSS PARK~」。
「コミュニティ」では、地域との共生を大切にするため認可保育所、クリニックを設置し、交通広場も整備する。地産地消を促進するため地元「JAいるま野」と提携し、「いるマルシェ」「彩の国レストラン」が出店する。
「空間」では、約4.2haを緑化し、ららぽーと公園やドッグランを整備するほか、ママにも優しいキッズテラス、女性目線で創られたトイレ空間を提案している。本物の樹木「シマトネリコ」を植えたフードコート「森のダイニング」も売りの一つ。シマトネリコは数本植わっていた。
「体験」では、日本初の「Media Mation MX4D」が体験できる「TOHOシネマズ」、商業施設初の「セガソニック鉄道」などのエンターテイメントを誘致し、「ショッピング」は多世代ニーズに応える293店舗を揃える。
冒頭、挨拶に立った同社常務執行役員商業施設本部長・石神裕之氏は、「『船橋ショッピングセンターららぽーと』を開業してから35年目の節目の年にリージョナル施設としては13店舗目となる施設オープンとなる。ワンストップショップとして地域に根ざした施設になるよう努力していく」と語った。
「森のダイニング」
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地元埼玉を意識した施設でもある。「いるマルシェ」には、生産者の名前が入った野菜などがたくさん並んでいた。新タマネギは1個50円くらい(100g33円)で売っていた。
「彩の国レストラン」もお勧めだ。埼玉県産の約80種の食材を用いたビュッフェレストランで、大食漢にはたまらないのではないか。ただ、すいとんに似た郷土料理「つみっこ」はやや味が濃かった。
「TOHOシネマズ」の「Media Mation MX4D」も体験した。これは怖かった。万里の長城から電動自転車のようなものが転げ落ちるアニメ映画で、画面が飛び出し、シートが縦横上下に動き、足元に何かが触る、いやな匂いではないが、何だか変な香りもする。石が飛んできたので目をつぶったらその途端、水しぶきが顔面を襲った。約7分間。汗びっしょりになった。心臓の弱い人は敬遠したほうがいい。
「いるマルシェ」(左)と「彩の国レストラン」
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来場者にも話を聞いた。小さい子どもをあそばせながらママさんたちが寛ぐ「スタジオカフェZooAdventure」を利用した20代の女性は、「小さな子どもの声がうるさいとネットでよく書かれるので、ここは子どもをあそばせながら私たちもリフレッシュできる。とてもいい」と話した。「遊び場」の利用料金は30分500円から。
施設の近くに住むという20代の女性は「近くに商業施設は全然ない。わたしは車が利用できないので、自転車で来ることができる。楽しみ。富士見市も知られるようになる」と大歓迎していた。
娘さんが地元に住んでおり、誘いを受けたので静岡県下田市からやってきた60歳代の夫婦は「立派な施設だが、地元の商店街がかわいそう」と、既存の商店街への気遣いをみせた。
川越から車で10分くらいかけて来館した60代の男性は「娘が招待されているので来たが、同じような施設は川越にも入間にも川口にもある。どこに行くか悩ましいほどだ」と過当競争を心配していた。
それにしても3~4万人とは驚いた。昨日の西武プリンス球場の観客数は約22,000人だ。それの2倍近いとは。
「京王」(左)と「三越伊勢丹」
2階から写す
「スタジオカフェZooAdventure」
女性用トイレ(女性スタッフに撮ってもらった写真。「とてもきれい。化粧直しブースは2カ所。もっとあったらいい」と話していた)
記者が気に入ったポスター(キャッチコピーは「オジサンだって女子だもん」)
花見の価値9,000円!男女、同年代で極端な差 アットホーム
花見ができる賃貸物件の価値は月9,000円!-いえ・まち・くらしの情報サイト「at home VOX(アットホームボックス)」が全国の20~50代男女500名を対象に「お花見の価値」について調査を実施したところ、花見ができる賃貸物件の価値は月額平均8,928円で、30代男性と50代女性は1万円を超えたという。
