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 大手デベロッパー、ハウスメーカートップの2017年年頭所感が記者にも届いた。

 昨年の政治・経済・社会動向については、熊本地震、英国のEU離脱、米国の大統領選結果などを挙げ、「本当に想定外な事象が多かった」(三井不動産・菰田正信社長)、「文字通り激動の一年」(積水ハウス・阿部俊則社長兼CEO)などと振り返った。

 しかし、こうした激変する社会・市場環境をどう見るかでは微妙な差異が見られる。三井・菰田社長は「大きな時代の転換点の始まりに過ぎない」とし、「技術革新、価値観の変化は既存のビジネスを破壊するほどのイノベーションを起こし始めている」と読む。

 また、大和ハウス工業・大野直竹社長は、不透明な情勢下では「たった1つの出来事で会社の信用は失墜する」と慢心を戒めた。

 その一方で、野村不動産ホールディングス・沓掛英二社長は「私は、2017年の日本の経済環境は、昨年のように不透明が強まり、厳しい環境が続くとは考 えていません。大局観として今年は、経済の明るい方向に目を向けるべき年である」と、先行きは明るいことを強調している。

 ポラスグループ・中内晃次郎代表も「本年の不動産業界は低金利基調や緩やかな地価上昇が予想されるなど、総じて堅調な年になる」と考えている。

 激変する市場環境の中で、どのような舵取りを行うかでは興味深いキーワードも見られる。

 野村HD・沓掛社長は、「不動産や関連するサービス業は、もはや先を見越した変化対応業である」と言い切った。三井・菰田社長はミレニアム世代の台頭について触れ、三菱・杉山社長は、世の中は「モノ消費から『コト消費』へ移行しつつある」と述べている。リビタ・都村智史社長は、今年に込める思いを漢字一文字「結」と認めた。

 積水・阿部社長兼CEOは「子育て中の女性、男性社員の支援を含めた“働き方改革”を進めていく」「今後も施工人材の育成と確保が競争力の要」と、社会的課題についても取り組みを強化すると語った。

三井不・菰田、地所・杉山、野村HD・沓掛、リビタ・都村各社長 2017年 年頭所感

積水ハ、大和ハウス、三井ホーム、ポラス各社社長 2017年 年頭所感

カテゴリ: 2016年度

お客さまのWANTSを引き出す

積水ハウス・阿部俊則社長兼COO

 今は、量より質が求められる時代。単に「住む」ということではなく、暮らし方がより重視され、家はやりたいことを実現する場に変化しつつある。自宅がレストランや 図書館、シアター、そしてホテルにもなる。

 お客様のNEEDSではなく、WANTS、つまり住宅が「必要だから」ではなく、「お客様が本当に望まれていること」を引き出して、「潤いのある暮らし」を提案していく。さらに、子育て中の女性、男性社員の支援を含めた“働き方改革”を進めていく。

 今後も働きやすい制度、環境づくりを深化させる。また、積和建設やハウス会などの「施工力」は当社にとっての大きな強み、財産。

 今後も施工人材の育成と確保が競争力の要になると考えている。構造改革やグループ連携強化により、各事業の収益基盤が確立してきた結果、利益成長を3つのビジネスモデルでバランスよく支える体制が整ってきたことで、売上高2兆円という過去最高の記録が視野に入った。

 新たな中期経営計画も始動します。新たな成長へ向けて前進する。

何事も「焦らず、弛まず、怠らず」

大和ハウス工業・大野直竹社長

 大和ハウスググループは昨年来、役職員全員のたゆまぬ努力により、「第5次中期経営計画」の初年度中間期に計画値を上方修正するなど、売上高4兆円超に向かって歩みを着実に進めているが、このような業績が好調な時こそ、決して慢心してはいけない。

 たった1つの出来事で会社の信用は失墜し、約6万人のグループ役職員、協力会社、取引先が路頭に迷う。何事も「焦らず、弛まず、怠らず」、「お客様ファースト」で一歩一歩、着実に丁寧に業務を遂行してください。