このアンケート結果に驚いた。もちろん記者もサクラ、とくに夜桜が好きだが、月額約9,000円だから年額にしたら約11万円だ。11万円も出したら、どれだけ多く酒が飲めるだろう。いくらなんでもこれは高すぎるのではないか。よほど年収の高い賃貸居住者を対象にしているのではないか。
ただ、同社がかつて行ったアンケートで東京タワーの夜景は月額平均9,223円、東京スカイツリーの夜景は月額平均9,042円だったそうで、それらと同等というのは納得だ。桜はせいぜい1週間しか眺められないのに対して、東京タワーもスカイツリーも四六時中眺められるから、その価値の開きは大きい。記者はスカイツリーの価値などほとんど認めない。
それにしても男性と女性、同じ年代の男性と女性では価値評価が大きく異なるのにもびっくりした。
例えばもっとも価値を低くみた30代の女性は7,263円であるのに対し、同じ世代の男性は10,168円だ。30代の女性に次いで低い8,153円の評価をした50代男性に対して、同じ世代の女性は10,409円とこれまた両極端。歳とともに価値観が異なってくるのは分からないではないが、同じ世代間でこんなに断絶があるとは信じられない。夫婦だったらどうなるのだろう。
記者が思うに、30代の女性は子育てに忙しくてサクラどころでなく、同じ30代の男性は構ってくれない奥さんの代わりにサクラを愛でることで自分を慰め、先が見え始めた50代の男性は寂々と散るサクラにわが身を重ねるのが辛く、反対に猩猩たる赤ら顔の夫を見限り、ひらひらと舞うサクラとわが身を重ね合わせている世の奥さん方が浮かび上がってくる。男と女は難しい。同床異夢…。
「at home VOX(アットホームボックス)」は面白い。
宅建士スタート 率直に喜べない 顧客満足度の低さ 業界紙特集から
今週の業界紙「住宅新報」と「週刊住宅」は、4月1日付で「宅地建物取引主任者」が「宅地建物取引士」(宅建士)に呼称が変わったことを受けて特集記事を組んでいる。レイアウトは異なるが、紙面内容はほとんど同じだ。同じ業界紙の「日刊不動産経済通信」と専門紙3紙が共同で企画したそうで、広告ではなく記事として3紙が共同戦線を張るのは初めてではないか。
また、不動産協会、不動産流通経営協会、全国住宅産業協会、全日本不動産協会、全国宅地建物取引業協会連合会の業界5団体の長が一堂に会して座談会を行うのも初めてではないかと思う。国交省土地・建設産業局の毛利信二局長も参加しており、司会役は同省OBの中川雅之・日大教授だ。
晴れの日にケチなどつける気は毛頭ない。毛利氏が述べたように、宅建士が「名称変更にとどまらず、宅地建物取引士にふさわしい公正・誠実な業務遂行や信用失墜の禁止、宅地建物取引業者の従業員教育など…業界全体の一層の信頼性向上に向けた取り組みがさらに強化され、取引のプロである宅地建物取引士が不動産流通市場の活性化に向け、大きな役割を果たしてくれることを期待している」。
しかし、主任者から宅建士への〝昇格〟の経緯、これまでの宅建試験制度を考えると、記者は手放しで喜ぶわけにはいかない。昇格はずいぶん前から一部の業界団体が主張してきたことで、中身についてはそれほど論議されてこなかった。
大学入試ではない。不動産のプロを育成するためなら、試験制度は一定レベル以上の受験者は全て合格にすべきだし、少し足りない人は再チャレンジの機会を与えていいではないか。これまでそのようなことは全く考慮されてこなかった。一定の合格者を確保・抑制することが優先されてきたのではないか。合否の権限は全て実施機関に握られ、受験者はその都度、安全弁のような扱いを受けてきた。
そのいい例が、大量42万人が受験したバブルの絶頂期の平成2年だ。合格者は近年では最多の約4.4万人に上ったのだが、一方で合格率は過去最低の12.9%にとどまり、合格点も過去最低の26点に抑えられた。試験問題は50問で4肢択一だ。約半分の正答率で合格とは何事だと、当時批判も浴びた。
その後、合格者はほぼ3万人前後で推移しており、ここ数年は受験者のレベルが上がったのか下がったのか合格点は35~36点の年が多い。宅建士になっても難易度は変わらないようだが、受験者が安全弁のように扱われることのないようにしていただきたい。