 加えて、本年、皆さんは〝更なる〟高みを目指して、売上高5兆円の基盤づくりに励んでください。

 かつて創業者は「世の中の多くの方々が必要とされ、喜んでいただける商品・サービスの創出と事業化」を念頭に置き、住宅・建築・不動産の各分野で、これまでになかった商品・サービスを提供してきました。

 みなさんも新たな需要を掘り起こすべく、事業の川上から川下までのバリューチェーンの中で「プラス1、プラス2の事業」を創出し、業容拡大とグループの更なる成長・発展のために尽くしてください。

「木」の持つ魅力を最大限に活かし、可能性を追求

三井ホーム・市川俊英社長

 住宅市場においても、(昨年は)相続税対策としての貸家建設需要に牽引される形で新設住宅着工戸数が7月から4か月連続して対前年比増加となり、全体戸数としては回復傾向となりました。

 しかしながら持家需要については未だ力強さに欠け、リーマンショック後の着工戸数に及ばない水準であり、楽観できない状況にあります。

 今年は昨年より継続している施策を展開することに加えて、熊本地震における現地調査結果などを生かして、あらたな技術革新に取り組んでまいります。

 また、昨年秋にツーバイフォー工法において2時間耐火構造の大臣認定が取得されたことを受けて、木造施設建築等への展開も推進してまいります。

 引き続き「木」の持つ魅力を住まいへ最大限に活かしつつ、新たな技術の研究とあわせ、その可能性を追求して参ります。

会社の文化的インフラを強化する1年

ポラスグループ・中内晃次郎代表

 本年の不動産業界は低金利基調や緩やかな地価上昇が予想されるなど、総じて堅調な年になると考えています。

 しかし建設費の面では、ドル高傾向は資材価格の上昇につながり、現場の人手不足感もありコスト的には見通しが効かない状況です。一部都心では不動産価格が上昇していますが、私たちがテリトリーとしている近郊エリアは実需に基づいて動いており、大きな値動きはないと考えておりますので、投機的な動きや情報などに左右されずに着実に行動してまいります。

 本年、当社では『凡事徹底』をモットーに、当たり前で基本的なことを確実に実行します。責任と権限の明確化や仕事の構造の見直しを行い、個人の力量だけに頼り過ぎない事業運営を進めます。そして核となる強みを構築し強い骨格を持った、いつの時代でも勝ち続けられる会社にするために、会社の文化的インフラを強化する1年とします。

 そして初夏に稼働予定の佐賀県の工場を確実に立ち上げ、2年後に控えた創業50周年に向けて、社会からより信頼される企業を目指し、全社一丸で前進し、盤石な企業基盤を構築してまいります。                        

 

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急拡大するシェアリングエコノミーに対応

三井不動産・菰田正信社長

 2017年は、昨年起こった多くの想定外の事象が、これからの歴史の中でどういう意味を持つことになるのかが見えてくる年になると思われる。反グローバル・保護主義の声が影響を及ぼし、経済面での影響が生ずる可能性もある。

 ICTの発達によるマッチングコストの低下がミレニアム世代の嗜好と相まって世界ではシェアリングエコノミーが急拡大しており、既存のビジネスを破壊するほどのイノベーションを起こし始めている。

 今年は、中期経営計画「イノベーション2017 ステージⅡ」の目標年度であり、まずはその目標を確実に達成すると同時に、これまでも時代の変化を先取りして新しいビジネスを開拓してきたように、2020 年以降を見据えて、新しい需要を創造し、新たな市場を創りだし、ビジネスを革新していく。

 新たなコトに『スピード感』をもってチャレンジ

三菱地所・杉山博孝社長

 オフィス賃貸市場は今年も引き続き堅調に推移していく。分譲マンション市場は、魅力を伝えられる物件とそうでない物件で販売状況には今までよりも差が付く可能性があり、「立地の見極め」や「企画力」がより重要になってくる。