もう一つお願いしたいのは、「宅地建物取引士の名に恥じないよう、魂を入れることが必要」と竹井英久・不動産流通経営協会理事長が強調したように、消費者から信頼される宅建士の育成に力を入れることだ。
業法の改正を先取りする形で全宅連は「不動産キャリアパーソン」制度を一昨年に立ち上げたという。記者は中身を知らないが、専門知識はもちろん社会常識・品性の教育も必要だと感じている。
これに関連することだが、同じ号で住宅新報は不動産業者と取引したことがある消費者500人に対してアンケート調査した結果を報じている。「信頼度」の平均値は65.3%だったという。つまり約3分の2だ。これはいかにも少ない。先日、プレハブ建築協会の会合で発表されたハウスメーカーの顧客満足度は70.6%だった。他の業種でもほとんどが70%を超えているはずだ。
物件そのものの質ではなく、「基本的マナーの不足」「専門知識の不足」など基本的な項目でも問題を指摘されている。これをどう受け止めるのか。
そうした現状にタイムリーというべきか、この4月から呼称が変わる不動産流通近代化センターは見開き広告を業界紙2紙に出しており、不動産流通の新指標として、宅建士の個人の実務レベルを判定できる「不動産流通実務検定」を開始するという。
これも結構なことだが、ずっと前から呼称を変更すべきと主張してきた記者にとっては、前述した住宅新報のアンケート結果をみると、複雑な思いもする。やはり不動産業は前近代的なところが残っており、それが信頼につながってこない要因ではないかということだ。
ここにいたって「近代化」を残せとは言わないが、新しい呼称は「リノベ」「再生」「活性化」「人材」「グローバル」などの手あかにまみれた陳腐化したものではなくて、そしてまたいかにもお役所的な「センター」も取っ払って、不動産流通の「未来」が描けるようなものにしていただきたい。
なぜ京都の高齢者は美しいか 3住研究会で野間光輪子氏が語る
「変わる家族と住まい」シンポジウム(すまい・ホールで)
住宅金融支援機構・JAHBnet・アキュラホームが後援している「住みごこち・住みごたえ・住みこなし推進研究会」(略称:3住研究会、委員長:高田光雄・京大大学院教授)は3月30日、「変わる家族と住まい」をテーマに第1回シンポジウムを行った。200人以上が参加した。
3住研究会とは、住まい手が一方的に受けるサービス価値である「住みごこち」と、住まい手と住まいが双方向に働きかけることで得られる非手段的価値「住みごたえ」を継続的に作り出す住まい方「住みこなし」と呼ぶことから名づけられた。
シンポジウムでは、高田氏が「変わる家族と住まい」について解説し、大久保恭子委員(風代表取締役)、園田眞理子委員(名大教授)、野間光輪子委員(日本暮らし代表取締役)がそれぞれ講演。
大久保氏は、増加する単身世帯の増加で「これからのひとり住まい」はどうなるかを話し、園田氏は多摩地区の郊外戸建て団地を例示しながら「カタツムリ型からヤドカリ型への転換」を訴えた。野間氏は、なぜ京都の高齢者は美しいかについて京都弁で話した。
「パネルディスカッションでは高田氏がモデレーターとなり、この3氏に檜谷美恵子委員(京都府立大教授)、山本理奈委員(東大大学院学術研究員)が加わりパネルディスカッションを行った。
高田氏
◇ ◆ ◇
感動的な講演を行ったのは日本暮らし代表取締役・野間光輪子氏だった。「京都の高齢者はなぜ美しいか」というテーマに偽りはなかった。
言うまでもないことだが、野間氏が「美しい」と語ったのは容姿のことではない。自立した精神的な豊かさ、品性・品格のことだ。京都は夏暑く冬寒い気候的には必ずしも恵まれているわけではなく、京町屋の家屋はバリアだらけだが、祇園祭が行われる鉾町の人たちはいつも背筋をぴんと伸ばし、四季の移ろいを楽しむゆとりを持っているという。異なる意見・考え方に対しては〝それもおもしろいなあ〟と反発するのではなく、受け容れる心の広さを持っているという。