 訪日外国人客の増加は今後も継続することが想定されるが、いわゆる「爆買い」は落ち着いてきており、モノ消費から『コト消費』へ移行しつつあり、質の高いものを提供することで、新たなインバウンドニーズの流れをつかんでいく。

 今年は新中期経営計画を発表する年であり、「信頼され、競争力のある事業グループの集合体」の実現に向けて事業を推進し、新たなことに「スピード感」 をもってチャレンジしていく。

不動産業はもはや変化対応業

 野村不動産ホールディングス・沓掛英二社長

 2017年の日本の経済環境は、昨年のように不透明が強まり、厳しい環境が続くとは考えていない。大局観として今年は、経済の明るい方向に目を向けるべき年である。不動産市況、特に住宅市場は回復傾向とみるべき。

 これらの環境を踏まえて2点、申し上げたい。まず1点目は、中長期経営計画に対してもう一度、その達成に向けて真正面から向き合っていきたい。

 2点目は、組織や業務、働き方などの様々な構造改革・業務改革に挑戦したい。「過去の継続、安定、スタビライズ」はある意味で「衰退」を意味する言葉と置き換えてもおかしくない時期に突入している。

 不動産や関連するサービス業は、もはや先を見越した変化対応業であると言っても過言ではない。イノベーティブな変革を推し進めてゆくことは、今後のグループの成長にとって極めて重要な戦略である。

 今年は野村不動産が1957年(昭和32年)に創業して以来ちょうど60年の節目の年。どんな環境であろうともしっかりとした自覚を持って次なるステージ に向けて企業価値の向上を果たしていきたい。

今年に込める思いは漢字一文字で「結」

リビタ・都村智史社長

 シェア・コミュニティを事業軸とする弊社はリノベーションを通じて人と人、人と街を結ぶコネクトの役割を果たすことが重要と考えております。新しい結びつきがあってこそ、そこに付加価値が生まれます。

 「結」という文字には「糸を束ねて一つにゆわえる」という意味が込められております。新年を迎えるにあたり、弊社とパートナーの方々が持つ多種多様な「糸」で「吉」をより合わせて新しい付加価値を創造し、その「結」果を相互に享受していきたいとの決意を新たにしております。

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三井不動産グループ記者懇親会で挨拶する菰田社長(マンダリン オリエンタル東京で)

 三井不動産グループが11月24日、恒例の記者懇親会を開いた。

 冒頭、挨拶に立った菰田正信・三井不動産社長は「今日は東京で11月として54年ぶりに初雪を記録したが、今年は例年以上に想定外のことが起きた」と切り出し、熊本地震、イギリスのEU離脱、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックでの日本選手の活躍、次期アメリカ大統領選挙でのトランプ氏の勝利などについて触れたあと、わが国の経済は「緩やかな回復基調にあるが、GDP600兆円実現に向けた成長戦略は力強さに欠ける」と指摘した。

 同社の事業については、先に発表した平成29年3月期第2四半期決算が好調に推移し、通期では売上高、利益とも過去最高を更新するのが確実となったためか、「極めて順調」を何度も繰り返し、マンションなどの分譲事業、オフィス・リート市場、ホテル、ライフサイエンス・イノベーションなど事業領域拡大の取り組み、海外アウトレットモール展開などについ語った。最後は「ミレニアル世代の台頭、人口減少、高齢化、IoT、シェアリングエコノミーなど社会構造は大きく変化しており、当社グループはフロントランナーとして新しい価値を創造する」と締めくくった。

 続いて登壇した岩沙弘道・同社会長は、「今年はいい意味でも悪い意味でも〝まさか(坂)〟の年だった。伊勢志摩サミットでは日本の存在感を示した。デフレ脱却は2020年までにやればできる動きが出てきた」などと話し、乾杯の音頭を取った。

◇       ◆     ◇

 両氏の挨拶で、一つだけ気になったことがある。岩沙会長が「デフレ脱却は2020年までにやろうとすればできる」と語ったことだ。岩沙会長は今年の不動産協会の賀詞交歓会で「今年こそデフレ脱却を宣言できる年にしなければならない」と語ったし、「アベノミクスの果実は実りつつある。経済と消費の好循環を実感できるよう多様な雇用・働き方ができる取り組みをしっかりやっていくことが大事」などとも述べていた。岩沙会長はこの言葉を〝まさか〟お忘れではないはずだ。

 アベノミクスの成長戦略の第三の矢は新しい矢にすげ替えられ、「女性活躍」は「一億総活躍」に置き換えられた。

 来年まであと1カ月ちょっと。岩沙会長には来年の賀詞交歓会でデフレ脱却を4年も先送りした理由をしっかり聞くことにする。

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岩沙会長

◇       ◆     ◇

 役員との懇談では、記者は木下克己・三井不動産リアルティ専務に「三井さんは住友(住友不動産販売)さんにも野村(野村不動産アーバンネット)さんにも勝てなくなった。かろうじて東急(東急リバブル)さんとは互角」などと挑発し、RBA野球チームの強化を訴えた。木下専務は笑いながら「本業では負けない」とやり返した。

 藤林清隆・三井不動産レジデンシャル社長には、同社の野球チームがRBA野球大会で初めて東京ドーム進出を決めたことを報告したが、(ある新聞社から横浜傾斜マンション問題についてしつこい質問攻めにあったためだと思うのだが)もう一つ表情がさえなかった(と考えるのは私だけか)。

 この新聞社の記者には、大勢の記者が詰めかけているのに二人掛かりで藤林社長を〝独占〟するのはいかがなものかといいたい。同社は「CAT」、つまり「Compliance」(法令順守)「Accountability」(説明責任)「Traceability」(追跡可能性)の点で適正に対応したと思う。どうして三井のマンションが売れるのか、このあたりにもヒントがある。記者の方には現場をしっかり見てほしい。

 今後の動きで注目したいのはわが故郷・三重県のリゾート「Amanemu(アマネム)」だ。岩沙会長は「世界に冠たるリゾート」にすると話した。「志摩観光ホテル」を上回るということか。

 

 

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主力商品「檜の家」

 ナイスは11月18日、ヒノキ造りの伝統的な木造軸組工法による一戸建住宅や社寺建築などを手掛ける菊池建設を11月17日付でナイスの100%出資子会社にしたと発表した。菊池建設の民事再生計画の認可決定が確定したことを受け、7月15日付で締結したスポンサー契約に基づき決定した。

 菊池建設は1955年に創業。木造注文住宅メーカーで、ヒノキを使用した日本伝統の数寄屋造りをはじめとする純和風の木造注文住宅を得意としており、神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県、静岡県を中心に供給している。社寺建築もこれまでに100件以上を手掛けている。

 今後、グループが有する建築資材の調達、プレカット加工、物流といった機能を活用し、経営の合理化や事業の拡大を図っていく。新社長には木暮博雄氏が就任。 資本金は1億円。社員数は104人。

◇       ◆     ◇

 ナイスは最近、一戸建住宅部門に力を入れており、前期売上計上戸数は733 戸(前期比60.0%増)、売上高は257億円(同52.7%増)に伸ばしている。今期は1,00戸目標を掲げる。デベロッパー系の分譲戸建てでは野村不動産を抜き三井不動産レジデンシャルに迫る勢いにある。菊池建設の子会社化により注文住宅部門(前期は293戸)を伸ばそうという戦略だ。

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寺社建築 地持院(静岡県静岡市)

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 不動産上場会社の平成29年3月期第2四半期決算がほぼ出揃った。各社のマンション事業は、空前の低金利を背景に総じて好調を維持しているが、用地・建築費上昇による分譲価格の高騰や、消費者の交通利便性を重視した物件選好の影響を受けて完成在庫が増える傾向にある。在庫増が直ちに収益を圧迫する状況にはないが、価格高騰を吸収する消費力も弱く、デフレ脱却も遠のいた。市場は踊り場を迎えたといえそうだ。各社の決算データから現在のマンション市場を概観した。