なぜなのか。野間氏が語ったのは「京都には『ハレとケ』が生きているんです。『ハレ』とは「晴れ」、つまり非日常の年中行事であり、『ケ』(褻)は日常なんです。京都は祇園祭りという極晴れと四季折々の行事の晴れを中心に大人も子どももそれぞれの世代が自らの役割を認識し、刺激し合いながら生きていくという文化なのです。高齢者も社会的な役割を担っているという誇りを持っているんです。だから美しいんです。鉾町の人たちは『非行少年とぼけ老人はいない』のが誇りなんです」と話した。
野間氏はまた、「わたしたち日本建築士会連合会の女性委員会が12年前、このような町文化、コンパクト社会が残っている祇園の街を学会で報告したんです。そうしたら、他の会員の方々から『あなたたちは京都を美化しすぎている』と批判を浴びました。『近くに病院がない、高齢者にやさしくない』と。これ、違うんですよね。病院が遠くても梅を眺める、路地を歩くことに喜びを感じる、風景を大事にする街なんです。これが美しいんです」と語った。
「ハレとケ」は、日本人の伝統的な人生観を表す柳田國男の言葉だが、「メリハリ」も同義語だろう。この日常と非日常を使い分けることが美しく生きるヒントになることを教えられた。
しかし、「ハレとケ」の文化は京都だけでなく、かつては日本全国に存在したと思う。冠婚葬祭だ。間違いなくわが国は冠婚葬祭がコミュニティを育んできた。いま、このコミュニティを排除する動きがある。マンションの標準管理規約からコミュニティ条項を削除する動きだ。コミュニティは危機に瀕している。
野間氏
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高田氏はシンポジウムの冒頭、「私以外の委員は全て女性。ものすごく極端なジェンダーバランス」と会場を笑わせたが、春爛漫にふさわしく大久保委員は和服姿で登壇、園田委員は見事な白髪で熱弁をふるった。
大久保氏は普段も和服をよく着るそうで、園田氏は「白くなったのは最近、浦島太郎になっちゃった」と茶目っ気たっぷりに話した。
左から大久保、園田、檜谷の各氏
「十分な耐震性」検証報告は欺瞞 東洋ゴムの免震不適合問題
国土交通省は3月26日、東洋ゴム工業の免震材料の大臣認定不適合問題について、同社から「55棟全ての建築物について、震度5強程度の地震に対して十分な耐震性を有しており、倒壊するおそれはない」との報告があったと発表した。
同省はこの結果を踏まえ、「震度5強程度の地震に対して十分な耐震性を有しており、倒壊するおそれはないことについて確認」したとし、「55棟以外にも大臣認定不適合の免震材料を用いた疑いがある建築物について、至急全容を解明し、事実関係を報告すること」などの指示を出した。
◇ ◆ ◇
今回の発表により、震度5程度の地震に対しては問題がないとされたのは不幸中の幸いといえるかもしれないが、この調査結果は欺瞞だ。
そもそも新耐震基準は震度6~7程度の地震では倒壊しないというものだ。その基準を満たしているのは当然だ。同社の報告で「うち17棟については、震度6強から7程度の地震での検証により震度5強程度での地震での検証を省略」というのは論外。残り38棟は旧耐震基準で検証を行なったということか。そうであるなら、これはあまりにも人を馬鹿にした検証だ。デベロッパーもユーザーも倒壊しないのはもちろん、揺れが軽減されるという安心・安全に高いお金を払っているのだ。
検証すべきなのは、震度6~7程度の地震で免震装置としての機能が保たれるのかどうかということだ。徹底して行なわないと、免震マンションの信頼性は土台から揺らぐ。
屋上に里山とせせらぎ 格子デザインも美しい 豊島区新庁舎が完成
完成した豊島区庁舎と「Brilliaタワー池袋」
建築家の隈研吾氏がデザイン監修した「Brilliaタワー池袋」と「豊島区庁舎」の一体開発「としまエコミューゼタウン」が完成し、公開されたので見学した。
約810㎡もある里山というべき庁舎屋上の「豊島の森」や総延長約130mのせせらぎを設けた4・6・8階のグリーンテラス、見る角度によって表情が変わるルーバー、国際会議も可能な格子が美しい議場、日本最大規模のふくろうコレクション、回廊美術館など見どころ満載。豊島区が誇れる新名所になりそうだ。