 メジャー7(業界では三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産、東急不動産、東京建物、大京の7社をこう呼ぶ)の中で〝絶好調〟を維持しているのが三井不動産レジデンシャルだ。

 今期計上予定戸数5,450戸に対する四半期末の契約進捗率は91%に達している。完成在庫も111戸で、計上予定戸数の2%にしか過ぎない。超都心の高額とアッパーミドル向き、DINKS、コンパクトマンションのバランスがいいのが好決算につながっている。

 営業利益率が突出して高い住友不動産も好調を維持している。一言でいえば、三井不動産レジデンシャルは波をつくるのにエネルギーを注ぐ。一方の住友不動産は波に乗る、在庫を〝宝庫〟にするのが巧みだ。この差が利益率の差だ。販売事業全体の2017年度通期売上高2,700億円を2,800億円に上方修正した。計上予定5,000戸に対する契約率は約95%に達している。完成在庫は微減にとどまった。

 三井不動産レジデンシャルと住友不動産以外は天気予報に例えれば〝快晴〟とはいいがたい。

 ここ数年、戸数、売上高とも漸減している三菱地所レジデンスは期初の計上予定戸数を4,000戸から3,800戸に変更した。最近はJV物件の比率が増えている。完成在庫も徐々に増えている。

 これまで完成在庫をほとんど出さなかった野村不動産にも異変が起こっている。2017年度計上予定戸数に対する契約進捗率は77.1%と高水準だが、2014年度、2015年度はそれぞれ26戸、25戸だった完成在庫は2016年度には一挙に209戸に増加し、今四半期末は602戸と3倍に増加した。依然として高い粗利益率を維持しているが、在庫増は気になる材料だ。

 東急不動産と大京は戸数、売上高とも減らしており、〝4強〟との差が開いている。今後、両社はそれぞれ独自路線を歩むはずだ。完成在庫は微妙な水準に達している。

 東京建物は「「Brillia Tower池袋」(分譲322戸、2015年度)「Brillia多摩ニュータウン」(分譲684戸、2015年度)など好調物件が続いたあとの〝中休み〟。来期は、すでに全戸完売している「Brillia Towers 目黒」(分譲661戸)「Brillia THE TOKYO YAESU AVENUE」(分譲387戸)が計上されるので戸数、売上高とも大幅に増やしそうだ。

 メジャー7の売り上げ、価格の推移について。メジャー7の2014年度の計上戸数はトータルで約31,000戸、売上高は約1.3兆円、1戸当たりの平均価格は4,513万円だった。2017年度の予定計上戸数は約24,000戸、予定売上高は約1.3兆円、平均価格は5,401万円。3年間で計上戸数は約7,000戸減らしたが、売上高はほぼ同じ水準で、平均価格は約900万円上昇したことになる。

◇       ◆     ◇

 メジャー7以外のデベロッパーの決算データも懸念材料がある。

 今期引き渡し予定戸数1,600戸に対して契約進捗率が79.3%と好調のタカラレーベンは、昨年同期は引き渡し予定戸数1,250戸に対して進捗率は86.1%だったので6.8ポイント下落している。

 平成26年3月末で330戸の完成在庫を抱えていた日神不動産は、その後販売が進み平成28年9月末で257戸に減少したが、平成26年4月以降の分譲戸数1,456戸に対する完成在庫率は17.7%で楽観できる数値ではない。

 NTT都市開発も利益率が悪化している。2015年9月末の利益率が18.5%だったのが、2016年9月末には6.5%へ低下。完成在庫は2015年9月末の271戸から2016年9月末には506戸へと増加している。

 2016年3月期末で693戸の完成在庫を抱えていた大和ハウスは半減以下の331戸に減らしたが、通期では2,250戸(前期2,972戸)、1,100億円(同1,313億円)に減らす計画。グループのコスモスイニシアも昨年同期の利益率が20.3%だったのが2016年9月末は17.9%へ落ち込み、完成在庫も49戸から111戸へ倍増している。

◇       ◆     ◇

 決算データは遅行指標だ。売り上げに計上されるのは主に1年前、2年前に分譲たれたマンションで、用地取得を含めれば数年前だ。ここ2~3年の上昇気流に乗って売上高、利益率を伸ばしてきた結果が今の数値に表れている。

 一方で、完成在庫は先行指標でもある。在庫の増加は一概に事業へ悪影響を及ぼすとは言えない。かつてマンションの雄だった大京の横山修二社長は「完成在庫は供給量の1カ月分くらいが適正」と話したことがある。在庫を抱えていたほうが、お客さんのニーズに応えられるメリットが大きいというのがその理由だ。しかし、資金力の乏しいマンションデベロッパーは、当然ながら極度に完成在庫を恐れた。

 当時と現在では借入金利が全然異なるので単純比較はできないが、金利が低くマンション市況が好調なときは在庫増が収益を圧迫することはないが、市況が右肩下がりになると価格の下げ圧力が強まり、利益が吹っ飛ぶ事態もありうるので、やはり供給量の10%くらいが適正在庫ではないかと記者は考えている。

 この先の景気・消費動向がどうなるか不透明だが、根強い需要がある富裕層や投資向けはともかく、第一次取得層・アッパーミドル向けマンションの価格(坪単価)は完全に取得限界を超えている。低金利を背景にまだまだ大丈夫という声がないわけではないが、若年層の将来不安は払しょくできていない。直近の消費動向テータも一進一退を繰り返している。トランプ氏が次期アメリカ大統領に就任することが決まり、政治・経済動向も不透明感を強めている。

 以上みたように、マンション市場はじわり在庫が増え、踊り場に差し掛かったといえる。景気が上に振れるのか下に振れるのか。アベノミクスの「新三本の矢」「一億総活躍社会」に夢を託せるのかどうかにかかっている。

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 飯田グループホールディングスは11月11日、平成29年3月期第2四半期決算を発表。売上高は5,869億円(前年同期比7.1%増)、営業利益は592億円(同33.1%増)、四半期利益は391億円(同40.1%増)と増収増益となった。

 主力の分譲戸建てが好調に推移していることから、通期予想を売上高1兆2,500億円(期初予想比0.6%増)、営業利益1,133億円(同12.7%増)、当期利益754億円(同13.9%増)に修正。また、期末配当を従来予想の23円から30円に、年間配当合計予想を従来予想の46円から53円に修正した。売上戸数は期初予想の41,550戸から41,190戸へ減らす。

◇       ◆     ◇

 すごい数字だ。グループ6社のうち売り上げを減らしたのは東栄住宅グループのみで、一建設グループを激しく追い上げているアーネストワングループが10%以上伸ばした。第2四半期末の売上戸数は5,066戸で、一建設グループにあと319戸と迫った。

 分譲戸建ての平均売価がまたすごい。6社平均で27.3(百万円)で、グループ別では一建設が26.2(同)、飯田建設が32.1(同)、東栄住宅が34.0(同)、タクトホームが28.8(同)、アーネストワンが23.6(同)、アイディホームが24.5(同)となっている。各社とも地方での比率を増やしていることもあるが、大手デベロッパーなどの半値以下だ。

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「欣御園」完成予想図

 旭化成不動産レジデンスは11月7日、同社が事業参画している台湾新北市のマンション「欣御園」の販売を開始したと発表した。

 同マンションは、同社の現地法人「台湾旭化成都市開発株式会社」と台湾の建設会社「億欣営造」が共同出資(持分50%)して設立した「欣荘建設」によるマンション開発・分譲事業。同社としては海外におけるマンション事業の第一号案件。今年5月に着工し、2018年の竣工を目指している。

 建物は敷地面積約3,589㎡、14階建て全191戸。間取りは1LDK~3LDK。販売価格は60万台湾ドル/坪(日本円にして坪199万円)。

◇       ◆     ◇

 首都圏マンションの雲行きが怪しくなってきている一方で、デベロッパーやハウスメーカーのマンションやビル・商業施設など海外事業のニュースリリースが最近頻繁に出されている。