◇ ◆ ◇
「Brilliaタワー池袋」を2013年の「ベスト3マンション」に選んだのは正解だった。坪単価が350万円の高値だったにもかかわらず圧倒的な人気を呼んだが、ユーザーの見る目は正しかった。今となっては坪450万円どころか500万円の価値はある。
庁舎の壁面にランダムに貼り付けられているブラウンのルーバーはやや濃すぎるし、太陽光パネルが乱反射し雑多なものを映し出す外観は美しいとは思えないが、外周に植えられているケヤキ、シラカシ、サクラなどが成長すれば隈氏が企図した「樹木のような庁舎」になるのではないか。
圧巻は「ランドスケープ・プラス」社がランドスケープデザインを担当した「豊島の森」と外周を流れるせせらぎだ。立派な屋上庭園はたくさんあるが、せせらぎを建物の外周に巡らすというものは記者の知っている限りでは今回が2例目だ。滝の音の演出もある。建物全体の管理維持費は5億円、このうち植栽関係だけで6,000万円を想定しているようだが、それだけ経費をかける価値は十分ある。
「豊島の森」
「グリーンテラス」(ベンチもあるので足水が可能なのか)
アトリウム、吹き抜け、議場などあらゆるところに用いられている格子ルーバーもまた心憎いほどの工夫が凝らされている。吹き抜け空間「エコヴォイド」に用いられているルーバーは長さが異なる3種類のものを等間隔に張り付けてあり、正面から見ると縦のラインが規則正しく並ぶのだが、移動するごとに表情が変化していく。アトリウムの壁面はL型ルーバーの貼り付け方を変えることで陰影に変化をつけている。隈氏がよく好む工夫だ。
アルミ手すりや壁面・ドアなどのカラーリングにも気を使っており、えも言われぬ色が用いられている。侘び寂びの世界だ。議場の壁面と区長執務室は布クロスが採用されていた。
エコヴォイドのルーバー(左)とアトリウムのルーバー(長さが異なり貼り付け方が異なる)
正面から見たルーバー(左)と斜めから見たルーバー
故松浦千誉氏が所蔵し、区が平成22年に寄贈を受けた6,680点と区が所有する13,253点を展示する「ふくろうコレクション」も区民に親しまれそうだし、アトリエ村で知られる豊島区美術家協会会員100名の絵画なども廊下などに展示されている。
ふくろうコレクション
唯一と言っていいくらい見劣りしたのが男子用のトイレ。民間は最新のものを採用するところが増えているが、ここは極めてシンプルというか並み以下だった。女性用のトイレは見なかったが、女性用だけ豪華ということはありえない。
しかし、新庁舎は「歌舞伎座と一緒、クマさんがデザインしたんでしょ。区民の誇りになる」と見学した区民が話したように、区の新名所になるのは間違いない。区のイメージを変えるかもしれない。
新庁舎の専有面積は約26,000㎡。このうち約11,000㎡を市街地再開発建物の床として区が取得。不足分は再開発組合から購入。この購入資金を確保するため旧庁舎敷地と公会堂・分庁舎敷地を定期借地権で民間に貸し付ける。
議場
記者が選んだ2013年ベスト3マンション(2013/12/26)
無垢材を多用 多世代が楽しめる 東急不動産「キュープラザ原宿」27日開業
「キュープラザ原宿」
東急不動産は3月27日、〝ワタシが切替わる〟をコンセプトにした商業施設「キュープラザ原宿」をオープンする。地階から11階まで18店舗が入居するが、ほとんどが日本初、新業態、エリア初で、内装材に無垢材を用いているのが特徴。
「キュープラザ原宿」は、同社の「環境ビジョン」に基づき、「東急プラザ表参道原宿」とともに周辺の緑とをつなぐエコロジカル・ネットワークの役割を果たすよう高木約210本を植えたほか、約120㎡の壁面緑化も施している。
外観にはアルミパネルをルーバー状に貼り付け、渋谷側と原宿側から眺めた表情が異なるようにしている。店舗は飲食が中心だが、結婚式場、日仏バイリンガル教室、日本初のヘアサロンもある。
施設は、東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅から徒歩1分、渋谷区神宮前1丁目の明治通りに面した敷地面積約655坪、11階建て賃貸面積約1,700坪。基本設計は東急設計コンサルタント、設計施工は竹中工務店。