 記者は首都圏マンションですら把握できていないのに、ましてや海外のマンション市場などわかるはずがない。何ともコメントのしようがない。60万台湾ドル/坪(日本円にして坪199万円)が高いのか安いのか、売れるのか売れないのかさっぱりわからない。モンゴルの「ジャパンタウン」はどうなったのだろう。

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 野村不動産アーバンネットは10月13日、「野村の仲介+(PLUS)」の新テレビコマーシャルの放映を開始した。

 第4弾となる今回のCMでは、一億総活躍社会の実現に向けて注目されている「近居」がテーマ。キャッチフレーズは「言われていないご希望にさえ、こたえる仲介でありたい。」

 「子育て」と「高齢者」の視点から積極的に近居をお客さまに紹介していることをアピールする。

◇       ◆     ◇

 同社が2013年に新ブランド「野村の仲介+(PLUS)」を立ち上げてから4年目。過去のCMのキャッチフレーズを紹介すると、

・2013年10月 「家を買う。家を売る。その不安のひとつに、仲介業者はなっていないだろうか」

・2014年10月 「ただ住まいを探すだけなら、不動産仲介なんていらないと思う。」

・2015年10月 「不動産仲介だから提案できる、人生設計もある」

 そして今回は、「言われていないご希望にさえ、こたえる仲介でありたい。」

 「近居」をテーマにしたのは正解だ。先日もUR都市機構と千葉市が「近居」を推進する記者説明会を行った。親子がそして地域が支えあわないと生きられない社会になってきた。

千葉市に住もう〟UR都市機構と千葉市が連携「近居」を支援(2016/10/13)

野村アーバン またまた刺激的CM 富裕層取り込む狙いか(2014/10/7)

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「えるぼし」最高評価マーク

 野村不動産は10月13日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」に基づく認定マーク「えるぼし」の最高評価の認定を厚生労働大臣から受けたと発表した。

 「えるぼし」は、本年4月に施行された「女性活躍推進法」に基づく女性の活躍度を測る認定制度で、「採用」・「継続就業」・「労働時間等の働き方」・「管理職比率」・「多様なキャリアコース」の5つの評価項目のうち基準を満たした項目数に応じて3段階に分類されており、同社は5つの項目すべてにおいて基準を満たしたことから、最高評価となる3段階目の認定を取得した。

 同社は、「ダイバーシティ経営」を経営戦略の一つに位置づけ、女性を含めた多様な人材が、各々の能力を十分に発揮できる企業風土の醸成に向けて、ダイバーシティ推進活動に取り組んでいる。その取り組みの一環として、女性が活躍できる環境整備(女性総合職採用のための「女性フォーラム」の開催、育児・介護を含む両立支援及びキャリアアップ支援の制度整備、社員への啓蒙活動など)を行ってきたことが、今回の認定取得につながったとしている。

 「えるぼし」の認定をこれまで受けたのは145社で、不動産業界では同社のほかヒューリックが3段階目の認定を受けた。

◇       ◆     ◇

 〝女性活躍〟なる言葉は、女性が活躍できていない社会であることを国も認めているという点で納得もし、またそのようにしなければならないと記者も考えるが、ことさら〝女性活躍〟の政策を掲げなければならないほど男女差が拡大しているということの証左だ。そしてまた、〝男性活躍〟はどうかと問われれば、活躍していると答えられる男性はどれだけいるのか。これもまた少ないからこそ〝一億総活躍〟というお題目に変わったのだろう。

 この難問はともかく、同社がヒューリックとともに「えるぼし」の認定を受けたのは率直にうれしい。昨年の8月、記者は同社広報部長(現コーポレートコミュニケーション部)・宇佐美直子氏にインタビューし、その記事を書いている。こちらも参照していただきたい。

「女性活躍」待ったなし 不動産業界の取り組み/野村不HD・宇佐美広報部長に聞く(2015/8/17)

 

 

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