完成予想図
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開業に先立って25日、報道陣に公開されたので見学した。マンション見学会などには多くて20人くらいしか集まらないのに約300人の報道陣が見学申し込みしているとかで、その数に驚いた。
店舗は見学したが、ほとんどさっぱり分からなかった。「乃木坂46」というAKB48に対抗してできたというアイドルグループとコラボした「AREA-Q」なる新業態のエンタテイメント・コラボレーション・カフェにはカルチャーショックを受けた。
しかし、一つだけ共感を覚えたことがある。多くの店が内装材に無垢材を用いていることだ。これは、同社がコンセプトとして内装材に自然素材を用いることをテナントに提案して受け入れられた結果、実現したものだという。
そんな店舗の一つ、「オリジナルパンケーキハウス」原宿店を開業させるフークル・河﨑孝文社長は「内装に坪100万円以上かかっているかもしれない。若者だけでなく大人も楽しめる雰囲気の店にした。思い切って背伸びしてみた」と話した。
若い層にもこうした自然素材が好まれるということを聞いてうれしくなった。そういえば、「スープストックトーキョー」や「コメダ珈琲」も本物の木を内装材に使っている。一部の店を除き、飲食店はわれわれの世代でも利用できそうだ。
外観もなかなかいい。完成予想図を見たときは異様な建物に感じたが、実際の外観は使用されているオレンジ、ピンク、グリーンなどのルーバーは洗練された色で、原宿の街に溶け合っている。
野村アーバン 港北NTセンターと大阪府茨木市に仲介店舗「野村の仲介+」
野村不動産アーバンネットは3月24日、仲介店舗「茨木センター」(大阪府茨木市)と「港北ニュータウンセンター」(横浜市)の2店舗を4月3日に開設すると発表した。
2店の出店により、同社の「野村の仲介+」は首都圏59部店・関西圏5部店の計64部店となる。
子は天からの授かりもの? 子どもができる前の住宅購入者 アットホーム調査
子供が生まれたら住み替えたいと考えている人は17.6%-毎回面白いアンケートを行なう不動産情報サービスのアットホームが今度はこんな興味深い調査結果を発表した。
「子供が欲しいと思っていて、子供ができる前に東京都内に住宅を購入した夫婦」353名(男性188名、平均37歳、女性165名、平均38歳)を対象にネットでアンケート調査したもので、住宅購入価格は平均4,539万円、居住面積は85.8㎡、最寄り駅から9.9分。
まず、「子供が生まれたら、住み替えたいですか? 」という問いに「はい」は17.6%、「いいえ」は58.1%、「どちらでもない」は22.7%だった。
「もしも子供ができなかった場合、住み替えたいですか」の問いに対しては、「はい」が19.3%、「いいえ」が58.1%、「どちらでもない」が227.7%だった。
また、「現在の自宅は、子供にとっての住環境も考え、購入しましたか」との設問では、「はい」が49.0%、「いいえ」が31.4%、「どちらでもない」が19.5%だった。「住宅購入の際、将来、子供の教育費がかかる事を想定していましたか? 」に対しては、「はい」が49.0%、「いいえ」が33.1%、「どちらでもない」が17.8%。
「子供のことを考えて住宅購入をした人」で「重視したこと」については、1位「日当たり・風通し」(61.8%)、2位「収納」(31.8%)、3位「キッチンからリビングが見渡せる」(31.2%)の順。「和室がある」は9.8%、「体によい天然の資材などを使っている」は6.4%だった。
「自宅購入の際、将来生まれてくる子供の事を考え、重視した環境は? 」は、第1位が「スーパーなど買い物施設が近い」が56.1%、「治安がよい」が50.9%、「公園が近い」が45.1%。「自然が多い」は25.4%、「車の交通量が少ない」は11.6%、「住民同士のつながりが強い」は4.0%だった。
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この調査結果をどう見るか。子どもが欲しいと思っていて家を購入したのに子どものことを考えて購入した人の割合が49%というのは解せない。これは、子供が生まれたら住み替えたいと考える人が17.6%と少ないのと密接に関連する。
「いいえ」が58%あり、事前に子どもの住環境を考えなかった人が31%いることから判断して、子どものことが住宅購入の最大の理由ではない層も少なからず存在することがうかがわれる。
健康によい資材(設備仕様やユニバーサルデザインはどうなのか不明)や住民同士のつながりはあまり重要視されていないのも意外と言えば意外。「子は天からの授かりもの」と考えている若い人が多いということか。
異形のスカイツリーに怒れるスズカケ 押上の街路樹 続々「街路樹が泣いている」
墨田区向島のスズカケの街路樹
「東京スカイツリー」をけなすつもりも墨田区を批判する気持ちも毛頭ないが、やはり言わざるを得ない。書かざるを得ない。
「スカイツリー」がたくさんのお客さんを呼ぶのは結構なことだ。しかし、あれは「故郷」と同じだ。遠くから眺めると確かに美しく見えるかもしれないが、近くから仰ぎ見ると異形の形がぐっと迫ってくるようで心臓に悪い。地元の人はどのような評価をしているのだろう。
押上駅前からのスカイツリー
コスモスイニシアの賃貸マンションの取材を兼ねて、スカイツリーのある押上から向島3丁目、4丁目、5丁目を歩いた。
「向島」は永井荷風などの小説の舞台になっており、昔からいいイメージを持っているのだが、街を歩いてあまりにも街路樹が貧しいのに悲しくなった。写真を見ていただきたい。緑がないところを選んで撮ったのではない。どこを歩いても四方八方を眺めても強剪定されたスズカケしかないのだ。あの枝を見ると記者は木が発狂しているようで恐怖を感じる。
唯一と言っていいくらいの墨田区らしい街路樹は、森鴎外の居宅跡がある桜橋通りに植えられたハナモモだった。これは最近整備されたようで、高さは3mもなかった。
社に戻り、ネットで調べて愕然とした。墨田区内には23年度現在、街路樹は7,452本ある。多いか少ないかはさておくが、このうちスズカケが約42%の3,123本だ、次に多いのがトウカエデの1,221本、それにアオギリ278本、イチョウ267本、マテバシイ188本、アメリカフウ154本、ハナミズキの142本と続き、その他が1,746本だ。
読者のみなさんはここで気が付いただろうか。なんと常緑樹はマテバシイだけで、他は全て落葉樹。街が寒々と感じるのは記者だけでないはずだ。さらにいえば、その他1,746本の樹木はひとくくりにされていることだ。その木は何の木だ。気になるどころの話ではない。街路樹にそんなにたくさんの樹種があるはずがない。
わが街多摩市はどうか。街路樹は約1万本ある。このうち常緑樹はクスなど約2割ある。各敷地内にも常緑樹はたくさん植わっているので、真冬でも緑は豊かだ。スズカケ(プラタナス)は284本しかない。そしてなによりこれが大事なのだが、50種ある樹木の中で「その他」はわずか2本のみだ。1本1本をきちんと管理している証左ではないか。
墨田区は、緑化にも力を入れているようで、沿道緑化や壁面・屋上緑化にも補助金を出している。しかし、この街路樹はあまりではないか。隗より始めよといいたい。
記者は街のポテンシャルを測るモノサシとして①ホテルの有無②デパートの有無③職を中心とする文化-この3つを掲げているが、これでは不十分。4つ目としてこれから「緑」を追加する。スカイツリーで押上の人気は高まっているのだろうが、記者のマンション坪単価相場としてはせいぜい200万円だ。23区内では最低クラスだ。
区の担当者に「なぜ落葉樹ばかりなのか」聞いたら、「人それぞれ。紅葉がきれいという人もいる」-木を鼻でくくるような答えが返ってきた。思想・哲学などまったくない。進士・東京農大名誉教授が言った通りだ。「自治体に公園緑地のプロはいない」と。
先のハナモモはどうして植えたかだが、森鴎外が住んでいたところは「向島小梅町」と呼ばれていたそうだ。「小梅町」にちなんで、ウメは街路樹にふさわしくないと考え「ハナモモ」にしたのだう。これは正解か。
向島の街路樹
森鴎外居宅跡地付近(街路樹はハナモモ)